2001年11月
・CANDY(鯨統一郎) | ・東京物語(奥田英朗) |
・アイ・アム(菅浩江) | ・虹の天象儀(瀬名秀明) |
・絶叫城殺人事件(有栖川有栖) | ・今昔続百鬼 雲(京極夏彦) |
・インストール(綿矢りさ) | ・ドリームバスター(宮部みゆき) |
・新千年紀古事記伝 YAMATO(鯨統一郎) | ・Killer X(クイーン兄弟) |
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CANDY
著者 | 鯨統一郎 |
出版(判型) | 祥伝社文庫 |
出版年月 | 2001.11 |
ISBN(価格) | 4-396-32886-9(\381)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
目覚めたとき、僕はキャンディを持って知らない場所にいた。微妙に何かが異なるパラレルワールドで、3つしか存在しないキャンディを探すことになったボクは・・・。
抱腹絶倒?のバカミス。いや、ミステリじゃないですね。ハードボイルド?というか、やっぱりバカの部分を強調したいです。日ペンの巫女ちゃん、ドーモ学園、マッケン爺、ダイオ鬼神・・・。これを電車の中で読めば、周りを引かせること請け合い。最近笑ってない方におすすめ。
東京物語
著者 | 奥田英朗 |
出版(判型) | 集英社 |
出版年月 | 2001.10 |
ISBN(価格) | 4-08-774519-8(\1600)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★☆ |
1978年4月。田村久雄は上京した。
バブル真っ只中の東京。私がちょうど中学生から高校生くらいの時代のお話です。景気が良いということは、つまり街や人間の雰囲気が良いとか熱いとかってことなんだろうなと、この本を読んで改めて思います。多分その熱気をモロに浴びていた、当時20代の彼らが、一番バブルを懐かしんでいるんじゃないでしょうか。私が大学に入ったら、もう既に世の中不景気の真っ最中で、なんとなく大学生も「遊ぶ」より「将来のことを考える」ような雰囲気になった感じがするんですよね。かろうじてバブルの時代にひっかかっていた4年生とかと微妙に雰囲気が違いました。ある意味「若気の至り」みたいなバカはいなくなって、面白くなくなったかなという気が。バブル時代を懐かしく思う人たちの物語です。
アイ・アム
著者 | 菅浩江 |
出版(判型) | 祥伝社文庫 |
出版年月 | 2001.11 |
ISBN(価格) | 4-396-32885-0(\381)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
視界が開けると、円柱形のボディと特殊ラバーの腕をもった<ミキ>になっていた。私は最初から機械なのか、それとも。高度な知識と技術で、私立エナリ病院の看護婦ロボットとして働く<ミキ>は、患者たちとのふれあいを通じて、自分の出自に疑問を持つ。
ASIMOとかアイボとか、皆が夢見ていたロボットっていうのも、徐々に現実のものとなりつつありますが、たとえばドラえもんのようなロボットが誕生したとき、人間と同じように自分で考えるロボットは、人間と同等の権利をもつのかとか、人間とロボットの境界はどこなのかとか、技術よりも精神的な面でのテーマが、こうして小説になることが多くなってきたように思います。こんな風な見事な(様々な意味での)介護ロボットが誕生したら、それは非常に難しい問題になるでしょう。この介護ロボットがどういうモノなのか、そして<ミキ>は本当にロボットなのか。人間とロボットの境界をテーマにした秀作。おすすめです。
虹の天象儀
著者 | 瀬名秀明 |
出版(判型) | 祥伝社文庫 |
出版年月 | 2001.11 |
ISBN(価格) | 4-396-32884-2(\381)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★☆ |
2001年3月11日、44年間様々な人に星空を見せてくれた五島プラネタリウムが閉館した。そこにあるツァイス製投影機は、大切に保管されるために今、正に解体されようとしていた。そこへやってきた不思議な少年。少年に言われるまま、投影機の中を覗きこんだとき・・・
五島プラネタリウム、閉館すると聞いて一度行こうと思ってたんですよね。結局行けませんでした。非常に残念。プラネタリウムは結構好きで、あちこちのに行ってるのですが、確かにあの中央の機械が不思議で、解説や星空そっちのけで、あの機械が気になって仕方がなかったことがあります。だって、あの広さのドームにあんなに小さい機械から星空を映すんですよ。やっぱり不思議で仕方ないのです。一度あれの解説をしてもらいたかったのですが、そんな館はなかったですね・・・。
そんなプラネタリウム投影機から過去へとタイムスリップするお話。短い所為で、展開が少し唐突で、勿体無い。せっかくやるなら長編でもよかったんじゃないかなというのが残念。
絶叫城殺人事件
著者 | 有栖川有栖 |
出版(判型) | 新潮社 |
出版年月 | 2001.10 |
ISBN(価格) | 4-10-602652-X(\1600)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★☆ |
火村たちが訪れる様々な館で起きる、様々な殺人事件。
この著者が「殺人事件」と題する本を書くのは初めてだそうで。確かに「○○殺人事件」って出すぎてしまっていて、なんとなく魅力に欠ける題名ですよね。この本も買おうか迷いましたし。結局買ったのは、「館で起きる殺人事件」というあらすじに惑わされたからです(笑)。どれもまあまあだったかなぁ。やはりこういうトリック系の話だと、もう少し長いほうが私は好みです。
今昔続百鬼 雲
著者 | 京極夏彦 |
出版(判型) | 講談社ノベルス |
出版年月 | 2001.11 |
ISBN(価格) | 4-06-182221-7(\1150)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
妖怪馬鹿・多々良先生と沼上君の珍道中。
短編集でこの厚さ、は相変わらずといったところですが、なんだかお馬鹿加減に研きがかかっているような。メフィストで連載されてた多々良先生シリーズ。こういう話だったのですね。地方の伝説を蒐集しに、無計画・無鉄砲な旅を続ける多々良先生と、その多々良先生に振り回されっぱなしの沼上君。珍道中に出てくる様々な妖怪話と、それにまつわる事件。推理なし、でも妖怪ありの痛快小説です。私は電車の中で思わず吹き出して、周りを引かせてました。特に「ぬ」のエピソードは秀逸。抱腹絶倒間違いなし(?)。っていうか、笑いすぎ?>自分。おすすめです。
インストール
著者 | 綿矢りさ |
出版(判型) | 河出書房新社 |
出版年月 | 2001.11 |
ISBN(価格) | 4-309-01437-2(\1000)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★☆ |
引きこもり女子高校生が、ふとしたきっかけで小学生と風俗チャットで一儲けすることに。
著者17歳、というのばかりが独り歩きしちゃった本書ですが、確かに良くも悪くも17歳が書いた小説かなという気が。一番思ったのが、事象で人物を表現しようというところかなあ。感情とかって出てこないんですよね。だから引きこもる過程にも、ドロドロした葛藤みたいなものが全くない。いきなり部屋の中のモノを全部捨てはじめるという行動(=事象)が説明されてしまうのです。それが作品全体の違和感でもあり、爽快感でもありといったところ。その辺りをどう評価するかが、この作品自体の評価の分かれ目になる気がします。私はどちらかというと、「気持ちを表現できない」ほうに入れてしまうかなぁ。でも嫌いじゃないです。不思議な小説。
ドリームバスター
著者 | 宮部みゆき |
出版(判型) | 徳間書店 |
出版年月 | 2001.11 |
ISBN(価格) | 4-19-861442-3(\1600)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
道子は、子どもの頃みた火事の夢に、今ごろ悩まされていた。その鮮やかな夢に、突然現れる一人の少年。彼は、夢の中の悪いものを退治しに来たという。
アクション・ファンタジー巨編第1弾・・・だそうです。確かにこの設定なら、すべてのBNを捕らえるまで話が続けられますし、この本の3話目のような周辺話も入れれば、超巨編になってもおかしくないです。かつ主人公の母親探しという付録もついているので、シリーズものとして読むと、なかなか楽しめそう。今回はまだ始めのほうなので、登場人物や設定の説明が多かったのですが、次の作品は何を持ってくるか(しかも宮部みゆきですし)、期待したいところです。というわけで、この本はまだまだ続きます。。。たぶん。
新千年紀古事記伝 YAMATO
著者 | 鯨統一郎 |
出版(判型) | ハルキ文庫 |
出版年月 | 2001.11 |
ISBN(価格) | 4-89456-942-6(\600)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★☆ |
古事記の鯨版現代語訳第2弾。『ONOGORO』に続き、古事記伝に仕掛けをつけたお話です。が、2度目となると、やはりうーん、こんなものかなあと思ってしまいますね。今回も「お、これって読んだことある」っていう伝説の断片が繋ぎ合わさって、見事に小説化しているのですが、このラストって・・・(^^;。まあ鯨統一郎だからいいですか。
Killer X
著者 | クイーン兄弟 |
出版(判型) | カッパノベルス |
出版年月 | 2001.11 |
ISBN(価格) | 4-334-07443-X(\848)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★☆ |
久々の同窓会のお誘いに集まった6人。ところが、招待状の内容をつき合わせてみると、その招待状自体がウソだった。機械化された主人と山荘で、雪に足止めをくらう6人。そこに事件が起きた。
光文社の著者当てクイズつき小説第2弾。今回は男性2人のようです。やっぱり合作ということもあってか、微妙に文章に入りにくく、以外に重要なことがさらっと流されて、唐突に事件が起こる・・・といった雰囲気。おいおい、これはどうなったの?とツッコミたくなる部分が多かったのが残念かな。ただ、解決部分は、前作よりは面白かったです。小説家のセリフが妙に説明的なのが笑えました。文章と写真で、著者の一人は多分わかったのですが、もう一人は誰でしょう。今回のプレゼントは3か月分のカッパノベルスと「キラーX」のTシャツだそうです。
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