山ある記 |
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光岳 (2日目) − 2000.08.30 (水) |
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天候:晴れ後曇(2日目) 標高差:1,610m(光岳山頂から畑薙第一ダムバス停) ![]() 光岳山頂より、富士山の脇からのご来光(15KB) |
<光岳山頂での夜明け> 5:00 起床。小屋に止まった登山客が動き出す物音で目を覚ましテントの外へ。空は晴れ渡り、まさに夜明け直前。小屋の北西にあるイザルヶ岳の右側に富士山が見える。ご来光が近い。イザルヶ岳まではさほど離れてはいないが、往復は一仕事だ。きっとイザルヶ岳の頂からなら、もっと素晴らしいご来光になったかもしれないが。 5:15 カメラだけを手に光岳山頂へ向う。山頂からならご来光にありつけるかもと急いだが、山頂手間で背中から強烈な赤い陽射しが射し込んできた。 5:25 山頂(2,591m)。富士山の左側から朝日が昇る。山頂から南西へ5分ほど行ったところに光(てかり)石と呼ばれる2つの白い岩塊がある。まだ薄暗い光岳の南西側の光石の上からは遠く西の雲海に恵那山と思しき峰が望めた。 5:50 光小屋に戻る。撤収開始。まずテントの回収だがこれが意外に時間を食った。夜露に濡れたテント生地をタオルで水分を拭い取る。水を絞っては拭く。これを繰り返してテントを畳む。風が強く難儀した。出発の荷造りを終えたのは既に7:00を過ぎていた。 小屋のオバサンに出発の挨拶をして、ついでに受付で売られていたフルーツヨーグルトが美味しそうだったので朝食代わりに買って食べた(\500)。水は500mlのペットボトルで3本用意したが、念のために小屋で紙パックのグレープフルーツジュースを買った(\300)。ちなみに小屋では宿泊客とテント客はタンクから給水させてもらえる。 |
![]() 茶臼小屋下にたくさんいた”ベニヒカゲ”(17KB)
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<はりきって次の目標へ・・> 7:30 小屋を出発。昨日来た道を易老岳へ向けて歩き出す。雲が出てくる。流れも早いようだ。 8:35 三吉平。光岳に向う大勢のグループがやってきた。 9:05 易老岳。緩いアップ・ダウンを繰り返し、昨日通った分岐点に到着。ここから茶臼岳を経て、約7時間で聖岳の手前の聖平まで行くのが今日の予定。 10:35 希望峰(2,500m)。仁田岳(2,524m)への分岐点。空は全体的に薄曇り。風もあり、尾根では肌寒い。気温18.4度。 11:25 茶臼岳(2,604m)山頂。茶臼への尾根の登りでは沢から吹き上げる風にヨロめきそうになった。相変わらず雲の動きが早い。既に疲れが見え始めた。昨日はしっかり眠ったつもりでも疲れは残っている。既に昨日の時点で両足に靴擦れが出来ていて、絆創膏で応急処置をしてあるが、痛みを歩くたびに感じる。ここに来る前に、聖岳には向わず、そのまま畑薙ダム側へ下ることに予定変更。 茶臼の山頂では正面に見える聖岳をカメラに収めようとするが、ガスが次から次へと聖岳山頂付近を東から西へ流れていき、なかなか山容が明らかにならない。手前の上河内(かみこうち)岳も同様。昼食がてら、しばらくガスが晴れるのを待ってみる。 12:20 茶臼小屋。聖岳を諦めて横窪沢沿いを畑薙へ下る。小屋そばの水場で給水。 |
![]() 見よ、この畑薙大吊橋を!(33KB) 横から見た大吊橋。もう2度と渡るものか(28KB) |
<一転、下山へ・・> 13:10 標高1,900m地点。かなり急な下りが続き、こちらのコースの登りもきつそうだ。背中の重装備の後押しでどんどん下る。 13:45 横窪沢小屋(約1,575m)。沢の流れを聴きながら、薄暗い山道を更に下る。ここでも給水。気温22.3度。 14:45 ウソッコ沢小屋。手間に定員5名の吊り橋がある。真下を涼しげな滝の流れ。橋付近に水場あり。 15:40 ヤレヤレ峠(1,080m)。ウソッコ沢から一旦、標高で1,000mを切るところまで下ったが、3つほど沢にかかる吊り橋を経て、再び峠までの登りとなる。この登りが一番堪えた。気温25度。 16:05 畑薙大吊橋の手前に着。疲れきった体に最後の難関が待ち構えていた。畑薙湖に架かる全長182mの東洋一と言われるこの吊橋。想像以上に長く、湖面からの高度もかなりありそう。高所恐怖症の私にはこれ以上の拷問はない。何も考えずにこのコースへ下ってきたが、戻るも地獄、進むも地獄。果たして無事渡り切ることが出来るか? 橋の手前で十分休憩を採り、呼吸を整える。橋に足を踏み出し、一歩一歩ゆっくり足を進める。が、足元の湖面が見えた途端、足が止まった。一歩も足を進めることができない。幸い前にも後ろにも登山者はいない。周りを気にせず、ゆっくり気を落ち着けていけばよい。何しろ歩ける場所は橋に真っ直ぐ渡された幅20cmくらいの木の板だけである(所々にもう一枚分の板で待避所があるが、そんなところで待たされたら堪らない)。兎に角、何度も深呼吸して気持ちを落ち着かせ、思い切って歩き始めた。板を踏み外すと大変だから、足元と少し前方を交互に見ながら一歩一歩、板の数を数えながらリズム良く足を進める。息が詰まりそうなくらい緊張する。ここでパニックを起こしたらそれこそ、橋の真ん中で身動き出来なくなっただろう。無事渡り終えると、一気に緊張から開放された。 ここでハプニング。私にしてみれば極度のストレスのせいか、橋を渡り終え、ほっとして光小屋で買ったグレープフルーツジュースを飲み終えたら、急に胃が痛み始めた。 しかたなく橋のそばにある小屋で横になって休むことにした。 16:40 胃痛も少し治まったようなので、畑薙第一ダムのバス停へ向けて歩き出す。バスの時間は確認していなかったが、最終バスを逃したとしても、またバス停で野宿と諦めながら胃を手で押さえながら車道を歩く。 17:35 ゲート。登山指導センターがある。ここまでは砂利道。このゲートで一般車両の通行が抑制されている。 17:55 畑薙第一ダム・バス停(980m)。予想通り、既に15時台でバスの運行は終わっていた。明日の最初の便はなんと12:20。しかも、明日8/31が夏シーズン最後の運行日であることを初めて知る。谷の間は既に夕闇迫り、バス停の辺りには登山者が停めた無人の車が数台あるくらい。今日も長い一日であった。 |
<参考地図> ・どこでもアウトドア 「日本百名山を登る(下巻)」(昭文社) ・ヤマケイ・アルペンガイド15 「荒川・赤石・聖」(山と渓谷社) |
<またもや野宿。そして、明くる朝・・> ご興味があればこちらへ。 |
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