2月13日

※無断転載を一切禁じます


柏レイソル熊本キャンプ
(熊本県総合運動公園)

お知らせ

増島みどり著
シドニーへ
彼女たちの
42.195km

発売中
詳細はこちら

 鹿児島・国分からキャンプをスタートしている柏はこの日、FWの北嶋秀朗を加えた若手で編成したメンバーでKリーグ昨年最下位(10位)の現代と対戦した。試合はMF杉山新が後半に得点し1−0で勝って九州キャンプ最終日を締めくくった。
 現在、昨年12月6日に左肩の手術を行なった黄善洪はすでにチームに合流しているが、まだ別メニューで、新戦力の柳想鐵、主将の洪明甫はまだオマーンでの韓国代表遠征に参加中のために、今季の「青写真」と呼べるほどチームの様子は明らかにはなっていない。しかし市立船橋から加入した中澤聡太、永井俊太らユース代表も経験している若手の新戦力、また中堅選手たちの安定度も加わり、今年のリーグ優勝候補筆頭にも名前が上がっている。
 柏は14日、福岡に移動してアビスパ福岡と練習試合を行い、この合宿を打ち上げ。15日には韓国代表の洪と柳が帰国し、18日から合流する。

練習試合を終えた西野朗監督「合宿最後という状況の中でチームがタフで厳しい局面に対しても、よく戦っていたと思う。中澤、永井は若いのにサッカーをよく知っている。北嶋にはあまり頭を使う(悩むの意味)ことをするなと言ってあるし、まだまだパフォーマンスは小さいだろう。ただ、今の時期が良くてもどうしようもないし、問題視していない」

ノーゴールながらも、ポジティブな姿勢を見せた北嶋「ここいくつかの試合形式の中ではもっとも良かったと思う。確かに色々と考えたし、考えすぎのケースもあったと思うが、今日試合をしながら、監督に『もっと力強く、シンプルに』と言われた意味をつかんだ気がする。原点に返って、ポストプレーの精度を高めることに専念したいし、できると思う」


「考える脚もまた良し」

 自分は、FWとしてもっとほかにも担うべき役割があるはずだ、という真面目でしかも勤勉なFWである北嶋らしい責任感が、事のはじめだったようである。日本代表での合宿を昨年終えてチームに戻ってから、昨シーズンのリーグ戦で18得点を奪った北嶋は悩んでいたという。
「もっとドリブルで切れ込んでからさばくとか、前を向いてパスを出すとか、本当に色々とやるべきことが多いように思ったんです。そうこうやっているうちになんだか迷いが出てきてボールを受けるにも、一々持ってから脚が考えちゃってるんですよね」
 現代との練習試合でも得点はできなかったが、彼本来の持ち味である「ポストプレー」をシンプルにシンプルにこなそうと努力をしている様子が充分に伺えた。そのことを得点の有無以上の手ごたえとして本人も噛み締めていたようだ。
 12日に西野監督と1対1で話し合った。監督は「頭が重過ぎる」と助言したという。スペースへ飛び込むとか、ドリブルをするとか、本来の持ち味ではないことに責任を感じる必要はないというのが監督の簡単なアドバイスである。
「原点というか、頭でだけ考えても仕方ない。脚も動かないし、考えちゃう。せっかくフィジカルがいいのだからやはりポストプレーを誰よりも正確にやることを第一に考えたいです。ふっきれました」
 無得点という結果とは裏腹に、試合後は笑顔をのぞかせた。
 北嶋だけではないはずだ。現在キャンプ中のどの選手たちも、程度や種類の差はあれ、小さな悩み、些細な不安、昨年の活躍や逆に不調を自分の中でどう消化するかのエクスキューズを作る面、こうした精神状態と戦わなければならない。
 シーズンが始まってしまえばどうでも良いように思える悩みや、不安は、まったく姿を見せることなく立ちはだかる新しいシーズンへの期待に比例するはずだ。フィジカルを鍛え、戦術を整えるだけではない。一進一退、一喜一憂する精神と付き合う日々を、「プレシーズン」と呼ぶのである。
 北嶋は14日の福岡戦にも出場する。

BEFORE LATEST NEXT