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現代の世界的闘争に対するバーナムの見解

概して、反米感情は、反帝国主義者で反軍主義者である人々において最も強い。これは単に仲を裂きたがっている共産党員とその「シンパ」に限られたことではなく、アメリカと結びついていることが、おそらくイギリスで資本主義を維持する方法だと考えている善意の人々もなのだ。以下のような会話を耳にしたり、加わったことが何度かある。
「アメリカ人なんか大嫌いだ!時々自分がロシア派のように思えることがあるよ。」
「ああ、でも彼等は我々の本当の敵ではないさ。1940年、ロシアがドイツに石油を売っていたとき、我々を助けてくれたぞ。我々はさほど長いこと自立を続けられないし、最終的に、ロシアに屈するか、アメリカと一緒になるかを選ばなければならなくなるかもしれないな。」
「選ぶなんていやだね。どっちもギャングだぜ。」
「ああ、でも選ばなければいけないとしたら。選択肢がほかになくて、二つのうちどちらか一つの下で暮らさなければいけないとしたら。ロシアとアメリカ、どっちを選ぶ?」
「うん、まあ、選ばなければいけないなら、もちろん迷う余地はない。アメリカさ。」

アメリカとの併合は、我々が困難な情況から抜け出す一つの方法であることが広く認められている。実際、わが国は1940年以来ほとんどアメリカの属国状態だったし、この国の絶望的な経済苦境によって、この傾向は更に強まっている。バーナムが望んでいる連合は、公的な合意なしに、また何らの計画も理想もなしに、自然におきるかも知れない。
やかましいが、ごくわずかな少数派が、イギリスはロシアに併合されればいいと望んでいるのだと思う。イギリス人のほとんどは決してこれを受け付けまいが、彼等のなかでも思慮深い人々が、アメリカによる併合という、ありうる代案を熱心に支持しているわけではない。大半のイギリス左翼は、今のところ、攻撃を防ぐのに十分な程度の強さを維持しながらも、猜疑心を柔げられる程度に弱い情況にしておいて「ロシアとうまくやる」という手の込んだ政策を支持している。ロシアがより繁栄すれば、より友好的になるかもしれないという望みがこの背後にはある。イギリスにとってのもう一つの脱出策、ヨーロッパ社会主義合州国は、まださほどの魅力をもち得ていない。バーナムやそれに類する人々の悲観的な世界観が優勢になればなるほど、そうした思想が根を下ろすのはさらに困難となろう。

1947年3月29日 ニュー・リーダー「現代の世界的闘争に対するバーナムの見解」のごく一部(拙訳)。全集では 3204として、19巻 It is What I Think 1947-1948  96-105ppにあります。日本語は平凡社 オーウェル著作集IV巻297-310 pp.


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