週刊墨教組 2004年度




週刊墨教組 No.1468 2005.3.15

「学力向上新すみだプラン」三八六一万九千円
両国中学校の改築 七億四二一〇万円
「障害児」教育、認定就学者に対する介助員配置七八〇万七千円
特別教室の冷房化は予算措置されず


墨田区の二〇〇五年度予算案が、区議会で審議されています。その内、教育委員会関連のプレス発表部分は資料の通りです。(社会教育関連一部カット)


「すみだ教育研究所」新設
 墨田区は、「教育改革」を主に担当する部署として、新たに課長を配置し、「すみだ教育研究所」を新設することを予算案で明らかにしました。従来は、多くの場合、その任を指導室が果たしてきました。指導室長は、その任にある間は区の職員ですが、本来は私たちと同じ東京都の職員です。また、教諭としての学校現場の経験もあります。しかし、「研究所」の課長は、区の直属であり、上意下達で仕事をする行政職です。学校現場になじまない手法です。今後具体化されるであろう「改革の内容」は、学校現場に配慮したものより、議会(政治)に、より配慮したものになることが予想されます。墨田教組は「教諭は教育を掌る」立場から、児童・生徒にとってマイナスになる具体案には「NO」の意思表示をしていきます。

「土曜補習」の具体化、「学力テスト」継続
 区教委は、「学力向上」の施策のひとつとして、新たに「土曜補習」を具体化するため、「補習プリント作成費」・「アシスタントティーチャー派遣人件費」などを予算化しようとしています。「学力低下」を口実とした「土曜補習」は、そのねらいが、「学校完全五日制」と「週四〇時間勤務=週休二日」の否定であることは明らかです。私たちの労働条件の改悪です。墨田教組は、当然反対です。私たちの勤務条件は、都条例で決められています。そこで、現在、東京教組が都教委と、この件で交渉を続けています。墨田教組としても、区教委と、「交渉事項である」ことを確認し、予備折衝に入っています。交渉中ですので、土曜勤務が命じられることはありえません。
 「学力テスト」は、「学力」が「ペーパーテスト学力」に矮小化され、しかも、その弊害は、全都的に明らかになっています。あくまでも中止を要求していきます。

「障害児」教育の充実
 「障害」があると認定されて、「普通学級」に通っている児童・生徒に対し、介助員が配置されています。「認定就学者」であることが条件となっていますが、介助が必要なら、介助員の配置を区教委に要求していきましょう。




はじける芽 135   5年生
二月の指導題目 新聞やテレビのニュースなど、世の中の動きに注目し、新聞社に自分たちの意見を投稿しよう!

  雪道でスリップ!!
 昨年の十二月三十日午後五時頃、滋賀県高島郡今津町の山道で車がスリップしました。車が急に九十度左に回転し、タイヤが溝にはまって止まりました。「ビクッ!」として外を見ると、前のバンパーが木にぶつかってつぶれていました。スピードは出ていなかったので衝撃は少なかったです。京都の祖父母の家に遊びに行く途中でした。車の中だと携帯電話がつながらないので、雪が降る中、父は外に出て事故の様子をJAFの人に伝えていました。この時、外は溝から脱出しようとして空回りしたタイヤのこげる臭いが臭かったです。三十分でJAFの人が来てくれて、大型トラックで車を引き上げました。「ズズズー」と上ったのでびっくりしましたが、直ぐ来てくれて本当に助かりました。シートベルトをしていなかったら大けがをしていたかも知れません。この体験でシートベルトの大切な役割が良く分かりました。皆さんもシートベルトは忘れずに!

  あいさつは気持ちがいい
 私は学校に行く時、マンションの管理人さんに「おはようございまぁす。」と言っています。管理人さんも「おはよう。行ってらっしゃい。」と言ってくれます。こういう日は、いい日になれそうと思います。けど、全校朝会では、「あいさつしてもムシする人が多い。」と先生が言っていました。私の学校は「おはよう作戦。」という運動をやっていますが、言われないと返さない人が多いようです。あいさつは気持ちがいいのにと悲しくなります。帰りには、他の学年にも「じゃぁね。」とか言います。返してもらうとうれしくて思わずスキップをしてしまいます。
 食べ物に対しても「いただきます。」と「ごちそうさまでした。」を言う人が少ないようです。すごく残念です。あいさつは人と人をつなぐ物だから、大切にしたいです。これからもあいさつを大事にしてもらいたいなと思います。私の家では、あいさつを大事にしています。

  早く真偽をはっきりさせて
 朝日新聞とNHKで争いが続いている。朝日新聞が本当のことをいっているのだろう。なぜかというと、圧力が本当になかったのなら、なぜわざわざ休日に長い時間をかけてまで話し合うはずがない。また、元ディレクターが、なぜ元上司に対して不利なことをいうのだろうか。それは、政治的圧力が本当にあったからだ。このようなことは、戦前や戦時中の言論の弾圧と同じだ。正しい報道がされなかったために、たくさんの人が亡くなった。そのことを忘れないでほしい。NHKもそのような政治的圧力に対しての抵抗力を持たなければならない。しかし、政府関係者が報道に介入することは、言論・思想の自由をおかすことになる。そのようなことは絶対にやめてほしい。安部氏・中川氏は、「公正中立に」といったといっているが、政治家が放送前に報道関係者と会うこと自体がおかしい。
ただ、これはあくまで朝日新聞よりの意見だ。事の真相を早くはっきりさせてほしい。
      
  いたちごっこはやめて
 NHKと朝日新聞の番組改編問題対決は、依然進行していない。政治的圧力があるかないかの問題だ。朝日新聞が改編を指示したとされる人物に取材したところ、「政治的な圧力を感じた」と答えたと、朝日新聞は報道した。ところがそれに対し、NHKが、「そんなことは言っていない。感じていないと答えた」と会見した。これに朝日新聞が抗議、さらにNHKが抗議している。そのせいで話が進まない。これは、大規模ないたちごっこではないだろうか。このいたちごっこは、どちらかが「間違えた」と言わない限り、終わらない。さらに、NHKの裏に政府があると仮定する。すると、NHKが、政府に動かされていることにならないだろうか。つまり、政府が報道の自由を阻止していることになる。これは、いかにも戦争中の日本だ。さらに、イラク自衛隊派遣問題など、今の日本は完全に戦争に近づいている。ぼくたちが大人になるときにどうなるか、このままだと心配である。日本が戦争の道に進まないようになってほしい。

  優先席は進んでゆずって 
 サッカーの練習の帰りに、京王線に乗ったときのことです。優先席で騒いでいる人がいました。よくよくみてみると、若者、二十代ぐらいの男の人が五、六人で優先席をせん領していました。一人一人が二人分ぐらいをとっていました。つめて座れば四人がけで、向かい側もあるので八人分をせん領していました。そこへお年寄りの方が乗ってきました。ぼくは、その人達が席をゆずるかどうか見ていました。でも全然どこうとしませんでした。見て見ぬふりをしていました。ぼくは、席をゆずろうとして、立ちました。しかし、ちょうど、その男の人たちが降りてお年寄りの方はやっと座れました。(やっと座れてよかったな)と思いました。男の人たちは、五、六人で大きな声でしゃべっていました。ぼくの向かいに座っていた人が迷惑そうにその人たちを、にらみつけるように見ていました。ぼくは、(ほかの人も迷惑してるんだな)と思いました。お年寄りの方が乗ってきたときには、すぐに席をどき「どうぞ」と声をかけてください。それが思いやりだと思います。

自分の意見を述べる
 新聞の切り抜き帳の感想の書き方も、ずいぶん上達してきた。今回の書き方も、四百字詰め程度の文章でも、大切な事実を入れながら、自分の意見を主張する。文章というのは、短ければ、大事な言葉のみを残し、一番に言いたいことを残していくので、かえって難しい。しかしながら、今回の皆さんの文章は、具体的な体験をふまえて、それを一般化して結論に導こうとしている文章が多く、なかなかだった。
なぜそれができる文章になったのか。それは、皆さんが一年間積み重ねた日記や班日記などによる文章力の力だ。それともう一つは、「新聞の切り抜き帳」を一年間継続してきたからだ。世の中の動きをしっかりとふまえて、自分の体験をつなげていることだ。 



週刊墨教組 No.1467 2005.3.2

「沖縄辺野古」現地連帯・激励ツアーに参加して


 「沖縄の闘いと連帯する東京東部集会実行委員会(一九九五年の米兵による少女暴行事件への沖縄の怒りに連帯しようとつくられた)」による『「沖縄辺野古」現地連帯・激励ツアー』に墨田教組から派遣され、一月二九日から三一日まで、沖縄に行ってきた。東部七地区から総勢二四人が参加して、「沖縄の反戦・反基地の闘いに連帯する」「普天間基地即時閉鎖・辺野古沖軍事基地建設反対」「辺野古現地闘争支援・連帯」を目的とする現地行動を行った。

 「レンジ4都市型訓練施設」
建設反対闘争
 沖縄に着いて、レンタカーに分譲して行動開始。最初に訪ねたのはキャンプハンセンのある金武町伊芸区。キャンプハンセンでは、今までのガンポジションから山に向かって撃つことになっている実弾演習でさえ、多くの事故が発生しケガ人を出しているのに、伊芸区の住宅地から三〇〇m・沖縄自動車道から二五〇mしか離れていないレンジ4に「都市型訓練施設」(発砲方向は無差別)の建設が進められている。
 公民館で区長さんの説明を聞いた。地区の総意で反対している。この施設は、グァムでは危険すぎると反対され、恩納村では住民の座り込みで阻止されて、伊芸に造られ始めた。伊芸ではキャンプハンセンへの道路が複数あり、工事中の施設もこれだけではないので、工事車両の特定も難しい。しかし、工事車両を何とか止めたいと、キャンプハンセンのゲートで、早朝二時間の阻止行動が毎日行われている(このため、工事時間は午前三時からになったりしているそうだ)。電気工事は地元からの工事になるから、その時は実力で止めるという決意。その後、現場の監視塔に案内していただいた。そして、区長さんから、昨年七月一日付けで出された「署名活動へのご協力のお願い」と署名用紙を持ち帰って、反対署名に協力してほしいと依頼があった。現地の闘いに連帯するために、私たちも反対署名で世論を喚起したいと思う。

 辺野古沖軍事基地建設反対
ーテント村でー
 初日の夕方、金武町から辺野古へ「↓テント村」というカンバンを頼りに行ったが、既にテントはたたまれていた。
 二日目の朝から、持参したカンパ(五四万余円)と激布を「ヘリ基地反対協議会」共同代表のお一人である安次富さんに渡し、座り込みに参加する。「はじめて来られた方へ」というプリントを渡され、工事をする側に雇用されている漁船の主をふくむ地元の人たちとの関係に神経を使っていることを知らされる。その後、約三キロのヘリ基地が作られたら見えなくなる水平線を前に、辺野古漁港の岸壁で聞き、テントの下で聞く。
 三〇〇日になろうというテント村での座り込みの最初は、二隻の漁船とカヌーで海上阻止闘争が闘われ、やぐらは5カ所建てられてしまった。けれども、今は近隣の海人(ウミンチュ)が、「自分たちの海が・・・」と共に闘い始めてくれて、海人のプロの知識を闘いに生かしてくれている。一五隻以上の船がボーリング調査のための次の工事を阻止し続けている。海事法(危険回避義務)を活用し、一日七時間海中につかっている「人」と「カヌー」と「漁船」が、阻止し続けていることをしっかりと受け止めてほしい。
 巨大施設が作られたら生態系への影響は計り知れない。ヘリや飛行機に付着した塩分や、戦車についた劣化ウランなどの洗い流すために使われる六化クロムなどの有害物質は海に垂れ流される。黒潮に乗って伊豆まで行くクマノミを知っているでしょう、沖縄だけの問題ではありませんよ、という話。
 辺野古にあるのはキヤンプシュワブ。辺野古と金武町の背後でつながるキヤンプシュワブとキャンプハンセン。その両方につながる施設としてヘリ基地は計画されている。そして、今、キヤンプシュワブの若い海兵隊員の多くが、イラクに送られていて、あのファルージャの虐殺の中心になっている事実。地元の人たちのこの事実への思い。
 「命を守る会」の金城さんは、「米軍統治下の二七年間とかわらぬ現状に、政府の耳を貸さない姿勢に表~が立つ」と、「敗戦国日本を引き受け続ける沖縄」を語ってくれた。豊かになれるはずの沖縄が、政府の金を当てにしなければならない現状。復帰後つぎ込まれた六兆円がゼネコン業界に流れ、ゼネコン業界が県政を支える構図が、背景にある。沖縄戦で亡くなった親兄弟を持つ私たちは、次の世代に何を残さなければならないのかと「ヘリ基地反対協議会」の八年余の闘いを語る。七年前の市民投票があったにもかかわらず、受け入れ表明・辞任・年末年始を利用しての票固めでと、くやしい思いが伝わってきた。
 戦後基地で働いていた人たちが退職後白血病で亡くなるケースが多い。劣化ウラン弾の訓練も併せて、誰かに調べてほしいがという話もある。
 五年前と比べて、切り崩しの現状は厳しい。けれども、運動を継続することで、反対闘争は全国に広がっているし、闘いに参加する海人も増えている。
 戦前・戦中・戦後を生きぬいてきたおじい・おばあたち生き証人たちのがんばりを、しっかりと受け止めてほしい。今のうちに、自分自身をたたき直して、子孫に平和な日本を残してほしいと、思いを語られた。
 闘いの日々を記録するアルバムや日誌を見せてもらいながら、地元の方たちや、他の本土から来た人たちと交流する。
 海上での実力闘争の総指揮者が、休みをつぶして私たちのために船を出してくださり、ボーリング調査のための第一段階として立てられてしまったやぐらまで、サンゴ礁の海を行く。ボーリング調査・資材ヤード建設阻止のために、体をはっている人たちがいる。数カ月前には、この阻止闘争の中でケガをさせられた人もいるのだと、厳しい闘いの状況と、端から端までの3qの大きさを実感させてもらった。
 今は、動きを止めているけれど、いつ再開への動きが始まるかわからない。現地の方たちの緊張感は、きっと私にはわかっていないのだろう。

 ヘリ墜落事故の生々しい跡
 三日目は、沖縄国際大学へ行き、ヘリ墜落事故の生々しい跡を訪ねた。
 目の前の焼け焦げた校舎の外壁を見、生活道路の反対側にある集合住宅を見る。よくぞ死傷者が出なかったものだ。
 その後、初めて沖縄に来たという人たちもいて、南部戦跡にまわる。過去の戦争の後始末を引き受けさせられているからこそ、今の戦争に巻き込まれる沖縄。

 今回の沖縄行動で、一番心を打たれたのは、伊芸地区のレンジ4の反対闘争でも辺野古のヘリ基地反対闘争でも、勝利を確信する人たちによって、実力闘争を機軸にすえた闘いが続いていることだ。正直なところ、5年前に沖縄に行き、「命を守る会」の方々と交流したときには、このような「実力阻止闘争」が続けられるものだとは思っていなかった。継続することで、闘いが広がっている。阻止闘争のための船が増え、国際的な連帯行動が進み、実力闘争を軸にあらゆる方法で闘いが続いている。このことに、勇気づけられ、声を大きくして自分の周囲の人たちに伝えたいと思った。テント村で見た闘いの写真、緊迫感を伝える「日誌」。沖縄に遊びに行ったら、一日をテント村に寄ってアルバムを見せてもらうといい、テント村での出会いもいいよと伝えたい。ホームページを見て来る若い人たちがいるという話に、学校で子どもたちと一緒に見るのもいいなあ、と、パソコン嫌いを少し考え直そうかと思ったりもした。
 そして、伊芸でも辺野古でも考えさせられたのが、生活や収入のために建設工事などを受けている(建設する側の)地元の人たちとの関係を、大切に考え行動していることだ。難しいと思った。でも、この闘いで地元の人間関係が二分されたりしてたまるかという、闘いを広げる目を常に残しながらのとりくみに学びたいと思う。
 また、闘いにはお金がかかる。このことも、痛感させられた。交流の中で「座り込みに一時間でもいいから加わってほしい、と思う一方、その費用を闘争資金にカンパしてほしいとも思う」と、話があった。お金が足りなくて負けるということにだけは、してはいけないと思う。今、東京にいてとにかくできること、自分たち自身の闘いを続けると同時に、カンパを送ることだと思う。(郵便振替口座01700・7・66142・ヘリ基地反対協議会)
 ボーリング調査を請け負い、反対する人たちにケガをさせたりしている会社の本社が、亀戸にある。ここへの抗議行動も実行委員会で検討されている。
 改めて、米軍の「駐屯地」だけが「基地」のように地図上には表示されていても、実はその背後に広大な「実弾演習場」があるという事実を痛感させられながら、そして、危険と隣り合わせの日常生活をつきつけられながら、闘わなくてもすむようになるのが一番なのだ、そのために、本土にいる私たちにできることは何かを考え、行動にうつしたいと思った。
 現地テント村で知り合った、ピースボートをやっている人生の大先輩たちに見習って、リタイアしたらと思いつつ、その前に、勝利してほしいとも思う。



週刊墨教組 No.1466  2005.2.16

「あの日を忘れない」ための証言
  いまひとたび
   『描かれた東京大空襲』について


静かな反響

 すみだ郷土文化資料館が監修した『あの日を忘れない 描かれた東京大空襲』(柏書房)が、静かな反響をよんでいます。まさに、「地獄の業火を紙に焼き付けたオールカラー画集」なのですが、記憶を再現した迫真の画とともに、添付された解説文が胸を打ちます。

学校が火に包まれていた

 燃えている路地を逃げる母子
   作者 豊田照夫
   日時 三月十日
   場所 現墨田区横川
   年齢 九歳
 私は、国民学校三年生で、本所区の柳島国民学校と精工舎の間、本所区横川橋四丁目に住んでいた。三月九日から十日未明にかけて、警戒警報つづいて空襲警報が発令され、私だけ柳島国民学校の防空壕に避難していた。母は、近所の人たちと家を守っていた。しかし空襲で周囲が燃え始め、母は学校も危険と判断し私を迎えにきたので、母と一緒に逃げることになった。
 防空壕を出たとたん、学校の廊下には火の粉が吹雪のように流れ、煙のなか、子どもたちは泣き叫び、皆、出口に殺到した。私と母は、何とか自分の家の前にもどり、私は母に言われるまま頭上の防空頭巾に何杯も水をかけ、路地の両側の家が燃えている間を通り抜けて逃げたのだった。私たちが通り過ぎた後、火と烈風で、家はみるみる崩れ落ちていった。広い通りに出ると、風が強く立っていられず、何度も吹き飛ばされそうになりながら、やっとのことで母と私は錦糸公園に逃げのびたのだった。

 二葉国民学校の惨状
   作者 堀切正二郎
   日時 三月十日
   場所 現墨田区石原
   年齢 二十歳
 隅田川に架かる厩橋を渡った私は、震災記念堂のある横網町公園に向かった。空襲の夜、逃げ回り、公園で疲れ切って休んでいる人たち一人一人に、「石原一丁目の堀切はいるか」と消息をたずね歩いた。すると、そのなかの一人が「あなたのお母さんは二葉国民学校へ逃げた」と返事をしてくれたのだった。私は、「母に会える!」とはやる気持ちを抑えて、自宅近くの学校に急ぎ足で向かった。
 しかし、国民学校の入り口についたとき、私は立ち止まったまま動くことができなくなった。この絵のように、校舎の出入り口でたくさんの人たちが黒こげになり、折り重なるようにして亡くなっていた。校舎のなかに火が入り、どうにも我慢できなくなり飛び出そうとして出口に殺到したのだろう。生きている人は一人もいなかった。この時は、まだ家族は生きている、と信じていたが、結局、行方不明のまま戻ってこなかった。
 私の家族六人も、この学校のどこかで亡くなったのだと思う。


 路上で亡くなっていた三人
   作者 石川実揆彦
   日時 三月十二日
   場所 現墨田区菊川付近
   年齢 十七歳
 自宅の焼け跡を後にした私は、その周辺一帯で家族をくまなく捜し回った。そして、中和国民学校近く、本所区菊川一丁目の電話局付近の路上にさしかかった時に遭遇したのが、絵のような光景である。
 焼けこげた電柱の下で三人の方が無残な姿で焼け死んでいた。親子のようで、真ん中に死んでいる子どもは四〜五歳くらい。子どもの向かって左側には三十〜四十歳くらいの母親らしき女性、そして右側は父親らしき男性が倒れていた。三人とも仰向けに死んでおり、子どもはほとんど全身が白骨化し、両親らしき大人は、炭化した表~部が破れた状態で、身体の一部は子どもと同じように白骨化していた。私は大変な衝撃を受けた。
 その後、弟と妹と再会を果たせたが、父と姪はいまだに行方不明のままである。

解説文を添付すること
 的確で丁寧な解説文だけでも、自立した貴重な資料といえますが、解説文を添付することについて、田中禎昭さん(すみだ郷土文化資料館専門員)は、「あとがき」でつぎのように記しています。

 「『記憶の作画』という過程が、作者の想像をも超え、苛酷な『記憶』と対峙する辛く厳しいものであることを物語っています。しかし、その苦しみを乗り越えても『言葉に出来ぬ思い』を人々に伝えたい。今回、応募された方々の絵は、そうした渾身の思いが集約したものといえるのです。
 本書は、そうした作者の思いをできるだけ多くの方々に知っていただくため、『絵』に描かれた状況だけでなく、その状況の背後にある作者の体験内容全体を聞き取り、それを要約し解説として『絵』に添付することとしました。したがって、本書は、『絵』だけでなく、それに付された『解説文』をあわせてお読みいただき、『絵』と『言葉』の両方から、体験者しか知り得ない重い空襲の『記憶』を読者に推察していただくことに力点を置いています。体験画は、単なる視覚的な『記録』ではありません。それは、体験者しか知り得ぬ、しかし語り得ぬ『記憶』の表現でもあり、そしてそれを知ることこそが、今、『戦争の本質』を認識する上でもっとも大切なことだと考えています。」

 絵画提供者とすみだ郷土文化資料館と出版社の熱い意思が、風化しかけた東京大空襲の「記憶」を、鮮烈に届け、伝える。



石原都知事「ババァ発言」訴訟、
    いよいよ結審へ


「『文明がもたらした最も悪しき有害なものはババァ』なんだそうだ。『女性が生殖能力を失っても生きているってのは、無駄で罪です』って。男は八十・九十歳でも生殖能力があるけれど、女は閉経してしまったら子どもを生む力はない。そんな人間が、きんさん、ぎんさんの年まで生きているってのは、地球にとって非常に悪しき弊害だって・・・・」
(『週刊女性』2001年11月6日号)
 この発言は、一度ならず、東京都の公的な会議でも繰り返された。二度にわたるこの差別発言の暴力性について、公開質問にも答えなかった知事を相手に、一一九名の原告が(のちに一三一名に拡大)弁護団十六人とともに東京地裁に提訴したのは、二〇〇二年十二月二十日だった。

 訴えの目的は
@謝罪広告を主要新聞六社に掲載すること
A原告各自に十一万円の損害賠償金を支払う
というものである。
 提訴当初、弁護士間でも、こういう訴訟は訴えることそのものに意義があるのだから、すぐ終了するのでは・・・、といわれたり、「いつもの調子で言ったたわいないことに目くじら立てなくても。」と揶揄するような反応が多かったにもかかわらず、裁判は二年以上の長期にわたって進行してきた。それは、それまでに繰り返されてきた三国人発言、障害者の人格無視発言、中国人のDNA発言など、国際的には人権上の大きな問題として是正勧告がだされていることを一切無視してきた公人としての知事に対し、これ以上放置することはできない、言葉の暴力性についてのきちんとした判断をしてほしい、と多くの女性が自分の生き方総体をかけて訴えてきた一人ひとりの陳述の言葉の重さに対して、裁判長始め司法が考えざるを得なかったということだろう。

 二月四日、原告や支援者を中心に提訴2周年の集会がもたれた。集会は、一人ひとりの陳述からの抜書きをもとに書かれた竹森茂子さんの脚本による構成劇「目くじらをたてた百三十一人の女(わたし)」に始まり、弁護団の中心として活動してきた中野麻美さんの講演に引き継がれた。
 中野さんは、この裁判の意義を「沈黙と不在を強いられてきた女性たちが自分の痛みを表現として持つ力が試された法廷である。」と話した後、知事の発言の特徴を7点にわたって整理してくれた。
@ 知事という公職にあり権力を持つ人間が公的な場やメディアを使って行ったこと。
A 自己の主張の正当性を誇示するために、東大教授の言葉や有名な文学作品を借りていること。
B 引用したものは、趣旨が歪曲されており、デマゴギーの流布であること。
 (おばあさん仮説は、文明の発展にとっておばあさんの果たした役割を強調している。深沢七郎の「楢山節考」は、老人を捨てざるを得なかった人間の哀しみを表現しているもので、生殖能力のない女性が捨てられる話ではない。)人の発言をまともに理解することができない人間が民主主義の土台をなす公職についてはならない。
C 社会に存在する偏見や差別をバックにその対象者の反論を封印してしまう力をもってしまった。外国人・障害者・HIV感染者・同性愛者など沈黙と不在を強いられてきた少数者を排除する方向が強まってしまった。
D 東京都の会議の席上「ここに女性がいるからいえないけど・・・。」と枕詞をおいて発言した。そこにいる女性を意識しつつ支配者が目前の弱者を威圧する話法であり、女性に対する攻撃的な意図が明白である。
E 人権としての生存権を、性のありようや生殖能力の有無によって云々する人権感覚の欠如が明白である。差別や暴力によって不平等である前提を無視して競争の中でふるい落とそうとするグローバリズムやブッシュの一般教書に頻発される「神が作った自由の道をまい進しよう」というような保守主義からのバックラッシュの中で出されてきている言葉として注目すべき。
F 日弁連の人権救済警告書の無視を始め、さまざまな抗議も一切無視することによって、社会から封印していく性格をもつ。民主主義社会の構成員として、人と人がどういう言葉で会話していくべきか、ということがまったくわかっていない人が公職についているのは問題である。
 この裁判では、発言の違法性や暴力性は明らかにされているが、誰にむけたものかという特定性や原告の主張(苦痛)は法的保護の対象とならず、主観にすぎないとするのが石原知事側弁護団の主張です。しかし、セクハラの概念規定は、セクハラを受けた当事者の主観こそが重要なのであり、これを覆すことは、法的な論拠を失うことになります。
 集会に参加されていた斉藤貴男さんは、こうした重要なことを報道しない、また、知事の差別発言を容認してきたメディアの一端を担うものとして恥ずかしい、しかし、女性たちの訴えをしっかり受け止める男もいるということを知ってほしい、と力強い連帯の言葉を表明してくれました。
 被害の実態を自分の生身の言葉で言語化し伝えていく力の大きさによってここまできた裁判の結審は、二月二四日一時十五分からです。裁判長は司法記者席を十八席用意するように指示しました。社会的には非常に注目される判決に期待したいと思います。
 また、裁判所に提出した陳述書を社会的に公開し、この裁判の持つ意義を広めたいと、このたび、明石書店より「百三十一人の女たちの告発」という本が出版されました。一部千円です。組合事務所にありますので、ぜひ、購入してください。



週刊墨教組 No.1465 2005.2.7

教育基本法「改正」案 今国会提出は見送り
    改憲と連動する教基法改悪


 一月二一日、第百六十二通常国会が、六月十九日までの百五十日の会期で、召集されました。
 小泉首相は、衆参両院本会議で施政方針演説を行い、「教育基本法の改正については、国民的な議論を踏まえ、積極的に取り組んでまいります」と強調しました。
 しかし、二十六日、「愛国心」をめぐっての与党内での調整がつかず、今国会での教育基本法「改正」案の提出は困難となり、見送る方針が決まりました。

性急に結論を出す必要はない
 二十六日、公明党の神崎代表は、記者会見で、「教育基本法は準憲法的な性格で、憲法改正と連動して結論を出した方がいい。この国会でやらなければいけない、と性急に結論を出す必要はない」と、「改正」案提出に否定的見解を示しました。
 だからといって、安心はできません。

改憲と連動する教基法「改正」
 自民党内にも、憲法「改正」と教育基本法「改正」を連動させるという志向は根強く、例えば、教育基本法改正の与党検討会座長を務める保利耕輔元文相は、「憲法と基本法の合わせ技でいかないと矛盾が出てくる」と明言しています。
 今年十一月にまとめる自民党の憲法改正案を踏まえて、改憲と教基法「改正」という目標を、一挙に突破しようとしているのです。
 小泉首相も、施政方針演説の中で、「戦後六十年を迎える中、憲法の見直しに関する論議が与野党で行われております。新しい時代の憲法の在り方について、大いに議論を深める時期であると考えます」と強調しています。

新憲法起草委員会
 このような情勢に呼応するように、二十四日、自民党は、新憲法起草委員会の初総会を開きました。森喜朗委員長は、「自主憲法制定は立党以来の党是。国民の関心が広がっているこの機会に、党を挙げて改正草案を取りまとめたい」とあいさつしたといいます。
 起草委員会には、検討項目別(前文、天皇、安全保障・非常事態、国民の権利・義務、国会、内閣、司法、財政、地方自治、改正手続き・最高法規の位置づけ)に、十の小委員会が設けられています。三月までに報告書をまとめ、森委員長による試案として集約されます。いつものことですが、凄まじい拙速です。
 昨年末の党憲法調査会がまとめた改憲大綱素案は、あまりに杜撰で、白紙撤回されるという醜態を演じました。そのことに懲りて、小委員会委員長には、中曽根康弘(前文)など、重厚な面子を揃えています。
 油断できません。あなどれません。
 私たちも、左記の区民の集会などに参加して、ささやかでも、抵抗しつづける力を結集しなければなりません。


 学習会へのお誘い

子どもたちの教科書は今・・・・?!
〜教育をめぐる危機と教科書採択の行方〜
2・19講演学習会へ!!!
 講演:三宅晶子さん(千葉大学教授)
&  リレートーク


何が目的? 学校教育改革・・・
「新しい歴史・公民教科書」で何を教えようとしているの?
国のため、戦場に送るための子どもじゃない!

みんなの声で「つくる会」(扶桑社)の教科書採択にストップを!
皆さんの「?」や「ひとこと言いたい!」をぜひこの集いに寄せてください!

三宅晶子さん
1955年生まれ 千葉大学教授
著書
『「心のノート」を考える』(岩波ブックレット)
『ちょっと待ったぁ!教育基本法「改正」―「愛国心教育」「たくましい日本人」「心のノート」のねらいを斬る』(共著、学習の友社)など

2月19日(土)午後1:00〜
生涯学習センター(ユートリア)和室
京成・東武曳舟駅5分
資料代:500円
連絡先:教育を考える墨田ネットワーク




はじける芽( 134 )

一月の指導題目 冬休み生活の中で、心に強く残ったことを
詩に表現してみよう。


下町の子の冬休み

お父さんの書き初め
5年
書き初めの時、
一枚破れてしまったので、
そのままにしていた。
すると、
そこにお父さんが書きはじめた。
ぼくと同じ、
「早春の光」。
書き終わった。
見てみると、かすれている。
さらに、手本を完全に無視。
でもお母さんは、
「すごい!」
と、ほめた。
次の日、
習字のうまいおじいちゃんが、
「勢いがいい!」
とほめた。
そんなにすごいのかなあ。
書き初めを練習している子どもと一緒になって、父親が字を書いているのがうれしい。家族みんなが、書き初めに注目しているのがうれしい。

窓を開けて
5年
このあいだ、
すごい雪が降った。
窓を開けてみた。
まどの外は、
だれも通っていない、
雪の道路だった。
車が通ると、
ちゃんとタイャのあとが付く。
白い、しかもあたると冷たい。
でも、その景色は最高だ。
どの景色よりも。
東京にも久しぶりの雪が降った。いつの時代でも、子どもの心は、雪に夢中になれる。最後の二行に倒置法を使っているのもいい。
北風は強い
  5年
「わっ。」
私は叫んだ。
帽子が飛んで、
「パタッ。」
と動きを止めた。
北風がとてつもなく冷たい。
手を動かそうとしても感覚がない。
あれっ。
ゆっくり動かして見てみると、
手が真っ赤だった。
さわってみたら、
あまりの冷たさに背中がゾクッとした。
冬は人と風が戦う季節だ。
詩は、感動した所から書いていくのがいい。あとは、ものやことに関わった通りに表現している。詩は、写実主義でよいと言われるゆえんである。

負けるもんか!!
          5年
「犬も歩けば棒にあたる〜。」
おばあちゃんが読む。
私は、
(犬はどこだ〜)
と、心の中で思いながら、必死で探す。
と、その時
「はいっ」
という妹の声。
私は、
「もっ百花は、目がいいからとれるんだよ〜。」
と言いわけをする。
妹は、
「そんなの関係ないも〜ん!。」
という。
次こそぜったい負けないぞ!!!
昔は、どこの家族もこのように「カルタ」を楽しんだ。「いろはがるた」なども、知っている子も少なくなってしまったのではないだろうか。

おみくじ 
5年
寿老神で、おみくじを引きに行った。
そのおみくじは、おまもりつきで百円だ。
わたしはおそるおそる、
「エイッ。」
と引いた。
吉だった。
鬼子母神でも引いた。
ここでも吉だった。
恵比寿神でも引いた。
小吉だった。
妹は、吉だった。
母は、小吉だった。
今年はいいことあるだろうな。
初もうでに出かけた家族も多かったに違いない。何となく引いてしまうのが、おみくじである。最後の一行がいい。

冬の大三角形
5年
「あ。」
とぼくが言った。
空に星が出ていて、冬の大三角形があった。
ぼくは、
「ねえ、パパ冬の大三角形って、
ベテルギウスとシリウスとプロキオン
だよね。」
と聞くと、
「そうだよ。」
と言ってくれた。
冬にしか見えない冬の大三角形。
でも、東京ではあまり見えない星。
夏にしか見えない夏の大三角形もある。
ぼくは、二つ見たことがある。
星はきれいだなー。
星にさわってみたいなあー。
オリオン座と、冬の三角形は、東京の空でもはっきり見える。七百年前に光った星を、地球上で見ているのも、夢があっていい。

白い息
5年
学校に行く時に、
「ハァー。」
と、息を吹いてみた。
白い息は、私の口からモアッと出た。
寒いからだな。
「おはようございます。」
と、主事さんに言ったら、
白い息は、出なかった。
あれれ?どうしてだろう?
「寒い朝ゴジラのような息をはく」という俳句が、あるお茶メーカーの特選になった。この詩も写実主義で、見た通りに表現しているのがいい。



週刊墨教組 No.1464 2005.1.26

あの日を忘れない
   描かれた東京大空襲
   すみだ郷土文化資料館


 すみだ郷土文化資料館で二十二日から、『東京大空襲・六〇年ー三月十日の記憶―』という特別展が始まりました(四月十日まで)。
 六十年前の大空襲の体験者によって描かれた七十五点の絵画が、展示されています。あわせて、昨年度の企画展に寄せられた空襲画を収めた図録『あの日を忘れない〜描かれた東京大空襲』が販売されています。図録の絵は、見る者の胸を強く打ちます。平和教材としても、貴重な資料になります。

言葉を失うほどの衝撃
 特別展は、すみだ郷土文化資料館の三階に展示されています。
 あまり広くない、静謐といえる空間での展示ですが、空襲画の衝撃は、言葉を失うほどです。(とくに、図録に収められていない金田昌子さんの「姉を捜して・1〜目の前を走り去った遺体を積むトラック」「姉を捜して・2〜本所・中和公園で燃やされる死体の山」「姉を捜して・3〜へその緒で結ばれた母子の遺体」)

三月十日の記憶
 展示された空襲画は、人々が命がけで生きていた戦時下の悲しみや苦しみを雄弁に証言し、そして静かに戦争を告発しています。
 ある人にとっては、その記憶の存在によって、一挙に蘇る自分史というものがあります。その人の生きていた時代的・社会的文脈の細部まで照明し、その人の生涯の軌跡を明滅させるという記憶が確かにあるのです。
 そういう視座から、展示された空襲画をみるなら、一つ一つの戦争にまつわる記憶の背後には、他人がたやすく踏みこめない手の触れるすべもない、絵を描いた人の魂の領分が厳粛に横たわっているのです。
 そして、体験の落差や欠落を超えて、空襲画と対話することによって、記憶として描かれた画の背後にある、描いた人の魂とじかに出会うことも可能なのです。

戦争体験の伝承
 昨年度の特別展に寄せられたアンケートは、千四百通余りに及んだといいます。
 参会者のアンケートの中には、戦争の悲惨を二度とくりかえしたくないという祈りにも似た感想と、そのために自分のできることをやっていくという決意が数多く記されていました。
 空襲画の存在は、私たちに戦争体験の伝承が可能であることを示唆しています。

貴重な資料としての図録
 昨年度の企画展に寄せられた空襲画を収めた図録『あの日を忘れない』(柏書房二千百円)は、授業にも生かしたい、とりわけ貴重な資料です。
 この図録の帯には、こう記されています。

「一九四五年(昭和二〇)三月十日未明、アメリカ軍の爆撃機約三百機による、一般市民を標的とした世界史上最大の空襲によって、首都東京の浅草、本所、深川一帯(現在の台東区、墨田区、江東区)は火焔地獄となり、壊滅的な被害を受けました。隅田川は死体であふれ、路上には黒こげの死体が散乱し、死者の数はたった一晩の空襲で十万人を超えたといわれています。
 本書は、空襲被災者の脳裏に深く刻まれた記憶の残像を、戦後世代の多くの方々に伝え残しておかなければならないという強い思いからできあがりました。」

江戸東京博物館 第2企画展
『東京空襲60年〜犠牲者の軌跡〜』
 犠牲者の遭難軌跡を地図上で現し、当日の人々の行動を視覚的に捉え、遺品、空襲を記録した絵画、写真も合わせて展示し、空襲の実態に迫る。
1月14日(金)〜4月10日(日)午前9時半〜午後5時半
観覧料 大人600円 中学生以下無料 
休館日 月曜日
すみだ郷土文化資料館 特別展
『東京空襲・60年―3月10日の記憶―』
 60年前の大空襲の体験者によって描かれた絵画の数々を中心に展示
1月22日(土)〜4月10日(日)午前9時〜午後5時 
観覧料 大人200円 中学生以下無料 
休館日 月曜日、第4火曜日など
 昨年度の企画展に寄せられた空襲画を収めた図録『あの日を忘れない』2000円が先行販売されます


人事考課制度にあくまでも反対する

   昇給延伸3ヶ月、懲戒処分と同様の給与処置
    墨田教組は「不当な措置」、「不当な損害」を絶対容認しない!


組合が「苦情申し立て」の窓口となる
 都は、昨年十一月の賃金確定交渉において、業績評価の開示と苦情相談制度の創設を約しました。この具体化として、都教委は、区市町村立学校の教職員については「区市町村教育委員会で苦情を解決する仕組みを構築する」として、資料に示す「苦情相談制度のしくみ」を組合に提示しました。現在、東京教組は、「制度やその実施要綱」をめぐり都と交渉を行っています。また、墨田教組も区教委と交渉を始めました。教員の普通昇給(定期昇給)が、今年度の業績評価に基づき実施されます。その結果、一次、二次評価が「C、D」とされた人に対し、「昇給延伸3ヶ月と指導育成」が課せられることになります。「昇給延伸3ヶ月」は、懲戒処分(戒告)を受けたことと同様の給与措置であり、極めて重い措置です。納得がいかない評価は是正させなければなりません。その際、組合が区へ苦情相談を申し立てる窓口となります。ひとりで悩まず、組合に相談してください。墨田教組は「不当な措置」、「不当な損害」を絶対容認することはありません。

教育と教員としての誇りを守るために
 都教委は、「教育系では、人事考課制度は未成熟である」ことから、九月には「教育職員の職務実績記録について」を通知しました。これは、いわゆる評価マニュアルです。マニュアルがなければ、真面な評価ができない管理職が少なからず存在するからです。都教委は、評価者訓練、昨年度までの評価、地教委からの聞き取りから現状を判断してマニュアルを通知せざるを得なかったのです。
 都は、今年度は、昨年度より締め切りを早め、三月末までに教員の業績評価を提出することを指示しています。これを受けて、「自己申告の提出、校長による面接」も早くなると考えれれます。「開示・苦情処理」を申請することを前提に、校長・教頭の言動、面接時の対応、「指導内容」、その際の自分の考えなどを記録に残しましょう。



週刊墨教組 No.1463 2005.1.19


戦後六十年
 戦争の記憶を風化させないために

三月十日を節目とした
特設平和授業のとりくみを進めよう


今年もまた三月十日がやってきます。六十年前のこの日、墨田・江東を中心とした東京の下町は米軍のB による無差別絨毯爆撃で猛火に包まれて焼き尽くされ、一夜にして十一万五千人の尊い命が焼土に埋もれたのでした。東京大空襲は、広島・長崎の原爆とともに、戦争の悲惨さと非人間性を、平和と人間の命の尊さを教えてくれる大切な教材と言えるでしょう。
 敗戦から六十年。「戦争」が歴史のかなたに追いやられ、風化の現象がみられる今日、「東京大空襲」を自ら学び、子どもたちへ語り継ぐことは、私たち教員の課題と責務です。


戦争の実相を伝える
 街を破壊し、人間の命を奪い、動物たちをも殺し、親子を兄弟姉妹を友人を恋人を引き裂く、これが戦争です。「広島」「長崎」「東京大空襲」の、語り部たちの体験談、手記、写真・・・・等々の貴重な資料は、今も戦争の悲惨や残虐、非人間性というその実相を伝えてくれています。
 私たち教員は、ほとんどが戦争の非体験者です。私たちは、戦争の実相を伝えるそれらの資料に学び、あるいは掘り起こし、自らの思想と言葉によって「戦争」を教材化し、その実相を子どもたちに伝えていかなければならないと思います。

操作される戦争イメージ
 現代は、コンピューターの時代です。子ども達はコンピューターゲームの中で、キーやボタンを操作しながら戦い、敵を破壊し殺戮することになれています。彼らの脳裏にある「戦争」は、生身の人間の苦しみや悲しみを全く捨象したゲームなのです。現代の戦争もまた、コンピューターを駆使したハイテク戦争です。
 また、大量の情報の中で、それとは裏腹に情報は操作され、報道と実相の落差も大きなものになっています。湾岸戦争の時には、まるでコンピューターゲームででもあるかのように、テレビ画面に戦争が映し出されていました。そこからは、戦争の悲惨や残酷、非人間性は見えてきませんでした。しかし、画面の中で夜空に「美しく」飛び交う砲弾の下で、非人間的な惨状が繰り広げられていたのです。
 「戦争」は、時代や場所が変わっても、その本質が変わるものではありません。街が破壊され人間が殺されるのです。「東京大空襲」と同じように、さまざまな苦しみや悲しみが湾岸戦争・イラク戦争でも起きていたことを知らなければなりません。
 そして、イラクでは、今もなお、非人間的な惨状はつづいているのです。

明白な軍事侵略
 イラク戦争とは、理不尽きわまりない明白な軍事侵略です。殺人者のしわざです。
 ブッシュに、普通に暮らしているイラクの人々を殺したり土地を蹂躙する正当な理由など全くありませんでした。
 占領への大義となった大量破壊兵器保有についても国際テロ組織との関係についても、全く根拠のないことが明白になりました。大義などどうにでもなるものだったのです。
 アメリカの単独主義が、国際ルールを無視して暴走し、白昼堂々、侵略を決行したのです。肥大化した武力で、気に入らない弱小国をたたきのめしたのです。正義などかけらもない、何たる卑怯な蛮行であることか。

侵略戦争に加担してはならない
 感情的で、思考力のないコイズミは、まっさきにアメリカ・イギリスの軍事侵略支持を表明し、あまつさえ、不当な占領がつづくイラクへ陸海空三自衛隊を出兵しました。
 破壊・殲滅の限りを尽くしておいて、利権の見えかくれする復興支援とは、あまりに空々しい。
 昨年十二月、傲慢に居直ったコイズミは、イラク自衛隊派遣一年延長を決定しました。
 思い出してみてください。
 東京大空襲では、たった二時間半の爆撃で、十万人以上の死者がでました。人類史上に類を見ないジェノサイドです。人倫のかけらすらありません。生者ですら、焦がされた土地を逃げ惑い、さながらの生き地獄を体験したのです。
 今日のイラクの人々の位相は、東京大空襲下の市民と同じ位相なのです。繰り返されるアメリカによる常套の手口。現在のイラクの人々の境遇は、アメリカ・イギリスの不当な侵略に淵源しているのです。なによりもまず、冷静な洞察力をもって、侵略を告発し、断罪し、糾弾しなければなりません。
 自衛隊の出兵など、絶対に侵略戦争に加担してはならない。

規範としての戦争否定の姿勢
 国家が犯しうる「悪」の最も凝縮されたものは、戦争にほかなりません。
 恐るべき悲劇を国民に強いる戦争と、それを遂行しうる国家権力の全能性や恣意性を規制するために、戦争の痛苦の体験をもとに、人々は教基法十条や憲法九条の規定を選びとったのです。
 戦後日本の規範としての戦争否定の姿勢を、絶対に放棄してはならないのです。

グローバル化の中の「愛国」教育
 昨年六月には、民間臨調(「日本の教育改革」有識者懇談会)と教育基本法改正促進委員会(自民・民主・無所属の国会議員三三五人)が合同総会を開催し、「新教育基本法大綱」を決定しています。「大綱」には、「社会・国家、ひいては世界に貢献する日本人を育成することが目的である旨規定する」とか、「伝統と文化の尊重、愛国心の涵養・道徳性の育成が重要である旨規定する」などの文言があります。
 新自由主義と新国家主義は補完しあい結託して、グローバル化の中の「愛国」教育をおしすすめ、この国を「戦争ができる国」にしようとしています。まさに戦争前夜です。

緊迫する教育基本法改悪
 教育基本法をめぐる情況は、きわめて緊迫しています。
 文科省が改定作業に入った今、次期通常国会への法案提出は必至です。
 いうまでもなく、侵略戦争への深切で痛苦な反省から、憲法・教育基本法は、統治機構や行政機構の暴走を制御するために制定されました。つまり、憲法・教育基本法は、国家を縛るためにあるのです。私たち個々が、国家に対して、行使するために、憲法・教育基本法の規定があるのです。
 いま、まさに、その関係が、大逆転されようとしています。
 憲法・教育基本法の理念は、生きて行使されなければなりません。

教え子を再び戦場に送らない
 なによりも、まず、平和を。
 子どもは「お国のため」にあるのではありません。
 私たちの先達は、戦後、日教組を結成しました。そして、平和を希求して、「教え子を再び戦場に送るな」という不滅のスローガンが生まれました。これからもその精神を受け継がなければなりません。自分たちの職場で、『二度と戦争をさせない』とりくみを進めなければなりません。

組織的な平和教育のとりくみ
 墨田教組は、反戦平和教育の重要な課題として位置づけ組織的にとりくみを進めてきました。一九八八年からは、特に「三月十日」をひとつの節目に設定し、墨田の全学校で反戦平和教育の実践が行われることをめざし、墨田教組として統一的にとりくみを進めてきました。三月十日の前後には、特設授業や全校児童集会等々様々な形で、平和教育のとりくみが各学校で実践されています。このとりくみは、東京大空襲で壊滅的被害を受けた墨田におけるという意味で、地域に根ざした教育の一環でもあります。私たちは、これらの立場に立って、今年も三月十日を節目とした平和教育特設授業のとりくみを進めます。

具体的なとりくみ
一、三月十日に向けて、全分会が全学級一斉授業、全校集会、学年集会など、何らかの形で特設授業を実施するとりくみを進める。
二、分会として意思統一を行い、具体的な方針を決定し、直ちにとりくみを開始する。
三、一分会一万五千円を限度として、学校(分会)における計画実施のために必要な経費補助(教材作成・購入費、講師代など)を「主任手当拠出金」から支出する。
四、分会は二月二十八日までに具体的計画を書記局に報告する。その際、経費補助金の請求も行う。
五、執行委員会は、資料作成・提供・講師の紹介・仲介、具体的な進め方についての相談、交流活動を行う。戦争体験者として、何人かの新しい方も発掘しました。三月十日前後は集中しますので、ご希望の方は、早めにご連絡ください。



卒業証書
保護者からの申し出があれば西暦年号記載が可能
―卒業生の全保護者へ周知―

 卒業証書の生年月日や発行年月日の年号記載に当たり、元号で表記するか、西暦で表記するかに関し、墨田区・墨田区教委は基本的な方針を明らかにしています。
1.元号使用が原則
2.保護者からの申し出があれば西暦記載も可能
3.外国籍の子どもについては、生年月日、発行年月日、氏名の表記について確認し、保護者からの希望があれば、その意志を尊重する。
4.このことについて、卒業生の全保護者に周知する
 この方針は、思想信条の自由等の人権を尊重する立場、さまざまな価値観や文化を有する多様な人々と共生する墨田を築くという立場に基づいて明らかにされたものです。
 私たちは、区教委のこうした方針を評価し、児童・生徒や保護者に対応してきました。

人権尊重や国際理解は、
    具体的な実践が大切
 多くの小・中学校では、従来から各校毎にお知らせや保護者会などで、当該児童・生徒や保護者に「西暦記載も可能である」ことを知らせてきました。
 区教委は、定例校長会で「卒業証書の元号使用について」墨田区・区教委の基本的な考え(先記四点)を明かにしています。
 人権尊重や国際理解は、具体的な実践こそが大切です。「保護者への周知」がすべての学校でなされ、児童・生徒、保護者の意志を尊重されるとりくみを強めていきましょう。



週刊墨教組 No.1462    2005.1.11


我は知る テロリストの
かなしき心を―
言葉とおこなひと分かちがたき
ただ一つの心を
奪われたる言葉のかはりに
おこなひをもて語らんとする心を
われとわがからだを敵に擲げつくる心を―
しかして、そは真面目にして熱心なる人の常に
             有つかなしみなり。

はてしなき議論の後の
冷めたるココアのひと匙を啜りて、
そのうすにがき舌触りに、
われは知る、テロリストの
かなしき、かなしき心を。

「ココアのひと匙」

 ー石川啄木ー



すみだ春秋35
ちいさな無垢

 鮎川信夫の詩に、八連七二行の「競馬場にて」がある。
 第四連七行と、第七連の終わり五行は、次のような詩句である。


一枚の馬券を買うために
みんなどうしてこんなに自由にふるまうのか
迷信も愉快だし、科学的検討もまんざらではない
血統を信ずるのもいいし、人気に支配されるのも結構だ
独断批評家の口ぶりも悪くはないし、皮肉な記者のポーズも捨てがたい
どうふるまったところで
三十六とおりの結論があるだけなのに

どうしてこんなに明白なことがわからなかったのか
スクリーンを眺めて
何百万人の人々が、もう一度溜息をつくのだ
ダービ―・レースのように
われわれの生存競争もすべてフェア・プレーだったらいいのにと

       *

 浅草・神谷バー―追悼・辻征夫
           中上 哲夫
どんな国際ニューズよりも
天気予報が気がかりだった
鮎川信夫「競馬場にて」

三十歳で定職がないというのは
すこし悲しかった
朝ごとに
窓の外の天気を見つめて
馬場状態を想像した
そうして浅草に出かけていくのだが
雷門の前のがらんとした神谷バー
の窓辺の椅子には吟遊詩人がぼんやりすわっていて
その日のレースの予想をはじめるのだった
ビールの泡をのみながら。
もうもうと埃舞う場外馬券売り場まで
二匹のぼうふらのようにふらふらと
そして
窓口の前ではいつもパスカルのように苦悩した
ビール代と電車賃と配当金の黄金分割がむつかしいのだ
そうしてふたたび神谷バーの窓際の席でホップ酒をのみつづけるのだが
おどろおどろしい名前の褐色の飲料が
食道を流れくだることはめったになかった
感電するといけないから。
ひと気のない午後の酒場の泡立ち飲料は
実をいうと
苦艾のように苦かったのだ
(いまごろみんな額に汗してはたらいているんだろうなあ!)
若いんだからはたらかないとだめよ
そうしてみんな一人前になるんだから
酒場のおねえさんからやさしくいわれてみても
半人前の人間は口をつぐむしかなかった
鶫のように。
予想はいつもてんで当たらなかったし
ぼくらの未来はレースのようには読めなかった

 『エルヴィスが死んだ日の夜』(二〇〇三年)所収。

 「吟遊詩人」とは、辻征夫のことである。
 辻征夫は、向島という水土/人情、そして言問学校が手塩にかけてはぐくんだ、不世出の抒情詩人である。
 辻は、一九三九年、浅草で生まれ向島で育った。二〇〇〇年一月十四日、脊髄小脳変性症に起因する病により急逝したのだった。

 この詩のあとさきは、辻の自筆年譜に簡潔に書きとどめられている。

一九六九年(昭和四四年)二九歳
八月末日、半月前に三〇歳になったのを契機に、詩の書き手の側に身を置くことを決意、思潮社を退社。二十代後半の詩をまとめる作業に入る。
一九七〇年(昭和四五年)三〇歳
夏頃、詩集の校正のために思潮社へ行き、編集部でアルバイト中の中上哲夫と知り合う。以後、頻繁に会い、遊ぶ。一一月、第二詩集『いまは吟遊詩人』刊行。
一九七一年(昭和四六年)三一歳
六月、読売新聞の求人広告を(父が)見て、新しく発足する都営住宅サービス公社(都営住宅を修繕する公社)に応募、採用される。土建会社からの転職者、立川基地の退職者など、一〇〇人近くが入社した。出版界からは離れた場所に身を置き、詩を書くことを決意。

 定職もなく、くりかえされる無為の日。
 それにしても、詩への、何という無垢な覚悟。だが、この無垢な覚悟こそ、負け馬に賭けることにほかならない。辻の競馬予想は、絶対に当たらないだろう。しかし、辻は、無垢な覚悟をもちつづけて、不世出の抒情詩人となった。

             *

 一九九六年、五六歳の辻は、ある雑誌の編集部から、若い人たちを励ますような詩の執筆依頼をうける。
 辻は、『こんな詩がある』の中で、次のように述懐している。

 「それで、ぼくが若い時にどういう言葉を望んでいただろうか、どういうことをぼくがある日ちょっと誰かに言われたら、自分が立ち直ることができただろうか、と考えてみたんです。ぼくはとってもノンベエだったことがあります。二十歳ぐらいの時からで、ぐちゃぐちゃだったこともある。そういう時に、自分が何を言われたかったか。そしたら、こういうことが頭に浮かんできた―若い時ってしばしば偽悪的になると言うか、世の中が分かったような気になって、もう俺はどうせこんなもんなんだ、とデカダンスに陥ったりすることもある。そういう時に、もし君がどんなに俗物であって今はダメであっても、君の中に何か無垢なもの、イノセントなものが残っていたら、それがある限り必ず立ち直れるんだよ、と言われたらぼくは楽だったろうな。そう思ってこの作品を書きました。」

  蟻の涙
             辻 征夫
どこか遠くにいるだれでもいいだれかではなく
かずおおくの若いひとたちのなかの
任意のひとりでもなく
この世界にひとりしかいない
いまこのページを読んでいる
あなたがいちばんききたい言葉は何だろうか

人間と呼ばれる数十億のなかの
あなたが知らないどこかのだれかではなく
いまこの詩を書きはじめて題名のわきに
漢字三字の名を記したぼくは
たとえばこういう言葉をききたいと思う
きみがどんなに悪人であり俗物であっても

きみのなかに残っているにちがいない
ちいさな無垢をわたくしは信ずる
それがたとえば蟻の涙ほどのちいささであっても
それがあるかぎりきみはあるとき
たちあがることができる
世界はきみが荒れすさんでいるときも
きみを信じている


週刊墨教組 No.1461    2004.12.20

 教職員のコンセンサスを経ない施策は
          「おしつけ」以外の何ものでもない!
 教職員への励まし、援助という観点を欠落させた施策は
             管理強化でしかない!


 墨田区教委は、十二月一日開催の校長会で、「平成十六年度『開発的学力向上プロジェクト』学習状況調査について ー すみだの子どもたちの『確かな学力』の育成を目指してーを通知し、「学力向上」へのとりくみを指示しました。その内容「学力向上に向けての方策について」(資料1)は、行政権力によるひきまわしや管理主義的側面に満ち溢れたものと言わざるをえません。本来、教育行政のとるべき態度は、現場教職員を励まし、支援し、その苦労に対し正当な保障を行うこと、また必要な施設・設備の改善、充実をはかることにあります。
 学校現場での教育活動のとりくみの中核は、現場教職員の主体的な実践にこそおかれなければならないにもかかわらず、墨田区教委は教職員のコンセンサスを求めることなどまったく行わず、現場教職員への励ましや援助という大切な観点をも欠落させ、上意下達で学校現場を従わせようとしても、表面的には形が整うでしょうが、その内実が伴わないことは明らかです。

墨田区教育委員会は「学校5日制推進・充実方針」をいつ変更したのか
 墨田区教委は、完全学校五日制の意義について次のように述べています。「完全学校五日制は、土曜日や日曜日を利用して家庭や地域で子どもたちが生活体験や自然体験、社会体験、文化・スポーツ活動など様々な体験や活動を増やしていこうというものです。そして、家庭、地域、学校が連携し、子どもたち一人ひとりの『生きる力』を育み、健やかな成長を促すことを目的としています」(区教委発行「いきいき」第80号平成14年2月発行より)この立場から、区教委は「地域体験活動の支援」など学校五日制を推進・充実させるための費用を増額してきました。今回出された「土曜補習教室」は、学校五日制に対する区教委の立場を根幹から変えるものと言わざるを得ません。墨田区教育委員会としての考えが明らかにされていない中で、「土曜補習教室」が先行することは行政の手順として許されるべきものではありません。

土曜日は週休日
 いうまでもなく、完全週休二日制が導入され、毎週の日曜日と土曜日は週休日です。簡単に「土曜補習教室」が実施できるかのように一部の校長が言っていますが、そうではありません。土曜日に「授業や補習」が実施されている都立高校はあります。しかし、そうした高校に対し、都教委は厳しく条件をつけています。(資料2、3)学校五日制、週四〇時間労働、都勤務条例などとの関係で、「学校職員の勤務時間に係わる特例設定の試行」という形で実施されています。「土曜補習教室」は、私たちの勤務条件の変更に関わるものであり、区教委や校長が一方的に決めて実施できるものではありません。区教委が具体化に入るなら、当然組合との交渉を経ることになります。

資料1 
2.学力向上に向けての方策について

(1)各学校の結果を細かく分析し、学校ごとの課題を明確にし、「授業力向上」に向けての方策を提示する。
(2)課題の大きい国語、算数(数学)の指導に関する検討委員会を設置し、学力向上のための研究、協議を行う。
(3)「授業力向上リーダー」を育成するための特別研修を実施する。
(4)学習ボランティアの組織化、アシスタントティーチャーの派遣を通して、個に応じた指導の充実を図る。
(5)「特色ある学校づくり推進授業」において「授業力向上研究推進校」を指定し、授業力向上についての研究推進と区内全校への啓発を図る。
(6)指導室訪問(都教員訪問)を全小・中学校、年1回以上実施し、指導法改善や授業力向上についての指導・助言を行う。
(7)校内研究の充実を図り、全教員による研究授業や少人数指導、ティームティーチングによる指導法の工夫を図る。  
(8)基礎基本の確実な定着を図るため、朝自習や放課後の補習の更なる充実や「土曜補習教室」実施などを行う。


資料2 
                          15教人勤320号  平成16年4月1日
関係都立学校長 殿    
                                        人事部勤労課長
      学校職員の勤務時間に係わる特例設定の試行について
 このたび、土曜日に一部の都立学校で正規授業の実施を試行することとなったことに伴い、関係職員の勤務について、下記により処理されるよう願います。
 なお、今回の措置は、勤務の特例設定に係わる資料を収集する目的で、限定的に土曜日における4時間勤務を試行するものです。
 また、今回の措置が関係職員の勤務や生活に大きな影響を与えることを踏まえ、職員の理解と納得を得た上で試行されるよう、特段の配慮をお願いいたします。
                    
1. 目的
 土曜日に教育活動を行った場合に、学校職員の勤務条件に配慮した上で、土曜日に正規の勤務時間を半日単位で割り振ることによって、特色ある学校づくり等の学校経営に資することを目的とする。

2. 特例設定の導入と試行の実施
(1) 今後、学校職員の勤務時間に関する規定を新たに整備し、あわせてその特例に関する規定を定める。
(2) 導入に先立ち、勤務時間の特例設定に係わる資料を収集する目的で、平成16年4月1日から土曜日に授業をおこなう学校において、別紙要綱により特例設定の試行を実施する。
   担当 東京都教育庁人事部勤労課労務係 後藤
       電話 03-5320-6801(ダイヤルイン)

資料3 
学校職員に係わる勤務時間の特例設定試行要綱
        平 成 1 6 年 4 月 1 日  人 事 部 勤 労 課 長 決 定
        平成 16年 7月 26日一部改正
1.趣 旨
 土曜日に教育活動を行った場合に、学校職員の勤務条件に配慮した上で、土曜日に正規の勤務時間を半日単位で割り振ることによって、特色ある学校づくり等の学校経営に資することを目的として、勤務時間の特例を設定する。
2.試行の実施 (省略)  3.試行期間  (省略)  4.実施校   (省略)
5.対象者
  教員を対象とし、事務職員、司書、栄養士等は除外する。
6.事務処理方法
(1) 事務処理方法は、知事部局の「勤務時間の特例(特例設定・臨時変更)設定」にかかわる事務処理に準拠する。
(2) 設定の単位は4週間若しくは8時間とする。
(3) 4週間についての総労働時間は160時間としなければならない。
(4) 職員の週休日を極力確保するように配慮しなければならない。
(5) 特例の設定にあたって、学校長は勤労課長に協議したうえで決定し、実施しなければならない。
7.報 告
  都教育委員会は実施校に対し、実施状況等について報告を求めることができる。
8.その他
(1) 土曜日に正規の授業を実施することについて、学校週5日制の趣旨を損なわれないように配慮しなければならない。
(2) 職員の勤務条件に係わることであるので、学校長は、職員の十分な理解を得た上で実施するように努めること。

「女たちの戦争と平和資料館」建設のために
チャリティ・イベントご案内

 イラクへの自衛隊派遣延長が閣議決定されました。

 小泉首相の迷言集ができそうな国会での答弁でしたが、憲法違反・イラク特措法違反の疑いが濃厚な大事な問題を、すでに多くの国がイラクから撤退しているか撤退を決めているという中、国会での十分な審議なしで決めた政府の姿勢には本当に怒りがこみ上げてきます。
 戦争を遂行する国づくりが進行する中で、女性政策も大きく変わろうとしています。憲法審議会では、「個人の尊厳と婚姻における両性の対等・平等」をうたった24条が削除されようとしていますし、教育現場への「ジェンダー・フリー攻撃」が強まっています。
 こうした中、私たち墨田教組に数回にわたっておいでいただいた故松井やよりさんの悲願であった「女たちの戦争と平和資料館」建設のために、ゆかりの人たちによる次のようなチャリティ・イベントが開かれます。場所は江戸博。地元にいる私たちも大いに賛同し、参加しようではありませんか。

日時 12月21日(火)18:30
場所 江戸東京博物館ホール
主催 女たちの戦争と平和人権基金、
アジア女性資料センター、
VAWW−NETジャパン
入場券 当日2300円  学生 1500円


週刊墨教組 No.1460    2004.12.6

不許!
 本給、退職金、年金ダウンを狙う人事院「素案」
 人事院への闘い、撤回の意志表示

 人事院は、十一月二日に「給与構造の見直し」について組合に素案を提示しました。その具体的案の骨子は週刊墨教組(1459号)でお知らせしました。今回提示されている「給与構造の見直し(素案)」は、日本の官民労働者総体の賃金を引き下げ、「国際競争に勝てる企業の育成」という経団連の方針と一体になってすすめられているものです。教員にとっては、「成績主義」と「免許更新=首切り」という脅しをも背景に、賃金ダウンが強行されようとしているのです。何としても今回の「素案」を撤回させなければなりません。

広がる社会格差
 民間では、「失業」や「派遣労働、パート、臨時、フリーター等不安定雇用層」の増加が顕著になっています。そうした中で、所帯年収の現状は、二〇〇万以下二六・五%、三〇〇万以下が三三・五%(二〇〇二年度)となっており、所帯収入において格差が年々拡大しています。その現状はいわゆる「勝ち組、負け組」という形で表現されています。

賃金労働条件は労使で決める
 「…私は、公務員の給与をどの程度の水準にするかという決め手は、最終的には納税者が納得できるかどうか、という点にしかない。…」(片山鳥取県知事)この論理は、「公務員の賃金労働条件は議会・政治が決める」という考えであり、労使交渉の否定です。「国、地方の財政危機」や「公務員バッシング」を背景に、公務員賃金をダウンさせ、そしてその地域の民間労働者の賃金をもダウンさせることです。私たちの今の闘いは、対人事院との交渉を強化することにあります。
 対人事院総裁への署名を軸に運動の輪を広げていきましょう。

2004年
子どもの権利条約カレンダー

月毎に世界各国の子どもの写真

墨田教組名入り 
電話・ファックス番号入り

分会に1部ずつお届けします。
分会で活用してください。
なお、ご希望の方には一部千円でお分けします。
書記局へ申し込んでください。

育基本法憲法改悪阻止! 
反戦平和運動への協力支援!
争議組合支援!
年末カンパを
 今年も一時金支給時にカンパを実施します。墨田教組は特別な要請がない限り、カンパ活動は年1回としています。このカンパは、日教組、東京教組などの呼びかけにも応じて実施するものであり、下記のような、権利擁護・反戦平和・護憲・生活擁護の戦いで、弾圧に屈せず闘い続ける人々・組織に対する支援・救援カンパとして使われます。墨田教組に対してカンパ要請のあった闘いについて、墨田教組運動方針に照らして支出することが適当であると執行委員会が認めた闘いへの支援・救援として使われます(★印は本年度のカンパ先)。

◆下町における反戦・平和運動への協力・支援として
★再び許すな東京大空襲 空襲展
★沖縄の反基地闘争に連帯する東部地区のとりくみ
◆都区内の争議組合に対する支援・救援のための資金(生活資金、年末手当、闘争費用、裁判費用など)として
★国労1047名解雇撤回支援 
★全逓向島郵便局解雇撤回支援 ★区内争議組合支援
◆東部における人権を守る運動への協力・支援として
★日朝連帯集会  ★部落解放墨田区民共闘など
◆東京教組「日の丸・君が代」強制処分撤回、人事委員会・裁判闘争支援カンパとして  ★被処分者を支える会
◆その他、
★国境なき医師団 ★ペシャワール会 ★ノーモワ南京 
★イラク派兵阻止集会 ★東京教組女性部夏のカンパ 
★有事法制撤回運動 ★アスベスト撤廃  
★広島長崎反戦反核集会  ★新潟中越地震被害義援金 など
  
非組合員にも呼びかけ
 労働者連帯の立場から、積極的なとりくみをお願いします。
 一人 1,000円程度を目標にお願いします。
 ※ 15日(水)までに書記局にお出しください。


週刊墨教組 No.1459  2004.11.30
「給与構造の見直し」を許すな!
    人事院の「素案」を撤回させよう!

 二〇〇四年度賃金確定闘争は、十一月十六日未明の団体交渉で決着しました。その内容は速報版ですでに報告しました。妥結はしたものの、すでに国段階では「給与構造の見直し」等の素案が組合に提示され、その影響は公務員全体に及ぼすものとなっています。全国的な闘いに連帯し、東京でも闘う態勢を早急に構築しなければなりません。

都側、「新たな時代にふさわしい
   人事給与制度の構築」を回答
 副知事より最終回答が組合になされました。その内容は、「団交発言骨子」(資料参照)です。都側は、その中で「新たな給与制度について、皆さんと具体的な協議を行うこととなりましょうが、大きな制度改正でもあり、給与改定交渉期に限らず、随時議論を行っていきたいと思います」と述べ、組合もこの回答を受け入れています。都側は、国の動向を踏まえ、早期に具体案を提示することが予想されます。給与に関することは、労使交渉事項であり、当然交渉の場で決着がなされる事項です。組合は、すでに今年度の交渉の場で、「『職責・能力・業績などを反映できる給与構造』への転換は、公務員給与に生計費の実態を反映することを否定しているばかりでなく、公務職場の特性を否定し、民間の成果主義賃金体系を持ち込もうとする極めて問題のある内容である。民間における成果主義型賃金体系の導入については、富士通に見られるように、人材育成や能力開発ではなく、職場の荒廃と働く意欲の後退を招いており、今、その問題点が百出している」と、反対の姿勢を明確にしています。しかし、相当厳しい課題になることが予想されます。

人事院、「給与構造の基本的な見直し(素案)」を提示
 人事院は、十一月二日、今年度の人事院勧告に盛り込めなかった「給与構造の見直し」について、組合に「素案」を提示しました。その概要は次の四点です。
1.全国共通俸給表(本給)の水準を引き下げ「地域手当」(二〇%を上限)を新設
 ※本給が下がると、退職金の大幅な減額や年金に影響がでる。
2.職務・職責を反映させるため俸給表構造を見直す
 ※年功的な給与の是正(生計費の実態を無視)
 ※昇給カーブのフラット化(昇給ストップが早まる)
3.査定昇給制度の導入(普通昇給・特別昇給、枠外号俸の廃止)
 ※勤務評定が基になり、個々の昇給額が変わる。
4.勤勉手当への実績反映

 都は、同様の内容をすでに明らかにしています。昇給延伸の導入など、国に先駆けて実施しているものもあります。「給与構造の見直し」の本質は、公務員の総人件費抑制であり、また、民間賃金の抑制でもあります。経団連がめざしている「国際競争力を保てるような適性な賃金水準への引き下げ」に呼応するものです。
 人事院の「素案」を撤回させることは、都に対する闘いでもあります。正に性根を据えた闘いになります。

資料 団交発言骨子
それでは、私から申し上げます。本年は、給与改定の勧告がない中、皆さんからは、例月給の0.17%の公民較差及び特別給の支給月数の較差について、当局責任により解消することを強く要求されておりました。
 これにつきましては、人事委員会から報告を受けて以来、その趣旨を踏まえつつ、慎重に検討を進めてまいりましたが、民間の雇用・賃金情勢、国や他団体の動向、引き続き厳しい都財政の状況を考慮すれば、当局において何らかの措置を講じる状況にはないとの結論に至りました。よろしくご理解いただきたいと思います。
 また、皆さんから要求のありました年末一時金については、現行の条例、規則どおり、期末手当を1.65月、勤勉手当を0.45月、合計2.10月分を、再雇用職員については、期末手当を0.95月、勤勉手当を0.25月、合計1.20月分を、十二月十日に支給することといたします。
 次に、本年度の大きな課題となりました昇給制度等の見直しについてですが、来年度以降の抜本的な制度改正に繋がるものとして、小委員会でお示しした内容で実施させていただきたいと思います。私どもとしても過去の労使合意の重みは十分承知しておりますが、なにとぞご理解いただきたいと思います。
 その他、諸手当などの取扱いについては、小委員会にてお示ししたとおりです。
 以上の内容で、必要な議案を、都立大学等の公立大学法人化に伴う規定の整備にあわせて、第四回都議会定例会に提案する準備をいたします。

 職員の皆さんにおかれては、それぞれの職場で、今後とも、公務能率や行政サービスの一層の向上に努力を払われるよう、改めてお願いいたします。
 公営企業の職員についても、以上の趣旨で各管理者とよく協議してもらいたいと思います。
 なお、皆さんから強い要望が寄せられている人事効果制度については、今後の人事給与制度の抜本的な改革を見据え、制度の信頼性や職員の納得性等のより一層の向上を図りたいと考えております。このため、本年度の定期評定から、当該評定結果に係る苦情相談制度を創設し、これに伴い本人開示を一部拡大することといたします。また、平成十八年度を目途に現行の人事考課制度の見直しを行い、あわせて開示対象者を全職員に拡大することを目指します。
 さらに、平成十七年度から、開示及び苦情相談の運用状況等について、毎年度一回程度都労連と意見交換を行う場を設定したいと考えております。これらの詳細については、小委員会等でご説明したとおりです。
 さて、本年は、人事委員会報告に示された給与制度及び給与構造の見直しについて、労使で激しい議論を戦わせて参りました。先日の団交でも申し上げましたが、時代の大きな変化に対応し、今後も都民の信頼に応えていくためには、新たな時代にふさわしい人事給与制度の構築が、強く求められています。
 今後、いよいよ、新たな給与制度のついて、皆さんと具体的な協議を行うこととなりましょうが、大きな制度改正でもあり、給与改定交渉期に限らず、随時議論を行っていきたいと思います。これまで築き上げてきた労使の信頼関係に基づき、また、本年の議論を土台として、よりよき制度構築に取り組んでいきたいと考えておりますので、よろしくお願いします。私からは以上です。



週刊墨教組 No.1458  2004.11.16
さあ もういっぺん  日比谷野外音楽堂へ
日教組の旗のもと
 教育基本法改悪ストップ!
 十一・二一全国集会へ

      十三時二〇分開演

十一・六全国集会
 『教育基本法の改悪をとめよう! 十一・六全国集会』は、組織・団体の枠を超えて全国から五千五百人の人々が結集しました。
 墨田区教職員組合は、この集会の賛同団体として、全力を尽くして臨みました。
 集会には、教育基本法改悪反対への熱い意思と力がみなぎっていました。
 それは、閉会にあたり、力強く採択された集会アピール(裏面参照)に、見事に反映しています。

緊迫する情況
 教育基本法をめぐる情況は、きわめて緊迫しています。九月十五日、自民・公明両党の教基法改正に関する協議会・第七回会合で、両党で合意した家庭教育や幼児教育の充実、私立学校の振興などの項目について、文部科学省が「改正」案の条文作成作業に入ることを正式に確認しました。
 また、「愛国心」に関する文言をどう盛り込むか、宗教教育の在り方など、両党間で意見が異なる項目は引き続き検討会で議論を深めることを確認しています。
 文科省が改定作業に入った今、次期通常国会への法案提出は必至です。
 何としても、法案提出をくい止めるために、力を奮いおこして、幅広い運動をつくりださなければなりません。まさに正念場のたたかいとなります。
 十一・六全国集会の大きなうねりを、日教組の旗のもと、十一・二一全国集会につなげなければなりません。

十一・二一集会へ
 十一月二十日は、「子どもの権利条約」が採択された日です。
 集会では、子どもたちが意見表明します。
 子どもは「お国」のためにあるのではありません。
 いうまでもなく、侵略戦争への深切で痛苦な反省から、憲法・教育基本法は、統治機構や行政機構の暴走を制御するために制定されました。つまり、憲法・教育基本法は、国家を縛るためにあるのです。私たち個々が、国家に対して、行使するために、憲法・教育基本法の規定があるのです。
 いま、まさに、その関係が、大逆転されようとしています。
 憲法・教育基本法の理念は、生きて行使されなければなりません。
 墨田教組とゆかりの深い、集会で講演される大内裕和さんは、次のようなメッセージを寄せています。

教育基本法の改悪が狙われています。
教育基本法はこれまで政府によって十分に尊重されてきたとはいえません。しかし教育基本法がその意味を失ったわけではありません。個人の尊重と平和主義を唱え、国家権力に規制をかける法という性格をもつ教育基本法は、国家主義と軍事大国化へ向けての力が急激に増大しつつある現在、むしろますますその意義を高めているといえます。教育基本法の改悪を阻止するために、この集会をぜひとも成功させましょう!

 教育基本法の改悪をとめよう!
           11・6全国集会集会アピール


 本日、私たちは組織・団体の枠を超えて全国から集まり、教育基本法の改悪がどのような問題をもっているのかをお互いに確認しました。教育基本法が2004年6月16日、「与党教育基本法改正に関する協議会」から出された中間報告の方向で改悪されるならば、教育は国家が私たち一人ひとりを支配するための手段へと変えられてしまいます。
 与党中間報告は、前文の「憲法の精神に則り」の扱いが検討事項となっていることからもわかるように、教育基本法の精神そのものを解体する内容となっています。第1条(教育の目的)において「個人の尊厳」と「平和的な国家及び社会の形成者」という部分が削除され、個人主義と平和主義という教育基本法の根本理念が否定されています。また第10条(教育行政)は、「教育は、不当な支配に服することなく」から「教育行政は、不当な支配に服することなく」へと書き換えられています。これによって教育現場は教育行政によつて全面的に支配され、その自由は奪われることとなります。さらに子どもや親の教育の権利を保障するのではなくその責務が規定され、国家権力に規制をかける法から私たち一人ひとりを拘束する法へとその性格が180度転換しています。与党中間報告は2003年3月2日に出された中央教育審議会答申以上に、現行の教育基本法の理念を根本から否定するものだといえます。
 すでに教育現場の状況は極めて悪化しています。日の丸・君が代」の強制は、国旗国歌法制定時の「強制するものではない」という政府答弁にもかかわらず、全国各地の教育現場で猛威を振るい、多数の教職員が処分されています。現場で地道に積み重ねられてきたれてきた性教育やジェンダー・フリー教育の実践に対しては、これらの意義をねじまげる政治家や教育行政によって不当な介入がなされ、激しく攻撃されています。国立大学の法人化は、研究と教育に対する政府の管理・統制を強めると同時に、経営体としての「自立」か強制されることによって、各大学は苦しい運営を余儀なくされています義務教育費国庫負担の削減・廃止への動きは、教育における地域間格差を一層拡大し、・教育の機会均等を奪う危険性をもっています。これらは教育基本法の改悪を実質上先取りした動きであるといえます。
 その問題性を最も鮮明に示したのが東京都の教育行政です。2003年10月23日に東京都教育委員会は、「入学式・卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について」通達を出しました。この「10・23通達」に基づいて「職務命令」を出し、それに従わない教職員を300名以上処分しました。そこには国歌斉唱時に不起立であった者から、生徒の不起立を理由とする者までが含まれています。こうした東京都教育委員会による教育行政は、教育基本法第10条の定める「不当な支配」そのものであり、教職員と子どもの「思想・良心の自由」(日本国憲法第19条)を侵害する暴挙であるといえます。これに対して多くの教職員か処分を覚悟で不起立を貫いたことは、教育現場の自由を守る貴重な闘いであると同時に、教育基本法改悪の実質的なな先取りに対する抵抗運動であるといえます。彼らの闘い、教育基本法の改悪を阻止する運動そのものであり、私たちは心からエールを送ります。来年の卒業式・入学式へ向けて、「10・23通達」反対!「日の丸・君が代」強制反対!子ども中心の卒業式・入学式を!教育基本法改悪反対!という声をさらに大きくし、連帯・支援の輪を全国に広げていこうではありませんか。
 教育基本法はこれまで政府や教育行政によって十分に尊重されてきたとはいえません。しかもそれを無視する傾向は近年、一層強まりつつあります。しかし教育基本法が意味を失っているかというと全くそうではありません。個人の尊重と平和主義を唱え、国家権力に規制をかける法という性格をもつ教育基本法は、国家主義と軍事大国化へ向けての力が急激に増大しつつある現在、むしろますますその意義を高めているといえます。
 教育基本法か改悪されることになれば、私たちが大切にしてきた教育の自由と平等はその防波堤を失い、状況がさらに悪化することになるのは確実です。それだけにとどまらず、これは戦後における教育や社会の原理・原則を転換することにつながります。「国を愛する心」=「愛国心」が教育基本法に盛り込まれれば、国家に従順な「心」や「内面」をもつことがあらゆる教育の場で強制されます。学校現場ばかりでなく、家庭や地域を含めた社会全体で、国家・政府に従うこと、最終的には命をも投げ出すことが善だという規範がおしつけられることになります。それは国家の交戦権を否定し、人々が国家のために犠牲となることを否定した日本国憲法9条の改悪とも直結しています。
 こうした教育の国益中心主義は、子どもたちを国家や企業にとって役立つかどうかで差別・選別する状況をもたらします。近年の教育改革によって、学校現場に市場原理が次々と導入され、教職員と子どもたち、そして保護者もこれまで以上に激しい競争に巻き込まれています。それに加えて小学校・中学校における学校選択、習熟度別指導、中高一貫校など、子どもたちを「能力」によって早期に振り分け、格差を拡大する政策が進められています。教育基本法の改悪はこの方向を固定化し、教育の平等はさらに奪われることになるでしょう。
 戦後初めて自衛隊の戦地への海外派兵が強行され、「戦争のできる国家」へ向けての転換が急速に進みつつある現在、「戦争する国家」を支える「国民精神」を教育の場で育成することが狙われています。教育基本法の改悪は、この社会の原則そのものを「平等と平和」から「差別と戦争」へと大きく転換させるものにほかなりません。
 本日の集会に参加した私たちは、このような教育基本法の改悪を全力で阻止することをここに宣言します。
                  2004年11月6日
教育基本法の改悪をとめよう! 11・6全国集会参加者一同



週刊墨教組 No.1457  2004.11.4


闘う! 二〇〇四賃金確定闘争
山場・最終団交は十一月十五日?
実力行使、墨田教組は十六日(火)早朝八時より区役所前庭で決起集会
 月例給・一時金の公民較差を是正しろ!
 業績評価、「本人開示と苦情処理システム」を確立せよ!
 成績主義強化=「給与制度・給与構造の見直し」を許すな!
断固たる闘いを!闘う! 二〇〇四賃金確定闘争

 今年度の賃金確定闘争・交渉山場を迎えつつあります。
 都労連は十一月十六日(火)に早朝一時間ストを配置し、交渉を強化しています。
東京教組も都労連に連帯し、共同行動として十一月十六日(火)早朝二九分を構えて闘うことを決定しました。 

九八・七%の高率で批准成立
 統一行動の戦術を決める批准投票を一〇月二五日〜二九日に実施しました。その結果、墨田教組は九八・七%、東京教組全体で九五・九五%という高率で批准が成立しています。墨田教組は都労連が一時間ストに突入したとき、都労連に連帯して、区役所前庭で決起集会を行います。

労使合意を反故にするような提案は受けとらない
 この数年、都議会の労使への不当な介入を避けるため、都労連は苦渋の対応と厳しい決断を選択し、「労働条件は労使の合意で決定する」ことを大切にしてきました。しかし、都は、一〇月二五日の専門委員会、十一月四日の小委員会交渉の場で、二〇〇一年度に合意に達した、「普通昇給停止年齢引き下げに伴う経過措置(資料参照)の見直し」や「七級格付けの廃止」を唐突に「提案」しようとしました。労使で合意したことを遵守することは、労使の信頼関係の基礎です。都労連が労使合意事項を反故にするような都の「提案」を、提案として受けとることを拒否したことは当然です。しかし、昨年度引き続き協議事項として合意した「特別昇給の見直しについて案」=「永年勤続表彰特別昇給の廃止提案」は、内容には反対ですが、提案としては受けとることとしました。
 
公民較差の是正、「本人開示や苦情処理システムの導入」を強く要求
 労働基本権を制約している以上、人事委員会は、代償機関として、公民較差の是正を勧告するのが当然です。しかし、東京都人事委員会は、較差是正を不当にも勧告しませんでした。都労連は、「都当局が雇用主として、較差是正をするのが当然の責務」だとして、都に較差是正を強く要求しています。
 「人事考課制度検討会」は、一〇月二二日、「最終報告書」を出しました。人事考課制度においては、「評定基準、評定内容などの公平性・透明性・納得性の確保は不可欠であり、そのために本人開示及び苦情処理システム」を導入することは当然です。今後、人事考課制度に関しても、労使の場で論議されることになります。

成績主義による給与・人事制度の再編成を許すな
 五五歳昇給停止は、二〇〇一年度の合意事項です。その内容は、経過措置を設け、二〇〇二年度から九年間で本則適用にすることです。都は、国がすでに実施していることから、経過措置の九年間が長すぎると考えているのです。また、「永年勤続表彰特別昇給は、年功的な要素が強く特昇の趣旨に反する」とのことで廃止を主張しています。つまり、「成績主義強化」による給与制度の再編成を強行したいのです。

    五五歳昇給停止
2002年4月1日より、昇給停止年齢を58歳から55歳へ引き下げることが決定されました。これについての2004年度の経過措置は、以下です。
2004年度末年齢 昇給停止年齢
58歳以上60歳未満 従前の例により停止
56歳以上58歳未満 58歳
53歳以上56歳未満 57歳
50歳以上53歳未満 56歳
50歳未満 55歳停止




はじける芽(131)
十月の指導題目
学校行事に積極的に関わり、心に強く残ったことを生き生きと書いてみよう。






刊墨教組 No.1456   2004.10.26

日比谷野外音楽堂へ

 教育基本法の改悪をとめよう!

  十一・六全国集会へ

十二・二三集会の熱と力

 私たちは、昨年十二月二三日、四千人を超す人々が結集した日比谷公会堂での『教育基本法改悪反対全国集会』の熱と力を、しっかりと記憶しています。

 四人の呼びかけ人の方が、身体の疲労をいとわずに、全国を縦横無尽に奔走され、教育基本法改悪反対運動のうねりを先頭になって牽引されたことによって、この集会が成立したのでした。

 今年も、四人の方が、左記のような、清冽な意思のこもった呼びかけを行っています。

 私たちは、呼びかけに応えなければなりません。

規範としての戦争否定の姿勢

 国家が犯しうる「悪」の最も凝縮されたものは、戦争にほかなりません。

 恐るべき悲劇を国民に強いる戦争と、それを遂行しうる国家権力の全能性や恣意性を規制するために、戦争の痛苦の体験をもとに、人々は教基法十条や憲法九条の規定を選びとったのです。

 戦後日本の規範としての戦争否定の姿勢を、絶対に放棄してはならないのです。

グローバル化の中の「愛国」教育

 ところが、どうでしょう。

 五月十七日、安倍前幹事長は、自民党の都道府県連に、各地方議会で教育基本法改正推進の決議をあげる動きを強めるよう指示しました。

 六月十一日には、民間臨調(「日本の教育改革」有識者懇談会)と教育基本法改正促進委員会(自民・民主・無所属の国会議員三三五人)が合同総会を開催し、「新教育基本法大綱」を決定しています。「大綱」には、「社会・国家、ひいては世界に貢献する日本人を育成することが目的である旨規定する」とか、「伝統と文化の尊重、愛国心の涵養・道徳性の育成が重要である旨規定する」などの文言があります。

 新自由主義と新国家主義は補完しあい結託して、グローバル化の中の「愛国」教育をおしすすめ、この国を「戦争ができる国」にしようとしています。まさに戦争前夜です。

日比谷野外音楽堂へ

 なによりもまず平和を。

 子どもは「お国のため」にあるのではありません。

 私たちは、教育基本法の改悪に反対します。

 四人の呼びかけに応えて、一人でも多くの方が、日比谷野外音楽堂での集会に参加されることを、心から強く願うものです。

11.6全国集会への呼びかけ

今、私たちは、大きな岐路に立たされているのではないでしょうか。「戦争か平和か」、「差別か平等か」という根本的な選択が、私たちに迫られています。

すでに教育現場の状況はきわめて悪化しています。2003年10月23日東京都教育委員会は、「入学式・卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について」通達を出し、春には教員自身の国歌斉唱時不起立のみならず、生徒の不起立をも理由として300名以上の教職員を処分し、さらには「再発防止研修」で「反省」を強制しました。これは教職員と子どもの思想・良心の自由(憲法第19条)を侵害するものであり、「教育は、不当な支配に服することなく」と書かれた教育基本法第10条に違反する「不当な支配」そのものです。しかし、まさにこの10条が、与党検討会の中間報告(6月16日)では、「教育行政は、不当な支配に服することなく」と、根本から書き換えられ、次の通常国会に出されようとしているのです。私たちに残された時間はわずかしかありません。

教育基本法が改悪されることになれば、私たちが大切にしてきた教育の自由と平等はその防波堤を失い、教育や社会の原理・原則そのものが、大きく転換されるでしょう。2004年2月、超党派議員連盟「教育基本法改正促進委員会」の総会で、ある国会議員は「お国のために命を投げ出しても構わない日本人を生み出す」と発言しました。「国を愛する心」=「愛国心」が教育基本法に書き込まれるならば、家庭や地域を含めた社会全体で、国家・政府に従うこと、最後には命をも投げ出すことが善だという規範がおしつけられることになるでしょう。それは国家の交戦権を否定し、国家のために犠牲となることを否定した憲法第9条の改悪とも直結しています。

教育の国益中心主義は、子どもたちを国家や企業にとって役立つかどうかで差別・選別する能力主義体制としても既に進行しています。小学校・中学校における学校選択、習熟度別指導、中高一貫校などの「教育改革」は、子どもたちを競争させ、「能力」によって早期に振り分け、格差を拡大していきます。

このように、教育基本法の改悪は、「平和と平等」を目指してきたこの社会を、「戦争と差別」の社会へと大きく転換させようとするものです。私たちは、このまま黙って、「戦争と差別」の社会で生きていくことを選択するのでしょうか?子どもたちを、そのような社会へと追い込んでいくのでしょうか?

昨年12月23日の「教育基本法改悪反対!12・23全国集会」では、教育基本法改悪反対の一点で、組織・団体の枠を超え、4000人以上もの人々が全国から集まりました。集会では、各地の教育現場で苦闘する教職員、市民、子どもたちの発言とその毅然とした姿が、参加者の心を強く打ちました。その熱い思いは、「12・23方式」の集会となって、今、全国各地へと大きく広がっています。そして2004年4月24日、「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」が発足し、これまでで最大規模の全国集会を11・6に開催しよう!と決め、さらに連帯を広げ、自由と平等と平和を求める全国の人々の力で改悪をとめよう!と、様々な活動を続けています(詳しくはホームページhttp://www.kyokiren.net/をご覧ください)。

教育基本法の改悪に反対するすべてのみなさん、今こそ、声を上げましょう!

 そして、「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」および11・6全国集会に、個人・団体で賛同、連帯してくださることを、心からお願い致します。

教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会

呼びかけ人:大内裕和、小森陽一、高橋哲哉、三宅晶子

労働環境の改善と教育予算要求の実現を求める

 一〇月二二日、「職場労働環境」の改善を求め、墨田区教委(久保教育長、横山教育次長、山下庶務課長、小暮学務課長)と交渉を行い、同時に二〇〇五年度教育予算要求を提出しました。冒頭、労働環境の改善の一つとして、加藤委員長から都費教職員を対象とした、「労働安全衛生法」にもとづく「衛生委員会」の設置を強く求めました。組合は、労働条件の改善について要求し交渉しています。しかし、例えば、都人勧で「職員の健康保持について@健康診断受診率の向上や健康診断を踏まえた保険指導等の一層の推進は必要、Aメンタルヘルス対策として、予防や早期発見に重点を置いた啓発等の充実が必要、B健康管理対策の観点から、管理職の率先した取組や組織的対応による超過勤務の縮減が必要」との報告が出されても、墨田のレベルでその具体的化を巡り、トータルに論議する場が設定できにくいのが現状です。私たちの職場での「安全と健康」を確保するためにも「衛生委員会」の設置が必要です。

 予算要求に対し、区教委は誠意をもって検討することを約しました。

 賛否を含め、特別教室の冷房化に関する要求が多くの分会から出されています。区教委としては、冷房化に向け検討していると、説明しました。


刊墨教組 No.1455   2004.10.21
 月例給・一時金の公民較差を是正しろ!
 
 「成績主義強化」の給与制度への改悪を許すな!
  賃金確定闘争勝利!統一行動批准投票を成功させよう!


 都労連は一〇月一三日、小委員会交渉を行い、都側と給与改定交渉期の項目整理を行いました。交渉では、「都当局の責任で、公民較差を是正すること」を都労連は強く要求し、都側は、「給与制度全般にわたる課題について見直し」を提案しました。主な交渉項目について、都側と都労連の考えを都労連ニュースの抜粋を資料として掲載しました。

 十一月十七日前後を山場に、実力行使を含む行動を背景に今後交渉がなされます。

勧告見送りは

   「政治的」かつ不当なもの

 都人事委員会は、二〇〇〇年には、五六八円(〇.一三%)の較差でも扶養・住居手当の改善を勧告しました。しかし、給与の公民較差が七二九円(〇.一七%)、一時金も民間は四.四二月で〇.〇二月の較差があるにも関わらず、都人事委員会は「改定を行わないことが妥当」として勧告を見送りました。大阪市・広島市・北九州市・仙台市では都の公民較差より少ない較差であるにも関わらず、給料表または諸手当での較差是正を行う勧告を出しています。

 今回の東京都人事委員会の対応は、「骨太方針二〇〇四」や「三位一体の改革」に基づき、地方公務員給与の「適正化(下げる)」を図ろうとする小泉「構造改革」路線に追随したものであり、また、「都職員の給与は高い」とする石原知事の独善的な主張に組したものであり、総人件費削減をねらった政治的なものです。組合は決して容認できるものではありません。こうした背景から、組合が、「都当局が責任をもって、公民較差を解消する」ことを要求することは当然です。


刊墨教組 No.1454   2004.10.13

国に追随し 
  例月給・ボーナスともに改定なし
  連続収入減はストップ
 「成績主義強化」の給与制度への改悪を許すな! 


 一〇月七日、都人事委員会は都知事と都議会議長に対し、都職員の給与等の勧告を行いました。また、「人事制度及び勤務時間制度等に関する報告(意見)」の中で給与制度・構造、手当制度等の見直しに言及しています。勧告は、五年続いた年間収入減をストップさせる内容になっているものの、較差が国平均より大きいことや都の生活実態などが十分に反映されたものとは言えず、不満な内容となっています。賃金の確定は、本来、労使の話し合いで決着するものです。しかし、議会が介入し、賃金カットなど不当な内容が実質的に押し付けられてきました。二〇〇四年度賃金確定闘争が今後具体的に展開されます。全力をあげてとりくんでいきましょう。勧告、報告の骨子は次の四点です。

1.官民給与の較差が極めて小さく(〇.一七%)、月例給の改定は見送り
2.ボーナスは民間の支給割合と均衡(較差〇.〇二月)しており、改定はなし (現行は四.四〇月分)
3.職責、能力、業績を反映させる給与制度・構造等の検討

4.人事考課制度を活用した人材育成、職員の健康保持のための勤務環境の整備等

月例給・ボーナス改定なし
 今年度四月時点における月例給の官民較差(都内企業と都職員との給与較差、資料参照)が極めて小さく、また、国が給与改定を見送ったことから、俸給表の改善は妥当ではない。諸手当についても民間の支給状況と概ね均衡していること等を勘案して、月例給の改定は見送りとしました。ボーナスについても同様の考えで、改善を見送りました。

 成績主義強化の
給与制度への改悪を報告

 「これからの給与制度・構造の見直し」として、次の七点を具体的な検討課題にあげています。
1.職責、能力、業績を反映しやすい新たな給料表
2.普通昇給と特別昇給による現行制度を廃止し、能力、業績の評価に連動した査定昇給
3.昇任時の給与額の決定において、昇格メリットの適切な確保
4.勤勉手当への業績反映の拡大
5.職責の違いを反映する給与処遇
6.手当制度(調整手当、住居手当)の見直し
7.教員給与のあり方について検討
 七つの課題の後に、「今後の進め方」として「給与制度は重要な勤務条件であり、今後、都として取組を進めるにあたり十分な検討及び関係機関との協議が必要である」と述べ、制度の改定にあたっては、組合との交渉を経ることが必要と述べています。当然のことです。この七点について、組合としては給与制度の改悪として反対の立場を堅持して闘います。
 
 開示、苦情処理など人事考課制度の運用に言及
 「人材育成に主眼を置いた人事考課制度の運用」の中で「評価の公正性を担保し、納得性、信頼性の一層の向上を図るため、これまでの評定者訓練をより充実・徹底するとともに、評価結果に対する苦情や相談に対して適切な対応ができるしくみを構築することが重要である。」「評価結果の本人開示についても、現在の開示状況の検証や制度に対する理解の進捗度を踏まえ、より効果的な拡大のあり方について検討していくことが必要である」と述べています。この内容は、組合が要求してきたものとほぼ同じです。具体化を渋ってきたのは、都当局であります。

はじける芽(130)

九月の指導題目 
班日記に、心に強く残ったことを生き生きと書いてみよう。
日記を作文に(推敲指導を大事に)

早く自分たちで作った米が食べたい
 五年
 ぼくたちは、一学期の六月十六日(水)からみんなで、バケツで稲を育てていました。学校の帰りや休み時間に、バケツの中の水をさわって、ぬるいときはバケツの水を捨てて、ホースで水を入れかえました。
 夏休みも、ラジオ体操やプールで、学校へ行ったときに、水をやりました。ぼくは、
(いつ米ができるのかなあ。)
と水をやるたびに思いました。水やりがめんどくさいと思ったこともありました。一学期、夏休みの間は、穂ができませんでした。葉が、まっすぐ大きく育っていました。
 二学期の九月五日くらいから、ほが出てから数日後の学校の帰りに稲を見てみると、すずめがほを食べに来ていました。ぼくが稲の近くに行くと、すずめは、大あわてでにげていきました。次の日、先生にすずめが来たことを言いました。そしたら、サッカーゴールで稲を囲ってくれました。九月十六日木曜日の一,二時間目に、前から育てている稲をみんなでしゅうかくすることになりました。みんなの家にかまがなかったので、はさみでしゅうかくしました。ぼくは、小先生係で、先生が、
「小先生の人は、ハードル用意しといて。」
と言いました。だから、小先生係のAさん、Bさん、Cさん、Dさんとみんなで四つハードルを運びました。その後に、自分の稲のある場所へ、はさみを持っていきました。先生が、
「稲の下の方を切るんだよ。あんまり下すぎてもだめだよ。」
と言いました。その時に、
「あ、いも虫がいる。」
とEさんが言いました。そしたらみんなが見始めました。先生は、
「最後にあまった葉で、米がついている束をまく。」
と言っていました。さっそくみんなでやりました。ぼくは、まず虫がいるかどうかさがしました。でも、いませんでした。米がある束を二回に分けてきり、葉でくくって束ねてから、ハードルの上をまたぐように置きました。そしたら、先生が、
「小先生ゴミをほうきでとって。」
と言ったので、Fさんとやりました。今度はみんなに、先生が、
「バケツ持ってきて。」
と言われたので、ゴミそうじを中断し、バケツの水を捨てました。でも、ただ捨てるだけじゃあもったいないから、校門の右にある木に流しました。そして、バケツの中の土は、その先のついてのあるところに捨てました。それから、学校の雨水でかるくバケツを洗いました。そしてかわかしていると、数人が集まっているので行ってみると、まだ残っているバケツの水に、ヤゴがいました。ぼくは、
(へえ〜、よくこんな所にヤゴがいるなあ。)
と思いました。
十月六日の二時間目に稲のもみとりをやりました。最初に穂だけを取りました。少し手が痛かったです。その後に、すりばちに、もみつきの米を入れ、野球ボールで少し強めにこすりました。すると、もみがらと玄米に分かれました。その後に、ベランダへ行って穴があいたボールに移して、息を吹いたら、もみがらが外へ飛びました。残ったものを見たら、玄米だけ残っていました。
 早くしゅうかくした米が食べたいです。

日記を作文に
 日記を書かせるときも、「ひとまとまりの文章を書く」つもりになって書かせている。家に帰ってからその日や、何日間の出来事を思い出しながら書き上げている。しかし、書き出しをどうするか、中心はどのように展開していくか、おわりはどのようにしめくくっていくかまで、なかなか考えながらはできない。したがって、日記を作文にしていくには、やはり書き出しをもう一度大事に考えさせている。また、中心の一番書きたいことが書けているかも、再吟味させている。前半のゴシック体の部分は、推敲したときに書き加えたものである。後半のゴシック体の部分も、あとから書き加えたものである。

この作品を分析する
* 題名の書き方が、読みたくなる書き方になっている。
* 一学期から四か月あまりの期間を、ずっと観察したことの出来事をしっかり思い出して書いている。
* 苗を植えた日や夏休みのことや二学期になってからの大事な出来事の日付けを良く覚えている。
* 自分たち一人一人のバケツに植えたので、愛情を持って育てていることがわかる。
* すずめが来たことにも気がつき、すぐに心配して、担任と連絡を取り、次の日にネットが囲まれていることにも気がついている。
* 収穫をするときの、教師の指示を良く聞き、会話の形でまとめている。
* 自分や友だちといっしょにしたことを、きちんと思い出して書いている。

積極性・意欲性は書くことによって育つ
 ものごとに対して、かかわりが弱くなっている子供が増えてきていると言われている。しかし、このような作品を読むと、子ども本来のものに対する積極性がわかり、うれしくなる。政哉さんは、日記を書くことによって、稲の成長の過程を再認識したのである。自分のかかわった出来事の中から、値打ちのあることを、自ら「えらびだし」書き上げてきたのである。日記に記さなければ、このような宝物のような作品はできあがらない。現在の教科教育の中では、このような作品は生まれてこないだろう。
この作品をこどもたちと読みあい、「ものに対するかかわり方の大事さ」をもう一度学び合うことにしている。他のこどもたちも、この作品を読むことによって、「題材」「記述」「構成」について、たくさんのことを学べる。政哉さん自身も、「鑑賞」の授業を通じて、新たな意欲を持って「書く」ことへ大きな自信を持って、再び「生きる力」を確かなものにして、日々過ごしていくであろう。



週刊墨教組 No.1453   2004.10.5

「人事考課制度」にあくまでも反対する
「職務実績記録」通知、
「デタラメな評価」横行の証しか?
「普通昇給延伸措置」を強行するな!


 都教委は、「教育職員の職務実績記録について(通知)」(資料3 本号裏面)、「平成十六年度の業績評価結果を踏まえて平成十七年度に実施する教育職員の指導育成について(通知)」(資料2)、「平成十七年度教育職員の普通昇給に係る業績に基づく延伸の実施について」(資料1)を、九月七日、十日付けで相次いで地教委宛に発し、人事考課制度によるさらなる管理強化を強行しようとしています。すでに、これらの通知は、区教委から校長に伝えられています。十月一日から「自己申告中間面接」と「異動に関する面接」が併せて行われています。面接に際し、校長・教頭による不当な言動があれば、また面接そのものに疑問や不満を感じることがあれば、ひとりで悩まず、組合に連絡してください

「昇給延伸告知」で明らかになった管理職の怠慢とデタラメ評価
 普通昇給(定期昇給)に業績評価結果をリンクさせた昇給延伸措置が、教員を除きすでに実施されています。管理職は、昇給延伸を該当職員に告知しなければなりません。告知の際、
@業績評価を踏まえた勤務実績を具体的な行動等に基づき説明する、
A職員との共通認識を図る、
B改善に向けた指導等を行うこと
等が命ぜられています。しかし、実際には、「管理職が説明責任を果たしていない、共通認識を図ろうとしない、恣意的な評定が行われていた、管理職が制度を理解していない」等、管理職の怠慢やデタラメな評価の実態が職場から明らかにされました。都側の言う「人事考課制度は人材育成」どころか、マイナスペナルティの一方的な押しつけとなっており、「指導育成」どころかモラールダウンを招く状況が生じています。都労連は、人事考課制度(自己申告と業績評価)そのものに反対する立場を堅持しつつ、現行は「公正性、納得性、透明性」が担保されていないことから、「業績評価の本人開示と苦情処理・救済制度」の確立を都側に強く要求しています。都側は、「苦情処理は本人開示に不可欠」との考えを明らかにしていますが、実施については具体的には明らかにしていません。「業績評価結果を開示」すると混乱が生じるからでしょうか。

今、何故、「教育職員の職務実績記録について(通知)」
 私たち教員には、一年遅れで「昇給延伸措置」が実施されようとしています。「延伸の告知」は来年度の五月中旬と都教委は予定を示しています。
 一方、都は「教育系では、人事考課制度は成熟していない」、「教育系では、制度五年で定着したといえない」と、制度の現状を明らかにしています。こうした現状分析は、地教委からの聞き取り、評価者訓練での管理職の現状、私たち教員に対する業績評価結果等から都教委が判断したものと考えられます。この状況で「昇給延伸措置」を実施すれば、「開示や苦情処理」に耐えられないケースが多々出ることを恐れ、マニュアル「教育職員の職務実績記録について」を通知したと考えられます。示された類の「職務実績記録」など管理職なら当然従来から実行しているものです。この通知を苦々しく思っている管理職が少なくないことを期待します。この通知は、人事考課制度の実施者である都教委が恥ずかしくも、「業績評価の実態」を明らかにしたものです。都教委が「昇給延伸措置」を強行するなら、「不当な措置」が必ず生じるでしょう。墨田教組は、「不当な措置」「不当な損害」を絶対容認することはありません。

競争主義は人間をも頽廃させる
 人事考課制度とは、ある組織の目的・目標の実現に向けて、組織を強化するためのものです。その強化を、構成員を評価し、評価結果を処遇(給与、昇任・昇格、異動)に反映させるというアメとムチにより、個々の構成員を競わせ、競争主義によって実現しようというのが人事考課制度です。利益第一主義の民間企業が先ず導入し、効率化の名のもとに公務職場にも導入されました。しかし、先行の民間企業では、その効果に疑問が出され、制度そのものの見直しがなされています。目先の利益追求が企業そのものの存立を危うくすることに繋がるからです。三菱自動車がその例でしょう。欠陥車を次々に生産し、その欠陥車による死亡事故が幾度となく起こっていても、欠陥車を生産・販売し続けた。競争主義は、人間の内心をも頽廃させるのです。
 人事考課制度は、競争により、働く者を限りなく孤立・分断させて、働かせるものとなります。孤立・分断させられてはなりません。「なかま」を大切にすること、そのことも、人事考課制度に対する闘いであります。

資料1   都教委教育長より区市町村教委教育長・区市町村立学校長他宛
16教人情第278号 H16年9月10日付
平成17年度教育職員の普通昇給に係る
業績に基づく延伸の実施について
1.対象職員(略)
2.業績に基づく延伸の基準
東京都区市町村立教育職員の人事考課に関する規則(平成11年東京都教育委員会規則第57号)等(以下「規則等」という)により実施する業績評価のうち、第一次評価総合及び第二次評価総合(それぞれ絶対評価)の両方が「C」以下となる者(充て指導主事及び区市固有指導主事については「D」以下となる者)等について、次期昇給を3月延伸する。
3.以下略)


資料2    都教委教育長より区市町村教委教育長他宛
16教人職第847号 H16年9月7日付
平成16年度の業績評価結果を踏まえて平成17年度
に実施する教育職員の指導育成について(通知)
1.指導育成の対象となる教育職員
(1)平成16年度の業績評価の第一次評価及び第二次評価の総合評価がC又はDのすべての教育職員

資料3
16教人職第842号 平成16年9月7日付け
都教委教育長より区市町村教委教育長他宛
教育職員の職務実績記録について(通知)
教育職員においては、これまでも、適宜、職務実績に関して記録するようお願いしてきたところです。校長等が、教育職員の職務実績及び指導・指示の結果等をより的確に把握し、人事考課制度の効果的な運用に資するため、教育職員の職務実績記録について、下記のとおり定めましたので通知します。

1 対象者
  人事考課制度の対象となる教育職員
2 記録者
  校長及び副校長(教頭、教務主事及び学生主事を含む。)(以下「校長等」という。)
3 記録方法
校長等は、人事考課制度の対象となる教育職員の実績・行動をより的確に把握するとともに、その実績・行動に対し指導・指示を行った場合には、その経過及び結果等について、具体的に記録してください。
指導を要する教育職員については、必ず職務実績記録を作成するものとします。
各項目とも年月日及び時刻は、必ず記録してください。
必要に応じて区市町村教育委員会が提出を求めることができます。
(1)教育職員の実績・行動
当該教職員が行った事実(行動)を具体的に記録してください。
(2)校長等の指導・指示
(1)に対して、校長等が行った指導・指示等を具体的に記録してください。
(3)結果等
(2)に対して、当該教職員が行ったに事実(行動)、結果等を具体的に記録してください。
4 記録様式
標準的な職務実績記録の様式については、別添えのとおりとします。
本様式は、校長等が勤務実績等を記録する際の、標準的な様式を示したものです。
例えば、これまで記録してきた様式を継続するなど、標準的な様式以外で記録することも可能です。その場合は、本様式の項目を含んで記録してください。
5 引継ぎ等
対象となる教育職員が異動した場合は、職務実績記録を異動先の記録者である校長等に、必ず引き継いでください。校長等が異動及び退職する場合も同様とします。

第二十六回バザー
「アンニョン・フェスティバル」
 東京朝鮮第五初中級学校オモニ会主催
日時 十月二四日(日) 雨天決行
午前十一時〜午後三時
場所 東京朝鮮第五初中級学校・運動場
 墨田区八広五ー二十二ー十五
 電話 三六一七ー七九一一
内容
 @公開授業 九時〜十時四十分
 Aバザー 十一時〜三時
 Bステージ 十一時三十分〜二時





週刊墨教組 No.1452 2004.9.22

二〇〇四年度 同和教育研究集会
十月二十日(水)午後三時
すみだ女性センター
記念講演は、寺澤亮一さん
(全国同和教育研究協議会元会長)
 テーマ「学校教育のなかで同和教育を」



産業・教育資料室「きねがわ」
 まもなくオープン!!
      ーアーカイブス きねがわー

同和教育の歩みを残す
 昨年三月木下川小学校が廃校になりました。木下川小がこれまで築き上げてきた同和教育の歩みを、地域の産業や歴史にあわせて資料室としてまとめ上げたいとこれまで取り組んできました。この秋、十月二十日(水)オープンの予定で、今急ピッチで進められています。

貴重な資料
 この「産業・教育資料室きねがわ=vは、もとは今から三十年前、四十周年記念行事のとき、地域から集められた産業資料を展示し、一教室を「産業資料館」として作ったものです。ここには、さまざまな革や、革製品、油脂製品、昔の皮作りの道具、金属、ガラス、プラスチック製品など、当時の地域産業の貴重な資料が数多く展示されていました。また、当時の皮作りの写真や、町の様子、学童疎開など貴重な写真も数多く残されています。これらの資料は傷みの激しいものも多く、また古くなりすぎ活用できないものもあれば、説明書きがないために用途の分からないものもありました。
 また、学校には開校当時の資料や、焼け残った貴重な資料、木下川の子どもたち全員の日記から作られた文集「木下川の子ども」が創刊(一九五七年)当時から廃校になるまでの四十六年分。また、人尊校以前の学力水準向上事業対象校に指定されて(一九七二年)からの毎年の「研究誌」など三十一年分など、同和教育、人権学習の歩みが残されています。
 学校関係の基本的な資料については統合校八広小のメモリアルルームに運ばれましたが、それ以外の貴重な資料が眠ったままになっているのです。
 木下川小職員は、廃校でこれらの資料が何ら生かされず封鎖、廃棄されてしまってはいけないと考え、最後の職員会議で、長谷川秀男先生(もと木下川小学校校長)を中心とした「木下川資料管理委員会」を作り、そのメンバーに委嘱することを決定しました。
 資料委員会は昨年度より十数回にわたって開かれ、どのような地域資料館を目指すか、残されている資料をどのように保存・活用・整理・展示していくか等、話し合いを持ってきました。会の中には、専門的な立場から地域博物館作りに関わっている学芸大の君塚仁彦氏、大森直樹氏にも入って頂き、その度に具体的なアドバイスを受けてきました。

ボランティアによる手作り資料室
 木下川小の建物自体は暫定五年間そのままということですが、消防法のため二階以上が封鎖され使えません。四階にあった「産業資料館」は一階の旧保健室に下ろされることになりましたが、三十年前の展示物をそのまま下に下ろすだけでは、今の時代に充分活かされないでしょう。そこで管理委員会では地域の方々の協力の下、新しい資料、展示物を集め直し、地域の方々や、近隣の小中学生、また全国から木下川を訪ねてこられる方々に見てもらっても役立つ資料室に作り直そうと進めてきました。
 このことを知った地域の人たちは、木下川のためならという熱い想いで、惜しみない協力を申し出てくれました。区では予算がないということで、四階から一階への展示物の移動費用、その他、遮光カーテンや、廊下締め切りドア取り付け工事しかできないということでしたが、地域の方々の協力で、壁面から飛び出している不要物の撤去、廊下ドア部分の改造、壁面の汚れ落とし、ペンキ塗りなど、五月の連休二日間で延べ五十人以上が改装工事に参加し、協力してくれました。昼はお母さんたちによる炊き出しが行われました。地域の人たちのボランティアによる本当の手作り資料室です。あとは中身をどう充実させていくかだけになりました。

新たに集まった資料
 展示室は大きく三つの部分に分かれて展示することにしました。
1、木下川の町の歴史
2、木下川の産業、皮革・油脂
3、学校の歴史、教育実践、革を使った子どもたちの作品
 資料室の外枠部分が完成すると同時並行に、地域を回り、昔の革づくりの道具や、資料集めを始めました。どこを回っても皆非常に協力的で、今は使ってない昔の革づくりの道具など、貴重な品々が集まってきました。
 はせんを研ぐ時に使う「桶」、毛抜きをする時トロッペの中に消石灰を入れ、薬品が満遍なく混ざるようかき混ぜるための「かい」、皮を天日で乾燥させる時に使用した「天日乾燥板」などは、「産業資料館」に残されていましたが、今回、新しく、昔フォークリフトの代わりをした皮を運ぶ道具「蓮台」、毛抜き、脂取り用に使った「かまぼこ」、主にヌメ皮、牛皮を伸ばすのに使った何種類もの「へら」、皮を伸ばししわをつける道具「ふね」などが寄贈されました。また、保存されていたものの、用途が分からなかったモーター状の重い道具も「へら」の一種で、ヌメ皮をつや出しする時に使ったものであることも分かりました。今でこそブタ皮なめし中心の木下川ですが、当時、牛皮中心の町でした。
 大型ドラムが普及する前の革作りは、手作業が多く本当に大変で木下川は職人の町でした。当時を知る人たちは、その頃の道具を見て、当時の革づくりの苦労や思い出、許し難い差別体験などもまざまざと蘇ってくるようで、話が尽きませんでした。
 これらの一つひとつを地域に生きている人たちの想いに重ねて展示できればと思います。

 また、グレートジャーニー関野吉晴さんもプロの写真家として木下川の皮工場で働く人々の想いを込めた写真を撮っているので、展示する予定です。

人権学習発信の場として
 資料室のテーマは、
@木下川のまちの歴史 
A「皮から革へ」 
Bなめしの技と道具 
C木下川の革と脂 
D皮と授業 
E木下川小学校のあゆみ 
F木下川の教育
です。「皮と授業」では革で作った子どもたちの作品も展示する予定です。
 この資料室は木下川の住民と他地域の人々との交流の場となり、また人権学習の発信の場となることを願って創られます。
十月二十日(水)オープンします。


週刊墨教組 No.1451 2004.9.15
二四条改憲と連動する
「ジェンダー・フリー」攻撃
   ねらわれる「個人の尊厳」と「両性の平等」


時代錯誤の決定

 東京都教育委員会は、八月二六日、次のような「見解」を決定した。

「ジェンダー・フリー」という用語の使用に関する東京都教育委員会の見解

 東京都教育委員会は、最近の「ジェンダー・フリー」という用語をめぐる誤解や混乱の状況を踏まえ、以下のとおり見解を示すものであります。
 
 「ジェンダー・フリー」という用語は、男女共同参画社会基本法及び国の基本計画、東京都男女平等参画基本条例等においても使用しておらず、また、その意味や主張する内容は使用する人により様々であり、誤解や混乱が生じています。
 こうした状況の中で、内閣府においても、本年四月、この用語を定義できないとした上で、地方公共団体が条例等を作成する場合にはあえて使用しない方が良いのではないかとの考え方を示しています。
 また、一部には「男らしさ」や「女らしさ」をすべて否定するという意味で「ジェンダー・フリー」という用語が用いられることがあり、このことは、東京都教育委員会が目指す男女平等教育の考え方と明らかに異なるものであります。
 こうしたことから、東京都教育委員会は、男女平等教育を推進する上で、今後は、「ジェンダー・フリー」という用語は使用しないこととします。

 平成十六年八月二六日
東京都教育委員会


 そして、都教委は、この「見解」をふまえて、「『ジェンダー・フリー』にかかわる配慮事項について」という文書を、都立学校長へ通知したのだった。そこには、つぎの二点が記されている。


1教科用図書にみられる
  「ジェンダー・フリー」の用語の
  扱いについて
 文部科学省の検定を経た「社会」、「公民」、「家庭」の教科用図書のなかには、「ジェンダー・フリー」という用語を用いているものがある。
 また、これらの教科用図書のなかには「男らしさ」や「女らしさ」を否定するような意味で、「ジェンダー・フリー」という用語を用いているものもある。
 各学校においては、これらの教科用図書で「ジェンダー・フリー」の用語を取り扱うに当たり、「東京都教育委員会の見解」を十分に踏まえ、適切に指導を行うこととする。


2男女混合名簿について
 東京都教育委員会は、これまで学校における出席簿等の名簿について、望ましい男女共同参画社会の実現に向けた取組の一環として、男女混合名簿の導入を推進してきた。
 しかし、近年、「男らしさ」や「女らしさ」をすべて否定するような「ジェンダー・フリー」の考えがでてきている。それに基づき、男女混合名簿を導入しようとする主張がみられ、学校において混乱を招いているところである。こうした「ジェンダー・フリー」の考え方に基づいて名簿を作成することは、男女共同参画社会の実現に向けて男女混合名簿を推進してきた東京都教育委員会の考え方とは相容れないものである。
 したがって、「男らしさ」や「女らしさ」をすべて否定するような誤った考え方としての「ジェンダー・フリー」に基づく男女混合名簿を作成することがあってはならない。

ジェンダー・フリーという言葉
 「見解」にある「内閣府の考え方」には、

「1 「ジェンダー」の使用状況等について
・「ジェンダー」という用語は、一九九五年の第四回世界女性会議で採択された北京宣言及び行動綱領において、生物学的な性別を示す「セックス」に対して、社会的、文化的に形成された性別を示す概念として使用されています。
・男女共同参画社会基本法においては「ジェンダー」という用語は使用していませんが、男女共同参画基本計画においては、「社会的・文化的に形成された性別(ジェンダー)」と規定し、これに敏感な視点などの形で使用しています。」

と、はっきりと明記されている。
 「ジェンダー・フリー」という言葉は、「ジェンダーにとらわれないで」「「ジェンダー・バイアスから自由にいきたい」という思いを伝える、真の男女平等をめざす言葉として誕生し、使われてきたのである。
 今回の都教委の決定は、男女平等をめざす国際的潮流に逆行する、時代錯誤の愚行である。

劣化する都教委
 さらに、都教委は、「ジェンダー・フリー」攻撃にかこつけて、男女混合名簿まで、姑息にも規制しようとしている。
 二〇〇一年「東京都男女平等参画審議会」答申は、男女平等参画社会を実現するために、学校教育も含めた具体的な提言を行った。この答申を受け、二〇〇一年十二月、東京都教育庁指導部指導企画課は、「男女平等教育の推進のために」という見事なリーフレットを作成し、各学校に二部ずつではあるが配布している(『週刊墨教組』一三五八号所収)。
 冷静な品格をそなえたリーフレットの文章と、無残に劣化した今回の通知文書の余りの落差。
 三年足らずのうちの、この都教委の激変は、いったい、どこからくるのか。

自民党改憲「論点整理」
 六月十五日、自民党憲法調査会のプロジェクトチームが、「論点整理」をまとめた(資料参照)。総務会で了承された公式文書である。二〇〇五年にまとめられる憲法草案の基礎となる、きわめて重要な文書である。
 「論点整理」には、なによりも国家を最優先させ、「戦争ができる国」への志向が色濃く投影している。
 国家主義がのさばり、不平等と差別化を推進し、再び戦争のできる「国民」づくりにつながるための改憲であることは、一目瞭然である。
 とりわけ、「平和」と「平等」、そして、「個人の尊厳」は、徹底して排斥されている。

ねらわれる憲法二四条
 「論点整理」には、「婚姻・家族における両性平等の規定(現憲法二四条)は、家族や共同体の価値を重視する観点から見直すべき」とある。
 さて、憲法二四条は、次のように規定されている。

第二四条【家族生活における個人の尊厳と両性の平等】
@ 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
A 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

 国家にとって、少子社会は、危機であり、由々しき問題である。
 「大競争時代」を勝ち抜くための人材確保と有用な労働力確保、さらには、兵士としての要員確保のためにも、女性は家庭にいて、文句を言わずに、従順に産めよ増やせよに励み、国家に貢献すればよい。まるで、復古的な家制度への回帰そのものである。
 その障壁となっているのが、二四条「個人の尊厳」であり、「両性の平等」なのである。

連動する攻撃
 二四条制定にあたって、戦前の家制度に郷愁をもつ男性議員から、執拗な反対があった。
 制定後も、改憲をめざした吉田茂の憲法調査会によって、まっさきに二四条「改正」と家制度復活が企てられた。
 二四条は、制定以来、つねに危機にさらされつづけてきた。今また、最大の危機にさらされている。
 「ジェンダー・フリー」攻撃や、「男女混合名簿」攻撃の深層には、背後で、二四条改憲勢力が、はばかることなくうごめきはじめたことを、しっかりと見ておかなければならない。

資料
自民党憲法改正プロジェクトチーム 「論点整理」
         (2004年6月15日付)より抜粋 
●新憲法が目指すべき国家像について
  基本的に国というものはどういうものであるかをしっかり書き、国と国民の関係をはっきりさせるべきである。そうすることによって、国民の中に自然と「愛国心」が芽生えてくるものと考える。

●前文に盛り込むべき内容
○「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」は、今後ともこれを堅持していくべきである。ただし、「基本的人権の尊重」については行き過ぎた利己主義的風潮を戒める必要がある。また、「平和主義」についても、現行憲法9条の見直しを反映させ「一国平和主義」の誤りを正すとともに、わが国の平和主義が世界の平和構築に寄与し、国を挙げて国際平和を推し進める姿勢を強調するなど修正が必要である。
○ わが国の歴史、伝統、文化等を踏まえた「国柄」を盛り込むべきである。
○ 社会を構成する重要な単位である家族に関する文言を盛り込むべきである。

●天皇
○ 天皇の祭祀等の行為を「公的行為」と位置づける明文の規定を置くべきである。

●安全保障
○ 個別的・集団的自衛権の行使に関する規定を盛り込むべきである。
○ 非常事態全般(有事、治安的緊急事態《テロ、大規模暴動など》,自然災害)に関する規定を盛り込むべきである。
○ 21世紀において、わが国は、国力に見合った防衛力を保有し、平和への貢献を行う国家となるべきである。

●国民の権利及び義務
○ 国の防衛及び非常事態における国民の協力義務を設けるべきである。
○ 政教分離規定(現憲法20条3項)を、わが国の歴史と伝統を踏まえたものにすべきである。
○ 「公共の福祉」(現憲法12条、13条、22条、29条)を「公共の利益」あるいは「公益」とすべきである。
○ 婚姻・家族における両性平等の規定(現憲法24条)は、家族や共同体の価値を重視する観点から見直すべきである。
○ 社会権規定(現憲法25条)において、社会連帯、共助の観点から社会保障制度を支える義務・責務のような規定を置くべきである。
●改正
○ 憲法改正の発議の要件である「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」を「各議院の総議員の過半数」とし、あるいは、各議院において総議員の3分の2以上の賛成が得られた場合には、国民投票を要しないものとする等の緩和策を講ずるべきではないか。





週刊墨教組 No.1450 2004.9.8

なりふりかまわぬ都教委の愚行
「つくる会」教科書採択をめぐって


民意とかけはなれた決定
 来春開校する東京都立の中高一貫校、白鴎高校付属中学校(仮称・台東区)の教科書採択が、八月二十六日朝の東京都教育委員会で行われた。
 注目された歴史教科書は、新しい歴史教科書をつくる会」が執筆した扶桑社版が採用されることになった。
 教育委員は、清水司・横山洋吉・国分正明・鳥海巌・米長邦雄・内館牧子の六人。清水・国分を除く四人は、いずれも石原知事による人選である。無記名投票の結果は、扶桑社が五票、帝国が一票というものだった。
 議論に費やされた時間はたったの五分。
 「はじめに結論ありき」とはいえ、余りに民意とかけ離れた決定である。民意をあなどりさげすむ、なりふりかまわぬ都教委の愚行が、またしても、くりひろげられたのである。

「歴史修正主義」的な「国民の物語」
 新聞報道によれば、議論の締めくくりに、国分正明(元文部事務次官)は、「戦争を賛美し、戦争への道をひらく教科書だという人がいるが、その人はこの教科書を読んでいるのだろうか」と臆面もなく居直ったという。
 思い出してみれば、はっきりする。
 二〇〇一年三月五日付朝日新聞朝刊は、
「『つくる会』教科書は、検定意見を受け入れ、百三十七ヶ所すべてを修正」して、「合格の可能性が高まっている」と報じた。
 朝日新聞によると、修正は以下のようなものであった。

韓国併合は「国際関係の原則にのっとり、合法的に行われた」などと記述されていたが、「合法的」という表現がなくなった。さらに「日本は韓国内の反対を武力で押し切って、併合を断行した」という趣旨の記述が加わった。

朝鮮半島の地理について「日本に絶えず突きつけられている凶器となりかねない位置関係にあった」という表現もなくなった。

日中戦争の「南京事件」に関しては、戦争中だから、何がしかの殺害があったとしても、ホロコーストのような種類のものではない」と記述した部分が削除された。

 三ヵ所を読むだけでも、当初の検定申請本が、いかに凄まじい虚構の上に成り立った「歴史修正主義」的な「国民の物語」であるかがよくわかる。
 また、「新しい歴史教科書をつくる会」の当時の会長の西尾幹二は、つぎのようにコメントしていた。

「個別部分は屈辱的ともいえる修正を受け入れた。ただマルクス主義史観とは違う我々の考え方そのものは残っている。」

 西尾が言うように、「歴史修正主義」的な「国民の物語」の考え方の根幹は、生きのびたのである。
 国分の発言こそ、侵略戦争とアジア近隣諸国との関係を顧みない、独善的なものである。

外からの眼差し
 当然のことながら、近隣のアジア諸国は、この決定について、すばやく反応した。

 韓国外交通商省の当局者は、 日、「韓国政府は、自国中心主義的な史観に立ち、過去の過ちを合理化している扶桑社の教科書を採択したことを遺憾に思う」と論評した。
 中国外務省の孔泉報道局長は、 日、「日本側は今まで歴史問題で示した態度と約束に基づき、正確な歴史観をもって日本の若者を教育するべきだ」と懸念を示す談話を発表した。(いずれも八月二七日付朝日新聞朝刊による)

 教育委員六人の「独裁」ともいえる自己責任は、きわめて重い。
 この国は、いつから、こんなにも変わり身ともの忘れの速さだけが取柄の国になってしまったのか。
 歴史の負/闇の領域を見据えることのできない人たちが、歴史の事実を直視する人々に向かって「自虐史観」などと悪罵を浴びせかける小賢しい光景は、何ともひ弱で空しくうすら寒い。
 国の歴史に一片の汚れがあることすら容認できないこの人たちの態度は、自己愛的にしか国を愛せない、なんと、傲慢で不遜であることか。
 この人たちは、中国や韓国政府の懸念や憂慮の表明を、全く的外れにも、「内政干渉」としかとらえない。
 何という想像力の欠如。
 「記憶は弱者にあるのだ」(マルセ太郎)。痛みをたたえた外からの眼差しにさらされる試練に耐えなければならない。そして、内省して、個を鍛え、超克して、はじめて相互理解と相互友好が成り立つのである。

「教員の意向」排除
 「つくる会」教科書は、なによりもまず、「国家」を優先して、「人権」は後景に追いやられる。憲法・教育基本法の理念は、あからさまに無視/黙殺され、「改憲」が大きくせりだしている。そして、戦争が露出している。
 しかし、まっとうな感覚と精神をもつ教員なら、痛苦な内省が全くないこのような「つくる会」教科書を採択することはありえない。
 そこで、採択の邪魔になる「教員の意向」を、いかにして排除するかの手立てが画策されたのだった。
 都教委が、二〇〇一年二月八日に出した『教科書採択事務の改善について(通知)』という文書には、つぎの文言があった。

4、各市町村教育委員会は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十三条第六号に定められた教科書の「採択権者」としての立場と責任を自覚し、調査研究資料及び「採択委員会」等の下部機関の調査報告書の内容に基づき、自らの判断で採択すべき教科書を決定すること。

 今となっては、昨年の「日の丸・君が代」を強制する都教委の『実施指針』と同じやり口なのだが、時代に逆行するこの一片の通知が、すべての始まりだった。

教員に採択権がある
 だが、いかにももっともらしく装っているが、「地教行法」第二三条第六号とは、教育委員会は「教科書その他の教材の取扱に関する」事務を「執行する」と規定しているにすぎない。
 たんに、所轄の教育委員会の事務処理権限を規定しているのにすぎないのである。
 これを根拠として、教育委員会を「採択権者」とするのは、あまりに粗雑で脆弱な論理である。
 教科書採択にあたって、日々、子どもたちの現実をつぶさに熟知している教員の意見を取り入れることは、しぜんであり、あたりまえのことである。
 教育基本法第十条には、
「(教育行政)教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。
A教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行わなければならない。」
とある。
 学校教育法第二八条六項には、
「教諭は、児童の教育をつかさどる」
とある。
 この二つの法律をすなおに条理解釈すれば、教員に教科書採択権があることが自然なのである。
 都教委の時代錯誤ともいえる一片の通知によって、下位法が上位法を食いつぶすような愚挙を、断じてさせてはならない。
 来年も扶桑社版が採択されないよう、私たちは、いまひとたび、とりくみを新たにしなければならない。

 東京から闘いの大きな狼煙があがる!
 ・石原、横山都教委の暴走を止めよう!
 ・教育を破壊する東京都教育委員会に怒りのつぶてを!
 ・「日の丸・君が代」強制・処分の都教委一〇・二三通達は違憲だ!
 ・処分のエスカレートを許さず、教職員・生徒・保護者などみんなの力で憲法と教育基本法の改悪をとめよう! をスローガンに八月三〇日都教委包囲デモが貫徹された。

 都庁第二庁舎を、約250人が包囲。都庁第二庁舎前では約450人のデモと合流し「都教委の暴走を止めよう、都教委を包囲しよう」のシュプレヒコールを繰り返す。
 その後、包囲部隊もデモ部隊に合流し、新宿の繁華街をデモ行進

  デモ前の集会では、高橋哲也さん(東大大学院教授)と、三宅晶子さん(千葉大助教授)発言。「教育基本法の改悪をとめよう11・6全国集会」への結集を確認し、集会アピールを採択後、デモ部隊は都庁に向け出発。




週刊墨教組 No.1449 2004.8.27

 「景気は上向き?」月例給・ボーナスともに改定なし
総収入マイナスはストップ
「実績重視」の給与制度への改悪を許すな 

八月六日、人事院は政府と国会に対し、国家公務員の給与勧告や「地域給与・給与制度見直し」に関わる報告を行いました。また、教育職国家公務員が非公務員になったことに伴い、教育職俸給表の教育職(二)教育職(三)などが廃止されました。勧告の主要点は次の三点です。

1.官民給与の較差が極めて小さく(〇.〇一%)、月例給の改定は見送り
2.ボーナスは民間の支給割合と均衡しており、改定はなし 四.四〇月分
3.寒冷地手当の支給地域、支給額、支給方法を民間準拠を基本に、抜本的に見直し

月例給・ボーナス改定なし

 人事院は、今年度四月時点における月例給の官民較差(民間企業と国家公務員との給与較差)行政職(一)では三九円(〇.〇一%)とし、較差が極めて小さく、俸給表改定が困難であること、諸手当についても民間の支給状況とおおむね均衡していること等を勘案して、月例給の水準改定は見送りとしました。
 ボーナスについては、昨年冬と本年夏の民間の支給割合は、四.三九月であり、公務員の支給月数四.四〇月とおおむね均衡しているとして据え置きとしました。しかし、六月一〇現在の連合集計によると、民間では、夏のボーナス支給は平均二.三九月、前年比四.四%の増加となっており、民間の動向からしても据え置きは納得がいくものではありません。
 
寒冷地手当の抜本的見直し
 大幅な見直しがなされたものの、寒冷地手当制度は、なんとか維持させることができました。しかし、見直しの「考え方」に重要な問題が含まれていることに留意する必要があります。民間準拠にするということは、不支給も含め、働いている地域ごとに手当額等がことなることになり、新たに地域ごとの公務員給与の創設へと改悪が強行される危険を孕むことになるからです。

「実績重視」の給与制度への改悪を報告
 「組合との交渉」を明確にさせる
 政府が、公務員の総人件費抑制政策の一環として、「地域給与・給与構造の見直し」を「本年勧告」の中に何としても盛り込ませようとした中で、日教組・公務員連絡会は、ギリギリまで人事院総裁などと交渉・協議を行い、その結果、「報告」に止めさせ、報告の「今後の進め方」の中で「各府省、職員団体等の関係者との十分な協議を行い、検討項目の具体化を図る」とし、組合との交渉・協議図ることを明確にさせました。「地域給与・給与構造の見直し」の骨子は次の四点です。

1.全国共通俸給表の水準を引き下げ、「地域手当」を新設
2.職務・職責を反映させるため俸給表構造を見直す
3.普通昇給と特別昇給に替え、勤務実績の評価に基づいて昇給額を決定する「査定昇給」を導入
4.勤勉手当への実績反映の拡大

 前年より民間実績はプラスになっています。また、教員の給料表は、今年度から都人事委員会が示すことになります。今後、一〇月初旬に出される都人勧を巡り、賃金確定の闘いは展開されます。

関東大震災81周年
朝鮮人殉難者追悼式のご案内

記録的な暑さの夏でした。6月に種まきをしたホウセンカも夏バテ気味で有志の方たちの水遣りも大変だったことでしょう。
今年の夏は、気候だけでなく、枝川の朝鮮第二学校をめぐる東京都の排外主義的な攻撃は、「日の丸・君が代」の処分や研修までともなう執拗な攻撃とともに改憲・戦争への流れが急速に強まっている異常な夏でもありました。
関東大震災のときに、流言蜚語によって関東一円で6000名を越す朝鮮人が殺害されました。墨田区の旧四つ木橋周辺でも、多くの犠牲者を出しました。
その方たちの無念を想い、2度と繰り返させない誓いとともに、追悼式を始めて今年で23回目を迎えます。ささやかでも地域で重ねていくことの大切さを改めて考えます。みなさんのご参加・ご協力をお願いいたします。
日時 9月4日(土)午後3時より
場所 荒川河川敷木根川橋下手京成線・八広下車徒歩5分・

* 午後1時15分から八広小学校音楽室で呉充功監督の記録映画「隠された爪痕」をビデオ上映します。
* 追悼式の準備は10時30分から追悼式会場で行ないます。お手伝いできる方はお弁当の都合があるので、事前に連絡してください。

やめろ!「再発防止」不当研修
 八月二日と九日、午前午後の二回に分けて計四回、都教委は、「君が代」に拝跪しなかった教員に対して、不当にも「研修」を命じてきました。私たちは、「君が代」不当処分撤回を求める会(東京教組)、都高教等とともに、研修会場である水道橋都立工芸高校隣の都立総合技術センター前で不当研修反対の意思表示と被処分者への激励行動をしました。
 「処分は不当」「内心の自由を守れ」のアピール。会場前にとめられた宣伝カーから大きな声が聞こえます。入り口には数人のガードマンと、「都教委」の腕章をつけた職員が無表情に立っています。彼らは聞こえぬふりをしていました。が、内心はどうだったのでしょうか。卒業式や入学式での私たちがこの都教委職員の姿のようでありませんように。
 弁護士の澤藤さんが責任者に対して、この研修が不当であること、内心の自由を侵す危険性のあることを諄々と説きました。録音を妨げない、質問にはきちんと答える・・・など、研修を受ける人たちの人権が侵害されないように保障を求めました。。責任者は、「答えられない」「ここでは言えない」などその場しのぎの返答を行いましたが、ねばりづよい交渉で「違憲・違法にならない研修をする」との約束をさせることができました。
 多くの支援者の激励とマスコミの取材の中、被処分者が入場していきました。
 「研修」後の全水道会館での報告会には、会場が人で埋まりました。その中で「研修」の内容が、地公法の一般的な解説に終始し、「日の丸」「君が代」には一切触れなかったこと、被処分者からの実質的な質問には答えなかったことなどが報告されました。「ともかく研修はやった」という「アリバイ」だけが目立ちました。
 あからさまな思想弾圧を許さなかったのは、処分・研修の不当性に対する裁判所の危惧や弁護士の努力、会を中心にした支援組織の活動、そして今回処分された方々の強い意志の力によるものです。




週刊墨教組 No.1448  2004.7.9
夏季休業を有意義に過ごそう
研修の扱いは変更なしー研修権を保障させるとりくみ

 
 「研修の取り扱い」が変更され、三年目になりました。この変更には、様々な問題点をもっていますが、私たちは、あくまでも自主的、自発的、主体的に行うべき「研修」の機会を保障させていくとりくみを、粘り強くすすめ、現実化させて行く必要があります。

教育公務員特例法二一条(旧十九条)・二二条(旧二〇条)
      条文は何ら変更されていない
 
 研修
二一条 教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。
 2 教育公務員の任命権者は、教育公務員の研修について、それに要する施設、研修を奨励するための方途その他研修に関する計画を樹立し、その実施に努めなければならない。
研修の機会
二二条 教育公務員には、研修を受ける機会が与えられなければならない。
 2 教員は授業に支障がない限り、本属長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修を行うことができる。(以下略)
 
 教員の研修のあり方は、一般の公務員の研修(国公法七三条、地公法三九条)の扱いと異なって、教育公務員特例法(以下教特法)で特別に規定されています。創造的な教育活動を営むには、日常不断の研修(研究と修養)活動が必要不可欠であることを教特法二一条で保障しているのです。
 一般の公務員の研修は、その規定から明らかなように勤務能率増進上のいわばその手段として他律的に課せられたものです。しかし、教員の研修は、その職務遂行上不可欠なものとしてあり、他律的に課せられるものではなく、自主的、自発的、主体的におこなわれるべきものです。また、二二条2項で、いわゆる承認研修の機会を保障しています。
 研修問題を考える場合、、先ずこの点を押さえておく必要があります。

一昨年度の変更点は二点
@ 教員の自宅を研修場所とすることは、原則として認めない
A 研修承認願、研修報告書の様式を変更する

 様式変更についての区教委の態度

 今回の様式の変更は、研修願・研修報告の書式整備を通じて、教員の自主的、自発的に行うべき「研修」を教育行政として奨励しようとすることが趣旨である。個々の教員の自主的、自発的な「研修」を規制するものではなく、そうした意図もない。

自宅での研修
 文部科学省は、二〇〇二年七月四日、「夏季休業期間等における公立学校の教育職員の勤務管理について」を各都道府県教育委員会へ通知しました。
 この通知について、一部マスコミが「『自宅で研修』認めず」との見出しでとり上げ、あたかも文部科学省が「自宅での研修」を一切認めないかのような報道をしました。これは全くの歪曲です。
 文部科学省は、「研修を自宅で行う場合」「自宅で研修を行う必要性の有無等について適正に判断すること」と述べているのです。

「原則」の意味
 二〇〇二年度に区から出された通知文には、6―(1)―ウ、「研修場所については、研修内容からみて妥当な場所であり、合理的かつ必然的な理由を有すること。なお、教員の自宅を研修場所とすることは、原則として認めないこと。」とあります。
 後段部分「教員の自宅を研修場所とすることは、原則として認めないこと」にあります。
 行政用語として「原則として」は、「例外」があることを意味しています。「原則として認めない」とは、「認める場合がある」ことです。研修をするにあたって、研修の成果がよりあがることが期待できるとすれば、それで十分な理由になると考えられます。

自主的研修を実現しよう 
 区教委は教特法を遵守する立場にあり、区教委には研修の機会を保障する責務があります。区教委が研修内容・方法に介入することはありません。私たちはあくまでも自主的、自発的、主体的に行うべき「研修」の機会を保障させていくとりくみを、粘り強くすすめていく必要があります。


資料

 「休暇の計画的な利用促進」都教委通知
都教委は、「学校教職員の夏季における休暇の計画的な利用促進及び夏季ノー超勤ウィークの実施等について」を六月三〇日付けで、地教委に通知しました。墨田区教委は、この通知に関し、その趣旨を七月七日開催の定例校長会で通知しました。通知文の骨子は、
@従来にも増して夏期休暇と年休を取得しやすい環境を整備すること、
A超過勤務等の縮減を進めること、
B教職員の健康増進及び家庭生活の充実並びに公務能率の向上を図ることの三点です。
 教職員が夏期休暇五日をほぼ100%消化していることを承知で、夏季休業前に敢えて都教委がこうした内容の通知文を出した背景には、「管理職も含め教職員は疲れている、日頃の勤務が家庭生活にもマイナスの影響が出ている、このままでは公務能率の向上が図れない」との状況認識があるからです。都教委が何を言おうとも、私たちは労働者の権利として、夏期休暇や年休を取得してきました。しかし、「夏期休暇や年休を取得すること」に対し、嫌がらせをする管理職が存在することも事実です。今回の通知文は、こうした管理職に対する戒めであり、夏季休業中に様々な行事や会議を計画し、休暇を取りにくくしている学校職場に対する警告でもあります。

はじける芽(129 )

六月の指導題目   自分の身近なところにいる人へ関心を持ち、心に強く残ったことを、生き生きと詩に表現してみよう。 人間への注目


 必死に跳んでいるA先生
授業参観の時、体育があった。
短なわをやった。
A先生は、BさんやCさんに負けないように跳んだ。
ちょっと、かっこつけてた。
保護者の人や、地域の人がいっぱい見に来ていたからかな。
それとも、前に担任した、Dちゃんが来ていたからかな。
A先生は、とてもしんけんに跳んでいた。
でも、Bさんに負けた。
とても悔しそうだった。
A先生、また今度がんばってね。
この年になっても、子どもには負けたくないという気持ちが、いまだにある。できるならば、Bさんは、百回こし、私は、六十六回までいった事も書いておくと、もっとよかった。。

 熱心なE先生
E先生はとっても熱心だ。
音楽クラブの時は、一人ずつ順番に見る。
三分という短い時間で、ていねいに教える。
みんなはどんどん銀シールをもらう。
たまに休み時間のとき、よばれるときがある。
私は和太鼓の用事があってよばれた。
いきなり理科室のいすにすわらされた。
F先生とG先生とE先生。
いっせいに和太鼓をたたいた。
理科室にひびくたいこの音色。
E先生たちがけん命に見本をひろうしてくれた。
少し感動してしまった。
「そーれ!」
とかけ声がなりひびく。
やっぱりE先生は熱心だ。
音楽は、音を楽しむと書く。E先生は、まさにそこの所を、いつも大事にされて、授業されている。歌の見本には、H教頭やI先生やJ先生が参加して、ハーモニーのすばらしさをひろうしてくれた。

 いつもニコニコG先生
G先生とは、
図書委員で一緒だ。
G先生は、
怒るとき以外は、
いつもニコニコしている。
私が、本を読んでいる時、
「何読んでるの?」
と、ニコニコしている。
「前は、一年生がたくさん来ていたけど、今はあまり来ていません。」
と、私が図書委員会の時、発言すると、
「あはははは。人数少なくなっちゃったの?」
と、笑いながら言う。
明るくて良い先生だ。
G先生て、どんな先生だろうかと、転勤前は、想像していた。ここで子どもがとらえているように、いつも前向きで、子どもたちに人気がある。

 本好きなK校長先生
校長先生は、本が好き。
そんな校長先生は、朝会の時に、
「この本はおもしろいよ。」
としょうかいしてくれる。
校長先生の、しょうかいしてくれる本は、とてもおもしろい。
ほんのすきな校長先生と、せきにんしゃの校長先生と、なんだか二人いるみたい。
校長先生は、わかわかしくみえる。
「本好きな」と「責任者」の校長先生と、とらえた所がおもしろい。この学校の子ども達は、大人を持ち上げるのがうまい。こんな詩を書かれたら、誰だって、いい気持ちになって、子ども達の前で、張り切らざるをえない。

 毎日声をかけてくれるLさん
「おはようございます。」
と、声をかけると、Lさんが、
「おはようございます。」
と、いつも言い返してくれます。
「今日は晴れてるけど、明日また雨降るんだよ。」
と、いろいろな情報を教えてくれるいい主事さんです。
帰りには、
「剣玉かして、ひこうきできるんだ。」
と、ぼくに言ってくるので貸します。
でも、ぜんぜんできません。
「あれ、きょうは調子が悪いなぁ。」
と毎日ごまかしているおもしろい主事さんです。
いつもよっぱらったような赤い顔です。
Lさん、今度は「飛行機」決めて下さいね。
会話から書き出しているのが良い。この子さんにとっては、Lさんのつぶやきを、結構しっかり受け止めている。剣玉を通じて、ますます親しみをもって接している。Lさんには、剣玉の修行が、当面の課題である。

 I先生の大きな声
音楽の時間三人の先生がきて三重合唱をした。
でもとくに大きな声を出していたのは、I先生だ。
「星の世界よ。」
と全部終わったら拍手がおくられた。
ぼくも感動した。
すげい。
あとで、
「I先生の声って大きかったよね。」
とみんなでいっていた。
本当に声が大きかった。
今年新任できたI先生は、音楽の歌がプロ級である。そこの所を、E先生が、すぐに見抜いて、このような鑑賞の授業を迎えたのである。

 いつもえがおのM先生
M先生は、
いつもえがおで、ニコニコしている。
えがおの時に
調子に乗って
「くりー」
と、よびつけする。
でも、勉強になると、
えがおがなくなり、こわい目つきだ。
勉強が終わると、笑顔になる、
笑顔っていい事だな。
ぼくら教師は、子どもたちから、たくさんのエネルギーをいただく。子供達に人気のあるM先生の人柄が、ここに出ている。やはり、子供達は、厳しいときと笑顔の教師のメリハリに期待している。

 黄色いブレスレットをした N先生、ありがとう
終業式の日に、
一生けん命作った、黄色い手作りの
ビーズアクセサリーを、
N先生にわたした。
りにん式の日、N先生が、
その手作りの黄色いアクセサリーを、
つけてきてくれた。
私はうれしくってうれしくって、
N先生が体育館から出る時、
ブアッと水道のじゃぐちから水が、
飛び出すように涙がこぼれた。
じゃぐちはどんどんゆるんでいって
しめられない。
N先生が私の前にきた。
「Oちゃんが泣いたら先生も泣いちゃうでしょ。ほら、あの笑顔でがんばって!ね!」
先生は泣きながらも一生けん命私の心に伝えてくれた。
私はN先生に答えるように、
「はいっ!先生もがんばってください!」
と目をごしごしこすりながら言った。
先生、私一生けん命がんばるよ。
 一年から、三年まで担任してくれたN先生のことを、いまだに心の中に大切にしまっている、Oちゃんはすてきだ。このように書かれたN先生の子どもに対する姿勢がにじみ出ている。



週刊墨教組 No.1447  2004.7.6
「平和」をうちすててよいのか
      教育基本法改正与党中間報告批判

与党中間報告
 自民党・公明党による教育基本法改正の検討会は、十六日、改正に盛り込むべき項目と内容についてとりまとめ、中間報告を行いました(資料参照)。
 メディアの注目は、「教育目標」のEとして、「郷土と国を愛し」(自民党)と「郷土と国を大切にし」(公明党)が併記されたことに集中していました。
 しかし、そのほかにも、看過できない根源的な欠陥が中間報告にはあります。

「平和」をうちすててはいけない
 とくに、与党中間報告の「教育の目的(第一条)と「教育の目標」(第二条)には、根源的な欠陥が露呈しています。
 現行教育基本法第一条と第二条は、「簡潔明瞭で、格調高い」、つぎのような条文です。

第一条(教育の目的)教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主の精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

第二条(教育の方針)教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によって、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。

 読み比べれば、中間報告の欠陥は余りにも明らかです。
 現行の教育基本法にある「平和的な国家及び社会の形成者として」が、端的に示すように、憲法の理念に根ざした、「平和」への志向が、この条文には、熱くみなぎっています。
 ところが、中間報告の「教育の目的」「教育の目標」では、同じ言葉が羅列されていますが、「平和」への志向は、無残にも解体されています。

戦前のリプレイ
 贅言は要しないでしょう。
 「方針」を「目標」と歪曲してはいけない。
 ましてや「涵養」などという、天皇制イデオロギーに彩られた一九三〇年代に流行した言葉を使用すべきではありません。
 「道徳心」や「公共」には、「修身」と「国家」が投影しています。〈戦前〉がリプレイされています。
 戦前への回帰は許してはなりません。

教育振興基本計画
 「教育振興基本計画」について、世間の関心は深くありません。
 しかし、このことが、重要な焦点となります。
 墨田教組と信義と友愛で結ばれた大内裕和さん〈松山大学〉は、つぎのように指摘しています。

「教育基本法が改正されて教育振興基本計画の策定が根拠づけられれば、文科省は巨大な権限を得ることができます。閣議決定を得られれば、あとは文科省が、自由に基本計画を策定できることになります。文科省による教育政策を国会の審議を経ることなく実現できるのです。教育振興基本計画を教育基本法へ盛り込むことによる『改正』は、理念法としての教育基本法を行政施策法へと転換させ、文科省の権限拡大と教育内容への介入を促進することは間違いありません。」

資料
教育基本法に盛り込むべき項目と内容について(中間報告)

 与党教育基本法改正に関する検討会においては、これまで教育基本法に盛り込むべき項目及び内容について検討を深めてきた。検討にあたっては、次の4点を前提としてきた。
@教育基本法の改正法案は、議員立法ではなく、政府提出法案であること
A改正方式については、一部改正ではなく、全部改正によること
B教育基本法は、教育の基本的な理念を示すものであって、具体的な内容については他の法令に委ねること
C簡潔明瞭で、格調高い法律を目指すこと

教育基本法に盛り込むべき項目については、次のようにした。
○ 前文
○ 教育の目的
○ 教育の目標
○ 教育の機会均等
○ 生涯学習社会への寄与
○ 家庭・学校・地域の連携協力
○ 家庭教育
○ 幼児教育
○ 学校教育
○ 義務教育
○大学教育
○私立学校教育の振興
○教員
○社会教育
○政治教育
○宗教教育
○教育行政
○教育振興基本計画
○補則


各項目に盛り込むべき内容については、現時点でのとりまとめは別紙のとおりである。

 なお、それぞれの項目及び内容については、

・現行法前文中の「憲法の精神に則り」の扱いについて
・国を愛する心について
・宗教教育及び宗教的情操の内容と扱いについて
・義務教育制度について、特にその年限の扱いについて
・中等教育の意味と高等学校、大学の位置づけ
・職業教育について
・幼児教育と家庭教育について
・教育における国と地方の役割について
・私学振興と憲法第89条とのかかわりについて
・教育行政における「不当な支配に服することなく」について
・学校教育における学習者の責務について

などの論点があり、さらに検討を要するものである。


宗教教育
○宗教に関する寛容の態度と一般的な教養並びに宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されること。
○国・公立の学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならないこと。

教育行政
○教育行政は、不当な支配に服することなく、国・地方公共団体の相互の役割分担と連携協力の下に行われること。
○国は、教育の機会均等と水準の維持向上のための施策の策定と実施の責務を有すること。
○地方公共団体は、適当な機関を組織して、区域内の教育に関する施策の策定と実施の責務を有すること。

教育振興基本計画
○政府は、教育振興に関する基本的な計画を定めること。

補則
○この法律に掲げる諸条項を実施するため、適当な法令が制定されること。                                   
付記
・「教育の目標」中の「国を愛し」「国を大切にし」については、統治機構を愛するという趣旨ではないとの認識で一致した。
・「宗教教育」については、宗教が情操の涵養に果たす役割は教育上尊重されることを盛り込むべきとの意見があった。
・「教育行政」中の「不当な支配に服することなく」については、適切な表現に変えるべきとの認識で一致した。

幼児教育
○幼児教育の重要性にかんがみ、国・地方公共団体はその振興に努めること。

学校教育
○学校は、国・地方公共団体及び法律に定める法人が設置できること。
○学校は、教育の目的・目標を達成するため、各段階の教育を行うこと。
○規律を守り、真摯に学習する態度は、教育上重視されること。

義務教育
○義務教育は、人格形成の基礎と国民としての素養を身につけるために行われ、国民は子に、別に法律に定める期間、教育を受けさせる義務を負うこと。
○国・地方公共団体は、義務教育の実施に共同して責任を負い、国・公立の義務教育諸学校の授業料は無償とすること。

大学教育
○大学は、高等教育・学術研究の中心として、教養の修得、専門の学芸の教授研究、専門的職業に必要な学識と能力を培うよう努めること。

私立学校の振興
○私立学校は、建学の精神に基づいて教育を行い、国・地方公共団体はその振興に努めること。

教員
○教員は、自己の崇高な使命を自覚して、研究と修養に励むこと。教員の身分は尊重され、待遇の適正と養成・研修の充実が図られること。

社会教育
○青少年教育、成人教育などの社会教育は、国・地方公共団体によって奨励されるものであり、国・地方公共団体は学習機会の提供等によりその振興に努めること。

政治教育
○政治に関する知識など良識ある公民としての教養は、教育上尊重されること。
○学校は、党派的政治教育その他政治的活動をしてはならないこと。


別 紙
前文
○法制定の背景、教育の目指す理想、法制定の目的

教育の目的
○教育は、人格の完成を目指し、心身ともに健康な国民の育成を目的とすること。

教育の目標
○教育は、教育の目的の実現を目指し、以下を目標として行われるものであること。
@真理の探求、豊かな情操と道徳心の涵養、健全な身体の育成
A一人一人の能力の伸長、創造性、自主性と自立性の涵養
B正義と責任、自他・男女の敬愛と協力、公共の精神を重視し、主体的に社会の形成に参画する態度の涵養
C勤労を重んじ、職業との関連を重視
D生命を尊び、自然に親しみ、環境を保全し、良き習慣を身に付けること
E-1 伝統文化を尊重し、郷土と国を愛し、国際社会の平和と発展に寄与する態度の涵養
E-2 伝統文化を尊重し、郷土と国を大切にし、国際社会の平和と発展に寄与する態度の涵養

教育の機会均等
○国民は、能力に応じた教育を受ける機会を与えられ、人種、信条、性別等によって差別されないこと。
○国・地方公共団体は、奨学に関する施策を講じること。

生涯学習社会への寄与
○教育は、学問の自由を尊重し、生涯学習社会の実現を期して行われること。


家庭・学校・地域の連携協力
○教育は、家庭、学校、地域等の連携協力のもとに行われること。

家庭教育
○家庭は、子育てに第一義的な責任を有するものであり、親は子の健全な育成に努めること。国・地方公共団体は、家庭教育の支援に努めること。


中国帰国・渡日の子のための、夏の遠足のお知らせ
 日時 7月22日(火) 東武浅草駅 8時集合
 解散 東部浅草駅18時4分着
 行き先 鬼怒川龍王峡 他
 費用 小学生800円 中学生以上1200円
 該当する子どもたちに声をかけてください。
  今年はキャンプのかわりに遠足を行います。



週刊墨教組 No.1446  2004.6.29

今回は必ず投票しよう
改憲・「戦争できる国」にノー


改憲の危機
 参議院選挙は、六月二四日に公示され、七月十一日に投票が行われる。
 さて、第一五九通常国会が、六月十六日、一五〇日間の会期を終え、閉会した。政府提出の一二〇法と議員提出の十五法、あわせて一三五法が成立した。四十年ぶりの「大量」の立法であった。
 にもかかわらず、「自衛隊の多国籍軍参加」は、まともに国会で審議されることもなく、国会閉会直後に、「政府見解」を閣議了解して決定されたのである。
 ついに、憲法九条との整合性などは、全く説明されないままであった。言葉を弄ぶだけで、説明責任を果たさない、小泉首相の暴走は加速するばかりである。
 「国民そっちのけ」「市民をなめきった」小泉首相の姑息なやり口がまかり通る怖さ。
 小泉首相は、二〇〇五年の改憲を、はばかることなく明言している。所信表明演説・施政方針演説でも、くりかえし、教育基本法の見直しについて、明確な意思表示をしている。
 今回の参議院選挙のあとは、二〇〇七年まで選挙はない。このことを有権者はしっかりとわきまえなくてはならない。

多国籍軍参加政府見解
 「多国籍軍参加政府見解」には、つぎの文言がある。

 「六月三十日以降、自衛隊は、多国籍軍の中で、統合された司令部の下にあって、同司令部との間で連絡・調整を行う。しかしながら、同司令部の指揮下に入るわけではない。自衛隊は、引き続き、我が国の主体的な判断の下に、我が国の指揮に従い、イラク人道復興支援特措法及びその基本計画にもとづき、イラク暫定政府に歓迎される形で人道復興支援活動等を行うものであり、この点については、今般の安保理決議の提案国であり、多国籍軍及びその統合された司令部の主要な構成国である米、英両政府と我が国政府との間で了解に達している。」(朝日新聞十九日夕刊 ゴシック体は引用者)

 まず、「統合された司令部」という言葉は、国連決議にある「ユニファイド・コマンド」の訳語なのだろうが、通常、「統一された指揮」と訳すべきである。
 小泉首相は、自衛隊は日本の指揮に従うと、頑なに言い張ってきた。辻褄合わせのための、意図的でひとりよがりの「誤訳」と指摘されてもしかたないだろう。
 また、小泉首相は、米英両政府からも了解をとっていると強弁してきた。
 真相は、大使以下の公使レベルの口約束にすぎなかったのである。
 小泉首相は、公使が口約束したとされる英外務省高官や米国務省高官の名について、質問されても、口を噤んだままである。

平和憲法の意義
 また、「多国籍軍参加政府見解」には、つぎの文言もある。

 「なお、自衛隊は、これまで同様、憲法の禁じる武力の行使に当たる活動を行うものではなく、イラク人道復興支援特措法に基づき、いわゆる『非戦闘地域』において活動するものであり、他国の武力の行使と一体化するものではない。
 以上のとおり、自衛隊が多国籍軍の中で活動を行うことは、憲法との関係で許されないとしてきたいわゆる多国籍軍への参加に関する従来の政府見解を変えるものではない。」

 まがりなりにも、厳然として、憲法の存在が、「政府見解」を制約している。
 何よりもまず、平和を希求する、現行憲法の意義は大きい。
 このことは、しっかりと胸に明記しておかなければならない。
 改憲されれば、歯止めがなくなった自衛隊の武力行使は、青天井となるだろう。

日本を私物化する小泉首相
 小泉首相は、六月八日、サミットが開かれたジョージア州シーアイランドで、ブッシュと会談し、「暫定政府に歓迎される形でイラク特措法に基づく自衛隊の派遣を継続する」と述べ、多国籍軍への参加を表明した。
 小泉首相は、国会論議抜きで方針を伝えたのである。その上、どこまでもブッシュという権力に拝跪する小泉首相は、国連安全保障理事会の新決議について、「採択を歓迎する。これは決して米国の譲歩ではなく、米国の大義の勝利だ」と卑劣なおべんちゃらを言ったのであった。
 小泉首相は、イラク攻撃をまっさきに支持表明した前歴がある。
 イラク戦争とは、理不尽きわまりない明白な軍事侵略である。アメリカの単独行動主義が、国際ルールを無視して暴走し、肥大化した武力で、気に入らない弱小国を叩きのめしたのだ。正義などひとかけらもない、卑怯で愚劣な蛮行である。アメリカこそテロ国家そのものである。
 今に至るも、イラクの大量破壊兵器の痕跡すら発見されていない。米議会の調査委員会ですら、アルカイダとイラクの旧フセイン政権との協力関係を否定する結論を公表している。
 アメリカに大義など、露ほどもないのは明白だ。
 小泉首相は、日本をほしいままに私物化している。
 多国籍軍に参加しなくても、イラクの復興支援はできる。むしろ、参加しないことこそ、イラクの人々の信をえることができるのだ。

今回は必ず投票しろよ
 作家の小林信彦が、『敗戦時十二歳のつぶやき』というエッセイで、次のように記している(『朝日新聞』六月二十一日付夕刊)。

「薄暗い閉鎖的なトンネルといってもいい。小泉内閣が生まれたとき、そのトンネルを抜けた、とぼくは思った。まさか、そこから〈戦前〉のリプレイの恐怖が始まるとは思ってもいなかった。いや、軍歌の「ああ堂々の輸送船」に近いイラク行きの自衛隊の船をテレビで見ると、これは正に〈戦時〉であった。ただ、戦争を体験していない政治家・官僚が大半なので、このリプレイには歪みと滑稽さがあった。」
「いまや、弱者への見当違いのバッシングが、〈非国民〉 呼ばわりの代わりに存在する。戦時中に存在した大半の罰則はそろいつつある。」

「ぼくは会う友人に向かって、今回は必ず投票しろよと、がらにもなく語りかけている。」


六・二二、「日の丸・君が代強制、不当処分撤回」を求め、
都庁に一五〇〇人を越える教職員が怒りの結集


 東京教組、都教組、都高教の委員長が呼びかけ人となって、六月二二日、午後四時三〇分から「日の丸・君が代強制、不当処分撤回」、「教員給与水準確保・教育諸条件改善」を求め、集会が開催されました。教育関係労組九団体(東京教組、都教組、都高教、都障労組、都障教組、アイム89、校職組、都職労教育庁支部、都職労都立学校支部)から、この集会に一五〇〇人を越える組合員等が参加し、集会では、各代表から「一〇・二三実施指針」撤回、不当「処分」と教育介入に抗議し、その撤回を求める発言が続きました。
 この集会は、教育関係九団体が、共にこの闘いにとりくむことを鮮明にしたものであり、その意味からも意義あるものとなりました。

 支援し、共に闘い続けよう
 「日の丸・君が代強制」実施指針が出されて以来、三一五名が不当にも処分されました。この内14名が小中学校の教職員であり、8名が東京教組の組合員です。この8名の方は、処分を不当とし、まとまって東京都人事委員会に、審査請求書を提出し、処分撤回に向け闘うことを意志表示されました。私たちは共に闘う立場から、「『君が代』不当処分撤回を求める会」(東京教組内)に加入し、支援し、共に闘い続けるものです。
 今回の処分は、上意下達の管理体制を学校職場に徹底させ、学校教育を強権的に支配しようとするものです。それが到達するところは、「戦争ができる」国=憲法改悪・教育基本法改悪です。この策動を阻止するためにも、人事委員会への提訴は重要な意味をもつものと考えます。多くの方が、「君が代不当処分撤回を求める会」に加入されることを求めます。

緊急署名
都立初の中高一貫校で使われる教科書について
 2005年春。上野にある都立白鴎高校が、都立で最初の都立中高一貫校となります。
 この中高一貫校では「日本の伝統文化理解」を学校の特色にあげ、それを推進するための校長への提言機関を設置しています。
 その座長が、「能力のない子どもには実直な精神のみを養えばいい」「イラクで自衛隊が2〜3人死ねば、改憲への弾みがついてうれしい」という発言をした三浦朱門氏であり、委員には東京都教育委員の米長邦雄氏が就任しています。
 ・・・というわけで、「新しい歴史教科書をつくる会」が作った教科書(扶桑社版)が使われる危険性が高いといわれています。
 ここで採択されると、来年の夏に行なわれる、各市区町村の公立中学での教科書採択に大きな影響が予想されます。「つくる会」の教科書の採択をとめるために、至急とりくみましょう。



週刊墨教組 No.1445  2004.6.22

「開示」もない、「苦情処理」もない、
デタラメな「評価」を許すな!
 デタラメ「評価」で「給与」が決められる
 「人事考課制度」に反対して闘おう!



 
国立大学の独立法人化にともない、今年度から、教員給与について国の勧告がなくなり、都が独自に教育職給料表を作成することができるようになりました。このことは、各都道府県間で教員の賃金に差が生じることを意味します。そこで、日教組は、人事院に対し「社会的影響と人事院の果たしてきた役割を考慮し、参考資料として、教育職俸給表を示すこと」を要求し、交渉を強化しています。一方、都は、「業績評価を反映した賃金体系」と称し、定昇延伸を含め、一時金への成績率の導入や「給料表構造の見直し」など賃金ダウさせていく方針を具体化しようとしています。今後、給与体系の差別・分断化を許さないためにも、「人事考課制度」に対する闘いが重要となります。

能力主義管理にあくまで反対する
 今年度から、自己申告書の記載において、「目標ごとの達成度の自己採点欄」が新設され、「教育職員が、自己採点を念頭においた年度当初の目標設定を行うこと」が強制されました。このことは正に能力主義管理が強化されたことです。
 「目標設定」、「自己採点」は、目標達成ができない者には、賃上げをさせない(定昇の延伸)、減給すること(一時金への成績率の導入)を正当化させるための方策です。「評価が開示に耐えられない」ものだから、教員個々に「自己採点」をさせ、アリバイ工作をし、「評価に基づく処遇」を正当化させるものでしかありません。
 管理職に媚びるようなことは、堕落以外のなにものでもありません。教育の営みは、「効果」が直ちに「計れる」ものばかりではありません。「計る」ことを意識すれば、教育の荒廃を必ずもたらすでしょう。
 資料として、校長・教頭が行う「教育職員業績評価書(教諭用)」を掲載します。三月三十一日付けで評価書が作成されます。
 教育と自らの生活・教員としての誇りを守るために、「開示・苦情処理」を申請することを前提に、校長・教頭の言動、面接時の対応、その際の自分の考えなどを日にちを入れて記録に残しておきましょう。



反戦・平和教育の前進のために
墨田教組ビデオ・写真ライブラリー

原爆関係
にんげんをかえせ
     VHS 一六ミリ 二〇分
 「 フィート」運動で米国から入手した広島・長崎のフィルムと、被爆者の証言により構成。原爆の恐ろしさ、悲惨さをわかりやすく訴えた作品。原爆投下後に、米国戦略爆撃調査団が撮影した市街地の詳細な写真、病院で手当てを受ける人々。一ヵ所に集められて焼かれる人々…。悲惨な状況を生々しく伝える貴重なフィルムで構成。

もうひとつのヒロシマ
   強制連行―そして被爆
          VHS 五八分
 日本による朝鮮侵略の結果、国を失い、土地を失い、生きるために日本に来ざるを得なかった、あるいは強制連行された朝鮮の人々。そのなかには広島・長崎で原爆の被害者にされるという二重の被害を受けた人々もいる。全被爆者の一割はこれらの人々。
 彼らは今なお日本政府から何らの謝罪も補償も受けず、差別された状況下に呻吟している。
 こうした韓国・朝鮮人被爆者の証言を中心につくられたドキュメンタリー。

ひろしまのピカ
  カラー・アニメ VHS 二五分
 同名の絵本「ひろしまのピカ」(絵と文・丸木俊)を土本典昭監督が映像化したもの。音楽を小室等、語りを中山千夏・竹下景子が担当。

夏服の少女たち
 カラー・アニメ VHS 一六ミリ
 広島県立第一高女一年生二百人は、強制疎開のための建物取り壊し作業中原爆にあい、全員被爆死。彼女達は、母親たちのお古をほどいて夏制服を完成させたばっかりであった。
 アニメとドキュメンタリーを合成した演出方法で構成。

はだしのゲン 1
   カラーアニメ VHS 八四分
 物語は戦争中の広島から始まる。ゲンの父親は戦争反対を叫び軍部につかまる。ゲンの一家は「非国民」呼ばわりされるが、国民学校二年生のゲンは弟の信次と力強く生きる腕白少年。一九四五年八月六日広島に原爆が投下され、一瞬の内に父・姉と弟を奪われた。奇跡的に助かったゲンは、廃墟の広島で母を助け生き抜く。

はだしのゲン 2
   カラー・アニメ VHS 八八分
 ゲンの母の原爆症発病から死亡までを軸に描く。母親はゲンに背負われて病院に行く途中で命の灯を消す。「わしゃ麦になるんじゃ! 厳しい冬に芽を出し、何度踏まれてもまっすぐに伸びて実をつける麦になるんじゃ」ラストシーンのゲンの叫びが子どもたちの共感を呼び胸をうつ。大人たちの忘れていた心をよみがえらせてくれる。

つるにのって とも子の冒険
   カラー・アニメ VHS 三〇分
 フランスで原爆被害の実相を紹介する活動をしているミホ・シボさんのよびかけでつくられた「世界の子どもに平和のアニメを贈るピース・アニメの会」によって製作が実現した作品。

「クロがいた夏」
  カラー・アニメ VHS 八〇分
 被爆四十五周年記念企画の長編アニメ。戦争という時代のなかで、一人の少女とその家族の生活、そして、その生活と子ネコ「クロ」の命を一瞬のうちに奪った原爆の悲劇を通して、平和と命の大切さを描く。「はだしのゲン」の作者、中沢啓治の作品。


沖縄戦関係 

映像でつづる沖縄戦後50年史
     VHS  一二〇分
 「鉄の暴風雨」が吹き荒れてから五〇年、一九九五年摩文仁の丘に世界の恒久平和を希求し、平和の発信地として、「平和の礎」が建立された。国内唯一の地上戦・敗戦・民族支配・本土復帰・経済の自立・・・・沖縄県民が辿った激動の半世紀を21世紀へのメッセージとして検証する映像ドキュメント。

教えられなかった戦争・沖縄編
―阿波根昌鴻・伊江島のたたかい―
     VHS  一一〇分
 明治以来、現在にいたるまで他国を侵略して〈経済発展〉を続ける日本の社会構造を問う。阿波根さんは「命を育む土地を人殺しのためには使わせない」と戦後の伊江島反基地闘争でしなやかに、したたかに闘いをつづけました。

沖縄戦の図・命どう宝
     VHS  一一六分
 丸木位里・俊さんが沖縄に取材し、現地作成した、「沖縄戦の図」の貴重な記録映画です。「集団自決とは手を下さない虐殺のことでありました。」戦争の本質をつくことばでした。

沖縄ー最後の死闘
カラー・ドキュメント
VHS 四〇分
 一九四五年三月二十三日、米連合艦隊は沖縄本島に向けて猛烈な艦砲射撃を開始、太平洋戦争最後の幕が開いた。「ひめゆり部隊」が、「鉄血勤皇隊」の多くの学徒が、島民十万人と共に犠牲となった。約三ヶ月の攻防戦の末、日本軍は玉砕した。


沖縄からのメッセージ98
     VHS  三〇分
 沖縄は、「平和」「共生」「自立」を基本理念に21世紀に向けて、新しい時代にふさわしい、国際都市、「沖縄」の建設にとりくんでいます。
沖縄県企画・琉球放送著作制作。

ドキュメント沖縄戦
記録映画カラー
VHS 五七分
 戦後五十年沖縄戦記録映像総集編。十二年にわたる一フィート運動で入手した沖縄戦の記録映像(沖縄戦記録フィルム一フィート運動の会)。

かんからさんしん
カラー・アニメ
VHS 七八分
 沖縄に米軍が上陸し、兵隊も島人も洞窟壕に追いつめられた。誰もが死を覚悟したとき聞こえてきた島唄。空き缶で復元した三線が命の歌を思い出させる。

沖縄ー未来への証言
記録映画カラー VHS 五五分
沖縄ー未来への証言
戦後四五年記念普及版カラー
VHS 三二分
 なぜこんなに沢山の遺骨が収集されるのか、なぜこの島々であんなにも激烈な地上戦が行われ、悲惨な住民犠牲が生じたのか、さらにどうして現在の基地におおわれた沖縄になったのか、次々に新たなる問いかけを生んでいく作品。


戦場ぬ童(いくさばぬわらび)
カラー・ドキュメント
VHS 一六ミリ 二六分
 橘裕典監督の作品。沖縄戦四〇周年記念映画として製作。子どもの頃、地獄の戦場をさまよった人々の生々しい証言をもと
に、沖縄戦の実態を子どもたちに的をしぼって描き、しかし基地の島沖縄では「戦世(いくさゆ)」はまだ終わっていないと訴える。

写真集・写真パネル
写真集「沖縄戦」「沖縄」「沖縄戦後史」
  大田昌秀監修 一九九〇年発行
 沖縄戦前後の沖縄写真集。B4判四百ページ以上の詳細な写真を中心にした資料集。

写真パネル「ヒロシマ・ナガサキ」
 原子爆弾の記録 B2版 七十枚
 「子どもたちに 世界に!被爆の記録を語る会」発行。写真と記録画による、迫力ある原爆の悲惨さと無残を訴えるパネル。




週刊墨教組 No.1444  2004.6.10

 「人事考課制度」にあくまでも反対する
   デタラメな「評価」や「指導育成」、昇給延伸を許すな!


 「定期昇給(普通昇給)へ人事考課制度」が適用され、四月から昇給延伸措置が教員を除き実施されています(教員は〇五年度から実施)。都側は都労連の要求を踏まえた内容で「実施要領」を作成し(週刊墨教組1434号参照)、通知しました。「実施要領に基づき」、各職場では二月に管理職による面接が実施されたはずです。しかし、その面接の内容が各組合で集約される中で、「評価」や「指導育成」のデタラメが明らかにされてきました。教員にも、同様の面接が実施されることになります。デタラメな面接が実施される職場が少なからず生じると予想できます。人事考課制度をめぐる闘いの状況を、都労連の対応を掲載することで報告します

労使合意の遵守を!
 都側と都労連は、昨年度に引き続き、「人事考課制度」の問題点について、「人事考課制度検討会」で検討・議論し、共通認識を得た課題・到達点については、労使交渉の場で解決していくこととしています。特に今年度は、「定期昇給延伸者への『告知』『指導育成』の問題点と、それに関連して『本人開示や苦情処理の必要性』の具体化から検討・論議を始めることを明らかにしています。このことを第一に上げている背景には、二月期の面接で「労使合意が遵守されていない」ことが明らかになったからです。面接では、「昇給延伸の告知を行い」、@業績評価を踏まえた勤務実績を具体的な行動等に基づき説明すること、A今後の取組みの方向を明確にし、職員との共通認識を図ること、B共通認識を図った上で、改善に向けた指導等を行うこと(以下略)となっています。しかし、「管理職が説明責任を果たしていない、職員との共通認識が図れていない、恣意的な評定が行われている、管理職が制度を理解していない」、「告知」が「期間を過ぎてからの告知、結論だけの一切説明のない告知、電話での告知」などデタラメなことが明らかになっていること。都側の言う「人材育成」どころか、マイナスペナルティの一方的な押しつけとなっており、「指導育成」どころかモラールダウンを招く状況になっていること。「延伸」が納得できないとして、人事委員会へ不服申し立てが行われ「措置要求」が始まっていること等があります。

都労連委員長、都側に強く要求
 都労連は、五月三一日都側(福永副知事)と団体交渉を行い、夏季一時金についての要求書を提出しました。提出に際し、教員を除き四月から実施されている「定期昇給(普通昇給)への人事考課制度の適用」について、労使合意すら守られていない事例が数多くあり、「『人事考課制度検討会』で十分論議されるよう求める」とともに、「労使合意の遵守」を強く求めました。また、昇任、昇格、昇給、異動と労働条件に関する事項にリンクしたものになっており、私たち一人ひとりに重大な影響を与える問題であると強調し、さらに、「公平・公正・客観的で、納得性を得られるもの」にするため、「十分な協議、慎重な適用、発生した問題の適正な処理」が必要で、「人事考課制度」について、協議事項にする」など都労連要求に応えるよう求めました。 

 デタラメな「評価」や「指導育成」、昇給延伸を許すな!
 教員には、三月三一日付けで業績評価が行われます。この評価を受けて、「延伸措置」が決定され、七月から実施される予定です。他職種と時期がづれますが同様内容の面接が実施されます。その際、「不当な内容や、納得できない評価」には「事実に基づき」反論し、是正をさせなければなりません。そのためには、今からその準備をしておくことが必要です。教員の場合には、第一次評定者は教頭、第二次評定者は校長になっています。二つの評定で「延伸措置」が決まります。校長・教頭の勤務状況、校長・教頭の言動、「自己申告」に対する校長や教頭の意見、「学校経営案」に対する自分の考え等、気になることはメモをしておくこともひとつです。職員会議録にも目をとおしておくこともひとつです。特に、今年度で退職や異動になりそうな管理職の職場では、新しい管理職が面接を行うことになります。昨年、都側は「教育系では人事考課制度は成熟していない」との言い方で「業績評価」が開示に耐えられない状況にあることを明らかにしています。状況が大きく変わったとは考えられません。デタラメな「評価」や「指導育成」、昇給延伸を許してはなりません。

夏季一時金要求

@夏季一時金2.5月分を6月30日までに支給すること。

A 回答を6月14日までに行うこと。

はじける芽(128
 五月の指導題目
 五年生になってから、今までの生活の中で、心に強く残ったことを、じっくり思い出して「・・・でした。」「・・ました」と、出来事の順に生き生きと書いてみよう。


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週刊墨教組 No.1443  2004.5.26
二〇〇四年度教研集会
六月二日(水) 午後三時開会 すみだ女性センター・ホール
記念講演は、斎藤貴男さん(ジャーナリスト)
 この国は、「戦争ができる国」に向かってまっしぐらにつきすすんでいます。
 このことを、十分な裏付けをもとにして、怒りをこめて、最も鋭く告発しつづけているジャーナリストが、斎藤貴男さんです。
 その縦横無尽の健筆の一端は、四月から五月にかけて刊行されたつぎの書目からも明らかです。
 「『非国民』のすすめ」(筑摩書房)
 「希望の仕事論」(平凡社新書)
 「教育改革と新自由主義」(寺子屋新書)
 「平和と平等を諦めない」(高橋哲哉さんとの共著・晶文社)

 一九九八年の教研集会では、辺見庸さんが、周辺事態法≠めぐって、講演してくださいました。
 講演後、くつろいだ辺見さんが、「信頼できるジャーナリスト」として、斎藤さんと魚住昭さんの名をあげられたのが、鮮やかに記憶に残っています。
 今年も、すばらしいお話を聞くことができると自負しています。

 斎藤さんが論じるテーマは、多岐にわたります。どんなテーマに対しても鋭く肉薄することによって、現在の時代と社会の危機を、明瞭な輪郭で抉り出します。
 その、ひるむことのない、まっとうに抗う姿勢。
 しかし、斎藤さんの風貌と語り口は、とてもやさしくやわらかです。
 「『非国民』のすすめ」より、斎藤さんの人となりと心根がうかがえる文章を引用します。


まえがき
 「かくも馬鹿馬鹿しい時代に抗わず、むしろ身を任せて生きるなどとは、人として恥ずかしすぎる。」
 「戦争世代の過ちを今度こそ繰り返さぬために提案したい。『非国民』になろう。それで例え排除されたとしても、『国民』という名の家来か囚人に貶められるよりはマシではないか。
 事実だけを淡々と綴って物語を紡いでいく本格派ノンフィクション作家に、本当は憧れていた。もう少し年をとったら、子供向けの作品も、童話も書いてみたい。そんな夢を、だが今しばらくは封印する。丹念に事実を拾い、つなぎ合わせて意味を補って、きちんと批判していこうと思う。」

あとがき
 「他者を支配することのエクスタシーに酔い痴れた連中に手前勝手な『愛国心』とやらを強要されて怒りもせず、沈黙を続ける私たちもまた、いつしか狂い始めていることを自覚しなければならない。せめて一人ひとりが彼らの望む理想の国民像とは最も遠い『非国民』となって立ち止まり、じっくりと考え、行動して、一日も早く、今度こそ本当に、平和と平等を追求する社会を目指そうではないか。」 

モツ煮込み定食の味
 人生の最期に好きなものを食べられるとしたら? という雑誌記事を読んで、さて自分なら何にしたいかと考えてみた。焼き肉。けんちん汁。いんげんのおろしショウガ和え。小学校の給食で出た鯨肉の焼いたの…。
 やや高級なぐらいが嬉しい焼き肉と、当時とは事情が変わった鯨肉を除けば、安上がりな家庭科理ばかりが脳裏をよぎる。だが、いずれも帯に短したすきに長し。
 大衆食堂のモツ煮込み定食が結論だ。ただし条件が二つ。たっぷりの唐辛子と、食べる前の数時間、汗まみれの肉体労働をしておくこと。
 私の父は鉄屑屋をしていた。工場などで発生するスクラップを引き取り、製鋼メーカーに売りさばく。怠け者の私も、何度となく手伝わさせられた。
 下町の小さな部品工場での作業が、とりわけ重労働だった。スクラップ置き場などないから、型をくり抜かれたばかりの熱い鋼材屑を、そのままトラックに積み込まなければならないのである。
 高校生の頃、仕事の後で父と一緒に食べたモツ煮込みが忘れられない。大人の男の味がした。
 父を亡くして二十年以上が過ぎた今、以前にも増して思い出す。働くということは、要するに、あの味を理解できるということではなかったか。
 私はその後、こうして希望通りの職業に就くことができた。肉体的にも楽ではないし、それなりの自負も誇りもあるけれど、父のような日常に比べたら、所詮は虚業と弁えている。
 重労働の後のモツ煮込み定食の味もわからない手合いが、他人を見下して偉そうに指図する場面が、現代のこの国には多すぎる。終戦の前年に生まれた旧内務官僚の御曹司が奉仕活動の義務化≠叫び、「昔は軍隊という通過儀礼があった」と胸を張る世の中になってしまった。町村信孝・元文部大臣のことである。もちろん彼に軍隊経験があったところで、前線には赴かずに済むのだろうが。
 大切なのは汗と泥にまみれて働く人間の尊厳であって、世襲大臣の支配欲などではない。封建時代への逆回転だけは避けようではないか
(2001.4.8)
総会宣言
日本政府の侵略・占領加担、石原「日の丸」教育、教育基本法改悪に反対する決議



週刊墨教組 No.1442  2004.5.18

横山次長、「現場教員の意向尊重」を確認
              教科書採択をめぐって

 今年は、来年度から使用する小学校教科書の採択年になっています。
 前回から採択権が区教委に移管され、具体的採択システムが従来と大きく変わりました。しかし、前回の採択にあたり、久保孝之区教委前次長は、「現場教員の意向尊重」を態度表明していました。
 五月十日、横山信雄区教委次長は、加藤委員長と長谷川書記長に対し、前次長の「現場教員の意向尊重」の態度表明は、区教委の姿勢として、変わらないことを確認しました。


「意見を付して」ということの意義
 横山次長が確認したのは、久保孝之前次長が、二〇〇一年四月二四日、墨田教組・都教組墨田支部に対して行った、つぎのような態度表明です。

 「墨田区教育委員会は、教科書採択にあたり、各学校に教科用図書を調査研究させ、その結果を報告することを求めている。墨田の地域及び児童・生徒の実態・課題を把握し、日々教科指導をおこなう学校・教員の意向は尊重され、生かされなければならないと考える。学校から出された調査研究結果報告は、教育委員会が採択決定するにあたって重要な判断材料とされる。
 したがって、『教科書採択の方針』の「教科書の調査・研究及び審議」には、「(1)各学校における教科用図書の調査・研究 各学校は教科書の見本本の内容等を教科指導にふさわしいかどうかを調査し、すべての見本本に対する調査結果を意見を付して審議会に報告する。」と規定し、『教科用図書採択事務取扱要綱』の第六条にも、「各学校は、教科用図書を各教科ごとに調査研究し、すべての教科用図書の調査結果を意見を付して、審議会に報告するものとする」と規定した。」

 現場の教員による真摯な教科書調査・研究の意見は、審議会が判断を形成する上での重要な要素・要因となって、反映されるのです。
 このことは、誰にも打ち消すことができない厳然たる事実です。
 教科書採択にあたって、豊富な経験に裏打ちされ、子どもたちの現実をつぶさに熟知している教員の意見が取り入れられることは、しぜんなことなのです。

さしあたってこれだけは
 さしあたって、公正な「各学校における教科用図書の調査・研究」のために、つぎのことだけは、とりくみたいものです。

1.教科書閲覧日の設定
 小学校用の教科書は、すでに次の五校(隅田小・曳舟小・立花小・業平小・錦糸小)に運ばれています。そこへ見にいくことになります。その日を確実に設定させます。
 教員全員が行けるように午後の授業をカットする等の工夫も必要に応じてします。
 また、全教員で行く日とは別に、必要に応じて個人あるいは教科毎のグループで見に行くことも認めさせます。
2.学校としての意見をとりまとめるための職員会議の設定
 調査・研究結果は、報告用紙に記入して提出することになっています。
 この記入にあたっては、「学校は・・・すべての見本本に対する調査結果を意見を付して報告」(区教委の「教科書採択方針」「採択事務取り扱い要綱」第6条)となっている以上、教員全体で調査研究結果を交流・討議し、「意見」をとりまとめることが必要です。そのための職員会議を確実に設定させます。
3.報告用紙に職員会議で確認した意見を確実に記入させる
 報告用紙(「教科用図書採択のための資料」)には、職員会議の結論を正確に記入しなければなりません。
 この「報告」文書は、採択決定後、情報公開制度で請求すれば公開されます。

 各校における調査研究とその職員会議での取りまとめ、さらにそれらの報告用紙への記入をすすめるにあたっては、つぎの点に十分留意して行います。

審議会事務局の補足説明
 「教科用図書選定審議会事務局」は、五月十二日、「学校における平成十七年度使用教科用図書見本本の調査研究に関する補足説明」という「事務連絡」を、文書で行いました。
 この文書は、五月七日付事務連絡を、丁寧にわかりやすく補足説明したものです。

教科指導にふさわしいかどうか
 この補足説明の「1.各学校における教科用図書の調査・研究」には、新たに「@五月七日付文書に添付した調査項目等を参考に、教科用図書の見本本の内容が教科指導にふさわしいかどうかについて調査をお願いします。」という項目がつけくわえられています。
 「教科指導にふさわしいかどうか」という言葉は、もちろん、「教科書採択の方針について」からとられています。
 ごくあたりまえのようにみえますが、この項目は、意義深く重要です。
 学校で教科指導を行うのは、教員です。豊富な経験をもとにして、墨田の子ども・生活・地域の実態をふまえて、教科指導にあたることになります。
 したがって、現場の教員による真摯な教科書調査・研究の意見は、審議会が判断を形成する上での重要な要素・要因となって、反映されることになるのです。
 そのことを、明確にした項目であるのです。

一社につき一枚でよい
 文書は、「各教科の各会社一社につき、一枚にとりまとめて提出いただいても結構です」とあります。
 例えば、A社の国語教科書は、一年生から六年生まで上下二冊ずつ計十二冊ありますが、一枚に記入すればよいことになります。国語の会社数は五社なので、五枚書くことになります。

つけくわえられた選定基準
 補足説明の「1.各学校における教科用図書の調査・研究」には、新たに「B別紙1 教科用図書採択に関する調査及び選定基準も参考にしてください」という項目がつけくわえられています。
 それは、添付された別紙に、つぎのように示されました。(「教科用図書採択のための資料」との関連でいうなら、(1)(2)(3)(4)は、それぞれ、ABCDとすべきでしょう)

 教科用図書採択に関する
調査および選定基準
1 調査研究の観点
 調査研究の観点は、次の内容を基準とする。
(1)内容の選択
@教材が適切であるかどうか。
A教材や資料の正確さ、分かりやすさはどうか。
Bその他
(2)構成・分量
@単元(教材)の配列が適切かどうか。
A発達段階に応じた分量・内容であるかどうか。
Bその他
(3)表現・表記
@読みやすい表現であるかどうか。
A記号・式・図形・挿絵・写真などが分かりやすく、見やすいかどうか。
Bその他
(4)使用上の便宜
@形態・重量・材質が発達段階に応じたものであるかどうか。
Aその他

 「調査報告内容」は、「調査項目」を参考に、「選定基準」をもとにして、記入することになります。

最も重要な「Eその他」の欄
 「選定基準」に、「(5)その他」の記載がないのを不思議に思われるかもしれません。
 常識的には、「その他」の欄は、適当にどうでもいい欄と思われがちですが、断じてそうではありません。
 以前には、推薦する三種であるかどうかは、この欄に記入するよう指示されたのでした。
 最も重要な欄なのです。
 ですから、事務連絡文書の「2教科用図書採択のための資料の記入について」で、とりたてて起項し、わざわざ傍線まで引いて、「Bその他の欄には学校として、調査結果等についての総合的意見がありましたら、ご記入ください」となっているのです。
 区教委は、誠実に、学校・教員の意見を受けとめようとしています。
 『方針』『要綱』にある「意見を付して」ということの意義は、この欄に最も反映されるのです。
 したがって、各校の、児童・生徒の実態をふまえて、「『確かな学力』を育成し、『生きる力』をはぐくむという学習指導要領のねらいにふさわしい」すぐれた教科書は、理由を明確にして、この欄に記入することになります。

墨田の教員の作風と伝統
 墨田区の小中学校では、採択のたびごとに、きわめて真摯な教科書の調査・研究が行われてきました。それは、日々接している児童生徒により良い、より適合した教科書をという情熱に基づくものでした。そして、そのための調査・研究が、教員にとっても何よりの研修・研究となっていたのです。
 このような姿勢こそ、墨田の教員の作風と伝統であったのです。
 墨田の教員の作風と伝統を継承して、しっかりととりくまなければなりません。
 十分な調査研究を尽くそうではありませんか。


週刊墨教組 No.1441  2004.5.10
二〇〇四年度運動方針、予算を決定
      墨田教組 第五九回定期総会

 総会に集い、意思統一を行い、仲間を大切に、団結をより強固なものにすることが、組合活動に対する執拗な攻撃に抗する質をもつ中、第五九回定期総会が、四月二八日、すみだ女性センターで開催されました。

 総会は三時十五分に副委員長の開会宣言、「緑の山河」斉唱後、議長を選出してすすめられました。
 役員紹介の後、執行部を代表して加藤委員長が挨拶。

人事考課制度に
    飽くまでも反対して闘う

 人事考課制度が導入され、「業績評価」に基づき、賃金や異動などの労働条件が決められる傾向にあります。校長の恣意を黙認する改悪異動要綱、普通昇給(定期昇給)に対する延伸措置などはその具体化です。さらに、人事考課制度が強化されれば、同じ職場で働く者の労働条件がひとりひとり異なることになり、ひとりひとりが孤立・分断させられ、管理されることになります。それは、個人と校長との交渉によって労働条件が決まっていくことにいずれなります。職場が競争の場に変質させらるのです。そうなれば、協力・共働で成り立つ職場が破壊され、ますます多忙化・長時間労働・健康破壊が進行することになります。そういう意味で、人事考課制度との闘いは重要です。職場の仲間を協力・共働を大切にする組合が、今職場で求められているのです。

教基法、憲法改悪を許すな!
  戦争の深い反省から生まれた平和憲法。平和憲法の理念を実現するために英知を結集して制定された教育基本法。教育基本法前文では、憲法の理想の実現は「根本において教育の力にまつべきものである」として、「ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する」と宣言しています。憲法と教育基本法は一体のものです。小泉は、その2005年での改憲を明言し、今年中には教育基本法の改悪を行おうとしています。昨年12月23日日比谷野公会堂で開催された教育基本法改悪反対の集会には、会場への入場を制限しなけれなならないほどの人が結集しました。この集会を契機に、教育基本法改悪阻止の運動は全国的に広がりを見せています。墨田でも教育基本法改悪阻止の共闘が広がりつつあります。何としても教育基本法改悪を阻止しなければなりません。
 人事考課制度との闘い、教育基本法改悪阻止の闘いは、墨田教組の存亡にかかわるものです。今年は文字通り墨田教組にとって正念場になります。
 この墨田の地で、少数であっても、教職員労働組合としての機能と責任を果たし続けようではありませんか。ともに、健康に気をつけ、がんばりましょう。とよびかけました。
 来賓として、吉田一徳(東京教組委員長)による激励の挨拶の後、議事に入り、書記長が二〇〇四年度運動方針案を提案。【以下次号】

はじける芽(127
 四月の指導題目
 
新しい学年になり、新たな気持ちになって、心に強く残ったことを、日記に書いてみよう。

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週刊墨教組 No.1440  2004.4.20
学校・教員の意見を教科書採択に反映させよう
  調査研究を積極的に進め、
     意見をとりまとめ、報告するとりくみを!

 
今年は、来年度から使用する小学校教科書の採択年になっています。
 私たちは、教科書採択の度毎にきわめて真摯に教科書の調査・研究を行ってきました。前々回の採択までは、その結果に基づいて学校としての意見を決定し、それを採択権者であった都教委に提出しました。都教委は提出された学校・教員の採択意見に基づき、採択決定を行いました。 
 ところで、前回から採択権が区教委に移管され、具体的採択システムが従来と大きく変わりました。もっとも大きく変わった点は、都教委採択時代には学校・教員の意見が直接的に尊重・反映されたのに対し、その点が弱められたことです。
今回の「教科用図書採択事務取扱要綱」(裏面参照)は、ほとんど前回の要綱を踏襲しています。
 しかし、私たちは、教科書を真摯に調査・研究・検討し、「より良い教科書」の採択をめざしてとりくみを進めます。「主たる教材」としての教科書を使用・活用して、日々児童生徒の指導に当たり、その実態と課題を把握している私たちこそ、どの教科書を採択決定することが「世紀を切り開くすみだの子ども」を育成するにふさわしいか判断できるのです。
 学校・教員の意見を無視して採択決定することは許されません


「意見を付して」ということの意義
 
誰にも打ち消すことができない厳然たる事実というものがあります。
 教科書採択にあたって、豊富な経験に裏打ちされ、子どもたちの現実をつぶさに熟知している教員の意見が取り入れられることは、しぜんなことなのです。
 久保孝之区教委前次長は、二〇〇一年四月二十四日、墨田教組・都教組墨田支部に対して、次のような態度表明を行っています。
 「墨田区教育委員会は、教科書採択にあたり、各学校に教科用図書を調査研究させ、その結果を報告することを求めている。墨田の地域及び児童・生徒の実態・課題を把握し、日々教科指導をおこなう学校・教員の意向は尊重され、生かされなければならないと考える。学校から出された調査研究結果報告は、教育委員会が採択決定するにあたって重要な判断材料とされる。
 したがって、『教科書採択の方針』の「教科書の調査・研究及び審議」には、
「(1)各学校における教科用図書の調査・研究 各学校は教科書の見本本の内容等を教科指導にふさわしいかどうかを調査し、すべての見本本に対する調査結果を意見を付して審議会に報告する。」
と規定し、『教科用図書採択事務取扱要綱』の第六条にも、
「各学校は、教科用図書を各教科ごとに調査研究し、すべての教科用図書の調査結果を意見を付して、審議会に報告するものとする」
と規定した。
 現場の教員による真摯な教科書調査・研究の意見は、審議会が判断を形成する上での重要な要素・要因となって、反映されるのです。
 墨田の教員の作風と伝統を継承して、しっかりととりくまなければなりません。

現場教員の意向尊重が
原則かつ時代の流れ
採択権は教員にあるー国際的常識
@「教員は生徒に最も適した教材および方法を判断するために格別に資格を与えられた者であるから、・・・教材の選択と採用、教科書の選択、教育方法の採用などについて不可欠な役割を与えられるべきである」(ILO・ユネスコ勧告項)
 この勧告は、授業の主要な教材である教科書の採択権は、本来、教員にあり、「児童の教育をつかさどる」権限の重要な一部を成していることを示しています。
 この国際的常識の立場に立つことが、何よりも重視されなければなりません。
 現行法規のもとでは、教科書の採択権限は教育委員会にあるとされていますが、その規定自体が、こうした国際的常識に反していると言わざるを得ません。少なくとも、現行法のこの規定は、こうした国際的常識に基づき解釈されなければなりません。つまり、採択権限が教育委員会にあるとしても、その行使に当たっては、本来的に教科書選択権を持つ教員個々の、あるいはその集団(その基礎単位は学校)の採択意向を十分に尊重して行うことが前提とされていると、解釈することが至当です。

閣議も意向反映を呼びかけ
A「将来的には学校単位の採択の実現に向けて検討して行く必要があるとの観点に立ち、当面の措置として、教科書採択の調査研究により多くの教員の意向が反映されるよう、現行の採択地区の小規模化や採択方法の改善についての都道府県の取り組みを促す」(一九九七年三月二十八日の閣議決定「規制緩和推進計画の再改訂について」)
 この閣議決定にも見られるように時代の流れは、「多くの教員の意向が反映される」教科書採択にあります。
 これら三点の意味・意義を明確に押さえた上で、具体的な調査研究のとりくみを、進めていこうではありませんか。

さしあたってこれだけは
 さしあたって、公正な「各学校における教科用図書の調査・研究」のために、つぎのことだけは、とりくみたいものです。
1.教科書閲覧日の設定
小学校用の教科書は、次の五校(隅田小・曳舟小・立花小・業平小・錦糸小)に運ばれます。そこへ見にいくことになります。その日を確実に設定させます。
  教員全員が行けるように午後の授業をカットする等の工夫も必要に応じてします。
  また、全教員で行く日とは別に、必要に応じて個人あるいは教科毎のグループで見に行くことも認めさせます。
2.学校としての意見をとりまとめるための職員会議の設定
  調査・研究結果は、報告用紙に記入して提出することになっています。
  この記入にあたっては、「学校は・・・すべての見本本に対する調査結果を意見を付して報告」(区教委の「教科書採択方針」「採択事務取り扱い要綱」第6条)となっている以上、教員全体で調査研究結果を交流・討議し、「意見」をとりまとめることが必要です。そのための職員会議を確実に設定させます。
3.報告用紙に職員会議で確認した意見を確実に記入させる
  報告用紙(「教科用図書採択のための資料」)には、職員会議の結論を正確に記入しなければなりません。
  この「報告」文書は、採択決定後、情報公開制度で請求すれば公開されます。(したがって、嘘を書けば後でばれます)



平成17年度使用小学校教科用図書採択事務取扱要綱