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私の補聴器使用法

2014.10.02. 掲載
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目次
1.補聴器が必要となった状況
2.人間の聴力
3.補聴器の種類
4.補聴器の原理と構造
5.補聴器の調整
6.補聴器に障害を与える条件と対応
7.補聴器の保管と手入れ
8.補聴器から出る症状と対応
9.あとがき

1.補聴器が必要となった状況

私は現在78歳になる。70歳ごろから耳が遠くなってきたが、老化現象だからと気にしないでいた。しかし、昨年末ごろより、老化が急速に進み、視力の低下が著しく、4月には両眼の白内障の手術を受けた。

聴力も同様で、孫との会話が不自由となり、7年前から続けているコーラスでも、自分の歌っている声が変に聴こえる。コーラス仲間はベートーヴェンを引き合いに出して慰めてくれるが、耳の遠くなった人間がコーラスをするのはマンガだろう。会話もうまくいかないので、そろそろ辞め時かもしれない。

視力は、4月に受けた白内障の手術が大成功で、見える世界が2割がた明るくなった。聴力も、補聴器が進歩しているので、改善できるかもしれない。そう思って、5月に大手前病院の耳鼻科を受診した。以来、ここの補聴器外来で補聴器を試用して選択し、その調整を数回受けて来た。

聴力検査を受けた後、最初に試用したのは耳かけ型で、この装着でかなり聴力は改善した。眼鏡を掛けている私には、耳かけ型は不便なので、同じ機能の耳あな型を選び、私の耳孔の型どりをしてオーダーメードの耳あな型補聴器を装着したのが受診4回目の7月3日である。

その後、この耳あな型補聴器で調整を受けながら試用してきたが、聞こえが悪い。8月末からロシアへ旅行したが、補聴器を着けてもツアーのメンバーと会話がうまくできなかった。昨年までは会話を楽しむことができたので気持ちは暗い。

旅行から帰って最初の受診日の9月11日に、担当の言語聴覚士(ST)に補聴器の不調を具体的伝えた。それに対して、補聴器の先端にある音声出力部分が詰まっていて、音が出ていないことを指摘された。

それを聞いた瞬間、補聴器不調の原因を理解し、大喜びで何回もお礼を述べた。思ってもいなかったことを知った瞬間、小躍りして喜んだ経験が過去に2回ある。どれも他人からは、何故そんなにバカ喜びするのかといぶかられるようなことだが、今回が3度目だ。(1回目2回目

先端の音声出力部分を取り換えてもらうと、耳穴に挿入する際にハウリングがする。これまでこのピーピー音はなかった。装着すると嘘のようによく聴こえる。もう嬉しくて、ルンルン気分で帰宅した。

家で大声で歌ってみると、高い音が出ている。記憶にある音とは違うが、それは仕方がない。これなら何とか満足できる。気持が明るくなり、幸福感を存分に味わった。若いころはもっと良い音で聴いていたのだから、あのころは幸せだったのだとつくづく思う。

長年眼鏡を使ってきたので、補聴器も、眼鏡のように着ければ聴力が良くなるという気持ちがいくらかあったのだろう。今回の補聴器不調の原因は音声出力部分の詰まりで、詰まったのは耳垢だったのだが、これがきっかけで、補聴器は眼鏡とは比較にならぬ複雑な機器であることを認識した。

そこで、補聴器の構造や機能などの情報を調べ、その性能を維持するための方法をまとめることにした。

補聴器を見限ろうと思い始めていたところだったが、このまとめを書いたあと、その考えをキッパリ捨てた。補聴器は捨てたものではないどころか、非常に役に立つ文明の利器だと今は思っている。


2.人間の聴力

●人間の聞こえる周波数

20〜20,000Hzとされているが、これは20歳程度の場合で、幼児は30,000Hz以上まで聞こえる。

●話し声

男性
下限は120〜200Hz
上限は、破裂音や「さしすせそ」などの摩擦音も含むなら、20,000Hzくらいまで出ている。

女性
下限は200Hz〜300Hz
上限は男性と同じで20,000Hzくらい。

●楽音の周波数

ト音記号のラ  (A2):110Hz  (A3):220Hz  (A4):440Hz 音叉の音  (A5):880Hz

音楽的声域
  ソプラノ 260Hz -1100Hz
  アルト  200Hz - 700Hz
  テノール 150Hz - 470Hz
  バリトン 110Hz - 390Hz
  バス    80Hz - 300Hz

●標準純音聴力検査

オーディオメーターを使って、125Hzから8000Hzまでの7つの周波数において、聞こえないレベルから音を強くしていき、聞こえ始めた時点で合図をして、その値をオーディオグラムに記入する。その際、気導聴力と骨導聴力の両方を測定する。

○は右耳(気導) ×は左耳(気導) [ は右耳(骨導) ] は左耳(骨導)を示す。


図1.オーディオグラム(聴力図)

●年齢別平均オーディオグラム

15〜19歳のオーディオグラムを0dB(正常値)とした場合の、各年齢層における聴力の変化を示す。

加齢による聴力低下は全周波数領域に見られるが、特に高音域で著明で、低音域では軽微である。
加齢による聴力低下は、20歳代から認められるが、50歳代までは軽度で、50歳以上になると著しくなる。


図2.聴力の加齢変化

●老人性難聴

聴覚に関わる細胞数の減少・老化により、聴力が低下する。図2で見られるように、通常は50歳を超えると聴力が急激に低下し、60歳以上になると会話の面で不便になり始める。

加齢による聴力低下は高音域で著しく、そのため子音を含む人間の言葉が聞き取りにくくなり、音は聞こえるが、ことばが分からない。音楽も高音域が聞こえ難く、若いころと違った音色に聞こえる。

しかし、加齢による聴力低下は個人差が大きく、40代で補聴器が必要になる人もいれば、80代を超えてもほとんど聴力が低下しない人もいる。

●平均聴力レベル

これは、人の会話に必要な、500Hz〜4000Hz の平均の聴力を計算したものである。

算出式はいろいろあるが、障害者手帳の申請に使われているのは以下の4分法で

   (500HzのdB+1000HzのdB×2+2000HzのdB)×1/4

●平均聴力レベルによる難聴の程度の分類

正常  0dB〜25dB  聞こえに問題はない
軽度 25dB〜40dB 小声だとやや聞き取り難い
中度 40dB〜70dB 普通の会話の聞き取りが困難
高度 70dB〜90dB 耳元の大声なら聞こえる

分類は他にもいろいろあるが、このくらいの大雑把な把握で良さそうだ。

●語音聴力検査

補聴器を装着する最大の目的は、人の話を聞き取るとことである。音が大きく聞こえても、ことばが聞き取れないのでは補聴器の意味がない。語音聴力検査も体験したが、その結果を補聴器の選択や調整に利用するには余り有効だとは思えなかった。


3.補聴器の種類

●装用部位による分類

耳あな型
 CIC型 (CIC) Completely In the Canal
 カナル型 (ITC) In The Canal
 耳あな型 (ITE) In The Ear
耳かけ型 (BTE) Behind The Ear
箱型(ポケット型)

現在日本で使われている補聴器の比率は、耳あな型が約60%、耳かけ型約30%、箱型が約10%となっている。米国では耳あな型が多くて80%、欧州各国では耳かけ型が多く65%のようだ。

また、デジタル補聴器の使用は約60%、アナログ補聴器の使用は約40%といわれている。

●世界6大補聴器メーカー

デジタル補聴器の心臓部であるICチップを開発できるメーカーは世界で6社に限定され「世界6大補聴器メーカー」と呼ばれる。

その6社とは、オーティコン(デンマーク)、ジーエヌリサウンド(デンマーク)、ワイデックス(デンマーク)、 シーメンス(ドイツ)、フォナック(スイス)、スターキー(アメリカ)である。

私は、眼鏡をかけていて耳かけ型は不便なので、スターキーの耳あな型でカナル型とCIC型の中間サイズである ビーンズ312 をカタログから選んだ。(図3)


図3.私が選んだ補聴器のタイプ


4.補聴器の原理と構造

●デジタル補聴器の原理

マイクで音声を集めて、このアナログ音声信号をアナログデジタル変換回路を通してデジタル信号にしてし、アンプでこのデジタル信号を増幅し、デジタル-アナログ変換回路を通してデジタル信号をアナログ音声に変え、レシーバーで音を発生させる。これを小型化したのが補聴器である。


図4.デジタル補聴器の原理 模式図


●デジタル補聴器の構造

デジタル補聴器の構造は、原理で示した部分のほかに電源となる「バッテリー」と、耳垢などで音の出口が詰まるのを防ぐ「フィルター」が付属する。

そのほか、耳あな型補聴器の場合は、補聴器によって耳あな(外耳道)が詰まってしまわないように、外耳道内と耳の外との空気を自由に行き来するための通気口「ベント」が付けられている。


図4.耳あな型デジタル補聴器の構造 模式図

私が使っている補聴器の外観を概略図(図5)で説明すると、「音声入口」から入った音は補聴器の内部で加工され、音声出口の外側に付けられた「フィルター」を通して、耳の奥にある鼓膜に伝えられる。

補聴器の電源となるバッテリーは「バッテリーホルダー」内に収められ、「グリップ」で開閉できる。
この開閉は「電源ON/OFF」と兼用になっていて、完全に占めるとON、少しでも開くとOFF になる。

通気口「ベント」は耳内の、「音声出力フィルター」のすぐ横にあるものと、「グリップ」のすぐ下にあるもの2個があり、この二つは通気管でつながっている。

小さな補聴器なので、取り出すときに便利なように「テグス」がついている。挿入する時にも支えとして役立っている。


図5.私の使っている耳あな型デジタル補聴器外観の概略図(左耳用)

フィルター(filter)

私の使っている耳あな型デジタル補聴器の実物外観を写真(図6)でご覧いただく。100円貨と比べると、外耳道にスッポリ入る大きさであることがお分かりいただけると思う。

左の写真では「音声入口」、「バッテリーホルダー」と「グリップ」、「テグス」、外側「ベント」が見える。右の写真では、「フィルター」、その下に内側「ベント」、「テグス」も写っている。

 
図6.私の使っている耳あな型デジタル補聴器(左耳用) 青い輪の先の白い輪がフィルター

ルーペを使ってフィルターを拡大して観察すると、外径2mm、内径1mm ほどのフィルターに、18個の小さな孔が開いている。この穴がレシーバーからの音を通し、内部への耳垢の侵入を防いでいる。


図7.フィルター拡大図

ベント(vent)

型どりをして作った耳あな型補聴器は、外耳道にピッタリ合い、補聴器より内側と補聴器の外側とが完全に遮断されることがある。そうなると、音が聞こえ難くなるだけではなく、閉塞感を感じる。また、この状態で声を出すと、自分の声が鼻にかかり、こもった声で聞こえる。これを外耳道閉鎖効果という。

この外耳道閉鎖効果を軽くするために、補聴器の内側(鼓膜側)と補聴器の外側に孔を開け、その間を通気管で結んだのがベント(vent)である。

ベントは短い程、口径が大きい程、その効果は高くなるが、ハウリングも出やすくなるので、聴力と補聴器の出力を見極めて設定されている。


図8.補聴器の内側と外側のベントの間にナイロン線を通した

バッテリー(battery)

補聴器に使われる電池はボタン型の空気電池(正しくは空気亜鉛電池)で、(+)極面に無数の孔が開いており、ここから酸素を電池内部に供給する。

酸素を遮断するためのシールが(+)極面に貼られているので、これを剥がしてから使う。ただし、シールを剥がしても直ぐには電力は得られず、約1分を要する。

一度シールを剥がすと放電が始まり、使わなくても消耗する。補聴器を使い終わったら、バッテリーケースを開け、電源を OFF にしておく。

寒い場所で使用すると著しく電池性能が低下する。また、湿度は60%が最適であり、それ以上でもそれ以下でも電池寿命は短くなる。二酸化炭素に非常に弱く、電池寿命は短くなる。

補聴器装着中に空気電池の電圧が下がると、電池交換お知らせ音(ピーポーパーポー)が鳴る。

寿命が切れた空気電池は、電池のプラスとマイナスをセロハンテープなどで絶縁してから、空気電池を販売しているボタン電池回収推進センターの回収協力店の、ボタン電池回収缶に入れる。


図9.バッテリー 右は空気電池の(+)極面と、この面に貼られていた空気遮断シール(茶色)


5.補聴器の調整

補聴器を選択するのも簡単ではないが、それ以上に大切なのは補聴器の調整である。デジタル補聴器の場合、メーカーが作った補聴器専用の「フィッティング・ソフト」と呼ばれるプログラムを利用して、補聴器使用者のオーディオグラムに対応するように調整することができる。これはかなり細かく調整できるようだ。

しかし、これもあくまで参考であり、ここから出発して、担当の言語聴覚士(ST)と何度も相談し、試行錯誤を繰り返して、自分に合ったように調整してもらう必要がある。私の場合、調節は4回で、今のところ、この調整で満足している。


6.補聴器に障害を与える条件と対応

●耳垢

耳垢(みみあか)は、医学用語では(じこう)、英語では earwax または、wax と呼ぶ。耳垢は乾性耳垢と湿性耳垢があり、日本人は、乾性耳垢の人が多く84%、湿性耳垢は日本人には少なく16%、韓国人はもっと少なく4〜7%であるのに対し、白人は90%以上、黒人は99.5%を占めるそうだ。

耳垢は、外耳道に挿入される補聴器の先端に詰まる可能性が高い。その先端とは音声出力フィルターで、これが詰まることにより、音が小さくなり、最悪の場合は音が聴こえなくなる。私の補聴器不調の原因がこれだったのだ。

耳垢への対応は、補聴器の手入れに書いた方法で行っている。

耳垢が詰まった場合、乾性耳垢よりも湿性耳垢の方が取り除き難いことは容易に理解できる。その場合は、早くフィルターを交換するしか仕方ないだろう。幸い私は乾性耳垢なので、まず耳垢の除去を試み、それが不十分ならフィルターを交換する対応をとる。

耳垢の量は個人差が大きく、私の場合、人よりもかなり多いようだ。それを減らす効果的対応策はまだ見つかっていない。とりあえず、風呂上がりなど耳垢が柔らかい時に、軽く綿棒やティッシュで耳あなの入り口部分を掃除する程度のことを行っている。

●汚れ・ほこり・塵

これらが、フィルター、音声入口(マイク)、ベントなどに溜まって、機能を低下させる可能性はあるが、普通の使い方であれば、その頻度は非常に少ないと考える。

●水分・汗

精密電子機器が水分・汗に弱いことは周知の事実であり、そのような状況を避ける必要がある。避けられなかった場合は、早急に拭き取りや乾燥する必要がある。

●湿度

精密電子機器が高湿度に弱いことは知っているが、私の生活環境では影響があるほどの高湿度はほとんどないと思う。一方、電源となる空気電池は湿度60%が最適であり、それ以上でもそれ以下でも電池寿命は短くなる。

補聴器の本体は乾燥ケースに入れて乾燥させ、バッテリーは本体から取り出して乾燥させないようにするという保管法は手間がかかり、補聴器のような生活用品の場合は不適当だと考える。

●温度

空気電池は低温に弱いが、私の生活環境では影響があるほどの低温はほとんどない。だから、特別の対応は考えていない。

●二酸化炭素濃度

空気電池は二酸化炭素濃度の高い環境では電池寿命は急速に短くなるが、私の生活環境では経験しないと考える。


7.補聴器の保管と手入れ

●保管

ハードケース内に保管

保管は、補聴器本体から電池を取り出し、本体は乾燥ケース内へ、電池は乾燥ケースの外に保管することが取扱説明書で勧められている。

しかし、私は図10のように専用のハードケース内に、電池を取り出さず、電源OFFの状態にして、ブラシと一緒に保管している。

その理由は、1)私の生活環境では本体と電池を分けて保管しなくても影響は少ないと思うこと、2)補聴器の装着・取り外し・保管が簡単であること、3)電池の出し入れでフタを傷める可能性が少ないこと、である。


図10.ハードケースに電源OFFにした補聴器と清掃ブラシだけを入れる

●点検

ルーペで点検

音声入口(マイク)や音声出口(フィルター)の点検は肉眼では無理で、ルーペを使い、明るいところで行う必要がある。老眼にルーペはありがたい。これ無くして点検は無理だと思う。


図11.点検用ルーペ

●手入れ

フィルター掃除

フィルターに詰まった耳垢やゴミなどを掃除する清掃ブラシが付属している(図12)。右図のようにフィルターを下向きにして掃除しなければ掃除の意味がなく、上向きにすれば逆効果になる。

 
図12.清掃ブラシと使い方

フィルター交換

フィルターが詰まった場合に取り換えるフィルター取替棒が8本セットで付属している(図14)。

メーカー名は日本語が「ホワイト ワックス ガード」、英語名は「 Hear Clear 」となっている。耳垢を英語で earwax または wax と呼び、フィルターの色が白なので、「ホワイト ワックス ガード」と名づけたのだろう。「 Hear Clear 」というのも、取り換えたら「きれいに聴こえますよ」と効果を名前にしたもので、アメリカらしい名前だと思う。

 フィルター交換作業
 1)フィルターセットから取替棒を1本取り出し、
 2)交換用フィルターの付いていない先端を、フィルターに差し込んで時計回りに回し、
 3)回し終わったところで引き抜くと、古いフィルターが取り除かれる
 4)取替棒の交換用フィルターの付いている先端をまっすぐ奥まで差し込む
 5)ゆっくり棒を引き抜くと、新しいフィルターが装着される

フィルターは8個1000円、1個125円なので、掃除が余りうまくできないときには、積極的に交換するようにしている。私は耳垢が多い体質なので、一般の人よりはフィルターの交換頻度は高くなるだろう。

 
図13.取替用フィルターセット

           
図14.左はフィルター取替棒、白い物がフィルター  右はフィルター拡大図

フィルター以外

フィルター以外に、音声入口(マイク)も詰まる可能性はあるが、図6でお分かりのように、フィルターと比べて孔が小さく、また外耳道の外に位置するため、耳垢が入る確率は低いと考えた。これもルーペで点検し、ブラシで掃除することにしているが、掃除ができなければメーカーに依頼する。

ベントが詰まる可能性も低いと考えるが、これは図8のように、ナイロン線を外側のベントから挿入して内側のベントを貫通させることで詰りを除くことができる。


耳かき綿棒

耳垢の多いタイプの人は、補聴器挿入前に耳かき綿棒で掃除をして置くと、フィルターが詰まりにくい。


図15.耳かき綿棒 スーパーの日用雑貨で購入可能

バッテリー交換作業

 1.図5のバッテリーホルダーのグリップに爪を当て、外に引くようにフタを開ける
 2.図9の遮断シールの付いた電池を取り出し、シールをはがす
 3.電池の(+)(−)の向きを確かめ、(+)が上になるように電池を入れる
 4.電池のフタを閉める
 5.電池のフタがうまく閉まらない時は(+)(−)の向きを再度確かめる


8.補聴器から出る症状と対応

●補聴器を耳に挿入する際のハウリング(ピーピー音)が弱くなった

 1.フィルターの目詰まり →フィルター掃除 効果がなければ、フィルター交換
 2.電池の消耗      →バッテリー交換
 3.フィルターの奥のダンパーの目詰まり →購入店でダンパー交換
注意!
 補聴器を耳に挿入する際のハウリングは、補聴器が音を増幅している証拠で、故障ではない。

●音が小さくなった

 1.フィルターの目詰まり →フィルター掃除 効果がなければ、フィルター交換
 2.フィルターの奥のダンパーの目詰まり →購入店でダンパー交換

●電池交換お知らせ音が鳴った(ピーポーパーポー)

 1.電池切れが近い →バッテリー交換

●音がとぎれる、雑音が混じる

 1.電池の消耗 →バッテリー交換

●音が聞こえない

 1.電池切れ       →バッテリー交換
 2.フィルターの目詰まり →フィルター交換
 3.フィルターの奥のダンパーの目詰まり →購入店でダンパー交換
 4.補聴器の故障→購入店で修理

●音がこもる

 1.ベントの効きが悪い →テグスを引いて補聴器を少し引き出し、外耳道との間に隙間を作る


9.あとがき

この「私の補聴器使用法」は、私自身の備忘録として書いたものである。

今年に入って聴力の低下がひどくなり、病院耳鼻科の補聴器外来を受診した。そこで耳かけ型を試用して聴力の改善を感じたが、眼鏡を掛けているため、耳かけ型は不便なので、耳あな型補聴器を選んだ。

提示された補聴器のメーカーは1社で、そのカタログから機種を選び、耳の孔の型どりを受けたあと、オーダーメイドの耳あな型補聴器で何度か調整を受けながら、試用を続けた。

耳かけ型を着けた時はかなり聴きやすくなったが、耳あな型ではこもる感じがするほか、食事の際に噛む音が聞こえて不快になる。しかし、それは仕方がないことだろうとあきらめた。

8月末から海外旅行をした。これまでの旅行では、ツアー仲間と会話を楽しんで来たが、今回はことばが聞き取りにくく、会話を楽しめない。補聴器を着けても良くならず、声がこもり、むしろ悪くなる。旅行自体は幸運の連続だったが、この会話に参加できないことで暗い気持ちになった。

旅行から帰って、補聴器外来を受診した際に、そのことを担当の言語聴覚士(ST)に伝えたところ、フィルターが詰まっていて音が出ていないと教えられた。

そのことばを聞いた瞬間、爆発的に嬉しくなった。アルキメデスが浮力の法則を発見して裸で風呂から飛び出した時の気持だった。耳垢で補聴器の音の出口が詰まって音が出ていないとは!

補聴器を、長年使ってきた眼鏡の類に思っていたところがあり、構造や機能について理解しようとして来なかったが、このひとことで、補聴器は眼鏡とは比較にならぬ超精密機器であることを理解した。

そこで、主にWebで情報を調べ、自分の補聴器をつぶさに観察し、写真に撮り、いろいろ考え、工夫し、自分のための補聴器使用法をまとめた。

まとめの方針は、1)自分が知りたい情報を載せる、2)起きる頻度の高いことや重要なことを中心とする、3)起きる頻度が低いことや重要でないことは省略するか、その旨を説明に加える、4)時間・労力の割に効果の少ない作業は省く、5)できるだけ単純化し、ルーティン化する、である。

これをまとめることで、耳あな型補聴器についてかなり理解ができた。そして、今使っている補聴器を使いこなす自信ができた。

補聴器を着けると、自分の声が十分出ているのが分かるので、自信をもって歌が歌える。会話の聞き取りもかなり良くなった。だから、コーラスを辞めることはしばらくは考えないでおこう。今はそのような心境である。

この記事の対象は耳あな型補聴器である。私が最初に試用した耳かけ型では、7週間装着して聞こえが悪くならなかったことを考えると、耳かけ型は耳垢による音声出口の詰りを起こし難いのだろう。構造的には、むしろ水分・汗対策が重要かもしれない。そうなると、耳かけ型では保管法も変える必要があるだろう。しかし、それ以外のことでは、このまとめも有用かもしれない。

この記事はあくまでも自分のための備忘録であるが、補聴器を検討されている方や既に補聴器をお使いで、その理解を深めたい方のお役に立つところがあれば、望外の幸せである。


<2014.10.02.>


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