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98.09.08 おどろおどろ ![]()
「おどろおどろしい」というのは、平安時代ぐらいからあることばで、「驚く」と関係がある、つまり、「驚ろ驚ろしい」が語源かといわれます。もともとは「仰々しい、ぎょうさんだ」というような意味でした。
事件の映像を“再放送”した番組を見てみた。日本テレビの昼のワイドショー。転落映像の前後に、オドロオドロしい音楽と、こんなナレーションが流れる。 「おどろおどろ」だけで擬声語・擬態語のように使われているなあ、と思い始めたのは、以前に、やはり週刊誌を見ていたときでした。
そして、その小さな記事が目に入った。
「オドロオドロした」という言い方はないよな、と思いつつ辞書を調べてみると、案の定、たいていの辞書にはありませんでした。でも『新明解国語辞典』(初版から)、『三省堂国語辞典』にはそれぞれ「おどろおどろした物音」という例文を添えて出ていた。恐れ入りました。
「たとえば猟奇、おどろおどろなものが好きな」
と、2度も言っていたので、これはもう、「おどろおどろ」だけでひとまとまりになっているらしいと思ったのでした。 小さな蔵の窓から、ネズミ色の空が見えていた。電車の響きであろうか、遠くのほうから雷鳴のようなものが、わたし自身の耳鳴りにまじって、オドロオドロと聞こえてきた。(江戸川乱歩『陰獣』春陽文庫 p.108・1928.08〜10発表)
という例がありました。 ねじ兵衛はいけすかねえ奴だけども、あの嬶ァてえなあ、いい女だねェ、え。あんな野郎に持たしておくのはもってえねェやな。まあだいたい何だってな、あれ、聞いてみたところが、もとはいいお屋敷へご奉公して、奥様にたいへん可愛がられて、え、もうお下がりなんざあのべつにいただきの、お給金はたんまりもらいの、え、これでまあ生涯奉公しようと思っているところで、屋敷がなんかでこのつぶれちゃったんだ。(三遊亭圓生「樟脳玉」=NHK落語名人選48カセットテープ 1961.03.16 東京落語会での録音)
圓生は大阪生まれですが、ほぼ江戸っ子といってもいい育ちです。江戸語かもしれません。ただ、「徳川慶喜」の江戸っ子辰五郎のせりふでは「見物しぃの」のように動詞を延ばして言っていましたが、圓生は延ばして言ってはいません。
[通リ者]これ色男、猪牙舟の乗(のり)やうから伝授しましやう 猪牙舟といふものは。あぐらをひッかき。うしろ江ひぢかけの。首(くび)うなたれの。たばこ。ぱく\/とくらはせねば舟がこぎにくゐ まず船頭がうれしがる(『洒落本大成』4 p.350下) 圓生どころじゃない、江戸語が完成されつつあったころに、すでに使われていたのですね。ほかにも そこで。今夜そこの内へいつて新造(そんぞう)かいとして。夜ふけ人しづまつて。其女郎が所へ。しのびこみの。くどかずとも。じきに。そふいふ調子だによつて。直(じき)に出来る。(『洒落本大成』4 p.353上) のように1回だけ使われる例もあります。また『莫切自根金生木(きるなのねからかねのなるき)』(1785)にも 福は外へまきちらしの、鬼は内へ\/(日本古典文学大系『黄表紙 洒落本集』p.120)
とあります。 |
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