2001年10月
・鬼のすべて(鯨統一郎) | ・レヴォリューションNo.3(金城一紀) |
・異邦人(西澤保彦) | ・死にぞこないの青(乙一) |
・エンプティー・チェア(ジェフリー・ディーヴァー) | ・夜陰譚(菅浩江) |
・ささら さや(加納朋子) | ・プラムと竜の子どもたち(上領彩) |
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鬼のすべて
著者 | 鯨統一郎 |
出版(判型) | 文藝春秋 |
出版年月 | 2001.9 |
ISBN(価格) | 4-16-320390-7(\1381)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★☆ |
二人の女性が鬼に見立てられて殺された。相次いで「鬼」から犯行声明が。何故鬼に見立てられたのか、そもそも鬼とは何なのか。
いやー「鬼を解く」というテーマがなかったら、単なるバカミスのような気が。鬼とは何なのか、という話はミステリでもよく使われていますよね。私は栗本薫の『鬼面の研究』の解き方が好きだったのですが、他にも諸説あるんでしょうね。鬼の謎っていうのも奥が深いんだ。こういうのを読むと、民俗学って面白いなと思います。
レヴォリューションNo.3
著者 | 金城一紀 |
出版(判型) | 講談社 |
出版年月 | 2001.10 |
ISBN(価格) | 4-06-210783-X(\1180)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
落ちこぼれ三流高校に通う僕らは、世界を変えてみたかった。「勉強して大学に入る」という土俵ではどうしようもない僕らには、でも仲間と根性があった。
痛快な連作短編小説。皆で知恵を出し合って、時には違法すれすれのことをしながらも、その事件を解決していく。情報屋がいたり、参謀がいたり、そんな皆を纏めるリーダーがいて。難攻不落の女子高学園祭に、皆でいろんな作戦を立てて包囲網を突破しようとする「レヴォリューションNo.3」。沖縄に行きたい一心で、皆でバイトして貯めたお金をかつあげされ、その復讐をしにいく「ラン、ボーイズ、ラン」。そして、ストーカーに悩まされている女子大生のボディーガードをし、見事ストーカーを捕まえる「異教徒たちの踊り」。どの話も楽しく読める作品です。この著者には、まだまだこういう系統の本を書いてもらいたいな。おすすめ。
異邦人
著者 | 西澤保彦 |
出版(判型) | 集英社 |
出版年月 | 2001.10 |
ISBN(価格) | 4-08-775293-3(\1600)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
郷里へ戻る途中、何故か鏡の中の自分の姿にデジャ・ヴュを感じた影二。ふと空港を出ると、何かが違う。どうも自分は23年前の世界へと飛ばされてしまったらしい。しかもその日は、ある事件の4日前だった。
殺されてしまう父を救えるか。そして犯人は誰だったのか。戻ってきた23年前の4日間をフル活用して謎を解くミステリ。結論にたどり着くまでの緻密な思考は西澤ミステリ、といったところなのですが、最初から結論が見えてしまっている意外性のなさ、そして登場人物が某○○○子様とかぶってしまうところがどうもいけません(^^;。同じような話に『七回死んだ男』もあるので、あまり乗れなかったのはその所為もあるのかもしれません。
死にぞこないの青
著者 | 乙一 |
出版(判型) | 幻冬舎文庫 |
出版年月 | 2001.10 |
ISBN(価格) | 4-344-40163-8(\457)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★☆ |
クラスの中で自分はスケープゴートにされている。そんな閉塞環境に嫌気が差したマサオは、ある行動に出る。
長編というか、中編。非常に暗い気分になる1冊。先生の盾にされた彼は、誰に助けを求めることもできず、クラスの全員からもつまはじきにされる。いわゆる顕在化する「イジメ」ではないけれども、本人的には何故自分だけ、という状況から脱することができずに、分裂していくという鬱なお話。もう少し明るいオチにしてもよかったんじゃないかなあと思ったり。おすすめ・・・はできないかな。
エンプティー・チェア
著者 | ジェフリー・ディーヴァー |
出版(判型) | 文藝春秋 |
出版年月 | 2001.10 |
ISBN(価格) | 4-16-320400-8(\1857)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
リンカーン・ライムは、わずかな可能性に賭けて、ノースカロライナ州の名医の手術を受けようとしていた。ところが近くの街で、女性誘拐事件が発生しているという知らせをきく。通常誘拐事件後、被害者の救出までに24時間が限界といわれている。一刻を争う事態に、サックスとライムはその事件に首を突っ込むことになるが・・・。
うぉーシリーズはこれで終わるのか!と思えるような危機が20ページに1回くらい訪れて、どきどきしながら読んでいる、そんなちょうどいいところで電車を降りなくてはいけなかったり。読むのに約1週間以上かかりましたが、この本の世界にどっぷりと浸れました。今回はライムよりもサックスの活躍が光ります。家族を失い、昆虫だけを友達に生きている誘拐犯人の少年。彼の誘拐の動機は?そして、彼は本当に凶悪な殺人犯なのか? あまりといえば、あまりのラストに私はちょっと拍子抜けしてしまったのですが、それでもスピード感抜群、長い本を長いと感じさせない、こういう本は面白いとお薦めしやすい本です。というわけでおすすめ。
夜陰譚
著者 | 菅浩江 |
出版(判型) | 光文社 |
出版年月 | 2001.10 |
ISBN(価格) | 4-334-92342-9(\1600)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
女性をテーマにしたホラー短編集。私が元々短編があまり好きではないこともあるのですが、精神的な、日常と紙一重の怖さをテーマにしている所為もあって、いまいち楽しめなかったかも。私の好むホラーは、やはり馬鹿馬鹿しさの中に、非日常的な怖さがあるモノのような気がします。こういう女の闇みたいな話って、ありがちすぎて、目新しさが感じられないですね。。
ささら さや
著者 | 加納朋子 |
出版(判型) | 幻冬舎 |
出版年月 | 2001.10 |
ISBN(価格) | 4-344-00116-8(\1600)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★☆ |
子供も生まれてまもないサヤと夫。頼りないサヤをいつも守っている夫が、交通事故で突然逝ってしまった。夫の家族に赤ん坊を取られそう、と思い込んだサヤは、伯母の家のある佐々良という土地へと引っ越していく。
死んだ人の魂が、いざというときに周りの人に入って助けてくれる、そんな切ないお話。映画だけでなく、大切な人が幽霊になって・・・っていうのはよくあるのですが、なんかこの話はよかったですね。加納朋子らしい優しい感じの小説でした。おすすめ。
プラムと竜の子どもたち
著者 | 上領彩 |
出版(判型) | 角川ビーンズ文庫 |
出版年月 | 2001.10 |
ISBN(価格) | 4-04-441304-5(\419)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★☆ |
ある日起きると、突然双子の男の子が家に住んでいた・・・。ところが、その二人が来てから、周りに突然変なことが起こり始めて。
理不尽な友人島原、双子に住み着かれてしまった主人公の森君。突然日常が不思議な世界に変わってしまった二人と、謎の双子のファンタジー。なんだかかわいらしい小説でした。まだ謎の多い双子に、シリーズ化が期待されます。
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