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Bacterial translocation





日本外科代謝栄養学会の 用語集ではBacterial translocationとは「正常の消化管粘膜から生菌が腸間膜リンパ節あるいは門脈,さらにそれ以遠へ移行すること.エンドトキシンなど菌体成分の一部や真菌の侵入など,microbial translocationと呼称される概念も含めて広義に解釈される.」と記載されている。

以下に遠藤重厚、稲田捷也共著『エンドトキシンと病態』(へるす出版、1995)のBacterial translocationの項について手元に保管の元原稿に基づいて掲載する。発行された内容とごく一部異なる。文献番号は105から始まるが前節からの継続のためでありこのまま掲載する。


目次
1.Bacterial translocation(BT)の概念
2.ヒトでBTはおこるか?
3.BTに否定的な我々のヒトでの成績

参考文献

★BTとエンドトキシンに関する最近の論文(補填)


1.Bacterial translocation(BT)の概念

Bacterialtranslocation(以下BTとする)とは腸管内の細菌が腸管粘膜のバリアーを通過 して体内に侵入し、種々の臓器に移行することである。19世紀後半から20世紀はじめに、細菌の腹腔へ侵入によると考えられた腹膜炎の報告があり、この現 象は当時ドイツで”Durch-wanderungs peritonitis"(wandering through peritonitis)と呼ばれ、 細菌は穿孔していない正常な消化管を通過して腹膜炎をおこすと考えられた。また、リンパ系を通って腹膜へ到達するか、白血球内に取り込まれて消化管膜を遊 走するとも考えられ、この当時からBTについての概念が形成されつつあった。

そして栄養不良がBTを促進するとか、腹部の外傷、腹腔内への化学的刺激、慢性の炎症との関連が報告されている。この時代は貧困な研究や仮説のみであったが、1940年代に入ってFineらによる詳細な動物実験やヒトの事例によってBTの概念が強固なものになっていく。

1970年代になるとBerg、Deitchらを初めとする研究グループによって精力的に詳細な動物実験が行われ”BT”の概念が揺るぎないものになっていく(Bergらが”BT”の言葉を最初に用いた)。

現在主に動物実験で以下のような条件でBTが起こるとされている(Edmistonら、1991の総説)105)。

放射線照射:ラットに1,100centigrayのX線を照射し、12時間後に腸管膜リンパ節を培養した結果からBTが起こっていることが分かった106)。組織学的な炎症性変化が観察され、4日後には潰瘍が生じた。グルタミンの経口投与で有意にBTを抑制 できた107)。グルタミンは腸管細胞の代謝の重要な基質であり核酸代謝の窒素の供与体であることから粘膜構造を維持し菌の移行を抑制している可能性があ ると考察している。

外傷:1920年代にすでに腹部の外傷がBTを引き起こすと考えられていた。1928年にはイヌのモデルで外 傷、熱傷によってグラム陰性菌が十二指腸粘膜を通過することが明らかにされている108)。この機構として腸管壁を通過してからリンパ系に入り次に門脈を 経て肝に移動すると考えられた。なお、BTの結果、菌やエンドトキシンが門脈を介して肝に移行しここでエンドトキシンの解毒がおこるという考え方は古くか らありいわゆるportal endotoxemiaと呼ばれ、これが肝傷害などでは末梢血にもエンドトキシンが出現するとの考えにつながる。

栄養ストレス:すでに1920年代に栄養失調によるBTが報告されているが、最近の研究では栄養失調は腸管の通 性嫌気性菌の数を増加させるが、BTを増強しないという。しかし、栄養失調はエンドトキシンによって誘導されたBTの際の危険因子であるとの報告もある 109)。栄養失調時のエンドトキシンによる急性の粘膜傷害は栄養失調マウスでの粘膜傷害よりも強いという。また完全静脈栄養法(TPN)は腸管膜リンパ 節へのBTを促進するとの報告もある110)。これは分泌型IgA濃度の低下と関係があるらしい111)。ラットではグルタミンを補充したTPNでBTは 抑制され、IgAの低下も認められなくなる112)。長期のTPNは腸粘膜の萎縮を招きBTを起こしやすくなるが、グルタミンの補充により、粘膜の重量、 厚さ、DNA量、蛋白量が増大し、萎縮は抑制される113)。また、腹部外傷患者でTPNと経腸栄養(TEN)を比較すると、TPNでの感染や敗血症発症 の頻度がTENの場合より高いとの報告もある114)。

腹膜の炎症:オレイン酸やトラガカントゴム(天然ゴムの一種)でイヌ腹膜を刺激すると腹腔内への大腸菌の汚染が観察され、これを中止すると菌は検出されなくなるとの報告がある115)。1950年にFineらのグループはイヌの腹膜炎モデルで125I でラベルしたE. coli(生、死菌)を経胃投与すると、24時間後に腹腔内にラベルされた菌を検出でき、外傷や熱傷で確かにBTが起こることを証明した 116)。さらに死菌てもよいことから、BTに菌の作る毒素や酵素は関与していない事が証明された。この当時、細菌の他に澱粉粒子、炭素塵、バク テリオファージ等も正常な腸管壁を通過しうることが観察されている117)(その後、これらは貪食細胞に取り込まれて腸管膜リンパ節に到達することが報告 された118))。そして、正常な動物ではBTは一過性の現象である事も報告されている。また、通過経路としては、腸管壁粘膜を通過し、腸管膜リンパ節に 移行することが、Serratia marcescensSaccharomyces cerevisiaeなどを用いてで証明されている119)。

腎不全:1940年代に、急性腎不全の治療のための腹膜潅流で大腸菌による敗血症が起こると報告されている。この場合透析外液中にしばしばE. coliEnterobacter aerogenes、さらにグラム陽性菌、時に嫌気性菌が検出された。またサルファ剤で腸内殺菌するとこれらの菌は検出されなくなった120)。そして実験的にイヌの両側腎を摘出し腹膜潅流すると透析外液からE. coliが検出され、ストレプトマイシンやサルファ剤の経口投与で腸管のグラム陰性菌を除去すると透析液中にE. coliが検出されなくなった121)。従って尿毒症による腹腔の汚染は管腔からの細菌の移行によると考えられた。しかし、その後腎不全とBTについての報告はなく、これらの結果は単に操作上の汚染と理解したほうがよさそうである。

正常菌叢の変化:BTの際、通性嫌気性のグラム陰性菌はを良く通過し、偏性嫌気性菌は余り通過しない。また、ノトバイオートマウスとSPFマウスではBTの様相が異なる。たとえば、E. coliLactobacillus acidophilusは ノトバイオートではトランスロケーションがみられるが、SPFではこれがみられない。嫌気性菌の発育を抑制するmetronidazoleは通性嫌気性の グラム陰性菌の腸管膜リンパ節への移行を増強し、好気性菌を主に抑制するbacitracinとstreptomycinの投与では常在菌の移行は影響さ れないという122)。従って偏性嫌気性菌は通性嫌気性菌のトランスロケーシヨンをコントロールしていると考えられる。

腸管粘膜の変化:既に述べたように放射線照射や、長期のTPNによるの変化がBTの原因であるとする考えがある123)。

閉塞:総胆管を結紮するとBTが生じた。組織学的に回腸絨毛の粘膜下に浮腫を来し、総胆管の閉塞により粘膜 brush border(刷子縁)が危弱化し、細菌やその産物(エンドトキシンなど)の通過を許す結果になると考えられた124)。最近菊池らはイヌの大 腸結紮モデルでエンドトキシンは門脈には検出されず腸管膜リンパ管より高濃度のエンドトキシンを認め、BTの際のエンドトキシンの吸収経路としてリンパの 重要性を指摘している。しかし、胸管や末梢血からはエンドトキシンはほとんど検出されずリンパ腔でエンドトキシンがクリアランスされている可能性を指摘し ている125)。

出血性ショック:出血性ショックの敗血症発症における役割についてはFineらが1950代にイヌの出血性 ショックでは抗菌化学療法で致命率を改善したとの報告126)(その後この結果の再現できなかったとの報告もある127))を初めとして多くの報告があ る。出血性ショックによって粘膜バリアーの破綻を来し、腸管由来の細菌が全身へ播種されるという研究が多い128)。しかし、組織学的には出血性ショック 初期には腸管膜リンパ節や他の遠隔臓器などへの移行を認めなかった報告もある。膵管を閉塞して作成するラット膵炎モデルで24時間後に大腿動脈にカニュ レーションして脱血させる出血性ショックでのBTの実験では、出血性ショックと無関係に膵炎でリンパや他の組織へのBTが認められた129)。一方、ラッ トにラベルした生あるいは死菌を飲ませ、48時間後に上腸管動脈を結紮すると、5時間後にいずれの菌も血中あるいは肝、腎から証明している。の虚血がBTに重要であると考えられる。

免疫機能の低下:ヌードマウス(nu/nu)ではヘテロマウス(nu/+)に比較してBTが効率に起こること、ヌードマウス にヘテロマウスの胸腺を移植すると、BTの頻度がヘテロマウスにまで低下することが報告されている130)。その理由としては、nu/nuでは腸管の 粘膜固有層のIgAを産生する形質細胞数が少なく、結果的に分泌型抗体量が少ないために常在菌が粘膜表層へ付着しやすくなるためと考えられている。5-FU、メトトレキセート、サイクロフォスファミドなどの免疫抑制剤はマウスでBTを引き起こしやすくする。小腸移植でサイクロスポリンを投与するとBTが 起こりやすいという131)。担癌(S-180肉腫)マウスでもBTが起こりやすいがこの時遅延型過敏症反応が低下しており、好中球増多がみられる 132)。 逆にPropionibacterium acnesで免疫増強するとBTが抑制される。IL-2の投与で腸管膜リンパ節へのBTが減少する。しかし、ヘルパーT細胞活性の抑制、T細胞サブセットの除去によってはBTは増加しないことから、細胞性免疫は腸管膜リンパ節へのBTを 修飾する要因ではないとする報告もある133)。

貪食能の欠陥:細菌が好中球(PMN)に取り込まれて腸管膜リンパ節に移行するいう仮説がすでに1926年に あったが、最近はマクロファージがBTに重要であるとする報告がある134)。すなわち、マクロファージを欠損させたマウスではBTが抑制される。生菌 あるいはラテックス粒子を蛍光ラベルすると、BT後の蛍光はリンパ球でなくマクロファージ内に認められ、貪食細胞がBTを仲介者であることが示唆される。

熱傷:熱傷によるBTは古くから報告されている。ラット熱傷モデルでは敗血症がBTを促進されること、またの厚 さの減少とBTとが関係あるとの報告もある135)。重症熱傷患者では早期に腸管からのラクチュロースの吸収が高まることから腸管の透過性が増加している と報告されている136)。また、Candida albicansE.coliをThiry-Vellaループに植えて熱傷を与えると、これらの細菌やエンドトキシンは腸細胞に取り込まれて移行していくことが電顕で観察されている137)。

エンドトキシン:エンドトキシン(RaかRb以上、100μg/マウス)の腹腔内投与でBTが起こる(エンドト キシン投与24時間後の腸管膜リンパ節の培養)との報告もある138)。エンドトキシンは腸管粘膜を傷害し、正常細菌叢を乱す139)。また、回腸と肝の キサンチンデヒドロゲナーゼとキサンチンオキシダーゼの活性が増加することから、活性酸素が膜障害やBTに関与しているとの報告もある。このことはこれら 酵素のインヒビターであるallopurinolを経口投与したマウスや140)、モリブデン酸塩を除き逆にタングステン酸塩(これら酵素を不活化する) を豊富にした餌で飼育したマウスではエンドトキシンによるBTが起こらないことから推定されている。また、ヒトにエンドトキシンを投与するとマンニトール やラクチュロースに対する腸管の透過性が増加する141)。このことは敗血症がBTを促進することと相似といえよう。


2.ヒトでBTはおこるか?

以上のように様々な条件でBTが生じる ことが100年も前から考えられてきたが、これらはほとんどが動物実験(おもにマウス、ラット、イヌ)で立証されてきたものである。たとえ実験動物でBTがおこっても真にヒトでBTが起こっている証拠をつかむのは難しい。しかし、ヒトの出血性ショック、重症熱傷ないしショック、外傷等の治療経過中に生じる 肺、肝、腎等の重要臓器の機能不全いわゆる多臓器不全にはBTが原因(特にエンドトキシン)で産生されるメディエーターが重要であると考えられている(図32:BTとMOFの関係、文献114から引用)のも確かである。また、これらの経過中におこる敗血症がBTによる内因性の細菌によるとの考えもある。

Gelfandら142)は、齧歯類やイヌでの成績はヒトには当てはまらずヒトに外挿できるのはブタであるとし て、ブタの出血性ショックモデルでBTの検討を行っている。即ち、ブタの出血性ショックモデルでは、出血後6時間後の門脈血、末梢血、腸管膜リンパ管、お よびリンパ節の細菌培養では対照群との間に差はなくBTは起こっておらず、また粘膜の組織学的検索でも差がなかったと報告している。そして1950年代の Fineの出血性ショックモデル(上記)に言及し、BTの発現に再現性がなかったこと、germ freeマウスでの出血性ショックで致命率が改善しなかっ たというその後の報告をとりあげている。さらに著者らはイヌの内臓循環系は正常でもsepticであること、イヌの門脈は括約筋機構をもち、乏血が起こる と肝や腸管膜の充血を引き起こすこと、また、齧歯類(ラット、マウス、ウサギなど)も肝静脈の流出口付近に括約筋様構造をもつこと、さらに腸管膜血管系は 濃密な交感神経支配をもっており、これが出血によって強い血管収縮を促すことから、この著者らはBTの研究には齧歯類の使用は適切でなく消化管や心血管系 がヒトと類似したブタを用いるべきであると指摘している。

同じグールプのMoralesら143)は、8.5時間後に犠牲死させる急性出血性ショックモデルでは無処置 群、2.5時間後からの乳酸リンゲル補液群、自己血補液群いずれでも腸管膜リンパ、門脈、肝、脾での培養陰性、組織学的にも3群に差異はなかったと報告し ている。また、48時間までの亜急性モデルでは、非出血性ショック群(開腹群)、ショック後乳酸リンゲル補液群、および自己血補液群いずれでも腸管膜リン パ節の培養で高率に陽性であったが、3群間に差はなかった。この場合全身麻酔と開腹のみ(sham operation)でもBTを起こしているが、出血性 ショック群との差はなかったことに意義があろう。また、この著者らは、ヒトやブタの腸管のキサンチンオキシダーゼの活性はラットに比較して非常に低く、活性酸素によるラットの傷害が、ヒトでも起こっていることに疑問を投げかけている。

Mooreら144)は重症腹部外傷でMOFの危険のある20症例の術後5日目までの、門脈血培養212検体中 陽性が8検体(2%)であり、このうち7検体はコンタミによるものと考えられ、1検体は再発性のぶどう球菌肺炎患者の5日目の検体であった。また、最初の 48時間までエンドトキシンは門脈、末梢血からは検出できなかった。MOFの発症率は30%であった。このようにMOFの発症と門脈および末梢血培養成績 との相関はなかった。また、門脈と末梢血間のC5a、TNF、IL-6にほとんど差はなく、またMOF発症とこれらメディエーターとの相関は認められな かった。この論文はヒトのBTは起こりにくいことを強く示唆している。

ごく最近Hochら145)は偶発的外傷患者について、補液を施す以前(受傷後2時間以内)から55日後までの 血漿中サイトカイン(IL-1α、IL-6、IL-8、TNF-α)およびエンドトキシンを測定している。その結果、補液する以前の早期にIL-6とIL-8が軽、中傷例に比較して重傷例で有意に高値で、さらにこれらサイトカインは24時間まで上昇したが次に次第に下降した。エンドトキシンはどの時期 にも検出されなかった。TNF-αはいずれの時期にも35pg/mlを越えることはなくIL-1αは全く検出できなかった。著者らはヒトボランティアでは エンドトキシン投与後1.5ないし3時間後には血中TNF-αが増加する事から、受傷早期にはエンドトキシンは血中に侵入しないと考察している。また、 IL-6やIL-8の上昇の刺激はエンドトキシン以外の刺激であろうと推定している。

以上、ヒトのBTを疑う成績について述べてきたが、BTの研究には動物実験で培われてきた長い歴史があり、ヒトでBTが起きるか否かについての議論は、最近は否定的な報告が多くなってきたものの簡単に決着のつく問題ではなさそうである。


3.BTに否定的な我々のヒトでの成績

この章のCで述べたように我々の成績では重度熱傷や出血性ショックの受傷直後の血中エンドトキシンは全くといっ ていいほど検出されない。また、サイトカインも敗血症群に比較して低値である(図1、2、3、4: 文献146から引用)。図33に出血性ショックにおけるエンドトキシンについ ての時間的推移について、ショックより離脱するまでの時間を3群に別けた場合について示した(New PCA法前処理後エンドスペシーで測定)146)。図の様にどの時期でも3群ともにcut off値(9.8 pg/ml)以下を推移した。また図には示さないが、輸血量を2,000 ml以下、2,000 mlか ら5、000 mlまで、5、000 ml以上の3群に分けても3群間に差はなくいずれも陰性であった。また、受傷直後の血中IL-8量は正常よりも明らかに 高値を示した。これらのことはサイトカインの産生刺激はエンドトキシン以外である事が示唆される。

さらに重症熱傷でも検討した。図1、2、3、4に重度熱傷22症例についての岩手医大高次救急センターへ搬入直後の血中エンドトキシン、TNF-α、IL-6濃度について示したが、出血性ショックの場合とほぼ同様にエンドトキシンはほとんどがcut off値 (9.8pg/ml)以下であったが、TNF-α、IL-6濃度は正常者の値よりも有意に高値を示した。147,148)。図34(図37まで文献146から引用)は熱傷面積(TBSA) 別のエンドトキシン値の7日までの推移であるが、どの群でも9.8pg/ml以下で推移し、各群内での推移にも有意な変動はなかった。また図示しないが、 生存、死亡例別でも同様の変動であった。図35は来院時のTNF-α;値をTBSA別にみたものであるが、有意差はなかったが受傷面積が 多いほどTNF-α値が高値の傾向を示した。なお、治療全経過中(感染期を含む)のエンドトキシン値(最高値をプロット)は受傷面積と相関する傾向にあり (図36)、また、生存例よりも死亡例で有意に高値であった。これは当然ながらグラム陰性菌感染の結果である。またTNF-αの全経過中での最高値はエン ドトキシンと同様に受傷面積と相関し(図37)、生存例よりも死亡例で有意に高値であった。このように熱傷でも受傷直後はエンドトキシン血症を示さず、BTは否定的であった。

以上のようにhypovoremic shockではエンドトキシン血症が見られないことから、我々は数年前からBTを否定する立場をとってきたのである。

参考文献

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148) Endo S et al, Burns 19:124-127,1993




★BTとエンドトキシンに関する最近の論文(補填)

以下の2編は血中エンドトキシン濃度をmicrobial translocationの指標としているがエンドトキシンの測定法は特異的方法ではない。

Ancutaら(PLoS ONE;www.plosone.org, 3(6):e2516, 2008): AIDS患者の単球の活性化とDementia(痴呆)はmicrobial translocationが原因である。

Brenchleyら(Nature Medicine 12:1365-71, 2006, Mucosal Immunology 1: 23–30, 2008) : HIV感染における慢性炎症にmicrobial translocationが関与している。

AIDS患者では特に深在性真菌症を合併することが考えられるので、グルカン値が高いと考えられる。特異的なエンドトキシン定量法ではこの様な結論にならないだろう。


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