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ビッグ・ブラザー達は、冷戦でオーウェルをどう利用したか


ガーディアン
2000年6月30日
デヴィッド・ヘンケ、ロブ・エヴァンズ

79ページにわたるジョージ・オーウェル関連FBI書類の公開によって、このイギリス人著者の『動物農場』と『1984年』が、オーウェルが1950年に亡くなって以来二十年間、思想戦争の著名人としてアメリカ人とロシア人の双方に利用されたことが明らかになった。

1949年『1984年』が刊行される前でさえ、アメリカの出版社はこの小説を ソ連の全体主義に対する攻撃として活用しようと、FBI長官、J・エドガー・フーヴァーによる推薦を求めたが、-皮肉なことに、フーヴァーは後にアメリカのビッグ・ブラザーとあだなを付けられたのだった。

ソ連は十年後、オーウェルを、彼の風刺は誰もが監視されているアメリカの実生活に基づいているとロシア人に説明する中傷キャンペーンの一部に利用した。

1960年代と1970年代の間、アメリカの国家保安機関は、アメリカの大学構内にあるジョージ・オーウェルの愛好者クラブや、映画クラブを監視し、そうした組織が社会主義支持の破壊活動的行動の隠れ蓑ではないことを確認していた。オーウェルという名前は、1972年ヴェトナム戦争に反対して、コロラド州デンヴァーにある空軍基地内の幹部食堂を爆破したテロリスト集団「アメリコング」と関連づけられさえした。

ファイルの詳細はアメリカの情報公開法の元で公開されたが、11ページは秘密にされたままだ。この著者に関わるFBI報告は、中にはオーウェルが亡くなってから三年後に送られたものであるにもかかわらず、厳重に検閲されていた。

フーヴァー自身が作ったこのファイルは、1949年4月付けのオーウェル本の出版者からの手紙で始まっているが、その内容はこうだ。「アメリカ国民に対し本書に関心を向けるよう呼びかけるようお考え頂けないか、そしてそれにより、恐らくは全体主義を押しとどめる助けになるのではないか、と私どもは希望するものであります。」

出版社ハーコート・ブレース副社長ユージン・レイナルは、こう補足していた。「ありそうで、ぞっとする現在の社会的、政治的傾向の延長の姿を描いている点で、『1984年』は重要な書籍です。オーウェルは、物語で、二世代以内に実現しかねない全体主的世界への関心を盛り上げ、その脅威を読者に痛感させます。」

レイナルは続けている。「本書は読者に対して『1984年』の世界のおぞましい特徴のどれ一つとっても、現在、胎芽状態で存在しないようなものはないという、衝撃的な感覚を与えます。」

「本書は、人間精神のきらめきが完全には抑圧されていなかった最後の人間が、文字通り、2足す2は5であることを信じるに至る過程を描いています。」

1955年にイギリスで作られたアニメ版『動物農場』はFBIをわくわくさせ、FBIはこのアニメを「大当たり」だと表現した。

フーヴァーは『1984年』を推薦することを断り、書籍と映画についての批評のスクラップを含め、この著者に関するファイルを継続するよう命じた。厳重に検閲されたエージェントの報告書には、オーウェルはもともと「共産主義者に対して協調的だったが、後になって敵対するようになった」とある。

十年後FBIは、オーウェルの風刺は「警察による監視と操作が世界を凌ぎ、匹敵するものがない」アメリカでの実際の生活に基づいていると主張する東ベルリンで組織された「中傷キャンペーン」について報告していた。

「現在既に、アメリカ人の生活は、いわばガラスのカバーで覆われており、あらゆる側面から見ることができる」と共産主義者の世界に配布された報告書には書いてあった。

http://books.guardian.co.uk/departments/classics/story/0,6000,338261,00.html


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