2月1日

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日本陸連強化専任委員会
(渋谷区・岸記念体育館)

お知らせ

増島みどり著
シドニーへ
彼女たちの
42.195km

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 日本陸連強化専任コーチ会議が行なわれ、会議の後に、シドニー五輪で金メダルを獲得した高橋尚子(積水化学)を育てた小出義雄監督が、長距離の監督、コーチ陣を前に講演を行った。

「世界一の物を食べろ、ケチケチするな」

 お互いがライバルであり、しかも一緒に五輪出場を争った監督、コーチ陣を前に小出監督が講演を行なうこと自体、ユニークな試みであったはずだ。まして、1月28日の大阪国際女子マラソンで2時間23分11秒の初マラソン最高をマークした渋井陽子(三井海上)を指導する、鈴木秀夫監督にいたっては、小出監督の教え子。「(鈴木監督の)顔を見たら、話せなくなっちゃったよ」と、小出監督も照れくさそうだったが、話のほうは絶好調のまま1時間と少しを快走した。

 高橋のためにボルダ-に一軒家を購入。佐倉の自宅を担保にいれて銀行から借金した話をあらためて披露したが、「本が売れて、印税が入って、おかげさまで返済できました」と頭を下げると、会場からは拍手と爆笑が湧き起こった。
 中でも、「食べる」ことに関する話は、専任コーチのレベルよりも、もっと若い年齢を教える指導者にこそ重要なものだったかもしれない。

「もちろん、たくさんの油(体脂肪)持っては走れない。けれども、練習の基本は食べること。高橋は大食いだが、あの強い内臓があったから練習も踏めたし、最後までばてなかった。女の子に食べるな、というのは無理な話で、食べろ、と言わなくてはならない。それから体を絞るのは、指導する側の課題だ。世界で一番いいもの、おいしいものをシドニー前の高橋には食べさせた」

 高橋の大食いは有名で、練習を休んでいる間に7キロほど太る。しかし、それが何よりの休養になるのも事実で、太った高橋を揶揄する報道も出始めているが、過酷なまでの練習で絞ることを前提とするとき、いかに無駄な肉をつけておくかは重要である。
 もちろん、年齢とともに体重は落ちにくくなるが、それでも多くの女子マラソンランナーは本当によく食べる。

 高校生の長距離選手も、シドニー五輪での女子マラソンの活躍によって飛躍的に伸びている。しかし一方では、極端に体重を減らす学校もあり、30キロ台の選手も多い。また実業団でも摂食障害を抱えるきっかけになるケースもある。高校駅伝が最終目標なら問題はないが、食べないことは強くなることとは対極にあることを、高橋、小出監督はもっと啓蒙してもいいのかもしれない。
 高橋は、4日の丸亀ハーフに出場、5日に昨年シドニーに向けて始動した徳之島で合宿をスタートさせる。メディアの要望にこたえて走り回るのは、ここまでとなる。


東京ヴェルディ1969お披露目パーティ
(新宿区京王プラザホテル)

 ホームスタジアムを東京都武蔵野スタジアムに移転した東京ヴェルディ1969のお披露目パーティが約600人もの招待客を集めて盛大に開かれ、移籍してきた三浦淳宏や小倉隆史、前園真聖らも揃って出席。ここ数年、縮小しながら財政を立て直して来ただけに、久々に「ヴェルディらしい」華やかな雰囲気は漂っていた。

「並みで終わりたくない」

 サッカー選手にもっとも求められる素質とは、何だろうか。
 華やかなパーティ会場の片隅で、トレードマークの髪の色を元に戻した三浦淳宏はこんな話をしてくれた。
 今シーズンの移籍の中でも、もっとも電撃的なものだったといえる、横浜からの移籍について最後に踏み切った理由は「並みで終わりたくなかったから」だという。
「26歳になります。マリノスのほうが優勝には近いだろうし、クラブへの慣れややりやすさもある。もちろん代表についてだって、そのほうが近いかもしれない。でも、今年は自分にとって賭けをする1年だと思ったんです。確率の低いほう、リスクの高いほう、それにかけてみようと思った」

 三浦は、今年の高校選手権でも優勝した国見高校出身で、小嶺監督の教え子である。監督は以前「私が指導した中でももっとも真面目で真摯な選手」と話していたが、今回の決断にもこうした面がうかがえる。
「一言でいうと……」 
 三浦は言った。
「並みで終わりたくないんです。まあまあいい選手、で終わりたくないんです」
 26歳の決断は唐突で、しかも衝撃的だった。しかし決断の理由は、サッカー選手にとってもっとも大事なものを選んだに過ぎない。

 ある一定のレベルを超えたプロサッカー選手にとって肉体的なパフォーマンスと同じように重要な素質とは何であろう。
 それは「並み」とか「平凡」とか「そのほか大勢」という発想を嫌う個性にあるのではないかと思う。それがなければ、イマジネーションも、人を驚かすようなプレーも不可能だ。三浦の「並みを嫌う」発想に期待したい。その先に、海外移籍のチャンスも2002年も見えるはずだ。

    三浦淳宏
    1974年7月24日生まれ(26歳)、大分県出身。176cm/69kg。
    国見高校→青山学院大学→横浜フリューゲルス→横浜F・マリノス
    代表歴:1999南米選手権日本代表、シドニーオリンピック日本代表、アジアカップ日本代表
    日本代表:13試合1得点
    出場記録(通算):リーグ戦200試合29得点、カップ戦36試合3得点、天皇杯18試合3得点

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