第3章 曲がり直し
T はじめに    「竹を割ったような性格」などと言う言葉があります・・・・長い間竹を扱っていると、どうも本来の意味が         わからなくなってきました。といいますのも確かに縦に割りやすいことは事実ですが、性格がほとんどの場合ひね         くれていて真っ直ぐに割れることはなく・・・根性曲がりのヒネクレ者、それでいて性格が脆い・・・つまり自分         のようなやつの性格を形容する言葉!だったのでは・・・などと思ってしまいます。           それはさておき、素材=スプリットの曲がりは以降の削り・貼り合わせなど工程すべてを困難にしてしまいま         すので特に念入りにする必要があります。 U 曲がり     @ 節または節前後の曲がり・・・画像1は典型的な曲がりを表皮側から見たものです。節を中心に「へ」の字が二つ連なって      います。(下のスプリットは曲がりの少ない例です)隣り合った節ではこれとは逆方向に「へ」の字が形成されます。       さらに、画像2では裂断面側から見たものですが節自体が盛り上がり「へ」の字状になっています。(下のスプリットは曲      がりの少ない例です)     A 節間の曲がり・・・・通常ゆるく大きく左右に孤を描き、表皮を外に内側に曲がることを伴います。     B ねじれ・・・・ V 曲がりの矯正     @ご存知のように竹を曲げる(この場合は曲がったものを真っ直ぐにする、ですが)には竹を熱する必要があります。そのための熱源      としてはアルコールランプ(小・中学校時の理科実験でよく使いました)、ヒートガン(ヘアードライヤーの強力なヤツ)が多く使      われています。この炎・熱風を曲げたい箇所に当て加熱します。       個人的にはその両者ともあまり好きにはなれません・・・・アルコールランプはなんとなく火災に対する不安が付き纏います。      周りは燃えるものばかりですからね。万が一ランプをひっくり返しでもしたら、というのが使用しないわけです。ヒートガンは熱量      も十分、取り扱いも楽なのですがなんと言ってもその運転音。じっくり作業したいのに気になってしょうがありません。そこでガス      バーナーの使用となります。ただし要求されるのは高温炎より極弱火での安定性ですので炎の微調整できるものに限ります。家庭用      カセットガスボンベが使えるタイプはエコノミーでもありお勧めです。画像3     A必須の道具・用具としては熱源のほか手袋を用意すればいいでしょう。熱せられた竹を手で曲げるものですから素手での作業は勧め      られません。竹の角で怪我の危険もありますから綿製の「軍手」などを準備してください。      では実際に作業を進めていきましょう。     どの箇所からスタートしても良いのですが私流では節の両側の曲がりの鋭い箇所(画像の↓マーク)を真っ直ぐにすることから     スタートします。(マークは後ででやります)両手で曲がりを直す方向に力を加えつつバーナーの炎で熱していくとある温度から竹     が曲がりはじめるのが実感できると思います。しばらくの間、そのまま力を加え続けると温度が下がり竹は固定されます。     この作業をすべて終え、節間の曲がりや捩れをとると画像4のようにジグザクになります。6本この状態になるころには竹は完全に     冷えて節そのものを熱しても先に曲げなおした箇所が元に戻らない状態になっていると思います。      節そのもの箇所(↑マーク)は曲がりがキツイ上に硬くて脆い箇所ですので慎重に作業を進めます。特に熱の加え加減では折れてし     まうこともありますので注意が必要です。作業の結果は画像5のようになります。      これで曲がり直しの工程が終わった・・・事にはなりません。画像6の矯正が次に待っているからです。     B節の出っ張りと曲がりはなかなか厄介な存在です。どうせこの飛び出た部分はヤスリで平らに削ってしまうから・・・といって      無視をしてもロッドにはなりますが・・・削り作業の基準面はスキン(表皮)面!ここを正確に矯正することによって削り作業      の容易さ、正確さのみならず見た目、極端な場合は強度!にまで影響が出るものと思ってください。       短い区間で曲げる(この場合は「押し込む」「プレスする」の表現が適切か)ので手先だけでは難しい作業となります。米国      某有名ビルダー(複数)は「テコ」を利用しているようですし、もう一人の某有名ビルダーはなにやら大掛かりなプレス機を使      ってこの作業を行っているみたいですが・・・手塚の場合はベンチバイス(万力)をプレス機代わりに使っています。画像8      。何のこともないただのアルミアングルのきれっぱしを一方にセットしただけの万力・・・。
6 節の真ん中、くびれた部分が前後のスキン面と平らに
ならなくてはなりません。
バイスの端〜端あたりから見ると相当盛り上がっていますね。
8 バイスの口にセットしたアルミニューム製の突起。
くわえる部分の幅8o、厚み1o。この部分を竹の
節の出っ張りを当ててプレスします。
 スキンとは反対側(カスの部分)、押し込みたい出っ張
りの反対側をヤスリで削り取ります(肉厚はたっぷり余裕の
はずですから削りすぎなど心配無用です)。
これを熱してバイスに(出っ張りをアルミの凸部に当てて)
銜えプレスします。アルミの板厚は1ミリ・・・よほど強く
プレスしない限り、元に戻る分がありますので適当な押し込
み具合になると思います。
 ただいまプレス中。右に見える薄い楔状のものは
反り返りを緩和するためのクサビです。状態によっては
必要がない場合もあります。
10 プレスが終わりました 12 この章最後の作業です。
節にヤスリがけをし平らにしたら後はカンナの出番
となります。



ここまでの作業は地道!でしたがこれからの作業の基礎となるもので・・・これからは幅数ミリ、長さ1メートル超えの狭い溝に
セットしてのカンナがけです。少しの曲がりや捩れそれに出っ張りなどあっては気持ちよく削り作業などできるものではありま
せん(苦労やいやな思いを、それに仕上がり精度の甘さなど厭わなければテキトーでも良いのですが)・・・大切な工程と考えて
ください。

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