連続画像による映像制作３

３、考察と展開

（１）生徒と授業の実態

　初中等教育において基本的造形教育に割くの時間不足からか、多くの現役高校生の素描力、立体造形力は高度な段階ではない。そんな中で映像に取り組むのは学習者にとって難しいことと思われる。しかし作品例を見る限りにおいては、２、３次元での造形力が必ずしも４次元ともいえる映像制作能力に呼応して比例するとは限らないことがわかる。素描力のある生徒は精巧な画像をつくるが、動かしたときにそのまま精巧に動くとは限らない。むしろ、粗雑ながら動きの移り変わりをよく分析し一枚一枚画像を作り上げたものほど動きがダイナミックでおもしろい。動くものというより、視覚的にメタルフォーゼするものと解釈し、独自のコミカルな表現を見いだしている生徒もいる。このような試みは違った視点からみる造形能力として評価できないものであろうか。

（２）動くように工夫する思考力

　２、３次元の造形能力が４次元のそれと関わるかどうかは断定できないし、本実践のテーマではない。しかし、作品を動くようにするために各画像を調整したり、色彩を工夫したりする過程は、広範囲に考えたときの造形力に必要な思考力、判断力の訓練につながっていると思われる。作品制作には試行錯誤の段階が重要であり、少ない授業時間の中、断定的に自己の作品の方向性を決定してしまうのではなく、紆余曲折の中で自らの表現の良さ悪さを見つけていけることにもっとも価値があるのではないだろうか。だだ創造力は迷っているだけでは育たない。動くように工夫させる時間は十分に確保し、最終的に表現の感動へとつながるよう技術的な援助を教える側から与えなくならない。

（３）コンピュータ素材化による応用

　装置としてのゾーイトロープは立体物であるがゆえ、扱いも煩雑、管理もたいへんである。そこで、ゾーイトロープ上で起こっている現象を、コンピュータのヴァーチャル空間に再現し、作品の管理、鑑賞などの分野において利用しようということが考えられる。

�QuickTimeVRの利用

　QuickTimeVRはApple社が開発したQuickTime規格の一部である。QuickTimeは、画像、音声、文字などを時間軸で管理できるようにパソコンなどのコンピュータの機能を拡張するものである。QuickTimeVRはPanoramaとObjectの機能から成り、コンピュータ上の対象物に対して360度の眺望と全天周の視座を実現する。
　制作した連続画像をQuickTimeVR movieへ変換し、作品の観賞や管理に利用できるようにした。
　

�QuickTimeVRのリンクによるVirtual Museum

　QuickTimeVR movieとした作品はそれぞれ独立したものであるが、これらをhotspotとよばれる機能を使って複数互いにリンクさせることができる。作品の集積がVirtual Museumへ移行可能となるのである。QuickTimeVR movieはデータ量が比較的少ないので、インターネットのコンテンツとして提供することが有効である。昨今、学校が提供するホームページが大氾濫する中、単なる学校紹介だけに終わらないインターネット利用が期待されている。観賞学習、教材作成のための素材資料など有用なコンテンツの必要性がさけばれる中、このようなかたちで作品が提供されていくことは多角的教育活動の活性化につながると思われる。