妖狐の執心を残す 能舞台の舞台装置を検証 |
能舞台の正面には一本の老松が描かれています。どの曲もこの松の木のみを背景にして上演されます。なにも無い舞台上に、いろいろなものが見えてくるように想像力を働かせてみるのが、能の面白さとも言えます。しかし、必要最低限の能舞台を出すことがあります。これを「作物(つくろもの)」といい、さまざまは種類がありますが、それぞれ一曲を象徴し、彩りを添え、より想像をかき立てる手助けになります。 能「殺生石(さっしょうせき)」は、那須野の原に立つ石の物語。美女に身を変え、天竺、唐土、日本を荒らした妖狐。退治された後もその執心が石となって、空飛ぶ鳥さえも落とします。この石を表す「作物」は、この一曲専用で大がかりな物です。石がふたつに割れて野干(やかん)(狐)の精があらわれるところが、この曲最大の見せ場といえるでしょう。 併せて、装束付けの実演も行います。 |