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三井の、なんのたしにもならないお話 その三十四

(2013.05オリジナル作成/2021.04追加/2024.03サーバー移行)



 
 
私のカメラ遍歴(その八) こっそり店あけ編


 
 
 
 実は、「性懲りもなく」またデジカメを買ったのです。
 
 ただ、これは具体的な必要あってのことで、しかも払った金額はなんと一万円以下でした。

 「具体的な必要」というのは、実は一年あまり前から、日々の食事の内容を撮影し、記録するようになっていたのです。別に、医者から命じられたというわけでもなく、もちろん趣味あってでもなく、記録すればまあ、飽きもせずおんなじようなものを食べ続けているなとわかるくらいです。COVID-19パンデミックのおかげで、外出も外食も大幅に機会がなくなってしまったので、なおのこと「相も変わらぬ」三度三度の食事です。
 それを医者というか、栄養士に見せる羽目になったのは、ことの悪化を感知してのことか、単なる偶然のなせる技か、それは口をつぐみましょう。

 
 それでこの撮影には、当初手持ちの、キヤノンA1400を使いました。それを前記のトラブルで引退させねばならなくなり、代わりにA1200を使ってきました。これは悪くはないし、操作は簡単だし、なのですが、そんな上等なカメラでもないうえ、乾電池使用なので、こういった日々の利用には問題なきにしもあらずです。UM3乾電池をそのつど買っていったら、相当たまったものではない負担になるし、資源の浪費とも思えるので、充電池を使うようになりました。それでまあなんとか、と言いたいところ、意外に持たない、すぐに電池切れ表示が出るようなこともあるのです。これは温度などの使用環境や、連写の早さなど影響するように思われるのですが、うれしくはない事態です。
 
 そういうこともあるので、サブとしてキヤノンのPowershot G12も持ち出したのですが、これはもっといけません。図体が相当でかく、重く、食卓の邪魔になるうえ、最悪なのは、これも記したように、背後の液晶画面が映ったり消えたりするのです。故障の部類です。
 食卓上の料理などを撮るというのは、真上から俯瞰して、ですから、ファインダーをのぞくという姿勢自体が無理、結局液晶画面の表示頼りになります。画面構成など考えもしませんが。でもそれが映らないのでは話になりません。しかもこれのレンズは35mm換算28mm相当と称していながら、食卓のうえをカバーするにはかなりの距離を見なくてはならず、いまどき不便極まりないのです。A1200も28mm相当となっていますが、ずっと低い位置でカバーできるので。これはA1200の撮像素子が1/2.3型なのに対し、G12の撮像素子が1/1.7型でなまじ大きいせいでしょう。しっかり画像を収めるにはベターでも、単なる記録用にはそれは要らない性能です。

 

 そこで考えました。毎日三度三度撮り続けるのなら、これ専用のカメラを用意してもいいんじゃないの、と。しかしまた、こういった用途に最適な、簡単かつ小型軽量のコンデジというのは、スマホに真っ向食われてまさに絶滅の危機のようです。しかも、こんな記録用途だけの目的で、ウン万円もするものなど買う気になりませんし、買えません。
 
 というわけで、懸命に探し、選択肢はいまや一つのみという結論に至りました。それがキヤノンのIXY200という機種です。いまだ店頭にあるほとんど唯一の機種らしいのですが、まあ1万5千円程度で買える、外見は至って簡単シンプル、これならば、という結論になりました。それでも一応ちゃんと写るはず、という理解が前提です。
 
 これは唯一いまも店頭にある製品、としましたが、それでもいまの年金生活・引きこもりの身では厳しいので、中古品を探しました。そしたら、ドンピシャのが出てきたので、それっと飛びつきました。このIXY200、ランクAで9,998円、送料など込みでも1万円ちょっとです。新品との差は僅かではあるものの、狙いにあえばいいじゃないですか。
 ということで、すぐに発注、代金送金し、すぐに送られてきました。届いたものを見れば、殆ど新品同様の品です。いじった跡も見られない、あるいは店頭展示品の類でしょうか。箱はなぜか若干くたびれていましたが。

 レンズF3.2-6.9、5.0-40.0mm[35mm換算28-224mm]
 シャッター速度1〜1/2000秒
 撮像素子 1/2.3型CCD 2000万画素 ISO100〜1600
 ストロボ内蔵
 静止画JPG、動画MOV記録(SDカード)
 大きさ 95.2 × 54.3 × 22.1mm
 重さ126g(バッテリー/メモリカード込)

 この軽い、薄いというのが凄いですね。A1200とも比較になりません。そっちは乾電池使用だったので、174gと、ある程度の大きさ重さは仕方ないですが。
 画像記録形式はJPGだけで、もちろん構いません。ともかく、撮って残せればいいのです。
 

 さて、手に取り使用してみますと、すぐにわかったのは、ともかく「いじらせない」思想に溢れていることです。「完全オート」(全自動撮影と説明書には記載)の設定になっており、それを解除しても、再びスイッチを入れれば、また「オート」に戻ってしまう。それでもまあ、毎度の食事記録用だからいいか、と割り切ろうとしても、この「オート」の中にストロボの自動発光も入っているのです。記録用ですから、これまでも毎回ストロボをつけて撮っていました。それなのに、こんどは昼間の室内だとストロボがつきません。ストロボ設定を変えようとしてみたら、なんと「オート発光」と「切り」しか出ません。呆れました。これは失敗だったか、と焦りました。

 こうした「勝手に完全オート」を、説明書では「カメラに不慣れな方が撮影するときに誤った使い方をしないよう」FUNC/SETボタンなどが「使えないように設定」されている(安心オート)と堂々記しているのです。すんばらしいご親切ですね。だいたい、ついてきた薄っぺらな「説明書」にはストロボ関係の操作はおろか、重要なことは殆ど書かれていません。ただ、ここは焦らず、近年各メーカーは分厚い説明書など添付せず、それは「マニュアルをダウンロードしろ」としています。その伝です。こんどは呆れるほど厚いマニュアルで、探すのも大変ですが、まあありました。全体の操作モードを「使えるようにする」には、FUNC/SETボタンの上部矢印を何度か押して、「P」が表示されるまで頑張れ、とな。だいたい、実物のボタンにはそんな矢印は書かれていないんですけど。
 
 苦労して、なんとか「オート」状態を脱し、「P」プログラム状態にたどり着くと、上記のストロボの常時発光も選べるようにはなります。そこは安堵できました。けれどもこれでわかったのは、このカメラの露出関係操作には、「オート」と「P」しかないということがまず第一です。
 もっとも、近年コンデジでは「いろいろな撮影モード」というのは回避省略される傾向のようで、キヤノンのIXYではオートとP以外なくなってしまった模様です。そして、オートに粘着しろ、余計なこと考えるな、とな。Powershot系列では、まだA優先、S優先、Mマニュアルといった選択も可能のようですが。
 
 
 なお、これでよく調べてみたら、A1200でもストロボオート発光しか選べない「AUTO」モードというのもありました。ただ、これはボディ上部のモードダイヤルで選ぶ方式だったので、私はそれでPモードをいつも使っていたわけです。そうすれば、ストロボ常時発光もすぐに選択できます。20年近く前のIXY30では、撮影モードとしてちゃんとオート、P、A優先、S優先などがまず選べたはずですが。
 
 本機には基本的に「手ぶれ補正」はありません。逆戻りのようですが、まあ私の用途なら、それは要らないわけでもあります。ともかく「用途特化」、三度三度食卓のうえを撮って記録するのみ。持ち出してあれこれ撮ろうというのなら、不満が出るであろうと経験的にはわかります。型番だとIXY200の改良型となるIXY210には「手ブレ補正」とカタログにも大書してあるので、そっちのほしい方はどうぞ、でも店頭価格で5千円以上も高いんですからね。
 

 それにしても、です。こんなお手軽デジカメでも動画も撮れるのです。それはハード的にはなにも変わらず、要らず、ソフト的にも静止画も動画も処理は同じ(ていうか、要するに動画で撮っていて、一部を切り出すだけ?)、ということになるのでしょうが、それ以上に、前記の「完全オート」、つまりなにもいじらせない、選択もさせない、シャッターボタンを押しさえすればいい、というのに徹した「思想」ですよ。無論それは、これだけ須磨甫が普及し、ともかく向けて押しさえすれば撮れる、それでピントも露出も合うどころか、背景ボケだのコントラスト強調だの、みんなお任せで済んでしまう、この「便利さ」に対抗するには、デジカメも同じようでなくちゃ買ってくれない、そうしたメーカーの思いがあふれている観です。その上で「差別化」するには、負けじとあれこれ盛り込まないといけないようです。

 実にシンプルな付属の「説明書」で、相当にページを割いているのは、カメラが「判別して」、被写体の人、その動きや位置、背景との関係などを「自動設定」してくれるというチョー便利さです。それどころか、「勝手にズーム」までしてくれるようです。「顔が一定の大きさに保たれる」よう、オートズームするんだそうで。さらには、Pのなかでも、ポートレートだ、顔セルフタイマーだ(人数が増えたら撮るんだそうで)、「花火」とか「ジオラマ風」「トイカメラ風」など、あれこれいじる、というより「いじられる」設定も可能とのことです。
 すごいでしょ、須磨甫に負けないでしょ、という声が聞こえてきそうですが、まあなんというのかねえ。実際にそんなの「使いこなす」方がかえって面倒にも思えるのですが。「シャッター押す」という、撮り手の唯一最大最重要の操作も、「おまかせ」、確実、勝手にベストタイミングとなる訳なのでしょうか。まあ、人間のロボット化?



 つまり、世の大部分、ていうか99.9%の人たちには、「どう撮るか」なんてまったく関心の遥か彼方、それどころか「なにを撮るか」さえも相当に曖昧なのです。それに比べ、意味を持つのは、「あるときに」「その場にいた」、「その場の情景や何かを画像で記録した」ことなのです。まあ、「集合記念写真」なんか最たるもので、ある機会に、ある場所に、ある人たちが居合わせた、それが記録され残されればいいので、「どう撮るか」どころか、「どのタイミングで撮れるか」さえ意味を持ちません。んなのカメラなりスマホなりにお任せできればザッツOKです。同様に、ハプニング的に、天然現象や、絶景や、事故や、動物やらに出くわし、それを画像に収められたら大成功、じゃあそのためにいつでもどこへでもデジカメ持ち歩いたりしますか(私のように)。んなひと、まあ一〇万人に一人くらいのもので、「みんな持ってる、持ち歩いている」スマホ向ければ撮れてしまい、機械の方がいちばんいい瞬間を綺麗に加工して残してくれる、それで万々歳じゃないですか。
 こうしたことは、いまどきのテレビの「旅番」「食べ歩き番」を見ていれば、わかりすぎるくらいによくわかります。例外的なのは、デジイチ胸にぶら下げている◇ンドイッチマンのT氏くらいだな。しかし、みんな持参のスマホで、「決定的瞬間」を収めているんですよ。
(そのT氏が、某CMで「お任せパック」という至便な引っ越し依頼を「でまかせパック」とぼけてみる、というのがありますが、あまりに意味深長)


 それだからこそ、このIXY200を離れて、つらつら思うに、デジカメメーカーが須磨甫と競う、同じような機能や特徴を盛り込み、まさに「誰にでも」「お任せで」すごい絵が撮れる、そういった思考に徹していること、それ自体すでに「負け戦」じゃないのかと、チョー老人は独りごちするのですが。
 




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