6月20日

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サッカー

ヤマザキナビスコカップ2回戦第2戦
鹿島アントラーズ×柏レイソル
キックオフ:19時04分/観衆:7,848人/天候:曇、弱風
/気温:20.6度/湿度:75%/ピッチ:良芝、乾燥
(県立カシマサッカースタジアム)

鹿島
4 前半 1 前半 0 0
後半 3 後半 0
39分:オウンゴール
57分:平瀬智行
69分:鈴木隆行
82分:柳沢敦
  

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 ホームでの第1戦では3−1と2点のリードを持ち、優勢に立っていた柏は、3点差を奪うために3トップを敷いて攻撃的に出てくる鹿島に対していかに受身にならずにゲームを運ぶかを、最大のポイントに置いていた。
 前半は、鈴木隆行、平瀬智行、柳沢敦の3トップを中盤の早い潰しから何とか抑え、逆に黄善洪、北嶋秀朗の2トップがシュートまで持っていく積極的な姿勢で鹿島につけいる隙を与えなかった。しかし39分、鹿島・中村祥朗のシュートを途中でカットしようと洪明甫が足を出したものの、ボールのコースを変えてしまいこれがオウンゴールに。相手に1点をみすみす与えてしまったことで、鹿島の勢いを呼び覚ましてしまった。
 0−1のスコアで迎えた57分には、ゴール前の混戦から、一度は柳沢がヘディングでボールを落とし、このクリアボールから柳沢の手に当たったとラインズマンが旗を上げてハンドのアピールをしたかに見えたが、結局主審はこれを取らず、こぼれたボールを平瀬がゴール。ラインズマンが一度は旗を揚げた判定に対して柏ベンチ、選手が抗議し、鹿島の選手がこれの仲裁に入るなどして試合は一時中断した。これで1試合目の2点差が消え試合がもう一度振り出しに戻った直後には、柳沢とライン際でボールを争った薩川了洋が、柳沢を倒すファールでこの試合2枚目のイエローを受けて退場となり、流れは完全に鹿島に。柏は数的な不利を背負って1点を取りに行く苦しい展開を強いられた。
 69分、今度は、右CKからビスマルクのボールに、コンフェデレーションズ杯カメルーン戦で2得点した鈴木に、DFが後方から完全に振り切られて、高い打点のヘディングを許す。これが決まって、鈴木にJリーグでは4月7日以来となるゴールを決められて、ついに負け越し。さらに82分には勢いつかせてしまった鈴木に絶妙のクロスを上げられ柳沢が思い切りシュート。柏・根引謙介が股を抜かれてこれで4点と、結局相手の3トップ全員に得点を奪われる守備の甘さで大量点を許してしまい、試合は1戦目との通算でも2−4と鹿島が準々決勝への進出を決めた。
 敗れた柏は、黄、北嶋の2人で11本のシュートを放ちながら1本も決めることができなかった。この試合で、Jリーグが開幕した93年から実に8年間、鹿島スタジアムでの勝利を挙げることができないまま。またも不名誉な記録を更新してしまった。また16日のJ リーグ磐田戦でも敗れて第1ステージ優勝の可能性も消滅しており、カップ、リーグで敗退した沈滞ムードをいかに立て直すかが重要な課題となりそうだ。

試合データ
鹿島  
19 シュート 16
13 GK 16
6 CK 5
18 直接FK 14
3 間接FK 4
0 PK 0
西野朗監督「アントラーズが3トップで攻撃的に出て来るであろうことは分かっていた。後半、レフリングにうちの選手は動揺していたと思う。後半の中盤当たりで……。あれで数的な不利を背負うことになった。うちは、ロスタイムもゴールを奪いに行っているし決して消極的に2点を守ろうとしたわけではなかった。(柏に不利な判定だったのではと聞かれて)それについて、ここでは話したくないが、何か強く感じるものはある」

トニーニョ・セレーゾ監督「試合における目標がはっきりしてい分だけ、選手がそれによく集中してくれたと思う。3点を取って勝つことは簡単な目標ではなかったが、それでも選手は本当によくやってくれたし、満足の行くゲームだった。3トップは、非常に攻撃的でその分リスクをおかしていかなければ行けない部分もあったが、全員がよくカバーをし合った。これで本山も復帰してくれて、今後のリーグにもいい弾みになった」

鹿島・秋田豊「3トップとはいってもやみくもに攻めるのではなくて、バランスを取りながら、中盤は運動量をもの凄く増やすなど、そうやって最後まで守りの意識をもったことで、どこにも穴があかなかったのではないか。試合の結果を見ても、アントラーズはもの凄く強い、実力があるチームだと思う。本来は延長で勝つ予定だったんですが……。これでも本山も戻って、怪我していたメンバーもどんどん戻ってくる。強いアントラーズも戻って来ると思う」

この日の3点目、2試合通算での勝ち越しゴールを決めた鈴木隆行「あのシュートは枠を外れないようにしたもの。きょうはリスクをおかして攻めて行くことを心がけていたし、3トップで攻めづらいかなと思ったがスムーズに動き合えた。自分の調子というよりも、レイソルの調子があまり良さそうではなかったと思った。まあ自分の出来もきょうはパッとしなかったんで、しっかりやります」

21日に発表されるキリン杯日本代表メンバー入りが有力視される柳沢敦「きょうは3点入れないとならないとわかってしたし、チーム全体も自分も、戦う姿勢を持ち続けることができたのが良かった。点を取るといっても、一人の力ではどうしようもないですから。代表?それは監督が決めることですから」

1戦目との通算で同点に追いつくシュートを決めた平瀬智行「たまたまこぼれてきたボールをシュートしただけですから。でも3点取らないと勝てない試合というのも、プレッシャーよりも楽しさがあった」


「3トップか、守備的FWか」

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 試合前、西野監督が「こういう2点リードのゲームは非常に難しい。なぜなら、0点で守って逃げ切ってしまうのか、それとも積極的に行って1点を奪ってダメを押そうというのか、その意識付けがチームの中で少しでも狂ってしまうと、あっという間にひっくり返されてしまうものだからね」と話していた通りの試合。嫌な予感ほど的中してしまうものなのだろう。
 もちろんミーティングでは1点を取るほうを選択し、このリードもないと思って、ともう一度積極的に臨もうとしていたという。しかし目前の2点リードは、時間の経過とともにまるで「金縛り」のような状態をもたらし、結局は前線と後方の微妙なバランスの崩れがオウンゴールをきっかけに破綻をもたらしてしまったではないか。
 2点をもらっていたはずの柏が守備的になることを怖れて中途半端に攻撃に出て行こうとしたことに対して、鹿島は、3トップの超攻撃的な布陣を引きながらも「守備」を忘れなかった。この興味深い逆説的な結果は、秋田の言葉が象徴する。
「3トップとはいっても、前から前からとしっかりボールを追って守ってくれたことが大きかった。3人で守って走る分、中盤の運動量は増えて行ったが、結果的にはあの守備的な意識が、バックラインを支えてもくれた」
 本当に欲しいものを得るためには、あえて遠回りをする、はやる気持ちというものをどうコントロールするかという点において、鹿島は柏よりはるかに経験を積んで、それを活かしていた。ともすれば3トップで「前がかり」だけになりそうな中で、前線3人が見せた守備に、実は大量点の理由が潜んでいるのだとすれば興味深い。
 それにしても柏は、カシマスタジアムでJリーグが始まった93年から、5戦してただの一度も勝つことができないでいる(柏がJに昇格したのは95年。それ以前にはナビスコ杯での対戦がある)。同一カードとしては8年もの間、完全なアウェーでの白星がないのも珍しい記録である。洪のオウンゴールも、不運以外理由は見あたらない。リーグでは磐田に、ナビスコでも鹿島に、それぞれ敗れた柏は、第2ステージに目線を移ざるを得ず、23日の名古屋戦は、あらゆる意味で正念場となる。



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