朝日新聞の「くらしのあした」欄では、派遣問題を取り上げて毎週特集記事を掲載しています。
1999年10月25日付の記事では、派遣110番にも相談が集中している「労働者派遣契約の途中解除→派遣労働者の解雇」の問題が取り上げられ、私の近刊「派遣社員の悩みQ&A」も(本の名前は出ていませんが)出て来ます。
1999年10月25日 朝日新聞 くらしのあした 読者発(リンク)
派遣解雇、もらえる残り賃金 契約は継続/知らない人多い
読者のお便りの中に、派遣問題に詳しいメールがありました。出版社の編集者からです。週末に喫茶店で会ってくれました。 □ ■ □
二十四歳の女性です。大手派遣会社に登録すると、すぐに三カ月の派遣の仕事がみつかりました。 □ ■ □
契約を解除された彼女が登録していた、大手派遣会社の支社を訪ねました。アポなしですが、教育事業部のマネジャーが「奥へ」といって応援セットに案内してくれました。 □ ■ □
東京都渋谷区で、派遣労働者の問題に取り組む派遣ネットワークの事務所を訪ねました。 |
【脇田コメント】
派遣労働者は、派遣先の労働者派遣契約途中解除があっても、約束した派遣期間いっぱいの雇用継続の責任を派遣元に対して追及することが可能です。この記事にも引用されているように、1996年の法改正にともなう、労働省の指針では、記事にあるように別の派遣先のあっせんや、損害賠償の支払が必要とされています。
派遣労働者は、こうした指針に基づく、派遣元や派遣先の責任を果たすように求めることができます。
問題は、1999年の新派遣法制定の際に国会で不可解な付帯決議がされたことです(衆院付帯決議、参院付帯決議)。付帯決議は、全体としては、派遣労働者保護の趣旨ということであるのに、残り期間の賃金全額の支払ではなく、派遣先に30日前の予告か、不足する日数についての賃金の支払という、労働基準法第20条に類似した負担を派遣先に求めているからです。これでは、派遣先は、残り期間の賃金相当額という賠償責任を逃れることになってしまいかねません。 もし、そうであれば、付帯決議の趣旨は、1996年の法改正や指針との関係で理解し難いものです。国会議員は、付帯決議のこうした問題点を十分に理解しないまま賛成したのではないか疑問に思います。 事実、10月4日からパブリックコメントが求められた、労働省の「派遣先に対する指針(案)」は、私の心配を裏付けるように、従来よりも不利な内容に後退しています。
労働省官僚は、国会議員に詳細を知らせずに、付帯決議の原案を教示して、96年指針を後退させることを狙ったのでしょうか?いかにも労働者を保護するような提案のなかに、国会議員、ひいては国民を欺瞞し、派遣先の責任を30日前の予告(または不足日数分の賃金額相当の損害賠償)に軽減する「狡智」が隠されていると思えてなりません。そうであれば、指針は、きわめて不当な結果をもたらすことになります。 |