|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
馬転坂~和深川王子~タオの峠~長井坂 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
馬転坂 朝、9時半頃に家を出、周参見に着いたのは11時を過ぎていた。 駐車場は海水浴場のそばにあり、きれいなトイレもある。 夏だと車は駐められないが、幸い今はシーズンオフ、無料である。 昼食を車の中で取り11時50分頃歩き出した。 古道は、はじめは国道を行く。 しばらく歩くと、セメントのプラントがありその工場の壁面に、「マップにない道」ということで案内があった。その案内の通りに歩いた。 公式マップでは、もうしばらく国道を歩く事になっている。 坂の上り口にはかわいい看板がある。 馬転坂と名前が書いてある。歩き始めて20分ほどでつく。 道はその名の通り、転べば危ない坂道が続く。 所々ロープが張られている。これはありがたい。 道はきつい登りだが地道なので快適である。紀南特有のウバメガシがたくさんある。 子供の頃山でよく遊んだが、こうしたウバメガシの林が続いていた。 小学生の頃、近くの山の持ち主から、薪にと木を買い切り倒してリヤカーで運んだことを思い出した。 遊びたい盛りにいやな作業であったが、今となっては懐かしい思い出である。 道はかなり急な坂なので、汗が吹き出してきた。 最近は、汗のかく運動をしていないので気持ち良かった。 坂はくねって続き、30分ほど歩くと海の見えるところにくる。 そ こになぜかいきなり観音様?がたっていて、海を眺めている。不思議なことにあとは何もない。 海は冬日を反射して輝いていた。私が好きな景色である。 古道は、つくりかけの道をしばらく歩き再び海の見えるポイントまでくる。 展望台があるというので登って見たが、風はあるがうねりがないので、冬の枯木灘らしいゆったりとした景色が広がっていた。やはり紀南の海は冬でも景色が柔らかい。 国道42号線を走る車がよく見えた。カヌーを漕いでも楽しいところである。 風は強く吹き荒れていたが、気温が10度近くあり、運動でのからだの温もりもあり、それほど寒さは感じなかった。 大辺路と中辺路ルートと違うところは、大辺路はウバメガシなどの林であるため、明るいということである。 中辺路ルートは、道そのものはいいのだが、ほとんどが杉や檜の人工林で少し味気ない。 本来、熊野古道沿いは中辺路もこんな雰囲気だったはずである。 杉や檜林を行くのがいにしえからの熊野古道の雰囲気と思われると少し抵抗がある。紀州木の国と呼ばれるのはこうした天然林が残ってこその熊野である。ウバメガシ、ツバキ、シイ、コナラと、懐かしい木々の林を抜けていく。 「熊野の森」である。 ただし、中辺路のようにいい杉林や檜林の中にいると幽玄さが一段と増し、霊地に向かっている雰囲気が歩く人を引きつけているのは確かである。 和深川王子・タオの峠 道の回りでは数は多くはないが、メジロや名も知らぬ小さな鳥が飛び交っていた。 大辺路は再び国道42号線に出る。そのすぐ左手に案内板がある。 この案内板はガイドブックと同じ地図で、見やすい。作りもしっかりしている。 道は、案内板からすぐ左に舗装された道路に入る。入り口にかわいい地蔵様があった。 道の左手にはJRの線路がある。アスファルトの道ばかりかなと思っていると、途中で標識があり、「タオの峠」へとの案内があった。歩き始めてほぼ1時間たっていた。 そして和深川の集落に入る。 熊野の里山の典型で、集落の入り口に廃校となった小学校がある。 畑にはレタスや白菜が作られていた。 石垣もそのほとんどが石を積み上げた昔ながらのもので気持ちいい。 途中たき火をしながら薪割りをしているおじさんに出会い、 「これから歩くんかい。ごくろうさんやね。どうな、ちょっとあたっていきよし」 といわれた。 紀南の訛りがうれしかったし、いつもならたき火に当たりながら四方山話をするのだが、帰りの電車の時間が気になり先を急いだ。20分ほど歩くと左手に大辺路では貴重な王子社の、和深川王子がある。 社の隣にきれいなトイレが建設中であった。そういえばこれまでの道で女性が用を足せる様なところはなかった。 昔は男も女も、皆、適当に山の中でやったのだけど、今はそうはいかない。こういう施設は大歓迎である。 王子社から10分足らずで小さな鉄の橋があり、そこからが長井坂である。
長井坂 長井坂の登り口は、JRの双子山トンネル付近にある。ゆったりとした里山の景色を楽しみながら登り口まで歩く。 日曜日であるが、子供の姿はなかった。しかしここには、子供の頃なじんだ景色がある。 薪を積み上げ石を積み上げた塀、瓦屋根。 里山の美しさと、ゆったりとした時間の流れがうれしい。古い民家には、牛を飼っていたような納屋のある家も数軒あった。 長井坂の登り口に着いたのは歩き始めてから2時間の2時50分であった。 長井坂登り口にきれいな椅子があり、おやつを食べた。 足下をきれいな川が流れている。 休憩していると、ラブ犬を連れた男性が山から下りてきた。ラブ犬の首輪にはセンサーが着けられていた。 「ここから見老津までどれくらいかかりますか」ときくと、「2時間くらいかな」と返事が帰ってきた。 ラブ犬には発振器がつけられていた。 長井坂はきれいな杉林の中を登って行く。猪垣が所々にある。 なぜ長井坂なのかというと、坂が長いからだと言うことである。長井坂という割には登りが500mほどで思ったよりは楽に登れた。 峠に着くと尾根伝いに平たんな道が続く。この道はいい。適度にアップダウンがあり、地道ばかりのため足の疲れがずいぶん違う。道は木漏れ日が差し、木々の隙間から枯れ木灘の冬日に輝く海面が見える。 道は天然林のトンネルで、ウバメガシ、ツバキの常緑樹を中心に、コナラ、ヤマザクラなど落葉樹もたくさんあり、その落ち葉が適度なクッションになっている。子供の頃こうした雑木林の中に竹や枯れ木を組んで、「城」を作り、その中で年上のガキ大将からいろんなことを教えてもらった。 近頃の子供たちはこうしたふれあいが希薄なのではなかろうか。 草木の名前や鳥の捕らえ方、虫のいるところなど、ほとんどがこうした雑木林で覚えた。 尾根道からは海が見える。 冬日は雲を突き抜けることができず枯木灘に影を落とし、すてきな模様を描いていた。 ここ枯木灘は、釣り場としても名高く磯ではたくさんの釣り師が上っていた。 途中に、「段築(だんちく)」と呼ばれる道があった。 この段築は、江戸時代以前に作られたというが、水はけがよく雨が降っても楽そうに思える。 長井坂は、歩くのが楽しい道である。 長井坂は、快適に続いていた。 もっとゆっくりと楽しみたかったが、時間を見ると5時10分見老津発の電車に間に合わないかもしれなかった。 歩みを早めた。 眼下に見老津の集落が見えてきて木々の間から見え隠れするが、なかなか近くになる気配がない。 そしてとうとう下りになった。 恐怖の下りである。最近は急で長い下りの歩きになると膝が笑うのである。 休憩しながらいけばいいのだが、時間がなかった。やっと下りたと思ったら、登り口の案内であった。 大きな看板と、長井坂の由来、そして和深川の案内にもあった道標がたっていた。 そこから平坦な道かと思ったが、下り坂はまだ続いていた。 さらに急で歩きにくい道になってきた。最後の踏ん張りどころである。 少しずつ増してきた痛みをこらえながら、下った。 見老津駅が眼下に見えてきたときはうれしかったが、ここまできて電車に乗り遅れると泣くに泣けない。さらに急いで下った。 やっと見老津の登り口に下りたのは5時ちょうどであった。登り口から見老津駅はもう目の前である。何とか間に合いほっとした。ちょうど夕暮れで、きれいな夕日が枯木灘を染めていた。 予定していた見老津発5時10分の電車に乗り、周参見に向かったが、電車だと周参見にはわずか10分で到着する。 周参見駅では水槽の中のたくさんの伊勢エビや外国のロブスターが迎えてくれる。 長井坂コースは、これまで歩いた古道のルートでも1,2をあらそういいコースである。 交通アクセスもよくおすすめコースである。 周参見の歩き始めから10km、約4時間あまりで見老津に着く。
▲ページトップに戻る
|