週刊墨教組2002年度分

週刊墨教組 No.1400 2003.3.20

教育基本法「改悪」に反対する ―九―

教育勅語の影
 三月三日に発表された「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」(答申案)の「新たに規定する理念」(裏面参照)の(B)と(C)には、教育勅語が色濃く影を落としています。
 さて、二〇〇〇年三月、小渕内閣は、私的諮問機関「教育改革国民会議」を発足させました。これと連動して作られた「新しい教育基本法を求める会」(代表西沢潤一)は、二〇〇〇年九月十八日に「要望書」を出しました。
 前回、指摘したように、「要望書」には、次の文言がありました。

「古来、私たちの祖先は、皇室を国民統合の中心とする安定した政治基盤の上に、伝統尊重を縦軸とし、多様性包容を横軸とする独自の文化を開花させてきました。教育の第一歩は、先ずそうした先人の遺産を学ぶところから発しなければなりません。」

 「皇室を国民統合の中心とする安定した政治基盤」とは、明治になって仮構された物語にすぎません。
 戦前、天皇は、大日本帝国憲法によって、一身に政治大権・軍事大権(統帥権)・祭祀大権を保持し、現人神として神格化されていました。天皇は、絶対的真理と普遍的道徳の体現者でもあったのです。
 この近代天皇制の帰結が、「国家至上主義的考え方や、全体主義的なものになって」、ついには、アジアの地を侵略し、アジアの人々を殺戮し、国民を死地に追いこんだ戦争を招来したのでした。
 そして、この仮構された物語を補完したものこそ、「教育勅語」だったのです。

皇室という規範
 戦前、「皇室」という「規範」によって、臣民をがんじがらめにし、批判することが許されなかった「教育勅語」にはつぎの文言がありました。

「朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ教育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己ヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓発シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」

 前掲の「要望書」の文言は、来歴を辿れば、ここに由来しています。
 「伝統、文化の尊重」とは、「教育勅語」への回帰にほかなりません。
 佐藤秀夫は、『教育基本法はどんな法律か』のなかで、「教育勅語」をつぎのように批判しています。(『世界』二〇〇二年十月号所収)

 「勅語は、日本の教育は、国体、つまり天皇制に淵源している、基礎を置いていると規定しており、教育勅語に正しいものがあるということを言っている人は、日本の教育は全部天皇制と結びつけることを肯定しているのです。「父母ニ孝ニ」という十五の徳目について、最後の「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ」というのは、戦争なんかあったときには義勇心を奮って公に奉ずるというので、軍国主義だから問題であるという議論が流布されていますけれども、さらにその後ろ、「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」が一番重大なのです。それは十五の徳目全部にかかる。だから親に孝行、兄弟仲良くというのは、それ自身に価値があるのではなく、天皇家のために役立つ「臣民」としての必須の資質だから価値がある。
 しかも、この十五の徳目のうち、「國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ」を除いて、それ以外はすべて奈良時代以後から続いている通俗道徳にすぎません。「明治天皇の与えたもうた」徳目として別にありがたがる必要はないのです。」

品格をそなえた教育基本法
 中教審が教育基本法の見直しの方向をまとめた中間報告が発表されるや、一代の碩学・梅原猛が怒りをこめて、批判の大鉈を一閃させました。(二〇〇二年十一月十七日付『朝日新聞』朝刊)

「最近改めて教育基本法を精読してみたが、その理念は立派であり、文章もけちをつけるところはほとんどない。改正論者がどんな教育理念をもっているかよく分からないが、森前首相の教育勅語を評価した発言のように、その精神を教育の理想としているのであろう。
 改正論者は教育基本法に「伝統、文化の尊重」という理念が記されていないと難癖をつけるが、伝統、文化を尊重する精神が最も不足しているのは教育勅語である。」

「教育勅語の精神は結局、天皇を唯一の神として、その神のために死ぬことを根本道徳とし、一切の道徳をこの根本道徳に従属させる精神であった。これはまさに日本人の精神を長い間培ってきた仏教、儒教、神道及びそれらに養われた伝統、文化の否定以外の何ものでもない。もしも教育基本法に伝統、文化を尊重する理念が記されていないというならば、教育勅語こそ厳しく批判されねばなるまい。」

 水戸学者の元田永孚が創作した教育勅語が、「伝統、文化」とはまったく無縁な虚妄であることが、完膚なきまでに暴かれたのでした。
 「規範」を押しつけることは、自由の精神の対極にあります。
 教育勅語を負の体験として血肉化し、自らの思想を形成したこの哲人は、また、怒りをこめて、品性と品格を欠いた政治家を糾問したのでした。

「国を愛する心が盛り込まれていないと強く主張するのは主に政治家であるという。」
「政治家が国を悪くし、若者の愛国心を喪失せしめているのである。政治家が自らの悪徳に頬被りして、青少年に愛国の教育が必要だというのは本末転倒である。まず自らの姿勢を正さねばならない。」


資料 「新しい時代にふさわしい教育基本法と
教育振興基本計画の在り方について」(答申案)

(新たに規定する理念)
○ さらに,制定から半世紀以上が経過した今日において,現在及び将来の教育を展望した場合,特に掲げて強調すべきと考えられる理念として,以下の(i)〜(viii)の事項があり,その趣旨を教育基本法に規定することが適当である。
○ なお,現行法においては,教育の目的と教育の方針については,両者一体となって教育の基本理念を構成していること,(i)〜(viii)の事項の中には現行法に既に類似の理念が規定されているものもあることに十分留意した上で,法改正の全体像を踏まえ,新たな理念として,これらの事項について,その趣旨を前文あるいは各条文に分かりやすく簡潔に規定することが適当である。

(i)個人の自己実現と個性・能力,創造性の涵(かん)養
○ 教育においては,国民一人一人が自らの生き方,在り方について考え,向上心を持ち,個性に応じて自己の能力を最大限に伸ばしていくことが重要であり,このような一人一人の自己実現を図ることが,人格の完成を目指すこととなる。また,大競争の時代を迎え,科学技術の進歩が世界の発展と問題解決の原動力として期待される中で,未知なることに果敢に取り組み,新しいものを生み出していく創造性の涵(かん)養が重要である。

(ii)感性,自然や環境とのかかわり
○ 美しいものを美しいものとして感じ取り,それを表現することができる力は,人の有する普遍の価値であって,文化の創造の基礎にある心であり,力である。特に,日本人は,古来より自然を愛(め)で慈しみ,豊かな文化を築いてきた。しかし今や,子どもの生育環境の中からは,自然が失われつつある。地球環境の保全が大きな課題となっている今日,自然と共に人は生きているものであり,このように自然を尊重し,愛することが,人間などの生命あるものを守り,慈しむことにつながることを理解することが重要である。

(iii)社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神,道徳心,自律心の涵(かん)養
○ これからの教育には,「個人の尊厳」を重んずることとともに,それを確保する上で不可欠な「公共」に主体的に参画する意識や態度を涵(かん)養することが求められている。このため,国民が国家・社会の一員として,法や社会の規範の意義や役割について学び,自由で公正な社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神の涵(かん)養を図ることが重要である。さらに,社会の一員としての使命,役割を自覚し,自らを律して,その役割を実践するとともに,社会における自他の関係の規律について学び,身に付けるなど道徳心や倫理観,規範意識をはぐくむことが求められている。

(iv)日本の伝統,文化の尊重,郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵(かん)養
○ グローバル化が進展し,外国が身近な存在となる中で,我々は国際社会の一員であること,また,我々とは異なる伝統,文化を有する人々と共生していく必要があることが意識されるようになってきた。そのような中で,まず自国の伝統,文化について理解を深め,尊重し,日本人であることの自覚や,郷土や国を愛する心の涵(かん)養を図ることが重要である。さらに,このような意識をはぐくむことを通じて,自らの国を重んじるのと同様に他の国やその伝統,文化に対しても敬意を払い,国際社会の一員として他国から信頼される国を目指す意識を涵(かん)養することが重要である。
なお,国を愛する心を大切にすることや我が国の伝統,文化を理解し尊重することが,国家至上主義的考え方や全体主義的なものになってはならないことは言うまでもない。

(v)生涯学習の理念
○ 今日,社会が複雑化し,また社会構造も大きく変化し続けている中で,年齢や性別を問わず,個人一人一人が社会の様々な分野で生き生きと活躍していくために,学校教育修了後も引き続き職業生活に必要な新たな知識・技術を身に付けたり,あるいは社会参加に必要な学習を行うなど,生涯にわたって学習に取り組むことが不可欠となっている。このため,教育制度や教育政策を検討する際には,これまで以上に学習する側に立った視点を重視することが必要であり,今後,生涯のいつでも,どこでも,自由に学習機会を選択して学ぶことができるような社会を実現するため,生涯学習の理念がますます重要となる。

(vi)時代や社会の変化への対応
○ 教育においては,次代に継承すべき価値を大切にするとともに,年齢や性別を問わず国民一人一人が時代の変化や社会を取り巻く環境の変化に対応できる能力を身に付けることが重要である。グローバル化や情報化の進展,地球環境問題の深刻化や科学技術の進歩など,国民を取り巻く環境は大きく変貌(ぼう)を遂げており,教育も,これらの時代や社会の変化に常に的確に対応していくことが重要である。

(vii)職業生活との関連の明確化
○ 職業は,一人一人の人生において重要な位置を占めており,人は働くことの喜びを通じて生きがいを感じ,社会とのつながりを実感することができる。しかし,経済構造が変化する中で,価値観の多様化が進んでおり,職業観・勤労観の育成がこれまでにも増して必要となってきている。また,若者の就職難が恒常化したり,年齢を問わず転職が一般化する中で,やり直しが可能となるよう必要な専門知識や技能を身に付けることが強く求められるようになってきている。さらに,我が国を支えてきた「ものづくり」の衰退が懸念される中で,その技術や能力を尊重する重要性が指摘されている。また,女性の人生における職業の位置付けも変化してきている。
 このため,これからの学校教育においては,子どもに的確な職業観・勤労観や職業に関する知識・技能を身に付けさせるとともに,自己の個性を理解し,主体的に進路を選択する能力や態度をはぐくむための教育の充実に努めることが重要であり,また,社会においても生涯にわたり職業にかかわる学習機会を充実していくことが重要である。

(viii)男女共同参画社会への寄与
○ 憲法に定める男女平等に関し,現行法は,男女共学の規定において男女が互いに敬重し協力し合わなければならないことを定めている。男女共同参画社会を実現するためには,このような理念は今日においても重要である。
 なお,現在では,男女共学の趣旨が広く浸透するとともに,性別による制度的な教育機会の差異もなくなっており,「男女の共学は認められなければならない」旨の規定は削除することが適当である。


週刊墨教組 No.1399 2003.3.13

教育基本法「改悪」に反対する ―八―

最終答申素案
 三月三日、中央教育審議会基本問題部会に、事務局(文部科学省)が最終答申素案を提出しました。
 この素案によって、どのように教育基本法を「改悪」しようとしているのか、その構図がくっきりと浮かび上がってきます。

新たに規定する理念
 もっとも注視しなければならないのは、つぎの文言です。

〈新たに規定する理念〉
@個人の自己実現と個性・能力の伸長、創造性の涵養
A感性、自然や環境とのかかわり
B社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養
C日本の伝統、文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養
D生涯学習の理念
E時代や社会の変化への対応
F職業生活との関連の明確化
G男女共同参画社会への寄与

奇妙な一致
 二〇〇〇年三月、小渕内閣は、私的諮問機関「教育改革国民会議」を発足させました。これと連動して、「新しい教育基本法を求める会」(代表、西沢潤一)がつくられました。この会のメンバーには、西尾幹二、藤岡信勝、高橋史朗など、つくる会の中心メンバーが加わっていました。
 二〇〇〇年九月十八日に出された「要望書」にはつぎの文言がありました。

「終戦直後、GHQの強い要望のもとに作られた教基法の中では、『個人の尊厳』や『人格の完成』が高唱されていますが、『個人』『家庭』『集団』『地域社会』『国家』『世界』の間の相関関係についての認識が疎かになっているため、公共に対する奉仕の精神が失われ、欲望放恣社会の醸成をみるに至りました。」

 中間報告にある「公共」という用語との奇妙な一致。
 さらに、「要望書」にはつぎの文言もありました。

「古来、私たちの祖先は、皇室を国民統合の中心とする安定した政治基盤の上に、伝統尊重を縦軸とし、多様性包容を横軸とする独自の文化を開花させてきました。教育の第一歩は、先ずそうした先人の遺産を学ぶところから発しなければなりません。」
「新しい教基法の中に『伝統の尊重と愛国心の育成』を明記することにより、『学習指導要領』の更なる改善を促し、教科書内容の刷新、教育現場の活性化へと連動させることが望まれます」

 「新しい教育基本法を求める会」は、今年の一月二六日、さらなる教基法「改正」を射程として、「『日本の教育改革』有識者懇談会」(民間教育臨調)という組織に発展的に変貌し、各局面で政策提言を行おうとしています。

最後の危機
 一九五三年、日本の再軍備を求めるアメリカの対日政策の転換を契機として、池田、ロバートソン会談で、愛国心教育の必要が「覚書」として交わされました。それ以来、教育政策史を繙けば、戦争を支持し協力する「国民精神」を育成するために、「日本人としての自覚」と愛国心教育が連綿として強調されつづけてきました。
 事態は、異様な静けさで進行し、ついに、今国会では、有事法制と教育基本法改悪が同時に提起されようとしています。
 誇張ではなく、最後の危機です。力を奮いおこして、なんとしても阻止しなければなりません。

イラクの子どもの絵と写真をお貸しします

 アメリカのイラクへの攻撃が秒読みとも言われています。
 世界中の人たちがかつてない規模で、この戦争の正体を見破り、「石油のための戦争反対」「子どもを殺すな」と反戦デモに立ち上がっています。やっと日本でも三月八日の集会・デモで五万人が参加するという大規模な戦争反対の動きが出来始めました。墨田教組の参加が少なかったのは、すごく残念ですが・・・。
 そんなとき、イラクからの写真と子どもたちの絵が届きました。今、緑小で展示しています。春休み頃までお借りできますので、ご希望の学校は連絡してください。

はじける芽(115)


週刊墨教組 No.1398 2003.2.26

ブッシュのイラク攻撃に反対する
新決議案提出

 二四日、イラクの大量破壊兵器問題をめぐって、アメリカ・イギリスは、スペインとともに、武力行使にむけて、新たな決議文を国連安全保障理事会に提出した。
 朝日新聞によると、決議案(骨子)は、つぎのとおりである。

一、安保理決議1441はイラクに武装解除する最後の機会を与えた。
一、イラクが提出した申告には虚偽の内容があり、同決議履行に協力しなかった。
一、イラクは同決議が与えた最後の機会を逃した。

 「武力行使」という文言は、周到に避けられているが、「安保理決議1441」を巧妙に引用している。
 昨年十一月八日に全会一致で採決された「安保理決議1441」は、イラク側に大統領施設を含むあらゆる施設への無条件・無制限の査察受け入れを求め、査察委への虚偽報告や非協力は「重大な決議違反」にあたるとしていた。安保理は決議の履行に向けて必要な措置を検討することとされ、決議違反が継続すれば「イラクは深刻な結果に直面する」と警告していた。
 ここで規定された「深刻な結果に直面する」とは、明確に「武力行使」を意味していた。
 つまり、この新決議が可決されれば、ブッシュは、大手をふって国連の枠組みの中で「武力行使」を承認されたことになるのである。
 採決は、三月十日ごろが予定されている。
 十五理事国中、決議案を支持するのが、アメリカ・イギリス・スペイン・ブルガリア。不支持は、フランス・ドイツ・ロシア・中国。
 残りの七つの理事国、メキシコ・シリア・チリ・パキスタン・ギニア・カメルーン・アンゴラの今後の動向が焦点となって、血みどろの多数派工作がくりひろげられることになる。

イラク反戦のうねり

 流れが大きく変ったのは、十四日の国連安全保障理事会からである。
 国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のハンス・ブリクス委員長が、「積極的で無条件の協力が得られるなら、査察期間は短期で終了できる」と述べ、査察委としての査察継続の要望を示唆したのだった。
 フランスのドミニク・ドピルバン外相は、勇躍として、 「本日、イラクへの武力行使は正当化されなかった。戦争に代わる手段がある。査察によるイラクの武装解除だ」と、査察継続を強調し、喝采を浴びたのだった。
 反戦のうねりの輪は、またたくまに、澎湃として世界へ広がり、翌十五日から十六日にかけて世界各地で行われた集会やデモへは三千万人を超える人々が参加したのだった。

 それは、歴史的事件といえる光景だった。
 人々の胸に去来していたのは、強大な武力を誇示し、理不尽にイラクの人々を殺そうとする獰猛な戦争狂ブッシュの単独行動主義への、否である。

民意をわきまえて
 朝日新聞(二十五日付朝刊)の世論調査によると、イラク攻撃「反対」は七十八%である。情理のそなわったあたりまえの民意ではなかろうか。
 あたりまえの民意をわきまえないコイズミは、アメリカ・イギリス・スペインが提出した新決議案について、二十五日、はやばやと「支持」を表明したのだった。
 あまつさえ、安保理内の動向を見極めつつ、非常任理事国への働きかけなどを通じて、アメリカ側の多数派工作に協力する考えだという。
 これなど、戦争狂ブッシュに隷従してお先棒をかつぐ、戦争加担以外の何ものでもない。

保身のためのイラク攻撃
 神野直彦の盟友でもある金子勝は、アンドリュー・デウィットとの共著『反ブッシュイズム』(岩波ブックレット)の中で、ブッシュが戦争を煽り立てる理由について、次のような鋭い指摘を行っている。

 「経済は悪化の一途をたどっている。米国で七番目に大規模な企業エンロンの倒産と株取引スキャンダルの露見直後、さらにより大きな倒産(ワールドコム)と驚くべき企業不正が連続して起きた。」
 「しごく当然のことのように、ブッシュ政権における政策的対応の重点は、対テロ戦争と国外からの脅威の大きさを強調することに移った。」

 「ブッシュ政権の政策策定の焦点をイラク問題におくという決定は、多くの要素によって動機づけられている。そのうち、誰にでもわかるのが二〇〇二年中間選挙であった。純粋な信条に基づいて行動し世論調査などは気にしないふりをするホワイトハウスはもちろんそれを否定するが、イラク問題が中間選挙における共和党勝利を助けたことを否定する者はいない。」

 戦争狂ブッシュの汲々とした保身がかいまみえる。


はじける芽(114)

二月の指導題目
 戦争に関するビデオを見て、それを元に話し合い、感想文を書いてみよう。
    東京大空襲(三月十日)にむけて

平和教育を大切に
東京大空襲では、この墨田区と江東区が火の海になり、十万人の人が亡くなった。今回は「首都炎上」のビデオを見ての感想文にした。今年も五十八回目の東京大空襲の記念日がやってくる。下町墨田に勤めて、至る所に、まだまだ大空襲の爪痕がたくさん残っている。十八人の我がクラスの中の祖母の中にも、大空襲の火の中を逃げて、助かった方がいらっしゃる。二学期には、その方に来ていただいて、クラスで一時間語っていただいた。三月十日の前後には、毎年体験者に来ていただいて、全校平和集会を開いている。今回は、その予備知識としてビデオを見ることにした。十八分にまとめた、大変わかりやすいビデオだった。子ども達の映像に寄せる真剣な眼差しが印象的だった。

 一番ゆるせないこと
    三年 
 二月十四日(金)学校で社会の時間にビデオを見ました。それは、一九四五年、今から五十八年前の三月九日〜十日の夜におこった、東京大空襲の、「首都炎上」と言うものでした。亡くなった方のほとんどが、お年寄りや、子ども、小さい子のいるお母さんと聞いて、一番罪のない方々が亡くなって、戦争は残酷です。お葬式も、お墓もない人がほとんどらしいので、やはり三月十日にはもくとうなどして、霊をなぐさめるべきです。でも、戦争で、たくさんの犠牲者が出なければ、きっと今も日本は平和の大切さを知らない国だと思います。今、イラクを攻撃しようとしている、アメリカのようだったかもしれません。ビデオを見て、今、生活に不必要なテレビやパソコンが、ぜいたくに感じました。
 この東京大空襲のあった、第二次世界大戦で、四千万人ほどの方々が、亡くなったと、ビデオの最後に文字が出ました。二度とこの許せない事を日本にやってもらいたくありません。日本国憲法第九条「戦争しない」がこのままであるよう、心から願っています。

 あかちゃんを三人なくした人へ
    三年 
 私たちは、一九四五年の東京だいくうしゅうのビデオを見ました。私のおじいちゃんは、へいたいさんに行ってたすかってもどってきました。おばあちゃんも、東京だいくうしゅうにあっています。すごくこわくて、びっくりしました。
(わたしのおばあちゃんがたすかってよかったなぁ)
と、思っています。私はこのビデオを見て、
(おばあちゃんもこんなめにあっていたんだなぁ。)
と、思いました。
(せんそうはおかしいなぁ。)
と、思いました。
(なんでせんそうがはじまったのだろう。)
せんそうは、ざんこくだなぁ。

 きくしまさんへ
    三年 
一九四五年、三月九日の夜から、十日にかけて大変なことがありました。 たった二日だけで、約十万人の人が亡くなって、あらためて戦争のおそろしさを感じました。今私は、お父さん、お母さん、二人の弟と幸せに暮らしています。でも、きくしまさんは、家族をなくして悲しかったでしょう。幸い私は、平和な東京に住んでいます。でも、私は、今の世界は、平和じゃないような気がします。ある国では、水も食べ物がなくて栄養しっちょうで死んでいく人もいます。隅田川の土手や、すみだ公園には、たくさんのホームレスの人もいます。 私は、あまった税金をぜひ、そんな人を助けるためにつかってほしいと思います。
 今アメリカのブッシュ大統領は、イラクに戦争をしようとしていますが、世界中がイラクの国をまもっているので「イラクとの戦争」がおさまりかけています。私は大好きなパパが戦場に行くことを考えると、夜も、ねむれません。私は、家族をなくしたくありません。もちろん、しんせきや友達もなくしたくありません。戦争は絶対いやです。私は、一生平和をなくしたくありません。

 東京大空しゅうで三人の子どもを亡くした人へ
    三年 
 今から五十八年前の一九四五年の三月九日の日に、東京大空襲がおこりました。物語の一番最後に家はほとんどやかれ、あとは氷がはっているプールしかないから、その氷を手で、「バリバリ。」とわって、プールの中に入ったら、赤ちゃんを二人、亡くなりましたね。もう一人の五才ぐらいの子どもが
「赤ちゃんはだいじょうぶ?」
と聞くとお母さんが、
「だいじょうぶ。」
と言うと、五才の子どもはねちゃいました。おじいさんが、
「亡くなった人はおいて、近くのおいしゃに行きなさい。早く 早く。」
と言いました。ねちゃった子どもをねんねこばんてんの中に入れて、おいしゃへ行きました。いしゃはいなかったので、三人の子どもを友達の家が一軒だけもえていなかったので、行ったらねちゃった子どもがまたまた、
「赤ちゃんはだいじょうぶ?」 
と小さな声で言いました。そしたら、五才の子どもの命は空に消えました。かわいそうでした。。

 東京大空襲のビデオを見て
    三年 
 東京大空襲のビデオを見て一番やだなぁと思ったのは、赤ちゃんと一年生くらいの男の子が亡くなった場面と、どこかの橋で人がいっぱいガイコツになってたのです。とくに赤ちゃんがなくなったのが一番いやだったです。だってうちにはもうすぐ一才の弟がいるからです。あのビデオをブッシュ大統領とイラクの大統領に見せたら、完全に戦争はやめるにちがいないです。ドイツやフィリピンでも何百万人以上の人が亡くなっています。今日本やドイツで戦争反対のデモがやっています。本当に戦争はやらないでほしいです。ぼくはあのビデオをみて
(戦争はおそろしいなぁ。)
と思いました。一九四五年三月九日の夜から十日の朝に、東京の墨田区と江東区にいた人はほとんど亡くなってしまいました。でも中田さんのおばあちゃんは助かりました。だから戦争はやめた方がいいと世界じゅうの人が思っているでしょう。

第22回空襲展
ところ 江東区総合区民センター
とき  2003年3月7日(金)〜9日(日)
  午前9時〜午後7時
   (9日は午後5時まで)
 墨田教組がこの実行委員会に関わるのは「すべての戦争に反対する」からです。日本のアジア侵略も「正義の戦争」でした。いかなる美辞麗句で飾られようとも、「人が人を傷つける行為」を私たちは否定します。
 今回の空襲展では「東京駅に遺された東京大空襲」を一つのテーマとしました。東京駅の屋根裏に遺された57前の、焼夷弾の跡と瓦礫を実行委員が写真パネルにしました。
追悼碑めぐり
 今年の追悼碑めぐりは、墨田周辺で行われます。
 ◇日時 3月9日(日)午前10時集合
 ◇集合場所 都営地下鉄「菊川駅」
 ◇コース・・・・「菊川周辺の
仮埋葬地と追悼碑」


週刊墨教組 No.1397 2003.2.19

噫 横川国民学校
イラクの人々を殺すのか

井上有一と いかりや長介
 いかりや長介の自伝『だめだこりゃ』(新潮社)には、井上有一と東京大空襲をめぐって、つぎのような記述がある。

 「私は一九三一(昭和六)年十一月一日、東京都墨田区に、碇矢一郎の長男として生まれた。私の本名は碇矢長一、碇矢なんて姓はめずらしいが、新潟県あたりがルーツらしい。

 私たち一家は業平橋のたもと近く、横川小学校(私の母校でもある。四年生から六年生まで井上有一先生といういい方が担任だった。戦後、前衛書道家として名を馳せた人だ)の裏門前の一戸建ての借家に住んでいた。

 一階で小学生相手の文房具屋を祖母が開いて、画用紙二枚だの鉛筆一本だのという細かい商売をしていた。登校時が店のラッシュアワーであり、私も遅刻寸前の時間まで手伝わされたものだ。まあ、「鉛筆一本ちょうだい」なんてのが、可愛い子だとこっそり三本渡したりする、そんな楽しみもあった。書道がうまい井上先生に、もう手に入りにくくなっていた半紙を差し上げたこともあった。

 親父にも「東京は危ない」とおもわせるくらい、戦況は悪化してきた。昭和十九年春、私が横川小学校を卒業するのを待って、一家で静岡県の富士に疎開した。

 そして昭和二十年、東京下町の大半を焼き尽くした三月十日夜の大空襲を、私は富士の裾野から望見することになる。B は東京を空襲する時、御前崎から入り、富士山を目標に進んで、少し手前で東に進路を変えて東京上空に至るという。だから東京に空襲がある時は、かならず富士の私たちの真上を飛ぶ。三月十日は常にも増して、物凄くやかましい音を立てて、大群が飛んで行った。私は、これは只事じゃないと思って、表に飛び出した。しばらくは音も消え、あたりは真っ暗闇だったが、やがて東の空が明るく輝きはじめると、間もなく富士山の右側までオレンジ色に染まっていった。私は茫然と立ちつくした。このとき、美しくさえ見えたその光の下で、私たちの住んでいた東京下町はすっかり焼き払われてしまったのだ。その晩、横川小学校の宿直は井上先生だった。先生は九死に一生を得、戦後になって、あの三月十日の夜に見た惨状、死体の有り様までを詳細に記すことになる。」

『噫横川国民学校』
 井上有一の書『噫横川国民学校』の途轍もなさは、空前絶後である。
 底しれぬ悲哀をたたえた怒りである。
 まっすぐにほとばしる怒りが愚直にたけりくるっている。
 こんな書は見たことがない。
 海上雅臣は、つぎのように記している。

 「大作『噫横川国民学校』はまるで焼跡そのままに見える。死体がころがり焼木杭がころがっているようだ。まだくすぶる余燼の臭気さえ鼻につくように錯覚する。なんという迫力だろう。それでいて白と黒のこの空間の静かさ。不気味なものが迫ってくるが気味悪さはない。この感触は、絵画でも書でもかつて見た範囲にはないものだ、と誰でも思うだろう。」

 作品図版は、『新編日々の絶筆』(平凡社ライブラリー)に掲載されているが、今にも絶命しそうな異形の書字をたどれば、こうだ。

アメリカB二九夜間東京空襲 闇黒東部忽化火海 江東一帯焦熱地獄 茲本所区横川国民学校 避難人民一千有余 猛火包囲 老若男女声なく再度脱出の気力もなし 舎内火のため昼の如く 鉄窓硝子一挙破壊 一瞬裂音忽ち舎内火と化す 一千難民逃げるに所なく 金庫の中の如し 親は愛児を庇い子は親に縋る 「お父ちゃーん」「お母ちゃ―ん」 子は親にすがって親をよべ共 親の応えは呻き声のみ 全員一千折り重なり 教室校庭に焼き殺さる 夜明け火焼け尽き 静寂虚脱 余燼瓦礫のみ一千難民悉焼殺 一塊炭素如猿黒焼 白骨死体如火葬場生焼女人全裸腹裂胎児露出 悲惨極此 生残者虚脱 声涙不湧 噫呼何の故あってか無辜を殺戮するのか 翌十一日トラック来たり一千死体トラックへ投げ上げる 血族の者叫声今も耳にあり
右昭和二十年三月十日未明 米機東京夜間大空襲を記す当夜下町一帯無差別焼夷弾爆撃 死者実に十万 我前夜横信国民学校宿直にて奇蹟生残 倉庫内にて聞きし親子断末魔の声 終生忘るなし
ゆういち


焦熱地獄と断末魔の声
 三月十日、宿直だった井上有一は、横川国民学校へ避難した約一千人の人々を守るために学校中を奔走していた。
 ついに、廊下の窓ガラスが火勢で一挙に破られ、学校は劫火に包まれる。
 井上は、とっさに階段下の小さな三角の油倉庫の中にとびこみ、あとから入ってきた四人とともに息をひそめる。
 井上の「戦中教師余話」には、こう記されている。

 「戸に少しすき間があって、そのすき間が真っ暗の中にたてに一線真っ赤に浮き出てきた。戸の外が燃えているのだ。暗くてわからぬがみんな息をのんでその真っ赤な一線をみつめ、外の気配に全神経を集中した。
 その時であった。今まで不気味なほど静かだった戸のすぐ前の人たちの間に大きな変化が起きたのは。ああ、ぼくは今でもその時の声がはっきり頭にやきついている。あの日から三十年、一日もあの声を忘れた日はない。
「おかあさーん」「おとうさーん」
 それは実はそんなにはっきりした声ではなかった。子供たちの声が一つの塊りとなって、とにかくそれは親にすがりつく子の声であったことにはちがいない。今、狂った焔がいよいよそこへ襲いかかったのだ。
 子にこたえる親の声はうめき声だけであった。
「うーっ」
 おそらくすがりつく子をかばった親の背が、一瞬にして火となったのであろう。
 それはほんの一瞬の出来ごとであった。後は前以上の不気味な静けさにもどる。われわれはもう生きた心地はない。再び死がさっき以上の確実さをもって迫ったことを感じた。
 さきほどから中が煙っぽくなってきていた。煙が戸の少しのすき間から侵入してくるのだ。すき間の火が見えなくなったのは、もう火が収まったためか、それとも煙で見えぬのか、真っ暗ではよくわからぬ。とにかく呼吸が次第に苦しくなってきた。もう誰も何もいわない。
 そのうちに並んでいる一人が変な息づかいを始めた。「ウ、ウ、ウ」と呼吸がつかえるみたいで様子がおかしい。もう外の人たちは死んでしまったろうからはばかることなく声をかけてみる。「おい、大丈夫か」。しかし返事がない。他の者もみんな返事がない。いよいよ終わりが近づいた。ぼくは少しでも体力の消耗をくいとめようと思い、幸い一番奥にいたおかげで、せまい中だが奥のスペースを利用して、うずくまるようにうつぶせになり鼻を床のコンクリートにくっつけた。息が苦しい。刻々苦しさを増してゆく。すべてが静かだ。静かな中で自分の呼吸だけが苦しい。ああ苦しい。もう息が出来ない。いくら吸っても空気が入ってこない。いっそのこと戸を開けてとび出そうか・・・・。」

 気を失った井上が発見され、かすかに心臓が動いていたので、人工呼吸を五、六時間ほどこされて奇跡的に蘇生する。油倉庫にのがれた五人のうち三人が死んだ。

イラクの人々を殺すのか
 普通に暮らしていた下町の人々が殺されたのだ。井上はいっている。「噫呼何の故あってか無辜を殺戮するのか」
 普通に暮らしているイラクの人々を殺す理由など、ブッシュには、まったくないのだ。
 戦争狂ブッシュの戦争は阻止しなければならない。
 武力ではなく、冷静な洞察力と想像力があれば、戦争はきっと回避できる。


墨田教組フィルム・ライブラリー
東京大空襲関係リスト

東京大空襲―爆撃命令書は語る
カラー VHS 五〇分
 東京大空襲は、綿密に練り上げられ、そして大胆に実行された一大オペレーションであった。アメリカ国防省戦時室に保存されていた<東京大空襲爆撃命令書>を中心に、アメリカ側の映像記録、各方面の資料、証言を交えて、アメリカの日本焦土作戦とその戦略思想を解明する。

君知ってる? 首都炎上
―アニメ東京大空襲
カラー・アニメ、ドキュメント VHS 十六ミリ 十八分
 「君知ってる? 首都炎上―アニメ東京大空襲」は三人の体験者が三月十日の惨状を語り、次にその証言をアニメ化して見せるという手法で作られた映画。東京大空襲の現実を子どもたちに知らせるのにきわめて有効な平和教材と思われる。

戦争と青春
カラー・劇映画 VHS 一一〇分
 構想二〇年、巨匠今井正が再現する三月一日の東京大空襲…映画人と市民による提携作品―平和への熱き思いをこめた全国一五〇〇人の市民プロデューサーからのメッセージ。墨田教組も市民プロデューサーとして出資、参加した。

そしてトンキーも死んだ
カラー・アニメ VHS 五〇分
 一九四三年上野動物園で三頭の象をはじめ多くの「猛獣」が処分された。表向きは住民の保護のためとされていたが、事実は都民への心理作戦で、NHK特集としては初めての、童話という形式をとった異色作である。戦争という異常な事態のもとでの人と動物の交流を描く。

火垂るの墓(ほたるのはか)
カラー・アニメ VHS 九〇分
 一九四五年六月の神戸大空襲で母を失った清太と節子は親戚の世話になるがなじめず、兄弟だけで生きていこうと決意。当初、穴蔵生活は楽しかったが周囲は冷たく、やがて二人は死に追いこまれていく。原作は野坂昭如。日本アニメ大賞受賞作品。

小さな証言者たち(記録映画)
 カラー・VHS 二〇分
 この映画は、第二次大戦の終わった一九四六年、ポーランド教育省がナチスの残虐の歴史を記録に残そうと全国の小学生に呼びかけ、集められた六千点の絵と数百点の作文をもとに製作された。

戦争(子どもたちの遺言)
 カラー VHS 五三分
 「十フィート運動」の中で集められた豊富なフィルムの中から新しく未使用部分を編集し、ヒロシマの原爆資料館、ポーランドのアウシュビッツ博物館などの新撮フィルムと、東京大空襲を描いたアニメーションを組み合わせたユニークな作品。

お母さんの木
 カラー・アニメ VHS 二二分
 戦場に七人の息子を送り出した母親は、彼らがみんな手柄を立てて、無事に帰ってくることを祈ります・・・。大川悦生原作の同名著書のアニメ化で、戦争はもう絶対いやだといい、平和を願い、子どもを思う母親の愛を描いた作品。


週刊墨教組 No.1396 2003.2.10

反戦平和教育の創造のために

三月十日を節目とした
特設平和授業のとりくみを進めよう

今年もまた三月十日がやってきます。五十八年前のこの日、墨田・江東を中心とした東京の下町は米軍のB による無差別絨毯爆撃で猛火に包まれて焼き尽くされ、一夜にして十一万五千人の尊い命が焼土に埋もれたのでした。東京大空襲は、広島・長崎の原爆とともに、戦争の悲惨さと非人間性を、平和と人間の命の尊さを教えてくれる大切な教材と言えるでしょう。
 「戦争」が歴史のかなたに追いやられ、風化の現象がみられる今日、「東京大空襲」を自ら学び、子どもたちへ語り継ぐことは、私たち教員の課題と責務です。

身体的な戦争イメージ
 現代はコンピューターの時代です。子どもたちはコンピューターゲームの中で、キーやボタンを操作しながら戦い、敵を破壊し殺戮することに慣れています。彼らの脳裏にある「戦争」は、生身の人間の苦しみや悲しみを全く捨象したゲームなのです。
 しかし、戦場の事実は全くちがいます。
 辺見庸は、自分自身が体験した「身体的な戦争イメージ」について、つぎのように語っています。
 「吐き気がするほどの恐怖感、底なしの虚無感……」「小銃弾が人の体を貫通したときの穴の具合も知らないでしょう。被弾した男はどういうふうに悶え泣き叫ぶか。それから迫撃砲で吹っ飛ばされた人間の肉というのがどういう色しているか。ロケット弾が宙を飛ぶときの空気の焼ける臭いがどういうものか。」
 戦場には、合理性や論理性は一切ありません。憎悪が憎悪を無限に拡大していく、それが戦争です。
 旧ユーゴスラヴィアやルワンダの戦争をみても、このことははっきりしています。

戦争の実相を伝える
 街を破壊し、人間の命を奪い、動物たちをも殺し、親子を兄弟姉妹を友人を恋人を引き裂く、これが戦争です。「広島」「長崎」「東京大空襲」の、語り部たちの体験談、手記、写真・・・・等々の貴重な資料は、今も戦争の悲惨や残虐、非人間性というその実相を伝えてくれています。
 私たち教員は、ほとんどが戦争の非体験者です。私たちは、戦争の実相を伝えるそれらの資料に学び、あるいは掘り起こし、自らの思想と言葉によって「戦争」を教材化し、その実相を子どもたちに伝えていかなければならないと思います。

ヒロシマというとき
 被爆者詩人・栗原貞子は、戦後、原爆の悲惨・残虐・非人間性を、そして、人間の命の尊さを詠った数々の詩を発表しました。そして、一九七二年に「ヒロシマというとき」と題する詩を書いたのでした。

〈ヒロシマ〉というとき
〈ああ ヒロシマ〉と
やさしくこたえてくれるだろうか
〈ヒロシマ〉といえば〈パール・ハーバー〉
〈ヒロシマ〉といえば〈南京虐殺〉
〈ヒロシマ〉といえば 女や子供を
壕のなかにとじこめ
ガソリンをかけて焼いたマニラの火刑
〈ヒロシマ〉といえば
血と炎のこだまが 返って来るのだ

〈ヒロシマ〉といえば
〈ああ ヒロシマ〉とやさしくは
返ってこない
アジアの国々の死者たちや無告の民が
いっせいに犯されたものの怒りを
噴きだすのだ
〈ヒロシマ〉といえば
〈ああ ヒロシマ〉と
やさしくかえってくるためには
捨てた筈の武器を ほんとうに
捨てねばならない
異国の基地を撤去せねばならない
その日までヒロシマは
残酷と不信のにがい都市だ
私たちは潜在する放射能に
灼かれるパリアだ

〈ヒロシマ〉といえば
〈ああ ヒロシマ〉と
やさしいこたえがかえって来るためには
わたしたちは
わたしたちの汚れた手を
きよめねばならない

侵略の歴史の中に位置づけて
 「戦争」の学習は、「広島」「長崎」「東京大空襲」など、それだけで終わってはなりません。日本が犯した侵略の歴史の中にしっかりと位置づけ、米軍の原爆や空襲によってもたらされた悲惨や残虐は、同じように、日本軍が、朝鮮・中国をはじめアジア諸国のあちこちでもたらしたものであることを教えなければなりません。「広島」「長崎」「東京大空襲」などの学習によって、破壊され殺され、被害者として受けた人々の苦しみや悲しみを学ぶことをとおして、破壊し殺し、加害者としてアジアの人々に与えた苦しみと悲しみに思いを馳せ理解する想像力を、子どもたちの心に培っていくことをしなければならないと思います。

まやかしの歴史観
 「歴史修正主義」的な「国民の物語」が台頭しています。
 すなわち、「自由主義史観」なる歴史観にもとづいて、日本の侵略の事実を否定する人達がいます。歴史的事実を正しく教える教育を「自虐的」であると言うのです。彼らは、「子どもたちが自国の歴史に誇りを持てるような教育を」と称し、侵略戦争を肯定する立場から「南京大虐殺」や「軍隊慰安婦」等、公然の歴史的事実を教育現場から抹殺しようと運動を展開しています。
 「記憶は弱者に在り」とは、芸人魂を貫いたまま逝ったマルセ太郎の至言です。
 日本の侵略によって、アジアの人々はどんなに苦しみと悲しみを与えられたことか。「自由主義史観」を主張する人達は、何と想像力に乏しく干からびた感性の持ち主であることか。彼らの言動をアジアの人々は、憂え、悲しみ、戸惑っていると伝えられています。このような歴史観がこれからの国際社会で通用するはずがありません。
 私たちの反戦平和教育の視点の中に、加害者としての日本の責任の問題をきちんと位置づけたいと思います。

9・ 11 と報復「戦争」
 私たちは、一昨年九月十一日にアメリカで起きた同時多発テロ事件に対し、深い怒りを持ちます。テロは、断じて認めてはならないし、許してはなりません。
 同時に、私たちは、テロという暴力に対し、報復という暴力を行使することも認めないし、許せません。
 ブッシュによる、身勝手極まりない「正義」を振りかざした、アフガニスタンへの報復攻撃には、人倫のかけらすらみられません。飢餓に瀕する最貧国アフガニスタン民衆のことなど一顧だにされず、冷血な報復の情念だけが暴走しているのです。
 報復「戦争」という言葉が流布していますが、これは、断じて「戦争」ではありません。一方的な殺戮と破壊をくりかえすだけの非道な「攻撃」にしかすぎないのです。
 そして、ブッシュに追随するだけの、この国の凡庸で感情的な首相は、9・11 を口実に、さっそく、「テロ対策特別措置法案」と「自衛隊法改正案」を、十分な国会審議をしないまま、成立させたのでした。
 この法案には、自衛隊の活動範囲を拡大し、武器使用基準を緩和するなど、憲法が禁じている集団的自衛権の行使にはっきりと抵触する内容が盛り込まれています。

有事法制とイージス艦派遣
 有事法制について考えるとき、忘れてはならない、注意すべきひとつの報告があります。
 二〇〇〇年一〇月に発表された米国防大学戦略研究所の特別報告(「アメリカと日本―成熟したパートナーシップに向けて」、通称アーミテージ報告)です。つけ加えるなら、アーミテージとは、「ショウ・ザ・フラッグ」の、あの米国務副長官です。

 「日本が集団的自衛権を禁じていることが両国の同盟協力を制約している。この禁止を解除すれば、より緊密かつ効果的な安保協力が見込まれる。これには有事立法の制定を含む日米防衛協力のための新指針(新ガイドライン)の勤勉な履行が必要である。」

 有事法制は、この報告に強力に背中を後押しされているのです。小泉政権は、そのアーミテージの昨年末の来日日程(十二月八日)に合わせてイージス護衛艦をインド洋に送り出したのでした。
 このイージス艦派遣は、「自衛隊法」「日米安保条約」「テロ対策特措法」いずれに照らしても、適法の余地など全く存在しない目茶苦茶な決定でした。
 ブッシュの理不尽きわまりない悪らつなイラク攻撃に備えたものとしか思えません。
 私たちは、今こそ、もう一度、暴力行使を明確に否定した日本国憲法の絶対平和主義の立場にたちかえり、小泉政権が露骨に加担しているブッシュの暴挙を告発し続けなければなりません。

もくろまれる教育基本法改悪
 昨年の十一月十四日、文部科学省の諮問機関である中央教育審議会が、教育基本法の改悪をもりこんだ中間報告を行いました。
 その中間報告は、現在の子ども達をめぐる様々な問題の責任を、すべて教育基本法に押しつけています。
 そして、社会や国という「公共」を個人よりも優先させ、ことさらに「たくましい日本人」とか「国を愛する心」とか「伝統、文化の尊重」を強調しています。
 さらに、国家による教育行政の「不当な支配」を、国の責務として正当化しようとしています。
 教育基本法は、戦争への深い反省から生まれた平和憲法の理念を実現するために、英知を結集して制定されたものです。
 前文には、憲法の理想の実現は、「教育の力にまつべきものである」として、「ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する」と高らかに宣言しています。
 このような「準憲法」的性格をもつ教育基本法の否定は、憲法の否定にほかなりません。
 さて、第156通常国会が一月二〇日に召集されました。会期は六月十八日までの150日間にも及びます。
 中央教育審議会は、文部科学省の主導による一方的な公聴会「一日中教審」を全国五ヶ所で開いただけで、国民的論議を欠落させたまま、最終答申を行おうとしています。その答申を受けて、今国会での教育基本法改悪がもくろまれています。
 このことは、有事法制を成立させ、憲法を改めようとする動きとも密接につながっています。
 まさに平和の危機です。

組織的な平和教育のとりくみ
 墨田教組は、反戦平和教育の重要な課題として位置づけ組織的にとりくみを進めてきました。一九八八年からは、とくに『三月十日』をひとつの節目に設定し、墨田の全学校で反戦平和教育の実践が行われることをめざし、墨田教組として統一的にとりくみを進めてきました。三月十日の前後には、特設授業や全校児童集会等々さまざま形で、平和教育のとりくみが各学校で実践されています。このとりくみは、東京大空襲で壊滅的な被害を受けた墨田におけるとりくみという意味で、地域に根ざした教育の一環でもあります。私たちは、これらの立場に立って、今年も三月十日を節目とした平和教育特設授業のとりくみを進めます。

具体的なとりくみ
一、三月十日に向けて、全分会が全学級一斉授業、全校集会、学年集会など、何らかの形で特設授業を実施するとりくみを進める。

二、分会として意思統一をおこない、具体的な方針を決定し、直ちにとりくみを開始する。

三、一分会一万五千円を限度として、学校(分会)における計画実施のために必要な経費補助(教材作成・購入費、講師代等)を「主任手当拠出金」から支出する。
 
四、分会は二月二十八日までに具体的計画を書記局に報告する。その際、経費補助金の請求も行う。

五、執行委員会は、資料作成・提供、講師の紹介・仲介、具体的な進め方についての相談、交流活動を行う。


週刊墨教組 No.1395 2003.2.4

2003年度 行事日程
4月23日(水) 定期総会   午後3時より
5月21日(水) 女性部総会  午後3時より
6月4日(水) 教育研究集会 午後3時より
10月15日(水) 教育研究集会 午後3時より
※教育課程の年間計画に、行事を入れさせないようにとりくんでください。

資料1
○学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例
及び同条例施行規則の解釈及び運用について

平成一四年三月二九日 教人勤第二一六号(よ

第四 週休日の変更(条例第六条及び規則第四条関係)
一 週休日の変更の手続は、必ず事前に行わなければならない。
二 週休日の変更は、当該週休日に属する週において行うこと。
三 やむを得ない場合(学校行事により学校全体が当該週休日に属する週において、週休日の変更を行うことができない場合等)には、当該週休日の前後各二月の範囲内で行うことができる。
四 条例第五条第二項ただし書に規定する職員を除き、週休日の変更を行った場合には、週休日がある四週間については八日を超え、又は八日に満たないことができる。
五 週休日を他の日に変更する場合、新たな勤務を割り振られた日の正規の勤務時間は、週休日とされる日の正規の勤務時間と同一の時間数でなければならない。
例えば、日曜日に勤務時間を割り振り、金曜日を週休日とした場合で、金曜日に割り振られていた正規の勤務時間が八時間であった場合は、日曜日は八時間の勤務を要することとなること。
なお、一日四時間の勤務時間を二回割り振るような取扱いは行わないこと。
六 週休日の変更の手続
(一) 週休日の変更は規則別記第一号様式「週休日の変更命令簿」により行う。
(二) 教育職員以外の職員において、週休日の属する週以外に、週休日を変更する場合は、都立学校においては人事部勤労課長、区市町村立学校においては、区市町村教育委員会人事担当課長(以下「協議者」という。)に、「週休日の変更命令簿」を用いて協議するものとする。この場合、「一〇〇分の二五の支給」欄の「有・無」のいずれかに○を付した上、その欄に協議者が押印することをもって、協議が整ったものとする。
(三) (一)にかかわらず、学校行事等により、学校又は学年全体で週休日を変更する場合は、学校長を除き、「週休日の変更命令簿」によらず、週休日の変更をする旨の起案を行い、処理することができるものとする。ただし、週休日の属する週以外に、週休日を変更するときは、超過勤務手当支給が有る場合は、協議者への協議を要するものとする。
この場合、起案文書の協議欄に協議者が押印することをもって、協議が整ったものとする。
なお、起案文書には、次の事項を記載するものとする。
ア 勤務の内容
イ 当該週休日の属する週に変更できない理由
ウ 変更前週休日の年月日
エ 変更後週休日の年月日
オ 週休日を変更する職員
(ア) 学校全体で変更する場合
「全職員を対象とする。」旨の記載をする。
(イ) 学年全体で変更する場合
変更する職員を列記するか、名簿等職員が特定できるものを添付する。
(四) 命令権者は、上記(二)または(三)の手続が終了し、超過勤務手当を支給する必要がある場合は、給与担当者をして「超過勤務命令簿」に必要事項を記入させて命令権者印欄に押印し、当該新たに勤務を割り振られた日に職員が勤務したことを確認した上で確認欄に押印するものとする。
(五) 学校長が週休日の変更を行う場合は、上記(一)及び(二)の手続を経た後、都立学校長においては、人事部長、区市町村立学校長においては、区市町村教育委員会が、「週休日の変更命令簿」又は「週休日の指定簿」により決定する。


 夜間中学を描いた映画
『こんばんは』今春完成!

 家が貧しかったため義務教育を受けられなかった七十才のおばあちゃん。「高校に行く」とはりきっていた二年目の始業式の前日、脳梗塞で倒れた。意識不明の状態が続いているが、クラスの仲間は今も彼女の事を心配し、必ず生還すると信じ色々と手を尽くしている。
 アフガニスタンから戦災を逃れてやって来た生徒に難民認定がおりず、入管に収容されそうになると「親元を離れやっとの思いでこの日本にたどり着いたのだから」と多くの生徒が入管に作文を書いて送った。
 言葉を発しない不登校だった生徒に皆が声を掛ける。「こんばんは、ケンちゃん」 何の応答がなくてもニコニコと面倒を見る。彼が笑顔でも見せれば学校中が大喜びになる。今、一言二言喋り始めた彼を皆が温かい目で見守っている。
 この夜間中学をドキュメンタリー映画にして、世の人々に見てもらいたいと、過去に『渡り川』等の映画を制作した森監督が文花中に来たのは三年前だった。
 それから毎日のように文花中に通って丹念に授業や行事の様子を撮り続け、生徒達の生き生きとした姿の中に学ぶ事の喜びやその成長を捉えようとした。
 この映画が森監督の言う「混迷を深める現代教育や現代社会にあって、夜間中学の存在はそこから抜け出すヒントにあふれている」という言葉を証明できる映画になる事を期待して、是非、多くの方に鑑賞していただきたい。   
文花中夜間より

『外国籍生徒の
日本語指導と進路指導』
 夜間中学の実践報告、自主教材も展示
 2月2日(日)午前10時30分〜午後1時
 東京国際フォーラム
   「地球市民フェスタ」(有楽町旧都庁跡地)


週刊墨教組 No.1394 2003.1.30


元号とは何か

「元号法」
 「元号法」は、一九七九年六月六日に成立しました。
 「1 元号は、政令で定める。
 2 元号は、皇位の継承があった場合に限り改める」というたった二十九字、付則も、法律は公布の日から施行することと、昭和の元号は本則第一項の規定に基づき定められたものという、じつに『簡単』な規定です。
 たとえば、一九七八年七月の読売新聞の世論調査では、「法制化すべきだ」という人は十五%にすぎませんでした。
 一方これに対して「法制化の必要はない」は六四.五%にも達しました。
 それでは、世論を無視してまで、権力がこだわって強行成立させたこの法律の裏に隠された危険なもくろみは、いったい奈辺にあったのでしょうか。

「事実たる慣習」
 それは、一九七八年十月三日に行われた「元号法制化実現総決起国民大会」での、つぎの発言に明らかです。

「昭和の御代もすでに五十三年になり聖寿万歳を願う国民の気持ちには変りございませんけれども、天皇御一代中一つの年号という建て前でございますから、昭和の次に果たして元号が存続するや否やということは極めて切実な問題であります。」(石田和外元号法制化実現国民会議議長=元最高裁長官)

 元号(年号ともいう)は、漢の武帝から始まったといわれる中国から伝わった年の数え方ですが、その決定は天皇の権限でした。そして「明治」以後は天皇中心の考え方を国民に押しつけるための手段として、天皇の在位を表す「一世一元」制(天皇一代に一つの元号)となりました。それは天皇が主権者=統治者であった「大日本帝国憲法」下の日本ではふさわしいものだったといえましょう。
 しかし、戦後、一世一元の元号などは、「日本国憲法」の主権在民の原則に反するものとして、旧「皇室典範」十二条が定めた「元号制」は削除され、この時点で「昭和」の元号は、すでに法的根拠を失っていました。昭和〇〇年などというのは単なる「事実たる慣習」にすぎないと法制局は答弁せざるをえない状況にまで追い込まれていたのです(一九六八年四月衆院内閣委員会)。さきの石田の発言は、その焦りをにじませていました。「元号法」が急かされた理由も、そこにあったのです。

つくられた伝統
 「元号は日本の伝統文化だ」とか、「元号の使用は国民の慣習だ」「時代をあらわす便利なものだ」という人がいます。
 たしかに元号は、「大化」からとか「大宝」からとかの説はありますが、日本でも千年以上使われましたが、中国の支配者のやり方をとりいれたものであり、その中国ではすでに、専制政治の滅亡とともに不合理なものとして廃止されています。「明治」以前の元号は数年でかわっていたため、民衆は元号よりも「えと」(十干と十二支を組み合わせて六十年で一巡する数え方)で年をあらわす方が慣習でした。
 一八六八年九月八日に「一世一元ノ布告(行政官布告第一号)」が出されました。これとて明の洪武帝のそれにならったもの。天皇の権威を押しつける目的であることははっきりしています。

不合理な元号
 元号法制化当時の騒然たる情況をふりかえれば、すでにして、「元号法」の問題点は的確に批判されてつくされています。
 一九七九年四月十日の衆院内閣委で、味村内閣法制局第二部長が、「歴史など教育目的のため元号を教えることが必要な場合、教科書の著者に元号を書いてもらうのはやむをえない」「そのことで著者の表現の自由が若干制約されても教科書の性格からくる制約であり、問題はない」と発言しました。
 これら政府答弁に「強い疑念と不安を抱いた」教科書筆者側は朝尾直弘(京都大学)氏ら十八氏の呼びかけに応えて、四月二七日付けで、教科書執筆者百五氏が連名で「法制化と教科書における元号記述の強制に反対する声明」を発表しました。声明の要旨は次の通りのものでした。

@わが国、明治以来の一世一元制度は、帝国憲法に規定の天皇主権に照応した紀年法として具体化したもの。その意味で元号法制化は国民主権原理の日本国憲法の精神にそぐわない。
A国民主権の現代に国家が法律によって、国民のものであるべき紀年法を規制するのは時代錯誤というほかない。
B小中高の教育とくに社会科教育において、児童・生徒の発育に応じて、日本の社会現象を扱う場合にも、それを国際的視野の中で理解する必要がある。西暦使用はすでに若い日本国民に定着しており未来の世代のための教育でもこうした教育的配慮はさらに重要となりこそすれ、決して後退させるべきでない。元号法制化や国会での政府見解はこのような社会科教育の方向に逆行し、世界を見る児童・生徒の眼をせばめるものである。

 まことに、情理のそなわった的確な批判であり、現在に至るも、その批判は有効性を保持しています。


はじける芽(113)

十二月の指導題目
年配の方から、戦争中の暮らしについて 聞き書きをしよう。


  広島の被爆者 福地義直さんの体験

 全くの偶然から、広島の原爆被爆者の福地義直さんと親交を持つことができた。広島の爆心地から八百メートルのところで被爆するが、奇跡的に助かり、現在は立花小近くで、スーパーを経営されている。この夏、広島と長崎に落ちた原子爆弾の模型を作ることを決意され、最近やっとできたので、子ども達にみてほしいという連絡があった。事前に見せていただくと、そこには広島・長崎に落とされた本物と同じ大きさの模型の原子爆弾が、置かれていた。たくさんのパネルの写真も見せていただいた。ご本人が書かれた「原爆体験記」のパンフもお借りして、学校で語っていただくことを約束して帰ってきた。とりあえず、三・四年を対象に、体験を語っていただいた。七十才のお年であったが、十三才の時にあわれた生々しい事実を、淡々と語っていただいた。
 二〇〇二年 十一月二十五日(火)実施

  なぜこんなにざんこくに?
三年
 言葉で表せないほど、戦争をにくく思います。私ははじめてフクチのお店のとなりにはいって、びっくりしました。もちろんひろしまげんばくをたいけんした人がいるとしりませんでした。写真や絵を見て、私は(なぜ昔、こんなざんこくな事をしたんだろう?)と、思いました。私は昔から「せんそうはただただこわいもの」とだけ考えていました。でも、今日話を聞いて、かわりました。「もうやってはいけないこと」になりました。本当に、かわりました。私はいままで、こんなにまじめに考えた事はなかったのに、すごくいろいろな事を知りました。げんしばくだんが、あんなに大きいと知ったのも、今日がはじめてでした。今日、ふくちさんに話を聞いてよかったです。

※体験者の話や写真の映像から、多くのことを学んでいる。

  せんそうはやめて
三年
 私は、ふくちさんに、広島げんばくの話をしてもらった。一時間目は、話をしてもらった。ふくちさんは、「わたしの母は、顔の、かわが、むけちゃって、ほねが見えていたんだよ」と話してくれた。二時間目は、フクチのお店の、となりにあるげんばくとかの絵を見た。私は、下を見たくなるような、写真とかを見た。私は、心の中で、(せんそうは、やっちゃいけないものだ。)と思った。私は、ブッシュだいとうりょうにも見せたくなった。私は、せなかがやけた人の写真を見た。(せんそうは、やだあ。)と思った。

※「ブッシュ大統領にも見せたくなった。」と言うのが、なかなかいい。

  福地さんの戦争
三年 
 ぼくは、戦争がきらいです。福地さんは、「人が二十四万人の人が戦争でなくなっている。」と、いいました。福地さんは、そのとき、十三才でした。原ばくが落ちたとき、家がたおれて、その下じきになりました。家の材木が、体にくっついて、はがすのが大変でした。やっととれたとき、福地さんが「おかあちゃん、おかあちゃん。」といいました。材木のなかをさがして「『ここよ、ここよ。』ときこえたんだよ。」といっていました。

※外にいた父親は、行方不明で、母親は助かり、妹も防空壕から救い出して、無事だったと言うことだ。

  げんばくのおそろしさを知った
三年    
 今日の一、二時間目に、フクチのお店のおじさんが、学校へ来ました。一時間目は、げんばくの話をしてくれました。二時間目は、フクチのおみせの倉庫の所にいきました。そこにある写真を見て、ふくちさんが、こう言いました。「ここにある写真はげんばくの写真です。」私も知っている、広島のげんばくドームの写真でした。今、アメリカのブッシュ大統領が、イラクに戦争をしようと言っています。その事を写真を見て、(アメリカはなんで人の事を考えないんだろう。)と、思いました。はだしのゲンなどで、げんばくのおそろしさを知りました。ですが、それ以上にすごいおそろしさを思い知りました。はだしのゲンは、広島に落ちたげんばくの事を、「ピカ」と、よんでいたんですが、はたしてそうなのでしょうか。今の時代に、また戦争がないようにしないとと思いました。手の皮ふがたれさがっている絵を見て(こんなになっちゃうんだ。)と、思いました。その白い粉をあびてしまって、げんばくびょうになってしまった人の写真を見て、(えーっこんなことになっちゃうの。)頭の皮ふがうんじゃったり、毛がぬけたりしてる人の写真を見て、(こんなにおそろしい事が日本にあったなんて。)と、思いました。

※「アメリカのブッシュ大統領が、イラクに戦争をしようと言っています。」と、つなげて考えているところに、意味がある。

  平和教育の大切さ
 ここに載せてある感想文は、 当日すぐに子ども達がパソコンで、書き込んだ文である。その日にまとめきらずに、二時間かけてまとめたものがほとんどである。推敲は読み直し程度で、初発の感想みたいなものである。これらの作品を、「ひとまとまりの作文」にするには、書き出しと締めくくりを工夫しなければならない。また、一文一文をもう少し吟味しなければならない。しかしながら、最初の感想で、これだけまとめられれば、よしとして良いだろう。
 福地さんの語りと終わった後の原子爆弾の模型とたくさんのパネルを実際にみた。そのことによって、子ども達の戦争へのイメージはかなりふくらんだようだ。映像から来るインパクトは、大変大きい。戦争とは、こわく残酷なものであるということに、気がついてくれれば、大きな意義がある。なお、福地さんは、連絡があれば、いつでも語り部になって学校を訪問してくださるそうだ。また、お店の隣に展示コーナーがあり、行けばいつでも見られるようになっている。
    (連絡は書記局まで)


週刊墨教組 No.1393 2003.1.23

卒業証書
保護者からの申し出があれば西暦年号記載が可能
―卒業生の全保護者へ周知―

 卒業証書の生年月日や発行年月日の年号記載に当たり、元号で表記するか、西暦で表記するかに関し、墨田区・墨田区教委は基本的な方針を明らかにしています。
1.元号使用が原則
2.保護者からの申し出があれば西暦記載も可能
3.外国籍の子どもについては、生年月日、発行年月日、氏名の表記について確認し、保護者からの希望があれば、その意志を尊重する。
4.このことについて、卒業生の全保護者に周知する
 この方針は、思想信条の自由等の人権を尊重する立場、さまざまな価値観や文化を有する多様な人々と共生する墨田を築くという立場に基づいて明らかにされたものです。
 私たちは、区教委のこうした方針を評価し、児童・生徒や保護者に対応してきました。

人権尊重の立場に立てない少数の校長
 昨年、三月一四日、区議会市民文教委員会で、「保護者への周知」に関し、区教委の不十分さが指摘されました。教育長は不十分さを認め、「保護者への周知」を徹底することを約しました。その内容は、区教委文書(資料1)を、学校を通して卒業生保護者に配布する形で具体化されました。しかし文書の配布日が三月一五日(金)以降になり、三月二〇日(水)が卒業式であった中学校では、文書を保護者が見て、「卒業証書の年号西暦記載の意志」を校長に伝えるには時間がなさすぎました。一部であっても、児童・生徒や保護者の人権が尊重されなかったことは、重大な問題です。


人権尊重や国際理解は、具体的な実践が大切

 多くの小・中学校では、従来から各校毎にお知らせや保護者会などで、当該児童・生徒や保護者に「西暦記載も可能である」ことを知らせてきました。
 一月一〇日、区教委は、定例校長会で「卒業証書の元号使用について」墨田区・区教委の基本的な考え(先記四点)を明かにしています。また、この件に関し住民運動を続けてこられた方々にも、「昨年の反省にたち保護者への周知を徹底する」と解答しています。
 人権尊重や国際理解は、具体的な実践こそが大切です。「保護者への周知」がすべての学校でなされ、児童・生徒、保護者の意志を尊重されるとりくみを強めていきましょう。

資料1

事 務 連 絡
平成14年3月15日
各小中学校・幼稚園長 様
墨田区教育委員会事務局  
次長 久保孝之
(公印省略)
卒業証書の年号等の取り扱いについて(依頼)

 このことについては、教育広報「いきいき」等を通じ、保護者等に周知をしているところですが、昨日、開催された区議会区民文教委員会において、周知方法についてご意見がありました。
 つきましては、遺漏のないよう別紙のとおり卒業生保護者に対して、周知くださいますようお願いします。

卒業生保護者 様
墨田区教育委員会事務局

 日ごろから、墨田区の教育行政にご協力いただきありがとうございます。
 さて、卒業式の際にお渡しする卒業証書について、氏名並びに生年月日及び発行年月日に関する年号表記について、特に希望のある方は、校長まで御相談ください。

墨田区立学校の管理運営に関する規則第20条に係る施行細目
(目的)
第1条 この細目は墨田区立学校の管理運営に関する規則(昭和53年墨田区教育委員会規則第6号。以下「規則」という。)第20条に規定する卒業証書の様式を定めることを目的とする。
(様式)
第2条 卒業証書の様式は別記のとおりとする。
2 卒業証書の生年及び発行年は元号法(昭和54年法律第43号)に基づく表記とする。ただし、特別の理由があると認めるときは、西暦で表記することができる。
  付則
平成12年4月1日から適用する。

豊田直巳写真展「戦場の子どもたち」
 今、世界では、アメリカの無謀なイラク攻撃に反対する大きなうねりが広がっています。
 1月18日には、アメリカの市民団体の呼びかけに応えて、日本でも各地で反戦集会がもたれました。ブッシュの石油戦争というねらいがハッキリしてきた今日、アメリカの軍人の中にも「わけなく人を殺したくない」という反戦の声が高まっています。
 こうした中、湾岸戦争のときに劣化ウラン弾の非人道的な攻撃の犠牲になったイラクの人々、とりわけもっとも悲惨な犠牲者である子供たちの姿をカメラに撮り、反戦を訴え続けてきた豊田直巳さんの写真展が開かれます。ぜひ、ご覧下さい。

☆日時 1月24日(金)14:00〜19:00
25日(土)26日(日)11:00〜19:00
☆場所 江東総合区民センター
2階展示ギャラリー
☆入場 無料
☆主催 「戦場の子どもたち」
        写真展実行委員会
☆連絡先 本所緑星教会気付
        090−9837−5164

資料1

学校職員の勤務時間,休日,休暇等に関する条例
(平成15年1月1日より改正実施)
(特別休暇)
第17条 教育委員会は、職員が選挙権の行使,結婚、出産その他の特別の事由により、勤務しないことが相当である場合における休暇(以下、「特別休暇」という。)として、公民権行使等休暇、妊娠出産休暇、妊娠障害休暇、早期流産休暇,母子保健検診休暇,妊婦通勤時間、育児時間、出産支援休暇,子どもの看護休暇、生理休暇,慶弔休暇,災害休暇,夏季休暇,長期勤続休暇およびボランティア休暇を承認するものとする。
第1条から16条まで,第17条の2,第18条から第21条まで,現行のとおり。
すでに管理職から説明があったと思いますが、傍線つきの2件が変更・追加されました。傍線・ゴシックは引用者。

学校職員の勤務時間,休日,休暇等に関する条例施行規則
(平成15年1月1日より改正実施)
(妊娠障害休暇)
第19条 妊娠障害休暇は、妊娠中の女性職員が妊娠に起因する障害のために勤務することが困難な場合における休養として与える休暇とする。
2 妊娠障害休暇は,1回の妊娠について1回に限り,日を単位として引き続く10日以内で承認する。
3 妊娠障害休暇を請求するときは,母子手帳等を示さなければならない。

(子どもの看護休暇)
第23条の二 子どもの看護休暇は,小学校就学の始期に達するまでの子(配偶者の子を含む。)を養育する職員が,その子の看護(負傷し,または疾病にかかったその子の世話を行うことをいう。)のため勤務しないことが相当であると認められる場合の休暇とする。
2 子どもの看護休暇は,1の年において,日を単位として5日以内で必要と認められる期間を承認する。ただし,職務に支障がないと認めるときは,半日(正規の勤務時間の始め又は終わりの4時間をいう。)を単位として承認することができる。

3 前項ただし書の規定による承認については,2回の承認をもって1日の承認とするものとする。
第1条から第18条まで,第20条から第23条まで,第24条から第32条まで,現行のとおり。

資料2

14教人勤第203号
平成14年12月27日
東京都教育委員会教育長 横山洋吉
学校職員の勤務時間,休日,休暇等に関する条例
及び同条例施行規則の解釈及び運用について(通知)

より,要約抜粋

第1 妊娠障害休暇
1 改正内容 妊娠初期だけでなく妊娠全期間にわたって対象とする休暇として,妊娠初期休暇を廃止し,妊娠障害休暇を新設する。
2 趣旨 略
(1)「妊娠に起因する障害」
  つわりにより10日以内の休養を必要とする場合を想定しているが,軽い妊娠中毒等の疾病で10日以内の休養を必要とする場合も対象とする。
以下略

第2 子どもの看護休暇
1 略
2 要件等
(1)「小学校就学の始期に達するまでの子」
  その子が6歳に達する日(誕生日の前日)の属する年度の3月31日までをいう。
(2)「子」の範囲
  職員が同居し,監護する実子,養子及び配偶者の子(「扶養親族等に関する届け」等において確認すること)
(3)「看護」の内容
  負傷,疾病による治療,療養中の看病及び通院等の世話をいう。後遺障害の機能回復訓練(リハビリ)の介助は含まない。
(4)「負傷,疾病」の内容
  基本的にはその程度や特定の症状に限るものではなく,風邪,発熱等を含めてあらゆる負傷,疾病が含まれる。
  なお,負傷,疾病が治った後の社会復帰のための機能回復訓練あるいは予防注射,予防接種,健康診断等は含まない。ただし,予防注射,予防接種による著しい発熱等の症状が発生した場合は,この限りではない。
(5)「勤務しないことが相当であると認められる場合」
  勤務しないことが相当とは,子が負傷疾病により看護の必要があり、かつ職員以外にそのこの看護を行う者がいないことから仕事を休まざるを得ないと認められる状態をいう。したがって,職員以外にこの看護を行うものがいる場合は「相当である」とは認められない。なお,いわゆる専業主婦(夫)がいる場合には,通常,当該専業主婦(夫)が子の看護にあたるものと考えられるが,当該専業主婦(夫)が入院中等の事情により看護にあたれないような場合もあることから事情を十分に確認のうえ処理する必要がある。

3 休暇の期間
(1) 「1の年」とは,1暦年をいい,1月1日に付与する。
(2) 承認日数は,原則,暦日を単位として,5日以内で必要と認められる期間とする。ただし,職務に支障がないと認めるときは,半日を単位として承認することができる。半日とは,正規の勤務時間の始め又は終わりの4時間とし,当該半日の2回の承認をもって1日の承認とする。

4 承認の手続き
  子どもの負傷,疾病の確認については,特段,医師の診断書等の提出を義務づけることはせず,基本的には,承認件者が個別に判断することとする。なお,承認権者が,必要に応じて医師の診断書等の提出を求めることは妨げない。なお,両親とも職員である場合,同日もしくは同日の同一時間帯について,承認することはできない。

5 他の休暇との調整
(1)年次有給休暇との関連
  半日で承認された子どもの看護休暇に引き続いて年次有給休暇を承認することにより,その日全ての正規の勤務時間について勤務しないことになることは可能である。  以下略


週刊墨教組 No.1392 2003.1.16

教育基本法「改悪」に反対する―七―

露骨な介入
 前回、羅列した「3 教育振興基本計画に盛り込むべき施策の基本的な方向」(『週刊墨教組』一三九〇号所収)には、明らかに現行教育基本法一〇条の規定に抵触したり逸脱する内容のものがあります。
 国家が露骨に教育システムにとどまらず、教育内容にまで介入し、不当に支配しようとしているのです。

第十一条の意義
 教育基本法には、つぎの規定があります。

第十一条(補則)
 この法律に掲げる諸条項を実施するために必要がある場合には、適当な法令が制定されなければならない。

 あらゆる教育関連下位法は、上位法の理念に則り、制定することができるのです。
 つまり、憲法・教育基本法の理念に背反しなければ、この十一条を援用すれば、教育振興計画の策定は、可能なのです。
 きわめて単純な道理です。

教基法と背反する「振興計画」
 それでは、なぜ、十一条を援用して、教育振興計画の策定をしないのか。
 それは、計画そのものが、教育基本法の理念に、まっこうから背反するものだからです。
 中間報告は、「教育振興基本計画策定の必要性」について、白々しくもぬけぬけと次のような詭弁を弄しています。

「○ しかしながら、各分野の基本法のうち最初に制定された教育基本法には、基本計画に関する規定が置かれていないため、現在まで、教育に関する政府全体の基本計画は策定されていない。また、教職員定数改善計画、国立大学施設整備計画、コンピュータ整備計画、留学生受け入れ十万人計画など、個々の施策の計画は策定されてきたが、教育全体に及ぶ総合的な施策の体系としての計画が作られてきたわけではない。最近では「二十一世紀教育新生プラン」のように教育施策を総合的に体系化して国民に分かりやすく示す試みも行われているが、これは、文部科学省の施策の枠内で取りまとめられたものであり、政府全体として教育のより明確な位置付けが望まれる。
 政府として、未来への先行投資である教育を重視するという明確なメッセージを国民に伝えるためにも、また、施策を国民に分かりやすく示すという政府としての説明責任を果たすためにも、教育の根本法である教育基本法に根拠を置いた、教育振興に関する基本計画を策定することが重要である。

○ このため、本審議会では、教育振興基本計画の策定に関する根拠規定を教育基本法上明確に位置付けることを前提に、計画の骨格となる基本的考え方を審議し、「2 教育振興基本計画の基本的考え方」として示すこととした。」

学校教育法の見直し
 学校教育法は(裏面参照)は、教育基本法の理念を体現して、一九四七年に制定されました。
 中間報告では、学校教育法も再三にわたって攻撃の標的となっています。

「更に議論を深めることにより、教育基本法の諸規定を見直すとともに、それを受けて、学校教育法、社会教育法、生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律などに定める具体的な制度等の在り方や学習指導要領など、教育諸制度等の見直しを行うことが必要である。」

「教育基本法の教育の基本理念等を踏まえ、学校教育法では各学校種ごとの目的、目標が規定されているが、これらも学校教育法制定以来、実質的な見直しは行われていない。教育基本法の見直しに伴ってこれらの規定も見直す必要が生じると考えられるため、今後、本審議会の関係分科会等において検討する必要がある。」

不服従な意志を
 教育基本法に、「伝統、文化の尊重」や「郷土や国を愛する心」が規定されるような改悪がなされるなら、当然、学校教育法十八条の目標には、けたたましく「伝統、文化の尊重」「郷土や国を愛する心」が掲げられ、すべてをなぎたおしていくことになるでしょう。
 さらに、リーダーシップをトップダウンだとはきちがえた愚劣な権力によって、二八条の6「教諭は児童の教育をつかさどる」は、国民学校令十七条の「訓導ハ校長ノ命ヲ承ケ児童ノ教育ヲ掌ル」のように、改悪されかねない事態がしのびよってきています。
 私たちは断じて黙して、座視することなどできません。一人一人が強固に教基法改悪反対の不屈で不服従な意志をもちつづけなければなりません。


資料 学校教育法

第2章 小学校
第17条 小学校は、心身の発達に応じて、初等普通教育を施すことを目的とする。
第18条 小学校における教育については、前条の目的を実現するために、次の各号に掲げる目標の達成に勤めなければならない。
1.学校内外の社会生活の経験に基き、人間相互の関係について、正しい理解と共同、自主及び自律の精神を養うこと。
2.郷土及び国家の現状と伝統について、正しい理解に導き、進んで国際協調の精神を養うこと。
3.日常生活に必要な衣、食、住、産業等について、基礎的な理解と技能を養うこと。
4.日常生活に必要な国語を、正しく理解し、使用する能力を養うこと。
5.日常生活に必要な数量的な関係を、正しく理解し、処理する能力を養うこと。
6.日常生活における自然現象を科学的に観察し、処理する能力を養うこと。
7.健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養い、心身の調和的発達を図ること。
8.生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸等について、基礎的な理解と技能を養うこと。
第18条の2 小学校においては、前条各号に掲げる目標の達成に資するよう、教育指導を行うに当たり、児童の体験的な学習活動、特にボランティア活動など社会奉仕体験活動、自然体験活動その他の体験活動の充実に努めるものとする。この場合において、社会教育関係団体その他の関係団体及び関係機関との連携に十分配慮しなければならない。
第19条 小学校の修業年限は、6年とする。
第20条 小学校の教科に関する事項は、第17条及び第18条の規程に従い、文部科学大臣が、これを定める。
第21条 小学校においては、文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教育用図書を使用しなければならない。
2 前項の教科用図書以外の図書その他の教材で、有益適切なものは、これを使用することができる。
3 第1項の検定の申請に係る教科用図書に関し調査審議させるための審議会等(国家行政組織法(昭和23年法律第120号)第8条に規定する機関をいう。以下同じ)については、政令で定める。
第22条 保護者(子女に対して親権を行う者、親権を行う者のないときは、未成年後見人をいう。以下同じ)は、子女の満6才に達した日の翌日以降における最初の学年の初めから、満12才に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校又は盲学校、聾学校若しくは養護学校の小学部に就学させる義務を負う。ただし、子女が、満12歳に達した日の属する学年の終わりまでに小学校又は盲学校、聾学校若しくは養護学校の小学部の課程を修了しないときは、満15歳に達した日の属する学年の終わり(それまでの間において当該教育を修了したときは、その修了した日の属する学年の終わり)までとする。
2 前項の義務履行の督促その他義務に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
第23条 前条の規定によって、保護者が就学させなければならない子女(以下学齢児童と称する。)で、病弱、発育不完全その他やむを得ない事由のため、就学困難と認められる者の保護者の対しては、市町村の教育委員会は、文部科学大臣の定める規程により、前条第1項に規定する義務を猶予又は免除することができる。
第24条 削除 
第25条 経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない。 
第26条 市町村の教育委員会は、次に掲げる行為の一又は二以上を繰り返し行う等性行不良であつて他の児童の教育に妨げがあると認める児童があるときは、その保護者に対して、児童の出席停止を命ずることができる。
1.他の児童に傷害、心身の苦痛又は財産上の損失を与える行為
2.職員に傷害又は心身の苦痛を与える行為
3.施設又は設備を損壊する行為
4.授業その他の教育活動の実施を妨げる行為
2 市町村の教育委員会は、前項の規定により出席停止を命ずる場合には、あらかじめ保護者の意見を聴取するとともに、理由及び期間を記載した文書を交付しなければならない。
3 前項に規定するもののほか、出席停止の命令の手続に関し必要な事項は、教育委員会規則で定めるものとする。
4 市町村の教育委員会は、出席停止の命令に係る児童の出席停止の期間における学習に対する支援その他の教育上必要な措置を講ずるものとする。
第27条 学齢に達しない子女は、これを小学校に入学させることができない。 
第28条 小学校には、校長、教頭、教諭、養護教諭及び事務職員を置かなければならない。ただし、特別の事情のあるときは、教頭又は事務職員を置かないことができる。
2 小学校には、前項のほか、必要な職員を置くことができる。
3 校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する。
4 教頭は、校長を助け、校務を整理し、及び必要に応じ児童の教育をつかさどる。
5 教頭は、校長に事故があるときはその職務を代理し、校長が欠けたときはその職務を行なう。この場合において教頭が2人以上あるときは、あらかじめ校長が定めた順序で、その職務を代理し、又は行う。
6 教諭は、児童の教育をつかさどる。
7 養護教諭は、児童の養護をつかさどる。
8 事務職員は、事務に従事する。
9 助教諭は、教諭の職務を助ける。
10 講師は、教諭又は助教諭に準ずる職務に従事する。
11 養護助教諭は、養護教諭の職務を助ける。
12 特別の事情のあるときは、第1項の規定にかかわらず、教諭に代えて助教諭又は講師を、養護教諭に代えて養護助教諭を置くことができる。 
第29条 市町村は、その区域内にある学齢児童を就学させるに必要な小学校を設置しなければならない。 
第30条 市町村は、適当と認めるときは、前条の規定による事務の全部又は一部を処理するため、市町村の組合を設けることができる。 
第31条 市町村は、前2条の規定によることを不可能又は不適当と認めるときは、小学校の設置に代え、学齢児童の全部又は一部の教育事務を、他の市町村又は前条の市町村の組合に委託することができる。
2 前項の場合においては、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の14第3項において準用する同法第252条の2第2項中「都道府県知事」とあるのは、「都道府県知事及び都道府県教育委員会」と読み替えるものとする。 
第32条 町村が、前2条の規定による負担に耐えないと都道府県の教育委員会が認めるときは、都道府県は、その町村に対して、必要な補助を与えなければならない。 
第33条 削除 
第34条 私立の小学校は、都道府県知事の所管に属する。

第3章 中学校
第35条 中学校は、小学校における教育基礎の上に、心身の発達に応じて、中等普通教育を施すことを目的とする。 
第36条 中学校における教育については、前条の目的を実現するために、次の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。
1.小学校における教育の目標をなお充分に達成して、国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと。
2.社会に必要な職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。
3.学校内外における社会的活動を促進し、その感情を正しく導き、公正な判断力を養うこと。 
第37条 中学校の修業年限は、3年とする。 
第38条 中学校の教科に関する事項は、第35条及び第36条の規定に従い、文部科学大臣が、これを定める。
第39条 保護者は、子女が小学校又は盲学校、聾学校若しくは養護学校の小学部の課程を修了した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満15才に達した日の属する学年の終わりまで、これを、中学校、中等教育学校の前期課程又は盲学校、聾学校若しくは養護学校の中学部に就学させる義務を負う。
2 前項の規定によって保護者が就学させなければならない子女は、これを学齢生徒と称する。
3 第22条第2項及び第23条の規定は、第1項の規定による義務に、これを準用する。 
第40条 第18条の2、第21条、第25条、第26条、第28条から第32条まで及び第34条の規定は、中学校に、これを準用する。この場合において、第18条の2中「前条各号」とあるのは第36条各号」と読み替えるものとする。


週刊墨教組 No.1391 2003.1.8

すみだ春秋88
迷子と道草

  せりなずなごぎょうはこべら嬶の座

 なんともイキアタリバッタリだが、オメデタイ迷句。
こんなイイカゲンな吟みぶりをおかしがるのは、『余白句会』の連衆なのだが、はたして、俳号を「道草」となのる作句者は、多田道太郎なのであった。
 とにかく、あっと驚きの『多田道太郎句集』(芸林書房)が出版された。
 総句数は、たったの一三九句。
 まずは、風韻・品格ともそなわった佳吟。

  馬肉鍋いずこの緑野走り来し
  大寒の底を走るや消防車

  あの音はあの世の母の衣かえ
  ブランコに乗せし子の遺影セピア色

 初々しい佳吟。

  そこらの子くちと鼻とにしゃぼん玉
  下着干す妻の鼻唄風光る

 時として、口をひらく記憶の闇。

    戦前学徒動員
  折れ釘や外套生死吊るされて
  冬の川波を乱しつ焼夷弾

*

  犬一匹連れて引越し貨物船
  川湯にて月を仰がん辻征夫

 「貨物船」とは辻征夫の俳号である。
 多田と辻は、「ひょろひょろ、よろよろという感じ」で、「毅然たる卑俗を貫いて」いたので、とてもうまが合ったらしい。互いにほほえましいほど敬愛しあっている。
 多田が住む宇治に、『余白句会』の連衆が遊行したおり、辻ははぐれて迷子になってしまう。
 多田は、それを句にしている。

  辻征夫迷子
  迷子札征くことかたし百日紅

*

 辻は、「枕橋を通って」というエッセイで、つぎのように記している。

 「私どもの心の中にある隅田川は、いまもなお西から東に渡る川なのである。隅田川を歌った詩歌はいくつもあるが、最も現代的でありながら同時に古代的でもある大岡信の『心にひとかけらの感傷も』と題された詩は、この辺のことを美しく苛烈に歌って余すところがない。この詩をはじめて読んだとき私は、生まれ育った隅田川の東岸にいながら、詩を読む自分は西岸のはるか向こうにいて、川をわたって行く男の背中を見ていることを感じた。このとき二十何歳であったか、あるいは三十歳を出ていたか覚えていないが、詩歌に深入りして、そろそろ〈こころはここにない〉者になりはじめていたらしい。

  心にひとかけらの感傷も持たないやつが
    冬の隅田川を渡ってゆく
      愛もなく
        鳥もいない宇宙に向かって

  心にひとかけらの勇気も持たないやつが
    肺をタールでいっぱいにして  
      子供の首を洗っている
        絶望的な夕陽の溢れる隅田川で 」

 〈こころはここにない〉者は、地上では、すぐに道に迷ってしまう。
 〈こころはここにない〉抒情詩人として、まっしぐらに疾走する途上にあって、辻征夫は、二〇〇〇年一月一四日に急逝したのだった。

  臍噛むか思い出すべて遠花火 道草

 (長谷川政國)


週刊墨教組 No.1390 2002.12.19

教育基本法「改悪」に反対する―六―

「不当な支配」
 前回は、「公共」とは、「社会や国」の同義として定義されていることを、中教審中間報告の文言を参照して指摘しました。
 なによりもまず、「公共」が優先され、個人は背景に追いやられています。
 国家を唯一の価値の基準として、まっしぐらにつきすすんだ戦前の教育は、国家至上主義的で全体主義的なものに陥るほかありませんでした。
 戦前の教育は、国家による教育行政の不当な支配によって、無残に蹂躙されたのでした。
 その痛苦の反省にたって、現行教育基本法は成立したのです。とりわけ、「不当な支配」への不服従を唱えた第十条には、その精神は脈々と息づいています。

第十条 (教育行政)教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。
A 教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。

 佐藤秀夫は、『教育基本法はどんな法律か』の中で、次のように語っています。(『世界』十一月所収)

「基本法は、細かな教育実践の中身には触れていません。それは前文でも謳っている通り、日本国憲法と密接な関係にあり、憲法同様権利を保障するものなのです。教育のあり方や民主的な教育のあり方を保障する。子どもや教師の権利を保障する。そういう憲法的な性格、準憲法的な性格があります。これを改悪されますと、保障が消えてしまう。
 例えば、第十条の第一項「教育は、不当な支配に服することなく」というのは、教育の中立性を守る保障です。特に行政が権力行為として教育を思うがままに扱うことに対する保障措置です。何からの「不当な支配」かといえば、明らかに教育行政からなんです。戦前の教育行政が不当な支配でしたから、それをチェックする。
 昔は、反日教組のために、自民党がこの条項を使っていた。ところが、最近は文部省・文部科学省のやっていることが不当な支配だと国民的には思われがちだから、そういう言葉はなくしたほうがいいと、改悪の標的になっているようです。」

第十条の見直し
 二〇〇一年十一月二六日、文部科学大臣遠山敦子が、中教審に諮問した文書には、次のような文言があります。

「第四に、教育行政(第十条)については、教育が不当な支配に服してはならないとの原則を維持しつつ、教育振興基本計画の在り方とともに、国、地方公共団体の責務について、その適切な役割分担を踏まえて、教育施策の総合的・計画的な推進が図られるよう、明確にする観点から検討する必要があると考える。」

 中間報告では、この箇所に対応して、詭弁とも言える詐術を弄した小賢しい、つぎのような作文をしています。

「(3)国・地方公共団体の責務等
教育行政の在り方については,現行法は,教育は不当な支配に服してはならないとの原則とともに,教育行政は「必要な諸条件の整備」を目標として行われなければならないことを定めている。前者については,重要な教育の基本理念として今後とも大切にしていく必要があると考える。また,「必要な諸条件の整備」の内容に関しては,その解釈について過去様々な議論が行われたが,既に判例により解釈が確定しているという経緯を踏まえ,国,地方公共団体の責務を含めた教育行政の基本的な在り方を示すという新しい視点から規定することが適当と考える。
 さらに,教育基本法に規定された教育の基本理念・基本原則を実現する手段として,教育の振興に関する基本計画の策定の根拠となる規定を,他の基本計画の規定例を参考にして教育基本法に位置付けることが適当と考える。なお,教育振興基本計画の基本的考え方については,第3章で述べることとする。」

 「教育は不当な支配に服してはならないとの原則」については、「重要な教育の基本理念として今後とも大切にしていく必要があると考える」なぞと、もってまわった言い回しで、融通無碍に曖昧にしてしまいます。しかし、「国の責務」(またしても国!)という本音は、忘れることなく、ちゃっかりと強調しています。なんとも巧妙な手口です。だが、見苦しい、下心の見えすいた官僚的悪文の典型です。

教育振興基本計画
 「国・地方公共団体の責務等」という項目に、強引に分類されて潜りこんだ、おおむね五年間で実施しようとする「教育振興基本計画」とは、いったい、どんなものなのでしょうか。
 中間報告では、つぎのように記されています。

「第三章 教育振興基本計画の在り方について
三 教育振興基本計画に盛り込むべき施策の基本的な方向
(1)国民から信頼される学校教育の確立
@一人一人の個性に応じてその能力を最大限に伸ばす教育の推進

(5)優れた教員の養成・確保
○ 使命感と能力を備えた教員の養成と確保
○ 教職員の指導力,専門性の向上
○ 新たな教員の評価システムの導入
○ 不適格な教員に対する厳格な対応
○ 学校教育における幅広い人材の活用の促進
○ 義務教育費国庫負担制度の見直し
○ 公立学校の教員給与制度の見直し
○ 教員配置に関する市町村の権限と責任を拡大する観点からの教職員定数の在り方の弾力化

(7)保護者・住民に信頼される学校づくり
○ 学校の評価と情報提供の推進
○ 学校におけるマネジメント体制の確立と責任の明確化
○ 学校運営に対する保護者や地域住民の意向を反映させるシステムの確立
○ 安全な学校づくりと子どもの心のケアの充実

二 豊かな心をはぐくむ教育の推進
(1)豊かな心の育成,自立心の育成
○ 道徳教育の充実
○ ボランティア活動や自然体験活動などの奉仕活動・体験活動の推進
○ 情操をはぐくむ教育の充実
○ 子どもの読書活動の推進
○ 暴力行為,いじめ,不登校への対応等生徒指導の充実

(2)「公共」に主体的に参画する意識や態度の涵養
○ 国家・社会の形成者としての資質を養う教育の充実
○ ボランティア活動や自然体験活動などの奉仕活動,体験活動の推進(再掲)
○ 道徳教育の充実(再掲)

(3)日本人のアイデンティティと国際性の育成
○ 我が国の歴史,伝統,文化等に関する理解と愛情を深め,他国の異なる歴史,文化等を理解し尊重する態度の育成
○ 郷土や国を愛する心をはぐくむ教育の推進
○ 国際理解教育の充実
○ 文化財を活用した教育の推進
○ 学校及び地域における文化芸術に関する学習や体験活動の充実

四 グローバル化,情報化等社会の変化に的確に対応する教育の推進
(1)教育の国際化の推進
○ 国民全体の一定レベルの英語力の達成,国際社会で活躍できるコミュニケーション能力の向上
○ 英会話活動の推進等小学校の英語教育の充実,中学・高等学校・大学における具体的な目標と一貫した指導方法に基づく英語教育の充実
○ 留学生交流の推進
○ 我が国の歴史,伝統,文化等に関する理解と愛情を深め,他国の異なる歴史,文化等を理解し尊重する態度の育成(再掲)
○ 国際理解教育の充実(再掲)
○ 海外子女や帰国・外国人児童生徒の教育の充実」

 いままでも、様々な教育関連の下位法によって、上位法である教育基本法が蚕食される、法の下剋上という情況はありました。もし、教育基本法の改悪を許すなら、権力は、大手を振って、上位法に従えと牙をむくことは明らかです。
 教育振興基本計画の容赦ない凄まじさが、そのことを物語っています。


2002年度女性部教研集会
日時  2003年1月9日(木)

午後2時半開会〜4時40分まで
場所  すみだ女性センター「すずかけ」
内容 授業実践紹介
「やってみよう女と男の自立のための授業」
 講演 「男女平等共同参画社会に向けて」
      講師  清水 澄子さん

 今回は、戦後の日本女性解放運動を切り拓いてこられた、清水澄子さんをお呼びして、男女平等共同参画社会に向けて、今、どのような法的整備がなされているか、基本法を始め、条例などが生まれてきた背景の解説と今後の課題などについて伺います。長年の運動の中で、法を作る側としてのご活躍の様子などがお聞きできるものと思います。また、私たち、学校現場にいる者として、両性の自立・平等を目指す教育の実現に向けての提言もしていただければと思います。
 勤務時間・研修問題、そして教育課程の時数確保が厳しく言われる中での
開催ですが、皆さんの力で、元気な2003年のスタートを切りたいと思います。
どうぞ今から、ご準備ください。


教育基本法の改悪は
もうひとつの有事法制です
中教審の中間報告に反対の声を!
最終答申を許さないたたかいを!
12.23  集会
なかのZERO小ホール中野駅南口徒歩7分
「中間報告を批判する」 
岡本厚さん(雑誌「世界」編集長)
市民・労働者・教職員組合・都議会議員・国会議員からの報告


週刊墨教組 No.1389  2002.12.12

労使間の問題に議会が介入
  都教委圧力に屈し、「時間内組合活動の見直し」強行
単組の機関会議を一切認めず
  組合活動の解体を許さず、墨教組運動を守り抜こう

 都教委は、十一月二十二日、これまでの経緯と実態を無視して、一方的に「時間内組合活動の見直し」案(資料)を教育七組合に対し提案し、「合意できない時は、議会でどうなるかわからない」と強硬に合意を迫りました。
 これを受け、各組合は今回の提案の不当性を追及し、特に東京教組は支部(単組)の機関会議を重点に交渉を強化しました。しかし、都教委の強硬な姿勢を崩すことができず、資料の内容で「ながら条例」改悪案が十二月都議会に提案されます。
 今後、組合活動が大はばに制約されることが予想されますが、団結を強固にして、何としても墨教組運動を守り、労働組合としての機能と責任を果たしていきましょう。

資料
時間内組合活動の見直しについて(案) 平成14年11月22日
職員が勤務時間中に給与を受けながら行うことができる職員団体のための活動の範囲については、下記の通り見直す。
1 職員が勤務時間中に給与を受けながら行うことができる職員団体のための活動は、適法な交渉のみとする。
2 職員団体の機関運営のうち、交渉と一体と看做し得る必要最小限の機関運営については、適法な交渉に位置づける。
3 東京都教育委員会が承認する時間内組合活動の範囲は、適法な交渉の範囲として認められる職員団体活動の範囲を、以下の観点から絞り込んだものとする(別紙の通り)
 (1) 職員団体活動のために授業に影響があってはならないこと
 (2) 学校は、児童・生徒の教育を行う場所であり、教職員が現場を離れることは必要最小限でなければならないこと。
 (3) あくまでも「適法な交渉」の存在、実態が前提となること。
4 昭和45年6月30日付45教人職発第152号教育長通達「勤務時間内における職員の服務について」は廃止する。
5 実施時期は、平成15年4月1日とする。
    本     部   支   部  分  会
団体交渉
小委員会交渉
処理委員会
事務折衝
支部交渉
事務折衝
分会交渉
事務折衝
予備交渉 予備交渉 予備交渉
大会(学校の休業日に限り、年1回:1日)
本部委員会(年3回:1回4時間以内)
執行委員会(週1回:1回4時間以内)
なし なし
[注] @ 給与改定交渉期間の取扱いについては、処理委員会において労使間で確認する。
   A 小規模の職員団体については、本表の範囲内で別途定める。
   B 都労連の取扱いについては都庁職に準ずる。

石原都知事を告訴
―「石原都知事の『ババァ発言』に怒り、
謝罪を求める会」の新たな動きに注目―
その後、どうなったのか、と気にかけていらっしゃった方も多いと思います。石原都知事に対して、四七七名の連名による公開質問書の回答期限は七月十五日でしたが、予想どおり、回答はありませんでした。予想どおりとは、悲しいことですが、都民の声を聞くといいつつ、自分に都合の悪いことには耳をふさいでしまうこれまでのやり方を考えれば予想通りということになります。やっても無駄?どうせそうでしょう。と諦めてしまってはおしまいです。
 「生殖能力亡き者は生きる価値なし」と一度ならず、二度まで、しかも、都知事の名において、多数の人が目にする週刊誌上で、そして福祉会議という公の場で、卑怯にも松井教授が言っていたと、人の言葉を借り責任転嫁しながら言ったのです。しかも松井教授は、そのような意味で言ったのではなく、人間の文化の伝授者として、他の生物には見られない「おばあさん文化」を紹介する言い方だったのです。それを曲解して引用し、さらに深沢七郎の「楢山節考」を引用して、作品では、男女を問わず、老人が貧しさ故に捨てられる様を悲しみをもって書かれているにもかかわらず、都知事は都議会の答弁で老女だけが捨てられて当然だったかのような勝手な解釈をして自説の正しさの証明に使ったのです。小金井の市議会では、都知事に対して謝罪要求の決議を挙げました。でも、残念ながら、この件について、追及しようというマスコミがあまりにも少ないのはなぜなのでしょう。追及すると例のごとく頭ごなしに怒鳴られたりすることを恐れているのでしょうか。情けないではありませんか。
 というわけで、「・・謝罪を求める会」では、損害賠償請求民事訴訟と日弁連への人権救済申し立てをすることになりました。そして、十一月四日、お年よりの原宿といわれている巣鴨で、二ヶ所に分かれて、情宣活動が行なわれました。石原都知事の発言を知らなかった人が多いことにさもありなん(マスコミはあまり取り上げないのですから)と思いながら、説明するとその反応のすごさにびっくり。自分から石原知事への日頃の怒りを訴える人もいて、二時間で三千枚のチラシが受けとられました。まず、知らせることがいかに大切か、当然のことですが、改めて感じました。
 さて、私がなぜこの動きに注目し、協力し、みなさんにご紹介し続けるか、というと、今回の知事の発言そのものが許せないことはもちろんですが、私たちの職場を見ると、まるでミニ石原気取りの管理職があまりにも多くなっていることに憤りを持つからです。三年前に「管理規則」が変えられ、管理職のリーダーシップが強調されるようになりました。しかし、リーダーシップとは、区教委も確認しているように、一人一人の意欲をいかに引き出し、活気ある職場作りをするかということであり、「自分が何でも決めて、それに従え」というのは、リーダーシップではありません。むしろ独裁者というべきです。しかし、石原都知事の乱暴な言動を真似るかのような管理職の言動があちこちから聞こえてきます。
・「五十代の人が多いので異動して欲しい。」と、まだ現職場にいられるし、いて頑張りたいと思っている人への、面接での校長の言葉。五十代の男の人には異動要請をしないのかと聞くと、「男は必要だ。」と答えたとか。今回の石原発言に通じるものを感じませんか。
・「あなたは、この学校に合わないように思うので、異動希望を出したらどう?」と、自分に批判的な人への異動の薦め。そして、筋を通して物言う教員に対して、「あなたは、何でも文句を言うのね。」と、独断で運営しようとすることへの疑問を文句としか受け止められない情けない管理職。論議や批判なき職場に、活気など生まれるはずもありません。
・職員に対しては、勤務時間を必要以上に厳しく管理する(休憩をきちんと取れない状態をどう考えているのでしょう)くせに、休暇でも出張でもなく、時間内にふらりと居なくなってしまう管理職もいます。区教委はご存知でしょうか。チェックしましょう。
・「私が決めるのです。私が校長です。」と言いながら、子どものことで相談に行ってもうるさいといわんばかりの無責任な対応。社会科見学に管理職がどちらも行かず、挙行報告に書かなくていいのかといわれ、区教委にしかられるといけないからとあわてて二人で相談し、管理職が行くことにはなったものの、途中で交代という前代未聞の引率劇。
 こうした例はほんの氷山の一角でしょう。しかも、今後、主幹制度が本格導入されれば、(すでに主幹気取りの人もいるようですが・・)どうなることやら。東京都は、文科省の先取り的な教育政策をとっています。その先頭に立って指揮している石原都知事の言動は、大きな影響力があるのです。人権侵害・不当労働行為、さらに労働基準法・教育基本法などに抵触するような、知事や管理職の言動を放置してはならないと思います。教育とは、人を大切にする仕事です。その現場で起きていることをもっともっと敏感にとらえ、しっかり対応していくことの大切さを、大きくいえば、日本の民主主義はまだ健在なのか、ということを石原知事への抗議によって検証していきたいと思います。
 皆さんからたくさんの署名をいただきました。さらに、ハガキによって自分の思いを訴えてください。そして、誰でも、訴訟の原告・人権救済申し立て人になることができます。そのことで万が一、不利益な扱いをされるようなことがあったら、「事務所を挙げて闘います」と、東京教組の顧問弁護士からの、熱い声援もあります。原告は、ちょっとという人はサポーターになってください。詳しくは、私宛にお問い合わせを。
 頑張るぞーーーっ!

 2003年
子どもの権利条約カレンダー

月毎に世界各国の子どもの写真
墨田教組名入り
電話・ファックス番号入り

分会に1部ずつお届けします。
分会で活用してください。
なお、ご希望の方には一部千円でお分けします。


週刊墨教組 No.1388  2002.12.6

教育基本法「改悪」に反対する―五―

公聴会ではない 「一日中央教育審議会(東京)」
 十一月十四日、教育基本法の見直しを検討してきた文部科学相の諮問機関、中央教育審議会が中間報告を行いました。
 ところで、中間報告に対する国民の意見を聴く機会として、「一日中央教育審議会」(公聴会)が全国五ヶ所(東京、福岡、福島、京都、秋田)で開催されることになっていますが、十一月三十日、はじめての「一日中教審」が、東京ビッグサイトで開かれました。
 十人の意見発表がありましたが、中間報告にある「男女共同参画」への批判があいつぎました。
 意見発表の応募者総数は、八十六人。審議会事務局の文科省は「賛否のバランスを反映させた」としていますが、密室での偏った不透明な人選であることは明らかです。

居丈高な鳥居泰彦会長
 心に残る発表もありました。青木茂雄さん(高校教員)は、情理をつくして現行教基法の大切さを熱く訴えました。小貫大輔さん(自営業)は、国を愛することをルールのように押しつけてはならないことを、わが身に照らして静かに語りました。古山明男さん(私塾主宰)は、不勉強な委員たちに、精神が自由であるために、田中貢太郎『教育基本法の理論』を繙くことをすすめました。
 十人の意見発表の後、中教審委員と意見発表者との質疑応答がありました。司会をつとめたのが鳥居泰彦会長です。彼は、他人の意見に虚心に耳を傾けて聴くということが、全くできません。
 彼は、レーガン、サッチャーが行った新自由主義による教育改革を、日本もならって行わなければならないと鸚鵡返しにくりかえすばかりです。
 居丈高に参会者にレクチャーしてでもいるつもりなのです。自分をよほどエライと錯覚している醜悪な光景に、会場から不満の声があがれば、進行係の文科省課長某は、「警察を呼んでください」とくる。
 これは、いかなる意味でも、公聴会などとよべるしろものではありません。
 中教審よ、もっと謙虚であれ。

「公共」に隠されているもの
 栗原祐幸元防衛庁長官は、「基本法改正の焦点は、『伝統、文化の尊重』の文言を入れるかどうかのようだ」と的確に指摘し、「愛国心」は教基法になじまないと発言しました(朝日新聞十二月一日朝刊)。
 「伝統、文化の尊重」「国を愛する心」をめぐっては、中教審素案(資料2、週刊墨教組一三八五号所収)を批判しました。中間報告では、左の資料3のように成文化されました。
 キーワードは、「公共」です。九十年代に入って流通した「公共」という言葉は、「公」ほど手垢にまみれたマイナスイメージが付加されていません。そこがミソであり曲者なのです。ゴシック体傍線部分にあるように、「公共」とは「社会や国」の同義として定義されています。ゆめゆめ騙されてはなりません

資料  中教審中間報告より

4「公共」に関する国民共通の規範の再構築
(「公共」に主体的に参画する意識や態度の涵(かん)養の視点)
人は,一人だけで安全に生きていくことができるものではない。自らの生命や自由を守り,幸福を追求するためには,個人が集まり,その信託によって社会や国という「公共」を形作り,それを通じて自らの安全や権利を享受できるようにすることが必要なのである。そして,このような「公共」を作り,維持することができるのは,その構成員であり主権者である国民一人一人であって,ほかのだれでもない。
このことを踏まえ,21世紀の国家・社会の形成に主体的に参画する日本人の育成を図るためには,政治的教養(政治に関する知識や判断力,批判精神など)に加えて,国や社会など「公共」に主体的に参画したり,共通の社会的なルールを作り,それを遵守する義務を重んずる意識や態度を涵養することが大切であり,個人の尊重との調和を図ることが重要である。また,地球環境問題など,国境を越えた人類共通の課題が顕在化し,国際的規模にまで拡大している現在,互恵の精神に基づきこうした課題の解決に積極的に貢献しようという,新しい「公共」の創造への参画もまた重要となっている。

(日本人のアイデンティティ(伝統,文化の尊重,郷土や国を愛する心)の視点,国際性の視点)
国際社会を生きる教養ある日本人として,自らが国際社会の一員であることを自覚し国際社会に貢献しようとする意識とともに,自らのアイデンティティの基礎となる伝統,文化を尊重し,郷土や国を愛する心を持つことが重要である。そして,このような自らの国を愛し,平和のうちに生存する権利を守ろうとする国民一人一人の思いが,我が国だけではなく,同じ思いを持つ他国の人々も尊重しなければならないという国際的な視点に通じるものとなる。しかしながら,教育基本法には,このような視点が明示されていない。
また,「公共」に主体的に参画する意識や態度の涵養を図るためにも,国や社会,その伝統や文化について正しく理解し,愛着を持つことが重要である。

(3)社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神,道徳心,自律心
○ これからの教育には,個人の尊重とともに,「個人の尊厳」を確保するうえで不可欠な「公共」に主体的に参画する意識や態度を涵(かん)養することが重要である。我が国がより成熟した民主国家となるためには,国民が国家,社会の一員として,自他の権利をより尊重する上で重要な法や社会の規範の意義や役割について学び,国家,社会を主体的に形成していく意識,能力を高めていく必要がある。このため,社会の一員としての使命,役割を自覚し,自らを律して,その役割を実践するとともに,社会における自他の関係の規律について学び,身に付けるなど道徳心や倫理観,規範意識をはぐくむことが求められている。また,互恵の精神に基づき我が国社会や国際社会が直面する様々な課題の解決に貢献しようとする,新しい「公共」の創造に主体的にかかわろうとする態度の育成も重要である。

(4)日本人としてのアイデンティティ(伝統,文化の尊重,郷土や国を愛する心)と,国際性(国際社会の一員としての意識)
○ グローバル化が進展する中で,これからの時代には,国際社会の一員として生きる国際人としての自覚とともに,世界に生きる日本人としてのアイデンティティを持つことがますます重要になる。国際社会に出ていけばいくほど,自らを日本人として意識する機会が増え,自国の存在について無関心でいることはできず,国際社会における自国の地位を高めようと努力することは自然な動きである。このような思いが,国を愛する心につながるものであり,その前提として,自らの郷土や国について正しい理解を持つこと,例えば郷土や国の伝統,文化を正しく理解し,尊重することが重要となる。
 なお,国を愛する心を大切にすることや我が国の伝統,文化を尊重することが,教育改革国民会議報告においても指摘されているように,国家至上主義的考え方や全体主義的なものになってはならないことは言うまでもない。

はじける芽( 112号)

十一月の指導題目 新しい漢字を使って、自分がしたこと見たことを、一文か、二文の短文で書いてみよう


週刊墨教組 No.1387  2002.11.28

労働組合として機能と責任を果たした都労連
二〇〇二年賃金確定

 賃金確定交渉は、史上初の勧告におけるベースダウンと給与削減措置の取り扱いについて、団交の席上、副知事から「本年三月、私と矢澤前都労連委員長の間で交わした労使合意の重みについては充分に認識しております。加えて、これまで伺ってきた都労連の主張を斟酌いたしますと、今回、平成十五年八月以降に給与削減措置を行う結果となったことは申し訳なく思っています」との謝罪を受け、双方で労使の信頼関係を大切にすることを確認し、次の内容で妥結しました。
・都人勧で示されたベースダウンは、二〇〇三年一月から実施する。
・給与削減措置についてはベースダウンの実施にあわせて、その削減率を二%に縮小した上で、二〇〇四年三月まで実施する。(十二月までは四%削減)
・削減措置は、今後他の内部努力により解消を図るように努める。(今後削減の延長はない) 
・勧告でいう「所要の調整(減額調整)」は実施しない。
・年末一時金は、条例どおり二・一月分を十二月一〇日に支給する。
・三月期の期末手当を〇.〇五月削減し、〇.五月とする。(年間一時金は四・六五月)

人事考課制度検討会(仮称)設置  
 都は、「能力・業績主義の推進」による人事管理の強化を強行してきました。
この「能力・業績主義」は「人事考課制度」に基づいて実施されています。都は「人事考課制度は交渉事項ではない」と主張してきました。都労連は、人事考課制度については、職員の理解と納得の得る労使協議が不可欠の前提であることを強く求めました。その結果、人事考課制度検討会(仮称)設置し、協議の場で人事考課制度の仕組みや評定結果にかかわる苦情相談のあり方などを中心に論議していくことになりました。検討委員会の設置を都が譲歩した訳ですが、都の立場はあくまでも「人事考課制度」推進です。その具体化である「定期昇給の見直し」(教員は二〇〇五年度から、他の職種は二〇〇四年度から)や一時金への成績率導入拡大など今後具体化については警戒すると同時に阻止に向けて闘わなければなりません。
 
福祉関連要求
 福祉関連要求に対し、都は「男女共同参画社会の実現と仕事と子育ての両立支援や、母体保護措置の促進」として「子どもの看護休暇」と「妊娠障害休暇」を新設しました。その内容は、資料の通りです。実施時期は二〇〇三年一月からです。 

資料1

普通昇給の見直しについて
1 趣旨
 現在普通昇給は「良好な成績で勤務したとき」に行うことができるものとされているが、能力・業績主義をより一層推進する観点から、その趣旨の徹底を図るため、普通昇給の決定にあたり、職員の業績評価を反映できる方法に切り換える。

2 普通昇給への業績評価の反映
(1)普通昇給の可否の判定
普通昇給の可否にあたって、業績評価に基づき判定する。
なお、懲戒処分の有無、欠勤等の有無による判定は現行どおりとする。
(2)業績評価による判定の方法
業績評価の第一次評定総合及び第二次評定総合がD以下の者
(教育職員(教育庁所管)の場合はC以下の者)は延伸とする。
(3)業績評価による判定の時期
業績評価を実施した直後に普通昇給の可否を判定する。
・評定基準日が1月1日である一般職員の場合は3月末までに
・評定基準日が3月31日であ教育職員(教育庁所管)の場合は6月末までに
(4)業績評価により普通昇給不可となる場合の延伸月数
延伸月数は3月とする。3月延伸後はその他の延伸事由がなければ昇給できる。

3 適用範囲
全任命権者における全職員に適用する。

4 実施時期
平成16年4月1日(教育職員(教育庁所管)については平成17年度から実施)

資料2 妊娠初期休暇の廃止と妊娠障害休暇の新設について

(改正趣旨)女性職員の母体保護措置の促進のため

(改正内容)妊娠初期だけでなく妊娠時の全期間を通して取得可能な休暇とするため、妊娠初期休暇を廃止し、妊娠障害休暇を新設する。

名  称 妊娠障害休暇
服務形態 特別休暇
概  要 妊娠中の女性職員が妊娠に起因する障害のために勤務することが困難な場合における休養として与える休暇とする。
請求手続 母子手帳等を示して請求する。
付与日数 1回の妊娠について1回に限り、引き続く10日以内
取得単位 暦日
給  与 有給
昇  給 今回廃止する妊娠初期休暇と同じ
経過措置 平成15年1月1日現在、妊娠している職員で、当該妊娠中において承認された妊娠初期休暇は、妊娠障害休暇とみなす。
実施時期 平成15年1月1日

資料3 子どもの看護休暇の新設について

名  称 子どもの看護休暇
服務形態 特別休暇
概  要 小学校就学の始期に達するまでの子(配偶者の子を含む。)を養育する職員が、その子の看護(負傷し、又は疾病にかかったその子の世話を行うことをいう。)のため勤務しないことが相当であると認められる場合の休暇とする。
要  件 1 小学校就学の始期に達するまでの子  その子が6歳に達する日(誕生日の前日)の属する年度の3月31日までをいう。
2 子の範囲 職員が養育する実子、養子及び配偶者の子
3 看護の内容 負傷、疾病による治療、療養中の看病及び通院等の世話をいう。後遺障害の機能回復訓練(リハビリ)の介助は含まない。
4 負傷・疾病の内容  軽度や特定の症状に限るものではなく、風邪、発熱等を含めてあらゆる負傷、疾病が含まれる。 なお、負傷、疾病が治った後の社会復帰のための機能回復訓練あるいは、予防注射、予防接種、健康診断等は含まない。ただし、予防注射、予防接種による著しい発熱等の症状が発生した場合はこの限りではない。
5 負傷・疾病の確認  子どもの負傷・疾病の確認については、特段、医師の診断書等の提出を義務付けることはせず、基本的には、任命権者が個別に判断することとする。なお、任命権者が、必要に応じて医師の診断書等の提出を求めることは妨げない。
6 勤務しないことが相当であると認められる場合 勤務しないことが相当とは、子が負傷、疾病により看護の必要があり、かつ職員以外にその子の看護を行う者がいないことから仕事を休まざるを得ないと認められる状態をいう。 したがって、職員以外に子の看護を行う者がいる場合は「相当である」とは認められない。 なお、いわゆる専業主婦(夫)がいる場合には、通常、当該専業主婦(夫)が子の看護にあたるものと考えられるが、当該専業主婦(夫)が入院中等の事情により看護にあたれないような場合もあることから、事情を十分に確認のうえ処理すること。
付与日数 暦年において5日以内
取得単位 暦日(ただし、職務に支障がないと認めるときは半日を単位として承認することができる。半日とは、正規の勤務時間の始め又は終わりの4時間とし、当該半日の2回の承認をもって1日の承認とする。)
給  与 有給
昇  給 影響なし
実施時期 平成15年1月1日

団交発言骨子
 それでは、私から申し上げます。
 初めに、給与削減措置及び勧告におけるベースダウンの取扱いについて申し上げます。
 これまで3年間にわたる職員の協力に、まず、心から感謝いたします。
 本年三月の給与削減措置にかかる労使合意の際、私どもは、当時の社会経済情勢及び都財政の状況等を総合的に検討し、判断をいたしました。
 しかし、三月の時点では、景気の悪化に下げ止まりの兆しが見られ、回復が期待されたものの、その後の景気回復は極めて緩慢であり、秋口以降は、経済環境が厳しさを増し、回復どころか、腰折れも懸念される状況にあります。
 このような状況を受け、すでに当初予算において大幅な減収が見込まれていた都税収入についても、9月末時点で、見込みをさらに下回っており、国の税収動向からすると、来年度についても、今年度に増して厳しくなることが予想されます。
 加えて、本年10月には、人事委員会から1.64%のベースダウンを求める、非常に厳しい内容の勧告を受けました。私どもとしては、平成11年度合意に基づき、勧告と給与削減は切り分けるべきものと整理してまいりましたが、今回、ベースダウンと給与削減をそのまま実施すると、職員にとってはあまりに厳しいものとなります。
 こうした、幾重にも重なる困難な課題にどう応えるか、私どもとしても、苦悩し、思案を重ねてまいりましたが、職場で地道に努力している職員の例月給への影響を考慮しつつ、内部努力としての姿勢を示し続け、都民や都議会の理解を得られるギリギリの内容として、最終的に、以下の内容としたいと考えます。
 まず、勧告に示されたベースダウンについては、平成15年1月1日から実施することといたします。
 次に、現在実施している給与削減措置については、ベースダウンの実施にあわせて、その削減率を、現行の4%から2%に縮小した上で、平成16年3月31日まで実施することといたします。
 また、本年4月から12月のベースダウン分についての、勧告でいう「所用の調整」については、勧告が求める「年間給与で実質的な公民均衡」が図られているとみなし得ることから、内部努力の痛みを分かち合っている職員に配慮し、今回については実施しないいことといたします。
 来年度の人事委員会勧告の取り扱いについては、勧告の内容を踏まえて協議させていただきます。
 特別給に関しては、3月期の期末手当を0.05月削減し、0.50月、再任用職員については0.25月といたします。
 また、教育職の新任用職である主幹の給与制度に関しては、学校職員の給与に関する条例に定める小学校・中学校教育職員給料表および高等学校等教育職員給料表について、勧告に示されているとおり、特二級を設けることといたします。
 その他、諸手当などの取扱いについては、小委員会にてお示ししたとおりです。
 以上の内容で、必要な議案を第4回都議会定例会に提案する準備をいたします。
 また、皆さんから要求のありました年末一時金については、現行の条例、規則どおり、期末手当を1.65月、勤勉手当を0.45月、合計2.10月分を、再任用職員については、期末手当を0.95月、勤勉手当を0.25月、合計1.20月分を、12月10日に支給することといたします。
 職員の皆さんにおかれては、引き続きご負担をお願いすることとなりますが、それぞれの職場で、今後とも、公務能率や行政サービスの一層の向上に努力を払われるよう、改めてお願いいたします。
 公営企業の職員についても、以上の趣旨で各管理者とよく協議してもらいたいと思います。

 次に、一昨年来、皆さんと協議を重ねてきた人事給与制度の見直しにつきましては、小委員会交渉でお示ししたとおり、15年度以降、順次新制度に移行することとしたいと思います。
 人事考課制度については、労使交渉事項ではないとの認識に変わりはありませんが、皆さんの強い要望を踏まえ、より一層信頼される制度の構築に向け、都労連との間に「(仮称)人事考課制度検討会」を時限設置したいと考えております。

 最後に、今回の給与改定交渉について、交渉責任者である私の責任で、一言付け加えさせていただきます。
 本年3月、私と矢澤前都労連委員長の間で交わした労使合意の重みについては、十分認識しております。加えて、これまで伺ってきた都労連の主張を斟酌いたしますと、今回、平成15年8月以降に給与削減措置を行う結果となったことは、申し訳なく思っております。しかし、諸情勢を踏まえ、かつ、職員への影響を合わせて考慮したうえでの、私どもとしてのギリギリの選択であり、どうかご理解いただきたいと思います。
 また、臨時的措置である給与削減については、社会情勢もございますが、今後、さらに他の内部努力に努め、解消を図るよう努めてまいります。
 私からは以上です。

墨田教組教研「ジェンダー・フリー教育分科会」報告

 十一月一日、分科会の中では最後の開催でした。予定していた以上の人数参加者で、ジェンダーに関するいろいろな問題を織り交ぜながら、具体的な授業実践について交流しました。レポーターは、一寺小学校の林さんです。林さんは、今年度から東京教組女性部の自立委員会に参加し、活動しています。ジェンダーについてよくわからなかったが、自立委員会に出ているうちに、そこで交流される実践に興味を持ちやってみようということで五年生の子どもたちと3つの題材を四時間かけて行なった授業報告をしてくれました。
 クラスの子どもたちは、一年生のときから、期待され、その期待に応えられるため賞賛され、という育ち方をしているので、自分たちに、自信を持っている反面、打たれ強さにかけ、自分を深く考えることなく過ごしてきました。このままではいけないと、自分自身を振り返らせ、自分と他人との違いに気付かせ、違って当然、違うことを尊重し合えるような子どもたちに育てたいという願いから授業は組まれました。
 東京教組自立委員会が作成した「やってみよう女と男の自立のための授業」の本を使い、「bTうちの子だれだかわかりますか」「 あなたってどんな人」「 自分のことをあててもらおう」をアレンジして授業をしました。学校公開の時間を使い、保護者の参観の中、2時間かけて、まず、 の授業から始めました。授業に入る前、林さんは自分だったらどうだろうかと、自分についての省察をしてみます。そして、三十以上の自分紹介項目を作成し、子どもたちに例示して学習をスタートさせました。
 林さんの熱意と努力には、参加者一同感服です。やってみると、○○が好き、○○を習っているというような表面的なことに目が行き自分の性格的なことを考えることができないことに問題を感じますが、授業を通して、客観的に自分のことを考えられる子は、自分のことをたくさん書けることに気付きます。できあがった作品を自分紹介の詩と一緒に見せてもらいましたが、とても興味深い授業展開だということがわかりました。
 こうした授業は、男や女という性別ではなく、ひとりひとりの子どもが「自尊感情」を高めあい、それぞれを尊重しあうということでは、とても大切な学習です。林さんは、学校全体では、混合名簿や朝会での並び方の混合、運動会競技の混合など進んでいるが、これからどのように授業展開をしていけばよいか悩んでいるとまとめられました。他の参加者からも同じ本を使った授業実践の事例が出され、養護教諭の染谷さんからは、墨田女性センターの研修会に参加して、従来行なっていた「性の教育」の内容を新たに修正した学年別年間計画をいただき、収穫の多い研修会になりました。
 墨田区では、今年から、全校で三公文書を両性混合にするようにという通知を出しましたが、未だ、実施されない学校もあります。通知以前から混合実施をしていた学校では、更に一歩進んだ実践の展開が期待されます。これからも、ジェンダー・フリー分科会では、こうした実践の交流を大切にしていきたいと思います。

 ご紹介
「やってみよう女と男の自立のための授業」
   東京教組自立委員会作成
   一部七百円  
 すでに多くの方に購入していただきましたが、ジェンダー・フリー分科会で実践交流に使用しました。全体を4つの分野に分け「自尊感情を育てるために」で十二の授業案、
「ジェンダー・フリ―教育を進めるために」で十三の授業案「生の教育を進めるために」で十の授業案「セクシュアル・ハラスメントを防止するために」で六つの授業案が紹介されています。毎日の授業にすぐに役立つ授業案集です。まだお求めでない方は、この機会にぜひ購入してください。職場の人たちに広く薦めましょう。
 お申し込みは、組合事務所までファックスでお願いします。
二〇〇二年十一月二日

stop! 有事法制
12.1大集会
12月1日(日)15:00開会
代々木公園サッカー場
よびかけ
陸・海・空・港湾労組20団体
平和をつくり出す宗教者ネット
平和を実現するキリスト者ネット


週刊墨教組 速報版 2002.11.19

11.19統一行動は中止

都労連 苦渋の選択
年末一時金 二・一月分十二月十日に支給(条例どおり)
W削減 部分的に阻止!
マイナス人事委勧告は十二月まで凍結
給与削減措置、削減率を二%にして再々延長
定期昇給への業績評価の導入?
特2等級(主幹職給料表)新設糾弾!

二〇〇二年度の賃金確定交渉は、史上初の俸給表のマイナス改定と四%の賃金カットのW削減、「減額調整」、四%カットの再々延長、「定期昇給」への業績評価の導入等「総人件費削減」を主張する都に対し、年間四〇万円近くの給与減を何としても阻止しようとする都労連側との鍔ぜり合いの中で、きわめて難航しました。  
 しかし、十八日夜十時三十分から開かれた都労連委員長と副知事との会談で、事態打開のため、長年にわたり築き上げてきた労使の信頼関係を前提に解決することで合意に達し、十九日未明に団体交渉が行われました。
 都側の最終回答骨子は次の通りです。
・人事委勧告は十二月まで凍結、二〇〇三年一月から新給料表で実施
・給与削減措置十二月まで四%カット、二〇〇三年一月から削減率を二%にして
 二〇〇四年三月まで継続
・定期昇給へ業績評価を導入する
  教職員には二〇〇五年度から導入(他の職種は二〇〇四年度導入)
 「(仮称)人事考課制度検討会」を設置する
・年末一時金、条例どおり二・一月分、十二月一〇日に支給
・期末手当、四年連続削減
三月期末手当で調整(〇・五五→〇・五〇月 結果、年間一時金合計は四・七月→四・六五月)
・特2等級(主幹職給料表)新設
・子どもの看護休暇新設、有給五日以内、半日単位で取得可、対象は就学前児童
・妊娠障害休暇全期間を対象に拡大

W削減部分的に阻止、給与削減措置は再々延長
 都は、都議会の圧力に屈して都労連との約束を破り、今年度八月から来年度七月まで給与の四%削減を実施しています。削減措置を考慮すると、都の職員の給与は民間給与より低くなります。都は当初、四%削減措置とマイナス人事委勧告は別のものと主張し、いわゆるW削減を実施する姿勢をくずしませんでした。しかし、都労連の「W削減では民間給与と均衡しない」との主張を都は部分的に受け入れ、人事委勧告は十二月まで凍結し、給与四%削減を十二月まで、一月からはマイナス給料表(平均一・六四%、教員は一・九%)を実施する、また給与の削減について、削減率を二%に変更し、二〇〇四年三月まで再々延長することで妥結しました。極めて不満な内容といえます。この背景には、労使で妥結しても、「給与改定は条例事項」として不当にも議会(自民党、公明党)が容認しないことが想定されることがあります。
          
減額調整断念は当然
 都人勧では、「実質的な公民均衡が図られるよう、人事院勧告の趣旨を考慮して、所要の調整を行うこと」とし、国家公務員と同様に不利益を遡及すると述べています。このことについて都は、「年間給与で実質的な公民均衡が図られているとみなし得ることから実施しない」と回答しました。給与削減措置が実施されているのでこの回答は当然のことです。

「成績主義」の強化=「人事給与制度の見直し」
 都は、「能力・業績主義の推進」による人事管理の強化を企図してきました。都労連は、その実施については、「能力・業績主義」の基になる「業績評価」について、労使協議の対象にすることが前提であると主張してきました。今回都は、「人事考課制度は交渉事項ではない」との立場を堅持しつつも、「人事考課検討会」を時限設置し、「業績評価等」のありかたについて協議していくことを明かにしました。前提がまがりなりにも成り立つことになりました。
 今年度、具体案として都が強く主張しているのは、「定期昇給への業績評価導入」、「成績に基づかない特昇、例えば表彰時特昇」、「一時金への役職加算」の見直し、「任用制度」見直し(行政職に関係することが多い)があります。今後具体化については警戒すると同時に阻止に向けて闘わなければなりません。 



週刊墨教組 No.1386  2002.11.7 

都労連、十一月十九日に
        二時間ストライキを配置して闘う

 ダブル削減を許すな! 成績率導入阻止! 減額調整反対!

 不利益不遡及の原則を守れ! 「特2級」新設反対!

 二〇〇二年度の賃金確定交渉・闘争が始まっています。
 都は、「財政再建プラン」に基づく、「財政構造改革」は着実に進んでいると言いつつ、一方、二〇〇三年度予算編成にあたっての「財源不足」を強調し、給与の四%カットの再々延長を提案しようとしています。また、給与の四%カットは、人事委勧告とは分けて考えるとして、「マイナス勧告と四%カット」の両方を私たちに押し付けようとしています。
 こうした都の姿勢に対し、都労連は「ダブル削減」は断じて認められないことを基本に交渉を強化しています。
 東京教組も、先日の批准の成功を受け、十一月十九日に早朝行動を配置し、都労連と連帯して賃金確定闘争を闘うことを十一月七日の戦術委員会で決定しました。

ダブル削減を許すな!
 そもそも給与の四%カットは、労働基本権制約の代償措置である人事委勧告を事実上「棚上げ」し、「財政再建団体転落の危機」を回避するべく、その「臨時的方策」として、二〇〇〇、二〇〇一年度の二年間の「四%の給与削減措置」を労使合意し、「財政再建」に組合が協力したものです。二〇〇二年三月で、給与の四%削減措置は終了することが合意内容でした。
 しかし、約束を守るべき都知事の無責任な対応、都議会の労使合意事項への介入で、再度の労使交渉を余儀なくされ、二〇〇二年八月から、二〇〇三年七月までの四%削減を再延長することで妥結しました。私たちの収入は確実に減少しました。しかし、今回の人事委勧告は、四%の削減を考慮しない内容になっています。また、都側は四%削減とマイナスの人事委勧告を「分けて考える」と主張し、「ダブル削減」を事実上押し付けようとしています。さらに、四%削減の再々延長を提案しようとしています。
 こうした都側の態度は、職員の協力を足蹴にして、これでもかこれでもかと追い打ちをかける不当極まりないものです。断じて認めることはできません。

不利益不遡及の原則を守れ!
 今回の勧告内容は、俸給表のマイナス改定です。行政上の扱いでは、不利益は遡及しないのが原則となっています。だから勧告では、「引き下げ改定であるため、遡及することなく、条例公布日の属する月の翌日から実施する」と述べています。
 一方、「実質的な公民均衡が図られるよう、人事院勧告の趣旨を考慮して、所要の調整を行うこと」として、国家公務員と同様に減額調整措置の実施を示唆しています。減額調整措置が実施されるなら、さらなる賃金カットであり到底認めることはできません。

差別賃金=定期昇給への
      「成績主義」導入反対

 業績評価による成績主義は、学校現場に競争原理を導入し、それを通じて管理強化しようとするものです。「業績評価」は、最終的に「S、A、B、C、D」の五段階相対評価になります。つまり、職員個々を競い合わせる管理方式です。このことは、職場での協力・共働を破壊するものとして作用するがゆえに、私たちはその導入に対し強く反対してきました。
 勤勉手当への成績率は、今年度から係長職まで導入されています。その適用範囲の拡大が昨年度からの引き続き協議事項になっています。都は職員全体にその適用範囲を広げようとしています。
 また、今回、都は普通昇給=定期昇給の決定にあたり成績主義を導入することを、具体案で都労連に示しました。その内容は、「業績評価の第一次評定総合及び第二次評定総合がD以下の者(教育職員の場合はC以下の者)は昇給を三月延伸する」となっています。不透明な、開示もできない業績評価で昇給を決めるというのです。
 普通昇給は、定期昇給という性格をもっています。現行の給与制度の中では、給料表の構成からして、経験や年功に対するものと考えられており、日本の給与制度として定着しています。「能力・業績主義」と連動させることは自体無理があります。
 何としても阻止しなければなりません。
 


週刊墨教組 No.1385  2002.10.25

教育基本法「改悪」に反対する 四

中教審素案
 教育基本法の見直しを検討してきた文部科学相の諮問機関、中央教育審議会が中間報告の素案をまとめました。
 十月十七日の中教審基本問題部会には、この素案が示されました。二十四日の基本問題部会での議論も経て、三十日の総会で、ほぼこの内容が承認され、中間報告となります。
 さらに、国民の意見を聴く機会として、「一日中央教育審議会」(公聴会)を全国三ヵ所(東京・京都・福岡)で開き、年明けにも最終答申を出し、次期通常国会では、「改正案」を上程しようとしています。
 ところで、『中間報告各章の構成(案)』は、「序章」「第一章 教育の課題と今後の教育の基本的方向について」「第二章 新しい時代にふさわしい教育基本法のあり方について」(資料1)「第三章 教育振興基本計画の在り方について」から成っています。

声高に叫ばれる「真の愛国心」
 資料1のゴシック部分は、素案では、さらに具体的な内容に踏み込んで、資料2のような文言で表されています。(ゴシック部分引用者)
 現行教基法をまっこうから否定して、明らさまに、「真の愛国心」を盛りこんだ「改正」提言がなされたのでした。
 憲法の理念を体現し、戦前の国家による教育への不当な支配を排除し、「公」よりも「私」を優先させる現行教基法の息の根がまさに、とめられようとしているのです。
 断じて、座視して看過できない不穏・不吉な文言です。

なぜ「伝統」が入っていないのか
 その「真の愛国心」という言葉と等価の同義語として、素案に頻出するのが、「伝統、文化の尊重」という紋切りの決まり文句です。なぜ、かくも「伝統、文化の尊重」にこだわるのか。
 佐藤秀夫は、『教育基本法はどんな法律か』のなかで、「伝統」という言葉が教育基本法に入らなかった経過について、つぎのように語っています。(『世界』十一月号所収)

「教育刷新委員会の第一特別委員会が決めた最初の案では「伝統」という言葉はなかったんです。ところが、最年長の故に特別委員会の委員長に推された羽渓了諦という仏教学者が、非常に保守的な人で、おしまいの方の会議の中で、突然日本の伝統を生かすという提案をするのです。それに対して、天野貞祐すら反対したんです。「個性を重んじ」というところに、「伝統を重視する」というのは含意されているはずだから、あえて言う必要はない、と。羽渓がいう「伝統」というのは、「忠孝の伝統」のことなのです。あの時代に「伝統」と言えば、天皇に対する忠誠を軸とした戦前・戦時中の古い国家主義的なことを重視する伝統のことです。
 こうして「伝統」という字句が第一特別委員会の案に一旦は入った。それを中間報告という形で、総会に報告しますと、南原さんを初めとして猛烈な反対が出ます。特別委員会で、まるで法律案のようなものをつくるのはよろしくない、もっと大綱的なことでいいんだ、つくり直せということになった。そして大綱的な文案になり、「伝統」という表現は消えてしまうのです。教育刷新委員会としては、伝統とは戦前への回帰を意味するのだから、新しい教育理念に入れてはならないという発想でつぶしたわけです。ところが、文部省が国会に教育基本法の法案を提出するときに、第一特別委員会で羽渓が提案した案の表現を採用した。国会へ提出する文部省の案は、事前にCI&Eがチェックします。そのCI&Eのチェックで「伝統(トラディション)」を削れとなって、最初の教育刷新委員会案にもどる。」

熱い初志
 「伝統」という言葉をめぐる攻防を見れば、「伝統」に込めた守旧派の深意が奈辺にあるかがわかります。
 現在では、口当たりのよい「伝統」という言葉は、戦前戦中の軍国主義・国家主義をまといつかせた亡霊のごとき不易の言葉なのです。

 一九四七年八月五日に発表された『教育法令研究会 教育基本法の解説』には、次のような切実で的確な省察があります。

「国家を唯一の価値の基準とし、国家を超える普遍的政治道徳を無視する教育を行った結果、自国の運命を第一主義的に考え国際間の紛争を武力をもって解決しようとする武力崇拝の思想が教育の中に侵入してきたのである。」(このようなことになったのは)「根本において、個人の自覚がなく、個人の尊厳と価値との認識に欠け、国家共同体の真の目的と任務とが十分理解されていなかったことによるものである。」

 資料2の素案と読み比べてください。素案は、この省察を全く逆転させています。国家が肥大してせりだし、個人を従属させています。
 私たちは、省察にこめられた現行教育基本法への熱い初志を貫かなければなりません。

緊急課題
3.発癌物質アスベストを含有する
     Pタイルの即時撤去

 アスベストを含有するPタイルが区内の小・中学校の廊下や床に多量に使用されています。Pタイルの製造年月日によっては含有していないものもありますが、疑いのあるものは撤去するのが当然です。Pタイルが割れたり破損した時に、アスベストが空気中に浮遊しだすのです。

 Pタイル所在状況 2002.10.21

学校名 面積 u 主な場所

二葉小 820 特別教室・倉庫
錦糸小 1400 廊下・階段・特別教室・倉庫
中和小 1100 廊下・階段・特別教室・倉庫
言問小 21 廊下(普通教室改造)
小梅小 710 廊下・階段・特別教室・倉庫
業平小 350 準備室・倉庫
両国小 1840 廊下・階段・特別教室・倉庫
横川小 1800 廊下・階段・特別教室・倉庫
一吾小 969 H14改修済み
三吾小 1250 廊下・階段・管理諸室・特別教室
四吾小 21 倉庫
一寺小 210 特別教室・管理諸室
二寺小 1060 廊下・階段・特別教室・管理諸室
三寺小 2240 廊下・階段・特別教室・管理諸室
隅田小 240 倉庫・準備室
隅二小 580 廊下・特別教室・管理諸室・倉庫
曳舟小 95 倉庫
梅若小 2040 廊下・階段・特別教室・倉庫
中川小 60 管理諸室
東吾小 900 廊下・階段・特別教室・倉庫
立花小 1237 H14改修済み
墨田中 300 準備室・倉庫
本所中 300 特別教室・準備室
両国中 750 特別教室
竪川中 2500 廊下・階段・特別教室・倉庫
錦糸中 2500 廊下・階段・特別教室・倉庫
吾一中 1000 廊下・階段・準備室・倉庫
吾二中 150 特別教室
寺島中 70 倉庫・渡り廊下
向島中 280 特別教室・準備室
鐘淵中 2000 廊下・階段・特別教室・倉庫
三寺幼 15 管理諸室・廊下・階段
曳舟幼 8 管理諸室
立花幼 60 管理諸室
34 28876   合  計


教育基本法「改悪」に反対する 四
中教審素案
 教育基本法の見直しを検討してきた文部科学相の諮問機関、中央教育審議会が中間報告の素案をまとめました。
 十月十七日の中教審基本問題部会には、この素案が示されました。二十四日の基本問題部会での議論も経て、三十日の総会で、ほぼこの内容が承認され、中間報告となります。
 さらに、国民の意見を聴く機会として、「一日中央教育審議会」(公聴会)を全国三ヵ所(東京・京都・福岡)で開き、年明けにも最終答申を出し、次期通常国会では、「改正案」を上程しようとしています。
 ところで、『中間報告各章の構成(案)』は、「序章」「第一章 教育の課題と今後の教育の基本的方向について」「第二章 新しい時代にふさわしい教育基本法のあり方について」(資料1)「第三章 教育振興基本計画の在り方について」から成っています。

声高に叫ばれる「真の愛国心」
 資料1のゴシック部分は、素案では、さらに具体的な内容に踏み込んで、資料2のような文言で表されています。(ゴシック部分引用者)
 現行教基法をまっこうから否定して、明らさまに、「真の愛国心」を盛りこんだ「改正」提言がなされたのでした。
 憲法の理念を体現し、戦前の国家による教育への不当な支配を排除し、「公」よりも「私」を優先させる現行教基法の息の根がまさに、とめられようとしているのです。
 断じて、座視して看過できない不穏・不吉な文言です。

なぜ「伝統」が入っていないのか
 その「真の愛国心」という言葉と等価の同義語として、素案に頻出するのが、「伝統、文化の尊重」という紋切りの決まり文句です。なぜ、かくも「伝統、文化の尊重」にこだわるのか。
 佐藤秀夫は、『教育基本法はどんな法律か』のなかで、「伝統」という言葉が教育基本法に入らなかった経過について、つぎのように語っています。(『世界』十一月号所収)

「教育刷新委員会の第一特別委員会が決めた最初の案では「伝統」という言葉はなかったんです。ところが、最年長の故に特別委員会の委員長に推された羽渓了諦という仏教学者が、非常に保守的な人で、おしまいの方の会議の中で、突然日本の伝統を生かすという提案をするのです。それに対して、天野貞祐すら反対したんです。「個性を重んじ」というところに、「伝統を重視する」というのは含意されているはずだから、あえて言う必要はない、と。羽渓がいう「伝統」というのは、「忠孝の伝統」のことなのです。あの時代に「伝統」と言えば、天皇に対する忠誠を軸とした戦前・戦時中の古い国家主義的なことを重視する伝統のことです。
 こうして「伝統」という字句が第一特別委員会の案に一旦は入った。それを中間報告という形で、総会に報告しますと、南原さんを初めとして猛烈な反対が出ます。特別委員会で、まるで法律案のようなものをつくるのはよろしくない、もっと大綱的なことでいいんだ、つくり直せということになった。そして大綱的な文案になり、「伝統」という表現は消えてしまうのです。教育刷新委員会としては、伝統とは戦前への回帰を意味するのだから、新しい教育理念に入れてはならないという発想でつぶしたわけです。ところが、文部省が国会に教育基本法の法案を提出するときに、第一特別委員会で羽渓が提案した案の表現を採用した。国会へ提出する文部省の案は、事前にCI&Eがチェックします。そのCI&Eのチェックで「伝統(トラディション)」を削れとなって、最初の教育刷新委員会案にもどる。」

熱い初志
 「伝統」という言葉をめぐる攻防を見れば、「伝統」に込めた守旧派の深意が奈辺にあるかがわかります。
 現在では、口当たりのよい「伝統」という言葉は、戦前戦中の軍国主義・国家主義をまといつかせた亡霊のごとき不易の言葉なのです。

 一九四七年八月五日に発表された『教育法令研究会 教育基本法の解説』には、次のような切実で的確な省察があります。

「国家を唯一の価値の基準とし、国家を超える普遍的政治道徳を無視する教育を行った結果、自国の運命を第一主義的に考え国際間の紛争を武力をもって解決しようとする武力崇拝の思想が教育の中に侵入してきたのである。」(このようなことになったのは)「根本において、個人の自覚がなく、個人の尊厳と価値との認識に欠け、国家共同体の真の目的と任務とが十分理解されていなかったことによるものである。」

 資料2の素案と読み比べてください。素案は、この省察を全く逆転させています。国家が肥大してせりだし、個人を従属させています。
 私たちは、省察にこめられた現行教育基本法への熱い初志を貫かなければなりません。

資料1
第2章
新しい時代にふさわしい教育基本法のあり方について

1、教育基本法見直しの必要性

(国民から信頼される学校教育の確立)
○一人一人の個性に応じてその能力を最大限に伸ばす視点
○豊かな心と健やかな体をはぐくむ視点
○グローバル化、情報化、地球環境、男女共同参画など時代や社会の変化への対応の視点

(「知」の世紀をリードする大学改革の推進)
○「知」の世紀をリードする人材の育成など大学改革の推進の視点

(家庭の教育力の回復、学校・家庭・地域社会の連携・協力の推進)
○家庭教育の重要性の明確化の視点、学校、家庭、地域社会が連携・協力して子どもを育てる視点

(「公」に関する国民共通の規範の再構築)
○「公」に主体的に参画する意識や態度の涵養の視点
○日本人のアイデンティティ(伝統、文化の尊重、郷土や国を愛する心)の視点、国際性の視点

(生涯学習社会の実現)
○生涯のいつでも自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が社会で適切に評価されるような「生涯学習社会」の実現

(教育振興基本計画の策定)
○理念を実現するための国としての教育振興基本計画の策定

2、具体的な見直しの方向
(1)教育の基本理念
○個人の能力の伸長、創造性の涵養、個人の自己実現、努力や向上心
○感性、自然や環境との関わり
○社会の形成に主体的に関わる「公」の意識、公共心、道徳心、倫理観、自律心、規範意識
○日本人としてのアイデンティティ(伝統、文化の尊重、郷土や国を愛する心)と、国際性(国際社会の一員としての意識)
○生涯学習の理念
○時代や社会の変化に対応した教育
○職業生活との関連の明確化
※これらのうち、基本理念として何を規定すべきかについては、引き続き検討

(2)教育を受ける権利、義務教育等
(3)国・地方公共団体の責務等
(4)学校、家庭、地域社会の役割等
(5)教育上の重要な事項

資料2
第2章
 新しい時代にふさわしい教育基本法のあり方について(素案)

C「公」に関する国民共通の規範の再構築

(「公」に主体的に参画する意識や態度の涵養の視点)
 21世紀の国家・社会を主体的に形成する日本人の育成を図るためには、政治的教養(政治に関する知識や判断力、批判精神など)に加えて、国や社会など「公」に主体的に参画する意識や態度を涵養することが重要である。

(日本人のアイデンティティ〔伝統、文化の尊重、郷土や国を愛する心〕の視点、国際性の視点)
 国際社会を生きる教養ある日本人の育成を図るためには、自らが国際社会の一員であることを自覚し国際社会に貢献しようとする意識とともに、自らのアイデンティティの基礎となる伝統、文化を尊重し、国や郷土を愛する心を持つことが重要である。しかしながら、教育基本法には、このような視点が明示されていない。
 また、「公」に主体的に参画する意識や態度の涵養を図るためにも、国や社会、その伝統や文化について正しく理解し、愛着を持つことが重要である。

(B)社会の形成に主体的に関わる「公」の意識、公共心、道徳心、倫理観、自律心、規範意識
○これからの教育には、個人の尊重とともに、「公」に主体的に貢献する意識が重要である。我が国がより成熟した民主国家となるため、国民が国家、社会の一員として、法や社会の規範の意義や役割について学び、国家、社会を主体的に形成していく意識、能力を高めていく必要がある。このため、社会の一員としての使命、役割を自覚し、自らを律して、その役割を実践することが求められている。

(C)日本人としてのアイデンティティ(伝統、文化の尊重、郷土や国を愛する心)と、国際性(国際社会の一員としての意識)
○グローバル化が進展する中で、これからの時代には、国際社会の一員として生きるという自覚とともに、世界に生きる日本人としてのアイデンティティを持つことがますます重要になる。国際社会に出ていけばいくほど、自らを日本人として意識する機会が増え、自国の存在について無関心でいることはできず、国際社会における価値を高めようと努力することは自然な動きである。このような、自国の価値を一層高めようとする心がけこそが真の愛国心であり、その前提として、自らの郷土や国について正しい理解を持つこと、例えば郷土や国の伝統、文化を正しく理解し、尊重することが重要となる。


週刊墨教組 No.1384 2002.10.22

「生涯一教師としての生きがい」―何が悪い!
  新たな職=「主幹」は、中間管理職

 東京都教育委員会は、十月十八日「平成十四年度主幹級職選考の実施について(通知)」、 併せて「平成十四年度主幹級職選考実施要綱」(裏面資料)を通知しました。これにより「主幹」の選考が実務的に実施に移ることになりました。都教委は、五年間で全都の小学校に二名、中学校に三名の「主幹」を配置するとしています。

学校をピラミッド型組織にするな!

 墨田区教委は、「『主幹制度』導入により解決できる墨田区独自の教育課題はない」と言明しつつも、都教委の圧力に屈して、四月二五日に管理運営規則を改悪し、墨田の小・中学校に「主幹」を導入することを決めました。(資料1)管理運営規則では、「主幹は上司の命を受け…」、「主幹は…教頭を補佐し、所属職員を監督する」と、その職務内容を示しています。まさに「主幹」は中間管理職です。都教委の意図は複数の「主幹」を配置し、ピラミッド型の校内組織を整備し、上命下服の管理体制を学校につくりあげことにあります。、それは「管理あって教育なし」という状況をさらに進めるものでしかありません。

 学校におけるさまざまな課題に対応していくにためには、一人一人の教職員の能力が生かされ、互いに協力して解決に向け、努力していくことが大切です。そのためには、教職員が対等の立場で、様々な立場、観点から充分話しあい、一致協力して児童生徒の教育に当たる組織運営こそが大切にされなければなりません。このことは上命下服の組織運営とは対極に位置するものです。

「生涯一教師」―何が悪い!

 「生涯一教師として児童生徒に接することに生きがいを感じる教員が多い」という意見が、「主幹導入」に関する「主任制検討委員会」で出されていました。しかし、こうした教師の現状は、きわめて正常であり、かつ喜ぶべきことです。しかし、都教委にとってはこうした現状は良からぬものとして認識されていると考えざるを得ません。「主幹級職選考実施要綱」2ー(3)選考区分において、ア区分J(満三八歳以上四五歳未満)、イ区分K(満四五歳以上五八歳未満)と「主幹」を二区分に分けています。通知文の選考方法において、区分Jについて「特に、区分Jにおいては、将来、学校運営を担う教員としての成長が期待できるかを評定において重視します。」としています。管理職A選考(経験七年以上満三三歳以上〜四二歳未満)と同様に、若年の内から管理職として育成を図るという考えです。

 絶えず上昇を良しとする小官僚には、「生涯一教師として児童生徒に接する教諭の苦闘」が現在の学校教育を支えていることが理解できないのです。

 管理職選考、主幹級職選考から判断するなら、都教委は、「児童生徒と接することに生きがいを持つのではなく、管理することに生きがいを持て、そういう教師よふえよ」といっているようにしか見えません。しかも、金で釣ることにより。「生涯一教師」ー何が悪い!

資料1

墨田区立学校の管理運営に関する

  規則の一部を改正する規則

(主幹)

第六条の二 小学校及び中学校(以下「小中学校」という。)に主幹を置く。ただし、特別の事情のあるときは、これを置かないことができる。

2 主幹は、教諭又は養護教諭をもって充てる。

3 主幹は、上司の命を受け、担当する校務を統括処理する。

4 主幹は、担当する校務に関する事項について、教頭を補佐し、所属職員(教育職員に限る。)を監督する。

5 主幹は、次条第一項に規定する教務主任、生活指導主任又は同条第三項に規定する進路指導主任を兼務する。ただし、特別の事情により、これらの主任を兼務しない場合の取扱いについては、教育委員会が別に定める。

6 主幹の担当する校務の範囲は、教育委員会が別に定める基準に基づき、校長が決定する。


平成14年度主幹級職選考実施要綱

                            平成14年10月18日

                            東京都教育委員会

1 目 的

 この要綱は、東京都公立学校の主幹級職選考について、必要な事項を定めることを目的とする。

2 受験資格、選考方法等

(1)受験資格

   受験資格者は、次のすべての要件を満たす者とする。

ア 平成14年11月1日(以下「基準日」という。)現在、東京都公立学校の教諭又は養護教諭として任用されている者(ただし、基準日現在休職中の者を除く。)

イ 平成15年3月31日現在、東京都公立学校教職経験年数が10年以上ある者

ウ 平成15年3月31日現在、満38歳以上56歳未満の者(昭和22年4月2日から昭和40年4月1日までに生まれた者)

(2)受験資格の特例等

ア 上記(1)ウについて

 平成14年度選考については、平成15年3月31日現在、満38歳以上58歳未満の者(昭和20年4月2日から昭和40年4月1日までに生まれた者)とする。

イ 東京都公立学校教職経験年数として計算しない期間

 次の期間は、東京都公立学校教職経験年数として計算しない。

 病気休職、育児休業、在籍専従休職、配偶者同行休職、大学院修学休業、刑事休職、他道府県立学校の教諭、私立学校の教諭、外国の学校の教諭、寄宿舎指導員、実習助手、臨時的任用職員・非常勤講師等、青年海外協力隊派遣その他東京都教育委員会が認める者

ウ 国の機関等に勤務する者の取扱い

(ア) 基準日現在、東京都との人事交流協定書により国立大学の附属学校等に勤務する教員は、東京都公立学校教員とみなし、この要綱の規定を準用する。

(イ)上記(ア)以外で、東京都教育委員会が特に認める者は、この要綱の規定を準用する。

(3)選考区分

ア 区分J

 平成15年3月31日現在、満38歳以上45歳未満の者(昭和33年4月2日から昭和40年4月1日までに生まれた者)で、校種ごとの区分は設けない.

イ 区分K

 平成15年3月31日現在、満45歳以上56歳未満の者(昭和22年4月2日から昭和33年4月1日までに生まれた者)で、小学校、中学校、高等学校、盲・ろう・養護学校の校種(基準日現在任用されている学校種別)ごととする。ただし、平成14年度選考については、受験資格特例により、満45歳以上58歳未満の者(昭和20年4月2日から昭和33年4月1日までに生まれた者)とする。

(4)選考方法

選考は、面接(個別面接方式)、日常の勤務実績等により行う。

(5)合格予定者数

  約2,000名程度

  ただし、合格者数は、選考試験の成績等により変更する場合がある。

3 選考の申込方法等

(1) 受験希望者は、各学校長が配布する受験申込書に必要事項(裏面を含む。)を記入し、各学校長に提出することにより申し込むものとする。

(2) 区市町村立学校にあっては各区市町村教育委員会、都立学校にあっては各学校長において取りまとめの上、平成14年11月1日(金)までに、教育庁人事部選考課に申し込むものとする。

(3) 平成14年度教育管理職選考の第一次選考合格者の取扱い

  主幹級職選考の受験資格を満たしている者で、平成14年度教育管理職選考の第一次選考合格者(以下「第一次選考合格者」という。)は、平成14年度主幹級職選考について申し込んだものとみなす。したがって、今回「平成14年度主幹級職選考受験申込書」を提出する必要はない。ただし、第一次選考合格者のうち、平成14年度主幹級職選考について申し込む意思のない者は、各学校長を通じて、平成14年11月1日(金)までに、教育庁人事部選考課に申し出るものとする。

                 

4 面接日及び会場等

  面接は、平成14年11月下旬から12月上旬(予定)までの期間のうち、指定した会場で実施する。

  なお、受験者は、面接時に、「平成14年度主幹級職選考受験申込書」の写し(両面コピー)及び「平成14年度教育職員自己申告書」の写し(表面のみコピー)を提出するものとする。

  詳細は、各学校長を通じて、11月中旬ごろに通知する。

5 合格者への通知

  平成15年1月中旬(予定)に、区市町村立学校にあっては各区市町村教育委員会、都立学校にあっては各学校長を通じて、受験者本人に通知する。

6 教育管理職選考合格者及び旧指導主事選考合格者の取扱い

(1)教育管理職選考合格者及び旧指導主事選考合格者は、主幹級職選考に合格したものとみなす。

(2)上記(1)の規定にかかわらず、旧指導主事選考合格者のうち、指導主事の業務に従事していない者の取扱いについては、別に定める。


第27回 同和教育研究集会

 同和教育研究集会は毎年11月に開催し、墨田における同和教育の歩みを刻むものとして定着しています。今年で27回目となります。今年もまた充実した学習の場にしたいものです。

 墨田の同和教育は、「学校規模適正化」なる区の方針の下、学校の統廃合が行われ、木下川小学校が、今年度終了時点で廃校とされるという重大な状況を迎えています。

 1972年以来、31年間に及ぶ木下川小学校の同和教育のとりくみを雁部桂子さんに報告してもらいながら、この「廃校」問題をどう把え、木下川小学校で培われた同和教育をどう守り、発展させていくのか、共に考え合っていきたいと思います。

 記念講演は、部落解放同盟千葉県連合会委員長の吉川アイさんにお願いしました。吉川さんは栃木・小山出身の方で、結婚して関宿に住まわれたそうです。御自身の生き方を通して把えた部落差別の現実と、関宿における統廃合問題についても語っていただけるのではないかと、期待しています。

 組合員であるか否かは問わず、多くの方々の参加を期待しています。

と き 11月6日(水) 午後2:30から

ところ 女性センター・ホール

報 告

 「木下川の教育と廃校問題」

記念講演 (部落解放同盟千葉県連合会委員長)

 「部落差別の現実」



週刊墨教組 No.1383 2002.10.15

 二〇〇三年度対区予算要求を提出
  一〇月十一日、区教委交渉で早期実現求める
  併せて緊急課題を提起し、解決を求める

 墨田教組は、一〇月十一日に、区教委交渉を行い、二〇〇三年度教育予算にかかわる要求(内容は裏面)に提出しました。この要求は、九月一九日開催の分会長会で提案し、その後分会からの要求を集約し、執行委員会で整理・検討してまとめたものです。
 十一日の交渉では、要求書を提出するとともに、近藤教育長・久保次長・松竹庶務課長・山下学務課長・生方指導室長に重点要求を中心に、緊急課題を含め、職場の実態や要求根拠を説明、早期実現を強く求めました。

八項目の緊急課題を提起
一.労働安全衛生委員会を設置すること

 私たち区立学校に働く教職員に対する「安全と健康の確保」に関し、健康診断以外にその施策が明かではありません。都教委は、教育委員会訓令で「東京都立学校安全衛生組織等設置規定」を定めています。区には、「墨田区安全衛生委員会設置規定」が定められていますが、区の職員に対するものと思われます。職務の多忙化等による健康破壊が進行している中、私たちの「健康の確保」のためには、労働安全衛生委員会の機能を充実させることもひとつの方法と考えています。

二.職場で労基法が遵守されるのは当然である
 私たちの勤務時間は、週四〇時間、一日八時間労働となっています。休憩は必ず与えなければなりません。しかし、労基法で決められているにもかかわらず、守られていない実態が職場で存在しています。その例として、
@区教研の開催時刻が午後四時、午後四時三〇分になっているものがある。
A今年度修学旅行の日程は、六月一七日(月)〜二三日(日)であった。週五六時間以上の連続勤務になっていた。
B勤務時間が一日八時間を越えた場合は、いわゆる相殺(調整)により調整してきた。しかし、「給特法により四%が支給されているから調整しない」とか、「調整は時間単位だ、一時間を越えないと調整しない」と労基法の主旨を理解していない管理職がいる。
C学校公開や行事等で週休日に勤務をせざるを得ない場合の振替について「当該週休日に属する週において行う」のが大原則になっています。しかし、多くの学校では、そのようになってはいません。また、栄養士・事務の振替については、当該週休日に振替ない場合は、庶務課長と協議することになっていますし、超勤手当の対象にもなっている。
 以上四点を例に上げ、労基法の遵守を求めました。今後、休憩時間の確保とともに、労基法の遵守の交渉を執行部は強化します。
(緊急課題三以降は次号)
 
墨田教組2003年度予算要求

                                 2002.10.11
墨田区教育委員会
委員長 國松 久輝様
教育長 近藤 舜二様
                 墨田区教職員組合  委員長 加藤宗三郎
 2003年度予算において、下記の措置を講じられたい。
 なお、検討にあたっては、予算削減を前提とせず、教育委員会としての原則的な立場で、墨田の教育にプラスになるかどうかを吟味していただきたい。 

T.重点要求
1. 1クラスの子どもの数を区独自に30人以下にするよう教員を配置すること。
2. 夏季プ−ルを早期に社会教育事業に移行させること。
3. 「学校選択の自由化」には、墨田教組は基本的に反対である。しかし、導入に際しては次のことを要望する。
   @ 施設等教育条件の平等化を実施すること。
   A 「教育課程は学校が決める」ことから、各学校が決定した教育課程を円滑に実施するために財政的配慮を行うこと。
4. 野外体験活動実施にあたっては、保護者負担の軽減をはかること。実地踏査を含め、引率者・指導員に関わる経費は全額区で予算化すること。
5. 諸外国からの転入者に対する施策を区として行うこと。
・日本語学級についての改善をすること。
・「日本語ができない児童・生徒に対する通訳介助」措置の期間は、教育的な配慮から、児童・生徒の実態にあわせて措置すること。 
・保護者との意志疎通のため、通訳を区として確保すること。
6. 「障害」児が在級する普通学級にも介助員を要求に応じ配置すること。
7. 学校でのツベルクリン・BCG接種を廃止すること。
8. 周年行事の簡素化をはかるよう校長への指導を強め、PTA・町会にも同趣旨を申し入れること。また、5年行事をやめ10年行事一本にすること。
9. 校内に残存するアスベストを完全に調査・撤去すること。
10.労働安全衛生委員会を設置すること。

U.墨田の教育の充実に向けて
1. 学校給食調理業務の民間委託をただちにやめること。
2. 非常勤栄養士を正規職員化すること。
3. 「総合的な学習」の実施にともなう予算措置を充実すること。その際、各学校の要望をとりまとめ、検討すること。
4. 児童・生徒用パソコンの数は、要望がある学校には、1人1台配置すること。また機種の更新時にはソフト購入費を増額すること。
5.必要、不必要な予算について、現場の意見を吸い上げ、検討すること。
6. 子どもの健康維持、 環境破壊防止の観点から、プールに温水シャワーを設置すること。
7. 粟野移動教室関係ー
・引率補助者制度をその制度化の原点に立ち返り堅持、運用すること。
・引率補助者の日当を引き上げること。
・現地行動用のマイクロバスを、各校毎の特色ある計画に従って運行できるものとすること。
・実施踏査は、2回(前後期実施校の2回)に分けて実施すること。
・榛名移動教室の食事の改善をはかること。
8. 授業プール補助者関連ー
・2学級以下の全学年に授業プール補助者を配置すること。
・補助者雇用を臨時職員制度とは異なる制度のもとで行うものに改め、賃金を引き上げ、交通費を支払うこと。
9. 文花中夜間部の教育の充実のため、次の措置を早急に行うこと。
・養護教諭を配置すること。・正規栄養士を配置すること。・専用図書室を設置すること。
V.学校施設設備の改善充実に向けて
10. バリアフリーの施設(校舎、体育館、校庭)・設備にすること。特に、洋式トイレを各階に設置すること。
11.小学校高学年児童用に、更衣室の整備を行うこと。
12. 施設(校舎、体育館、校庭)・設備の改善にあたっては現場の要求、声を重視すること。 そのためにも、安全と教育上の効果に関わる過去の経験を集約、蓄積し、今後に生かす方策を考えること。 
W. 保護者負担の軽減に向けて
13. 小学校演劇教室費用は全額区で負担すること。
14. 卒業アルバム作成のための補助費を大幅に増額すること。
15. 中学校修学旅行に補助金を出すこと。
16. 準要保護関係部局に次の申し入れを行い、その実現に向け努力すること。
・準要保護基準を引き下げること
  ・補助対象に次のものを加えること
   卒業関係費用(文集、卒業製作、お別れ会費用等) 修学旅行補助金実額
X.墨田で働く教職員の労働条件向上、意欲増進に向けて
17. 栄養士の超勤手当を区独自に支給すること。
18. 非常勤職員にも一時金(ボ−ナス)を支給すること。  
19. 非常勤職員にも交通費を全額支給すること。
20. 非常勤・区費栄養士の出張旅費枠を拡大すること。
21. 調査研究補助金を復活すること。
22. 教師用研修図書費を予算項目上明確にし増額すること。
23. 中学校課外クラブ指導費を増額すること。
24. 全同教大会参加費を区独自に予算化すること。
25. 教職員の休憩室を設置・整備すること。
26. 職員健康診断の内容・方法等について充実・改善すること。



朝鮮学校バザー
 「アンニョン・フェスティバル」に参加しよう

 墨田区八広にある朝鮮学校では、毎年十月、近隣の人々に学校や朝鮮を紹介し、それを通じて日朝の友好・親善を草の根から創り上げていこうという趣旨で、授業・学校公開やバザーを行っています。
 私たち墨田教組と朝鮮学校は、長い間、隣人として、教育交流など貴重なつきあいを続けてきました。
 同じ墨田という地域にあって、ともに子どもたちを守り、育てる立場にあるもの同士の連帯感に立ち、積極的に参加しようではありませんか。
 墨田の多数の教職員が参加されるよう、心から願います。
第二十四回バザー
「アンニョン・フェスティバル」
 東京朝鮮第五初中級学校オモニ会主催
日時 10月27日(日) 雨天決行
午前11時〜午後3時
場所 東京朝鮮第五初中級学校・運動場
 墨田区八広5−22−15
 電話 3617−7915
内容
 @公開授業 9時〜10時40分
 Aバザー 11時〜3時
 Bステージ 11時30分〜2時


週刊墨教組 No.1382 2002.10.7

 許せない!年収平均十五万円減小
 俸給表マイナス改定、平均一・六四%引き下げ
 教育関係給料表は国に準拠一・七〜二・〇%引き下げ
 ボーナス引き下げ   「成績主義」の一層の強化
 特2級(主幹職給)を新設
            一〇月三日 都人事委員会勧告

一〇月三日、東京都人事委員会は今年度の勧告を行いました。
 勧告・報告の主要点は次の六点です。
 
1.俸給表マイナス改定。
官民給与の格差マイナス七千三百九三円(一・六四%)
 2.ボーナスを〇・〇五月分引き下げ
現行四・七月→四・六五月分
 3.扶養手当
配偶者、一千五百円減額 子等の支給額は増額 
 4.減額調整
年間給与について実質的な公民均衡が図られるよう、所要の調整を行うこと。
 5.主幹の給与制度に関する意見
主幹の給与上の措置を講ずることが適当として「特2級」を新設(後掲資料)
6.給与制度の見直し―能力・成績主義の徹底

 俸給表マイナス改定、教員は国に準拠
 都人事委員会は今年度四月時点における官民格差(民間企業と都職員の給与格差)は平均マイナス一・六四%、七千三百九三円(国は二・〇三%七千七百七〇円)とし、この格差を是正するため、給与勧告制度創設以来初の月例給引き下げを勧告しました。
 教育関係給料表は国に準じて改定するとし、平均一・九%の引き下げを勧告。         (裏面資料参照)
ボーナス〇・〇五月分削減
 今次勧告では、民間のボーナス支給月数が年間四・六四月分、格差〇・〇六月となっています。しかし、国家公務員の状況を考慮し、国家公務員と同様に期末手当から〇・〇五月分引き下げ年間支給月数を四・六五月分と勧告しています。
 先の人事院勧告では、「六月期と十二月期の年二回支給に改める」となっていましたが、この点については言及されていません。
 扶養手当
 民間や国の支給状況、家計負担に配慮し配偶者に対する支給額を引き下げ、子等の支給額を引き上げるとなっています。昨年に続いての引き上げです。
 配偶者手当 一五〇〇円減額
現行一七五〇〇円→一六〇〇〇円
 配偶者以外の扶養親族のうち二人
五〇〇円増額 
現行五五〇〇円→ 六〇〇〇円
 同三人目以降
一〇〇〇円増額
現行三〇〇〇円→ 四〇〇〇円 
また、報告では、育児休業等の男性職員による活用の促進を述べています。

 減額調整
 実施時期について、「引き下げ改定であるため、遡及することなく、条例公布日の属する月の翌月の初日から実施する」としながらも、「実質的な公民均衡が図られるよう、人事院勧告の趣旨を考慮して、所要の調整を行うこと」と国家公務員と同様に不利益を遡及すると述べています。きわめて不当と言わざるを得ません。

 「特二級」新設
 「主幹は、担当する校務に関する事項について教頭を補佐するとともに、教諭等を指導・監督する職と位置付けられ、…… その職務内容に鑑み、職務の複雑、困難及び責任の度合いが一般の教諭とは異なるものと認められることから給与上の措置を講ずる」として、「特二級」を新設した給料表を提示しました。
かって主任制度化に際し、永井文部大臣は、「主任が中間管理職でない」ことの証しのひとつとして「主任の制度化は五段階賃金を実現しようとするものでない」と言明しています。「特二級」新設は、主幹が主任を兼務することから、主任制度の改悪=主任の中間管理職化を給与面から裏付けたものといえます。さらに、「教諭」という職に二種類の給与等級を設け、賃金の面で教諭間に格差をつける差別賃金の導入と言えます。到底認めることはできません。 

 給与制度の見直し―
      能力・成績主義の徹底

 人事委員会はここ数年、成績主義の徹底を勧告・意見表明してきています。今年もこの観点から以下のことを「意見」という形で出しています。
1.現行給与構造の見直し
・職責、能力、業績への適切な処遇が可能な給与構造の設計
・評価結果を給与へ適切に反映させる仕組の検討
・幹部職員への年俸制の導入
2.当面の課題
・勤勉手当割合の拡大、勤勉手当への成績率の導入・拡充
・普通昇給への業績評価の反映
・特別昇給の種類や実施方法の検証
・国に準拠している教員の給与体系についての研究
3.評価制度
・新人事考課制度が円滑に運用できるように、制度の公平性や客観性をこれまで以上に高める定着化の努力

 労働組合としての機能と責任を果たす闘いを!
 都人勧を機に、具体的に今年度の賃金確定の闘いは進められます。労働条件は労使の合意で決めるものです。しかし、賃金等の改定は、議会の承認が必要です。この点を悪用して、都議会与党(自民・公明等など)が、労使の合意に介入し給与の四%カットを強行させました。今年度も議会の圧力を受け、闘いは困難を極めることが予想できます。私たちは、生活を守るため、上意下達の学校運営を阻止するために闘うことを通して、労働組合としての責任を果たしていきましょう。


有事法制阻止に向けて決意を新たに
――リアルに死と直面させられる船員たち――

「有事法制反対学習会」
 九月十二日、東京教組主催の「有事法制反対学習会」が行なわれました。この会は、与党三党の数の力によって、国民多数の反対にもかかわらず継続審議が決定し、十月からの臨時国会で再び若干の手直しによって審議が再会される予定の「有事三法案」について、再度しっかり学習しようと、墨田教組の提案で行なわれたものです。講師としてお招きしたのは、五月、六月と五万人規模の有事法制反対集会を組織した主催者のひとりである「全日本海員組合」政策教宣局長の平山誠一さんでした。

戦時中の船員の犠牲
 平山さんは、有事法制はかつて日中戦争後、日米開戦を視野に入れて国民を戦争体制に総動員していった「国家総動員法」を思い起こさせると口火を切られました。そして、周囲を海に囲まれる日本にとって、最も太い物流ルートである海上輸送を担う船員たちが、次々と制定された「国民徴用令」「海運統制令」「船員徴用令」などによって戦時体制に組み込まれていった歴史を詳細に述べられ、戦争が激しくなっていった時には船員の採用年齢制限が十六歳から十四歳にまで引き下げられたと話されました。先の戦争によって犠牲になった民間船舶は一万隻を超え、民間人船員は六万人余が海底深く沈められたのです。

国際法では、民間船も攻撃対象に
 船員たちが、過去の戦争時に留まらず、私たちの記憶に新しい中東戦争や湾岸戦争のときにも危険にさらされ、大きな犠牲を払わされたことについてはあまり知られていないのではないでしょうか。中東戦争時、二十万トンタンカーがペルシャ湾で不安に怯え、四百隻が攻撃の対象になりました。そのうち日本の船十二隻が攻撃に遭い、二人の尊い命が犠牲になっているのです。自衛隊の護衛の申し入れがありましたが、それは大変危険なことでした。実はかつての戦争でも、今回の有事法制でも、「民間の船は安全。民間人には安全なところでの業務従事」といわれていますが、陸上の戦争ルールを定めた「国際人道法」は「攻撃は軍事目標に厳しく限定されなければならない」として軍事攻撃の対象を限定しているのに対して、『戦時国際法・海戦法規』は、「軍艦や航空機によって護衛されている商船」は敵国の軍事目標にされてしまうのです。湾岸戦争時には、七十万の多国籍軍がサウジアラビアに集結しましたが、陸路を通りました。米軍は日本の民間船を輸送用に提供するよう要請してきました。結果、二隻の民間船が協力を余儀なくされましたが、海員組合として条件交渉をしました。それは、自衛隊を派遣しないということでした。自衛隊とともに行動する船は、軍事攻撃の対象になってしまうからです。民間船による輸送を要請した米軍は、かつて真珠湾開戦直後、日本の民間船舶に対して無差別攻撃をしました。そのような過去を持つ米軍の要請に安穏とOKを出す日本政府が、いくら民間人の安全を言っても直接命の危険にさらされる船員たちが信用できるはずもないことです。

二十労組の闘い
 平山さんは、船員組合は政治問題で闘争することはあまりないが、三年前の「周辺事態法」のときから、アメリカの始める戦争に後方支援と称して民間の交通運輸関係労働者が協力を強要されることに「いのちと職場の安全」が脅かされる危機を感じ、陸・海・空・港湾労組二十団体による闘いが組織されていったと話されました。今回の有事法制は、「周辺事態法」の協力要請からより明確な国家意思の「強制」を狙ってきていることにより一層の命の危険を感じていらっしゃいます。まさに、有事法制とは、船員にとってリアルに命の危険を感じるものなのです。

船員の人命救助
 お話の中で、命の危機に敏感であればこそ、船員の人命救助は年間二百五十人にものぼると言うことをお聞きし、驚きと共に感動を覚えました。一方で自衛隊潜水艦「なだしお」による遊漁船衝突事件や、つい最近の米軍潜水艦による「愛媛丸事件」に話が及んだ時、静かな怒りが平山さんの表情を曇らせたことは、軍隊の本質を見抜き、海に生きる船員の誇りを垣間見た思いでした。

憲法の平和主義の徹底こそ大事
 海員組合では、二〇〇〇年、二十世紀の最後の年、戦後五五年の節目を記念して、神戸に「戦没した船と海員の資料館」を開設したそうです。若い人たちに「船乗りは砲弾飛び交う戦場の海はごめんだ」の想いを伝えるためです。海の平和は、そして世界の平和は、平和憲法の平和主義の徹底によってこそ実現できるのです。平山さんはまた、日教組に対しても、「教え子を再び戦場に送るな」のスローガンを曇らせないでほしい、再度鮮明に掲げてほしい、とエールを送られました。七月三一日、国会会期末に有事法制を成立させなかったのは、連合はじめ各政党を動かし、大きな反対運動を作れたからこそ。十月に開催される臨時国会に向けて、再び多くの世論を集め、ことの重大さを訴え、有事法制反対の大きなうねりを作ろう、という平山さんの力強い言葉に、励まされるような学習会でした。墨田教組も再び有事法制反対の運動を大きく展開していきましょう。     2002・9・24


週刊墨教組 No.1381 2002.9.19

二〇〇二年度教研集会
全体会 十月二日(水)午後二時半
記念講演は、神野直彦さん
   (東京大学教授)


教育基本法「改悪」に反対する ―3―

教育改革国民会議の影
 文部科学大臣遠山敦子が中教審に諮問した文書には、前号で検討したように、教育基本法の基本理念について、「(一)時代や社会の変化に対応した教育という視点」「(二)一人一人の能力・才能を伸ばし創造性をはぐくむという視点」「(三)伝統、文化の尊重など国家、社会の形成者として必要な資質の育成という視点」から「検討する必要がある」としていました。
 それでは、なぜ、「検討する必要がある」のか。その根拠について、諮問文書は、「U新しい時代にふさわしい教育基本法のあり方について」で、次のように述べています。

「2 教育改革国民会議の報告においては、これからの時代の教育を考えるに当たっては、個人の尊厳や真理と平和の希求など普遍の原理を大切にするとともに、『新しい時代を生きる日本人の育成』『伝統、文化など次代に継承すべきものの尊重、発展』『教育振興基本計画の策定など具体的方策の規定』の三つの観点から、新しい時代にふさわしい教育基本法を考えていくことが必要であると提言されている。
 この提言を踏まえながら、時代状況の変化にかんがみ、教育基本法の在り方について、主に次の事項に関して検討する必要があると考える。」

不透明な委員の人選
 教育改革国民会議は、小渕とその後を継いだ森という凡庸な総理大臣の私的諮問機関です。
 二〇〇〇年三月に発足して、七月には分科会の審議経過報告、九月には中間報告を行いました。この報告には、「教育基本法の見直しについての国民的議論を」を含む、いわゆる「十七の提案」がありました。そして、各地での公聴会を経て、十二月には最終答申を行いました。なんともあきれはてた超拙速主義です。
 二十六人の委員の人選も不透明で、教育基本法改悪を射程にした政治的思惑を反映したものでした。
 ちなみに、主として「教育基本法の見直し」について審議したのは、三分科会のうちの第一分科会でしたが、その委員はつぎのとおりです。まっとうに教育基本法が論じられる人選でないことは明らかです。


週刊墨教組 No.1380 2002.9.12

教育基本法「改悪」に反対する ―2―

遠山敦子文科相の作為的な引用
 文部科学大臣遠山敦子が、中教審に諮問した文書が、詐術を駆使した小賢しい作文であることを検証します。
 諮問文書には、教育基本法の条文を作為的に貶めて引用した、つぎの箇所があります。

「第一に、教育の基本理念についての検討である。
  教育の基本理念として、教育基本法は、教育の目的(第一条)及び方針(第二条)を定めている。教育の目的として第一条は、人格の完成を目指し、国家、社会の形成者として心身ともに健康な国民の育成を期して行うとし、国家、社会の形成者として有すべき徳目を例示している。また、教育の方針として第二条において、教育の目的を実現するため、教育を行うに当たっての心構え、配慮すべき基本的事項について定めている。」

 だが、教基法の規定は、次のようになっているのです(傍線・赤文字は引用者)。

「第一条 (教育の目的)教育は、人格の完成をめざし平和的な国家及び社会の形成者として真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

第二条 (教育の方針)教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によって、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。」

教育基本法から排除したい「平和」
 傍線部分が、悪意に満ちた遠山の全く身勝手な教基法の要約です。
 「平和的な国家及び社会」とか「真理と正義を愛し」とか「個人の価値をたっとび」とか「自発的精神を養い」とか「自他の敬愛と協力によって」とか規定された赤文字部分にこそ、憲法の理念に根ざした教基法の真の目的と方針は宿っています。だから、その赤文字部分をわざと欠落させて要約したのです。このことは、何としても、赤文字部分を教基法から排除したいという厚顔無恥の遠山の強い思惑のあらわれにほかなりません。
 ついでに付け加えるなら、まちがっても、「基本理念」を「徳目」などという位相のちがう杜撰な言葉で代用すべきではありません。ここにも、遠山の身勝手な教基法の歪曲化があらわれています。

「伝統文化の尊重」という危険な本音
 先に引用した諮問文書は、つづけて、「これについて、普遍的な理念は維持しつつ、次の視点などから検討する必要がある」として、「(一)時代や変化に対応した教育という視点」「(二)一人一人の能力・才能を伸ばし創造性をはぐくむという視点」をあげています。
 そうして、臆面もなく、つぎのような最も危険な本音が提起されます(傍線は引用者)。

「(三)伝統、文化の尊重など国家、社会の形成者として必要な資質の育成という視点
  急速な社会状況の変化と豊かさの進展のなかで、個人と社会との関係を改めて考え、これからの時代を担う子どもたちの社会性をはぐくみ、社会規範を尊重する精神を養い、人間性豊かな日本人を育成することが求められている。そして、国際化が進展する社会の中にあって、日本人としての自覚を持ちつつ人類に貢献するということからも、我が国の伝統、文化など次代の日本人に継承すべきものを尊重し、発展させていく必要がある。これらの点を踏まえながら、今日において、国家、社会の形成者として有すべき資質として、特に求められている点は何かという視点から議論する必要があると考える。」

「伝統」という言葉が教基法にない理由
 諮問文書は、中教審に対して、「国家、社会の形成者として有すべき資質として」「日本人としての自覚を持ち」、「我が国の伝統、文化」「を尊重」する点をあげて、議論せよと命令しているのです。
 「伝統」という言葉が、教基法に採用されなかった来歴について、藤田英典は、『今なぜ教育基本法「改正」なのか』のなかで、つぎのように指摘しています(『世界』十月号所収)。

「周知のように、古くは、教育基本法の案文作成の過程で、『伝統』の二文字を入れるかどうかをめぐって意見が分かれ二転三転したが、結局、忠孝の精神に象徴されるような『伝統』の維持を図ることは好ましくないとの判断や、そうした『伝統』の克服が曖昧化されかねないとの危惧から、その二文字が削除され、現行基本法の『普遍的にしてしかも個性豊かな文化の創造をめざす教育』という表現が採用されることになった。」

国家統制教育への反省
 戦後の教育政策は、「伝統、文化の尊重」という虚偽の美辞のもとに、個人よりも国家を優先させる偏狭な「愛国心」を煽って、一貫して、憲法・教基法の理念を標的にして、民主教育といわれる内実を解体しつづけてきました。
 九九年の周辺事態法、国旗・国歌法の成立以後、教育現場への攻撃は、、すさまじいばかりです。
 
 有事法制化が正念場をむかえる現在、いまひとたび、前号で示した『旭川学力テスト事件最高裁大法廷判決』を噛みしめて、情況を深く洞察して、なによりもまず平和のために、力を奮いおこそうではありませんか。

 最高裁判決には、こうあります。
 教育基本法の理念は、「戦前の我が国の教育が、国家による強い支配の下で形式的、画一的に流れ、時に軍国主義的又は極端な国家主義的傾向を帯びる面があったことに対する反省によるものであ」る。


日教組養護教員部研究集会に参加して
養護教員部
 


 第四二回日教組養護教員部研究集会は、七月二八日から三十日の三日間、新潟県越後湯沢で開催されました。

 記念講演は「教育改革と健康日本 」というテーマで、ジャーナリストの斎藤貴男さんが講演しました。その内容は、先の国会で成立した「健康増進法」についての批判・検討でした。
 その中で注意すべきことは、「国が住民基本台帳法と一体となって、国民の健康に関する個人情報を管理しようとしている」ことです。

 参加者からは、次のような感想が多く寄せられました。
・「私たちは多忙化により、物事を深く考えない傾向にあるが、今こそ物事の本質と背景を見極める眼を養わなければならない」
・「寝たきり老人の増加で、医療費負担を増大させないために、若い時から生活習慣病予防を励行させようとする健康日本 や教育改革で示される建前に惑わされないようにしたい」
・「マスコミからの情報を鵜呑みにするのではなく、自分の眼で事実を見抜いていきたい。知らないうちに自分の体や生活が管理される。また、目覚しい遺伝子分析の発達により、本人さえしらない疾病や要素の遺伝子情報が解析され、第三者に知られてしまうことは、非常に恐ろしいことである。今後、政府の動きを冷静に注目し、対処していかなければならない」
 分科会では次のような意見が出されました。

第一分科会
「子どもの健康保障のために」
 子どもの健康権、検診の意義、受ける受けないの選択権問題、プライバシーの保護、目の前の子どもにとって今何が必要で何が大切なのか? また、色覚検査は廃止になったが、配慮を要する子がいたり、就職差別が残っていたりするなかで、どう対応していったらよいか? 課題は山積し、今後の運動へと引き継いでいかなければなりません。
 また、就学時健康診断については、一部改正に伴い、知能検査の方法や廃止の方向でとりくんだ報告がありました。これまでの長い間、就学時健康診断は、学校現場にまかされてきましたが、学校保健法第四条に規定されているとおり、各市町村教育委員会に返していくべきであるという論議が高まっています。
 「健康日本 」による生涯健康管理体制に、学校や子どもを組み込もうとする動きの一つとして、フッ素塗布やフッ素洗口の学校導入があります。「健康日本 」についてさらに学習を深め、正しい情報を得て、運動につなげていくかが大きな課題となっています。

第二分科会
「健康教育の自主編成にむけて」
 今年度から週五日制となったが、子ども達は、平日は授業時間数が増えた分、疲れて逆に集中力がなくなり、休日はスポーツ漬けでくたくたになり、健康状態が良くなったとはとても言えるものではありません。保護者や教師も、さらに多忙化し、ますますゆとりをなくしているのではないでしょうか。そんな子ども達に一方的に、「健康であらねばならない」という「健康教育」を押しつけるのではなく、子どもの実態や背景を見ていく必要があります。病気や障害をマイナス視点で見るのではなく、「面倒を掛け合う」「面倒を楽しむ」ことを選び、ひとりの子どもとのかかわりをもとに全体へと広げていけるような健康教育でありたいものです。
 
第三分科会
「子どもの環境改善にむけて」
 日教組ではこれまで、子どもを取り巻く環境問題としてダイオキシン・環境ホルモン・職の問題・フッ素洗口塗布・水道水へのフッ素添加・電磁波などについて交流を深めてきました。今回は、タバコ薬物・携帯電話などが子ども達に及ぼす影響や実態について、交流し、課題は何かを明らかにすることになりました。「子どもが不利益をこうむることがないように」という考えが、終始、論議の中心となりました。

第四分科会
「子どもをめぐるもんだい」
 子ども達は、時として「校内暴力」「非行」「不登校」「保健室登校」「いじめ」「自死」と、さまざまな形で心の叫びを発信しています。これに対して大人は「問題行動」と決めつけ、出席停止やカウンセラー導入により子どもを変えることで問題の解決を図ろうとする傾向にあります。マイノリティー側の子どもに寄り添って仕事をしている養護教員は、自分の中にある差別性や、管理する側に立っていることに気づかなければなりません。子どもに一方的な価値観を押しつけるのではなく、子どもの発信を聞き、子どもの見方を確認しあい、自分の位置を変えていく必要がありそうです。

 


週刊墨教組 No.1379 2002.9.9

教育基本法「改悪」に反対する ―1― 

〈基本問題部会〉の拙速主義
 二〇〇一年十一月二六日、文部科学大臣遠山敦子は、中央教育審議会(以下、中教審)に、「教育振興基本計画の策定について」と「新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方について」という二事項を、理由を添えて諮問しました。
 二〇〇二年一月二十二日の中教審総会は、「教育基本計画の策定と教基法の在り方について」専門的な審議を行う〈基本問題部会〉の設置を了承しました。
 仕組まれた筋書き通り、〈基本問題部会〉は、月二回というハイペースで審議を行い、秋にずれこんだとはいえ、「中間まとめ」を、そして、年内に「最終報告」を何としても提出しようとする姿勢を全くくずしていません。
 この、なりふりかまわぬ〈基本問題部会〉の拙速主義と、乱暴で傲慢な切れ切れの断章のような審議記録「基本問題部会の議論の概要」をあわせ読むと、そこには、教基法「改悪」が有事法制と連動した策動であることが、明白にせりあがってきます。

教基法前文の意味
 人畜無害の迷文の寄せ集め『声に出して読みたい日本語』という本が、偏狭な国語ナショナリズムをくすぐるものとしてよく読まれています。
 教基法の前文こそ、内実を備えた格調高い、「声に出して読みたい日本語」です。
 『旭川学力テスト事件最高裁大法廷判決』は、この文言の背景を的確につぎのように述べています(一九七六年五月二一日)

 「教基法は、その前文の示すように、憲法の精神にのっとり、民主的で文化的な国家を建設して世界の平和と人類の福祉に貢献するためには、教育が根本的重要性を有するとの認識の下に、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的で、しかも個性豊かな文化の創造をめざす教育が今後におけるわが国の教育の基本理念であるとしている。これは、戦前のわが国の教育が、国家による強い支配の下で形式的、画一的に流れ、時に軍国主義的又は極端な国家主義的傾向を帯びる面があったことに対する反省によるものであり、右の理念は、これを更に具体化した同法の各規定を解釈するにあたっても、強く念頭に置かれるべきものであることは、いうまでもない。」

 贅言は要しないでしょう。この文言こそ、有事法制にとって最大の障壁なのです。だから、遠山敦子は、「伝統文化の尊重など国家、社会の形成者としての必要な資質の育成という視点」を導入することによって、くり返し、この文言を無化しようとしているのです。おぼろげに、前方に横たわっているのは、戦争をする「国家」にちがいありません。


週刊墨教組 No.1378 2002.9.2

 史上初、俸給表のマイナス改定!
 
期末手当は四年連続の引き下げ
  年間賃金は平均十五万円減少
        八月八日 人事院勧告

 八月八日、人事院は今年度の勧告を行いました。
 勧告・報告の主要点は次の四点です。

1.俸給表マイナス改定
   基本給を一率引き下げ
   官民給与の格差マイナス七千七百七〇円(二・〇三%)
2.ボーナス(期末・勤勉手当)を〇・〇五月分引き下げ
   現行四・七月→四・六五月分
3.配偶者扶養手当二千円減額 現行一万六千円→一万四千円
   扶養の子等の三人目以降は二千円増額 現行三千円→五千円
4.減額調整
   四月から新賃金が適用されると仮定して、マイナス分を溯って
十二月期の一時金で減額調整する。

俸給表マイナス改定
 人事院は今年度四月時点における官民格差(民間企業と国家公務員との給与格差)は平均マイナス二・〇三%(七千七百七〇円)とし、この格差を是正するため、給与勧告制度創設以来初の月例給引き下げを勧告しました。格差是正を、俸給表の引き下げ改定及び配偶者に係わる扶養手当の引き下げにより措置したとしています。
 なお、教育職は昇格メリットが少ないとし、教育職俸給表等は平均一・九%の引き下げにしたといっています。
(資料1参照)

ボーナス〇・〇五月分削減
 今次勧告では、民間のボーナス支給月数が年間四・六五月分であるとし、これに準拠させ国家公務員のボーナスを現行(四・七月分)から〇・〇五月分削減せよとしています。
 この四年間で(〇・三月+〇・二月+〇・〇五月+〇・〇五月)合計〇・六月分削減ということになります。
 また、「民間のボーナスは年二回がほとんど」とし、三月期の期末手当を廃止し、六月期と十二月期の年二回支給に改める、さらに、期末手当と勤勉手当の割合を改定するように勧告しています。(資料2参照) 

諸手当
 本俸と諸手当の配分比率を維持するため、また女性の社会進出の状況をふまえ、結果として配偶者扶養手当を二千円減額する。一方、扶養の子等の三人目以降は二千円増額するとしています。また、報告では、育児休暇の男性取得促進を述べていますが具体策については今後の検討となります。

減額調整
 不利益不遡及の原則からすれば、四月に溯って俸給表の改定はできません。「公布日の属する月の翌月の初日から実施する」のが当然です。しかし、「官民給与は四月時点で比較し、均衡を図ることとしており、遡及改定を行わない場合であっても四月からの年間給与で実質的な均衡を図るための調整を行うことが情勢適応の原則にかなうものである。」として、「十二月期の期末手当の額において調整措置を講ずること」と述べています。
 結果的には不利益を遡及するといっているのです。人事院がここまで述べることはきわめて不当と言わざるを得ません。

性根を据えた闘いを! 
 私たち東京都の教員の基本給俸給表は、国のものを横びきしています。都段階で、この俸給表で確定すると、単に基本給が下がるだけではありません。次の額にも影響してきます。教職調整額(俸給表額×四%)や、調整手当[(俸給表額+教職調整額+調整額+扶養手当)×12%]、ボーナス[(俸給表額+教職調整額+調整額+調整手当+扶養手当)×支給月数]。
 さらに、八月から私たちの給与は再び四%カットが強行されています。賃金確定の闘いは、都段階に移ります。私たちの生活を守るために、都段階のとりくみを強化しなければなりません。 

資料1

※金額欄の数字は単位が百円、率は%
※都の号俸は43号まであります。

号俸 2級
現行俸給月額 勧告俸給月額 引下額 引下率
1
2 1666 1637 29 1.7
3 1750 1720 30 1.7
4 1842 1811 31 1.7
5 1953 1920 33 1.8
6 2025 1991 34 1.8
7 2101 2063 38 1.8
8 2179 2140 39 1.8
9 2261 2221 40 1.9
10 2376 2333 43 1.9
11 2498 2451 47 2.0
12 2620 2570 50 2.0
13 2750 2696 54 2.0
14 2882 2825 57 2.0
15 3017 2958 59 2.0
16 3157 3095 62 2.0
17 3297 3231 66 2.0
18 3427 3359 69 2.0
19 3529 3458 71 1.9
20 3629 3557 72 1.9
21 3729 3657 72 1.9
22 3814 3742 72 1.9
23 3898 3824 74 1.9
24 3976 3901 75 1.9
25 4047 3970 77 1.9
26 4112 4034 78 1.9
27 4170 4091 79 1.9
28 4224 4144 80 1.9
29 4274 4193 81 1.9
30 4323 4241 82 1.9
31 4371 4288 83 1.9
32 4413 4329 84 1.9
33 4455 4371 84 1.9
34 4497 4410 87 1.9
35 4533 4446 87 1.9
36 4559 4471 88 1.9

資料2

@2002年度(現行) 都の期末・勤勉手当

年間支給月数 4.70月分

区分 6月 12月 3月
期末 1.60 1.65 0.55 3.80
勤勉 0.45 0.45 - 0.90
2.05 2.10 0.55 4.70

A人事院勧告

6月期 12月期 3月期
2002年度 期末手当

1.45月

(支給済み)

1.85月

(現行1.55月)

0.2月

(現行0.55月)

勤勉手当

0.6月

(支給済み)

0.55月

(改定なし)

2003年度 期末手当 1.55月 1.7月 廃止
勤勉手当 0.7月 0.7月

※資料2のAを受けて、@も変更される可能性があります。


関東大震災時に
虐殺された朝鮮人追悼式のご案内

 荒川開削工事と人々の暮らしの変化を教材にしようと、足立区の小学校教師であった絹田幸恵さんが荒川土手を歩きながらお年寄りから話を聞く中で、関東大震災時の朝鮮人虐殺という痛ましい事件を知ったことを契機に「追悼する会」が発足してから、早や二十年以上たちました。未だ追悼碑を建てることは実現していませんが、新聞などにも取り上げられ、参加する人たちも多方面に広がってきました。
 一方、石原知事による東京防災レスキューという軍事訓練さながらの防災訓練が実施され、排外的な民族差別発言が繰り返され、また、小泉内閣による憲法改悪に連動する有事法制の動きは、この国のあり方を根本から変えようとしています。
 こうした中で行なわれる「追悼式」です。墨田教組の皆さんの多くの参加を期待しています。
 日時 九月七日(土)三時より
 場所 荒川河川敷京成線「八広」駅下車
 主催 「グループ ほうせんか」
  「関東大震災時に虐殺された
  朝鮮人の遺骨を発掘し追悼する会」

二〇〇二年度 教研集会全体会 
   十月二日(水)午後二時半
   すみだ女性センター
 記念講演は、神野直彦さん(東京大学教授)

「競争社会」か「協力社会」か。神野直彦さんの著書「『希望の島』への改革」(NHKブックス)の中で強調されているキーワードだ。
 日本は今、この「歴史の峠」を、「競争社会」への道を目指して超えようとしている。「競争社会」をめざして邁進しさえすれば、「活力ある社会」という「希望の明日」が待っていると吹聴されているからである。「競争原理」では、自己が勝者となれば他者が敗者となり、他者が勝者となれば自己は敗者となる。そのため確かに、勝利を求めて競い合う「競争社会」が実現すれば、強者が勝者となり、強者が強者として生きていくことのできる「活力ある社会」の夢が結ぶことになる。しかし、「競争」が繰り広げられる地獄と化した「戦場」では、「競争」に敗れた敗者の屍が死屍累々と横たわることになる。実際「競争」に敗れ、自らの命を絶った自殺者の数は、一九九八年から二年連続して三万人を突破し、大規模な戦争における戦死者の数をも遥かに上回っている。
私たちの職場を見れば、この現実が少しずつ押し寄せてきている。「主任制度化」「自己申告書の提出」「主幹制度」例をあげれば枚挙に暇はない。
 反撃の拠り所をつくるお話になることを期待します。ぜひ、参加態勢を確実に組んでください。


週刊墨教組 No.1377  2002.7.18

文部科学省は研修を奨励
「自宅での研修」も容認
 文部科学省は、七月四日、「夏季休業期間等における公立学校の教育職員の勤務管理について」を各都道府県教育委員会へ通知しました。
 この通知について、一部マスコミが「『自宅で研修』認めず」との見出しでとり上げ、あたかも文部科学省が「自宅での研修」を一切認めないかのような報道をしました。
 さらに、一部の管理職は「文科省の通知」を職員に紹介し、説明するのではなく、マスコミの記事をコピーして配布し、マスコミを利用して、教員の自主的・自発的研修を規制しようとしています。なんたる姑息な態度か。
 私たちは、教育公務員特例法十九条、二〇条に基づく研修を保障させていくとりくみを今年度こそ粘り強く進め、来年度に繋げていく必要があります。

自宅での研修
 区教委は、六月十四日付け通知文の中で、「自宅での研修」に関し、「原則として認めないこと」と態度を変更しました。しかし、「『原則として認めない』とは、『例外があるとの意味』」と言明しています。文部科学省は、「自宅で研修を行う必要性の有無等について適正に判断すること」と述べています。また、教特法第二〇条二項に基づく研修に関し、「計画書・報告書の様式等については保護者や地域住民等の理解が十分得られるもの」と述べています。
 区教委と文部科学省の態度は実態的には同様です。
学校完全五日制と「研修」は別問題
 区教委及び文部科学省は、今回の「研修」に関する態度変更の理由として、学校完全五日制をあげています。そもそも、学校完全五日制は、一九九四年四月一日から、労働基準法に定める法定労働時間が週四〇時間に改正されたことを受け、今年度から実施されたものです。ようやく、他の労働者並に週四〇時間が私たちにも保障されたのです。しかし、学校現場は年々多忙化し、法定労働時間さえ守られていない状況にあります。本来行政や管理職は、労働基準法を守り、労働基準法が実体的に保障される職場にする責務を負うています。今回、「研修」と学校完全五日制があたかも関係しているかのごとくの主張は筋違いも甚だしいと言わざるを得ません。
  

資料 

    文部科学省 7月4日付通知文
「夏季休業期間等における
 公立学校の教育職員の勤務管理について」より
教育公務員特例法第20条2項に関する部分抜粋

 教育公務員特例法(昭和二四年法律第一号)第20条第2項に基づく研修(以下「職専免研修」という。)について、以下の点に留意しつつ、その適正な運用に努めること。
(1)職専免研修は、職務に専念する義務の特例として設けられているものであるが、当然のことながら、教員に「権利」を付与するものではなく、職専免研修を承認するか否かは、所属長たる校長が、その権限と責任において、適切に判断して行うものであること。 
(2)職専免研修の承認を行うに当たっては、当然のことながら、自宅での休養や自己の用務等の研修の実態を伴わないものはもとより、職務と全く関係のないようなものや職務への反映が認められないもの等、その内容・実施態様からして不適当と考えられるものについて承認を与えることは適当ではないこと。
(3)また、職専免研修を特に自宅で行う場合には、保護者や地域住民等の誤解を招くことのないよう、研修内容の把握・確認を徹底することはもとより、自宅で研修を行う必要性の有無等について適正に判断すること。
(4)このため、事前の研修計画書及び研修後の報告書の提出等により研修内容の把握・確認の徹底に努めること。なお、計画書や報告書の様式等については、保護者や地域住民等の理解を十分得られるものとなるよう努めること。
(5)なお、職専免研修について、「自宅研修」との名称を用いている場合には、職専免研修が、あたかも自宅で行うことを通例や原則とするが如き誤解が生じないよう、その名称を「承認研修」等に見直すことも考えられること。


関東大震災時に
虐殺された朝鮮人追悼式のご案内

 荒川開削工事と人々の暮らしの変化を教材にしようと、足立区の小学校教師であった絹田幸恵さんが荒川土手を歩きながらお年寄りから話を聞く中で、関東大震災時の朝鮮人虐殺という痛ましい事件を知ったことを契機に「追悼する会」が発足してから、早や二十年以上たちました。未だ追悼碑を建てることは実現していませんが、新聞などにも取り上げられ、参加する人たちも多方面に広がってきました。
 一方、石原知事による東京防災レスキューという軍事訓練さながらの防災訓練が実施され、排外的な民族差別発言が繰り返され、また、小泉内閣による憲法改悪に連動する有事法制の動きは、この国のあり方を根本から変えようとしています。
 こうした中で行なわれる「追悼式」です。墨田教組の皆さんの多くの参加を期待しています。
 日時 九月七日(土)三時より
 場所 荒川河川敷京成線「八広」駅下車
 主催 「グループ ほうせんか」
  「関東大震災時に虐殺された
  朝鮮人の遺骨を発掘し追悼する会」

教育基本法改悪反対
 8.31(土)

   13:30〜16:00
なかのZERO小ホール
  中野駅南口徒歩7分
◆コンサート QUILOMBO
◆講演 成嶋隆さん
◆市民団体・労働者・
     教職員組合からの報告
主催 反対する教職員と市民の会
賛同 新宿教祖・多摩島嶼地区教組

石原知事に公開質問状
―度重なる女性差別発言を許さない女性たちの行動に賛同をー
 すでに新聞報道などでご存知と思いますが、過日「週刊墨教組」でお知らせした石原知事の度重なる差別発言に対して、女性たちから、公開質問状を提出し、差別され侮辱された人間の怒りを表明しようという動きがやっと開始されました。小泉政権の危うさを契機に一部マスコミなどで石原総理構想が浮上していますが、昨年の教科書問題でも明らかなように、憲法・教育基本法という公務員にとって最も尊重しなければならない法規を平然と無視し、独裁的な権力を行使してはばからない石原知事に対して、厳しく対決していかなければならないと思います。
 今回の女性たちの行動への賛同のお誘いを受け私も賛同人になりました。みなさん、石原知事の一連の差別発言を糾弾し、撤回、謝罪させるようともに行動しませんか。回答は、七月十五日を期限にしてあります。

 公開質問状
 東京都知事であるあなたは、昨年十月から十二月にかけて別紙資料(1)〜(3)〔資料は本文中では省略。以下同じ〕に掲げるような女性蔑視発言を公共の場で繰り返し、今日に至るも撤回していません。発言の趣旨は「男にはいくつになっても生殖能力があるが、閉経した女性には生殖能力がなく、生殖能力を失った女性が生きているのは無駄であり罪である。それは地球にとって悪しき弊害であり、惑星を消滅させてしまうものだ」というものです。
 この発言は、女性のみならず高齢者や障害者、出産しない・できない人々を社会的に無用のものとして排除する思想につながる黙過できない発言です。
 あなたは、この一連の発言を、MXテレビでの東大教授・松井孝典氏との対談における松井氏の発言であると紹介し、また、都議会答弁では発言の趣旨を深沢七郎氏の「楢山節考」を引いて説明しています。仮に出所が他者の発言であったとしても、あなた自身が「私は膝をたたいてそのとおりだと」共感されたと報道されていますから、これらの発言はあなたご自身の見解と受け取っていいものと判断します。
 ところが私たちの検証によると、一連の発言は松井発言の趣旨とも「楢山節考」のあらすじとも違い、そもそもあなた自身の見解だと判断せざるをえないのです。なぜならば、MXテレビ「東京の窓から」のビデオを見るかぎり、松井氏は「人間圏の繁栄が「おばあさん」の出現によってもたらされたという『おばあさん仮説』」について語っていますが、「文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババア」であるとか「男は八十、九十歳でも生殖能力があるけれども」という発言はしていません。また「楢山節考」は「貧困のゆえに男女とも高齢になれば山に捨てられる」という話であり、あなたの言うような「おばあさんだけが捨てられる」話ではありません。このような曲解の中に、あなたの女性蔑視の意図が明瞭に浮かび上がっていると、私たちは考えます。
 このような発言が地方自治体の長である都知事の発言として、都議会をはじめ公の場でなされたことは、別紙資料(4)〜(6)に掲げる男女共同参画社会基本法、東京都男女平等参画基本条例、女性差別撤廃条約の趣旨に反しているばかりでなく、東京都政の民主主義と人権尊重のあり方を疑わしめるに十分なものであり、「生きていることが無駄であり、罪である」とされた女性たちにとっては存在を脅かされるに等しい「言葉の暴力」をこうむったことに他なりません。
 あなたの一連の女性蔑視発言について、下記の質問に文書にてご回答ください。

   記
1  あなたは、別紙(1)から(3)の発言を、松井孝典氏の発言の紹介としてなされていますが、私たちはこれらの発言はあなたご自身の見解の表明であると考えます。あなたご自身の見解であると理解してよろしいですね。
2 「男女共同参画社会基本法」第3条には、「男女共同参画社会の形成は、男女の個人としての尊厳が重んぜられること、男女が性別による差別的取扱いを受けないこと、男女が個人として能力を発揮する機会が確保されること、その他男女の人権が尊重されることを旨として、行なわれなければならない。」と明記され、地方公共団体は国の施策等を策定し、実施する責務を有すると規定されています。また、「東京都男女平等基本条例」第3条には、男女平等参画社会の基本理念として「一、男女が性別により差別されることなく、その人権が尊重される社会、二、男女一人一人が、自立した個人としてその能力を十分に発揮し、固定的な役割を強制されることなく、自己の意思と責任により多様な生き方を選択することができる社会、三、男女が子の養育、家族の介護その他の家庭生活における活動及び政治、経済、地域その他の社会生活における活動に対等な立場で参画し、責任を分かち合う社会」と規定され、都は「総合的な男女平等参画施策を策定し、及び実施する責務を有する」とされています。
  あなたの一連の発言は、国の法を遵守し、かつ東京都の条例を実施し推進する立場にある東京都知事としての責務に反していると私たちは考えますが、いかがですか。
3 日本が一九八五年に批准している「女性差別撤廃条約」には「締約国の義務」の一つとして、「女性に対する差別となるいかなる行為または慣行も差し控え、かつ、公の当局及び機関がこの義務に従って行動することを確保すること。」とあります。あなたの発言はこの規定にも反していると考えますが、いかがですか。
4  これらの発言は、女性に対して子どもを産むものとしてのみ存在価値を認め、閉経後は生きる価値がなく、生きているのは罪であるとする重大な女性差別発言であり、「言葉による暴力」だと私たちは考えますが、これについてあなたはどう思われますか。
5  私たちは、これらの発言の撤回と謝罪を求めます。撤回し謝罪する意思がありますか。また、公の場で釈明する意思がありますか。             以上
二〇〇二年六月二五日
 


週刊墨教組 No.1376 2002.7.11

小山さんをおくる

 

 

  寺島学校 いい学校
  あがってみたら ボロ学校
  言問学校 ボロ学校
  あがってみたら いい学校

  墨田教組 ボロ組合
  はいってみたら いい組合
  小山がいたから いい組合

寂光のなかの
アサヒビール吾妻橋本社
 レストランアラスカ
二〇〇二年七月五日に集った
人々の嘆き
ふるえる風景
鴎も墨田川も遥かにかすむ

 ふりさけみれば
 一九八七年五月三〇日
 吾妻橋アサヒビアホールに
 内田宜人を惜別したのだった
 その内田さんの
 節義/矜持を
 最もよく受け継いだのが
 小山拓二その人であった

この世に いたく踏みしだかれても
意気のくじけぬ人
どんなによろめこうと
組織を背負って立っていようとする人
身じろがぬ
うしろ姿

    *

(隅田川は夜明けに
小川のせせらぎのようなかすかな
音をたてて流れる
わたしはそれをなんどかきいたことがある)

サンダウン
   サンダウン
隅田川の西に
しずもうとする
巨きな
落日
のなかから
ふたたび
木霊する囃子歌

  寺島学校 いい学校
  あがってみたら ボロ学校
  言問学校 ボロ学校
  あがってみたら いい学校

  墨田教組 ボロ組合
  はいってみたら いい組合
  小山がいたから いい組合

     *

寒い冬
また深夜になってしまった
事務所には おれ一人きり
頼りになる相棒カトーは
さっき帰ってしまった

墨田教組は女性部でもつ
ということは認める
それにしても
執行委員会のときの
ウエキさんの態度はナンダ
おれをさしおいて
平気で私語して!
モリモトさんまで同調して反抗的態度をトル
おれは思い出し たまらなく
猛烈に孤独になって
飲み忘れたさめたコーヒーを
口にしたのだが
「なんと苦いのだろう
それでつらい気持ちでコーヒーを飲めば
かくも苦いかー
と思ったのだが

さにあらず」

こだわりのミヤサカさんの
心尽くしの
呼びかけに応えて
あまたの懐かしい人たちが馳参じる
かつての華やいだ颯爽たる風姿が
ほのかによみがえり
お互いにふっと目を細める
そしてこの地上での 勇気と決意
なかま/連帯 について
あの日あの時のように
照れないで語ってみる
青く青く
語ってみる

東京のはずれ
隅田川のかたほとり
   ダウンタウン
〈墨田教組〉という砦
ずぼらで
がさつで
はじらい深い
火のような人々

「きみのなかに残っているにちがいない
ちいさな無垢をわたくしは信ずる
それがたとえ蟻の涙ほどの小ささであっても
それがあるかぎりきみはあるとき
たちあがることができる
世界はきみが荒れすさんでいるときも
きみを信じている」

教え児にまむかう
しずかなおもざしのなかに
たたえられている
信じられないほどの
小山さんの
凛乎とした
熱と誠

    *

吾が妻という橋渡る七月かな

「かつてこの川のほとりで
流れ寄る櫛を見て
吾が妻よ と呟いた男があったとか」

小山拓二が
おつれあいを愛すること
比類ないことを
人知れずこころえた
ミヤサカさんが
さりげなく
この会場を選んだのだ

    *

刻さえちぎれて遠ざかる
遥か彼方に
ジョン・レノンよりも長髪の
小山さんがいる

あれは緑の 大興マンション反対闘争

血まみれの甲冑を静かに脱ぎ
風になびく長髪をかきあげ
涼しい眼差しの
精悍な若獅子で
あなたはあった

まちがいのような
道のりの途上で出遇った
ああ 
なんと
「無私の人」
先をいくあなたの背中をたよりに
つきしたがってきた

まっとうであること
炎であること
あなたからこぼれる
珠玉のかけらを
何とたくさん
受け取ったことだろう

漆黒の闇のなか
夜の果てへの旅はいやおうなしに続く
続けねばならない
いかなる長い道のりであろうと
残り火を掻きたて掻きたて
あなたが残した足跡をたどる
まっとうに
炎となって

それが あなたへの返礼である

長谷川政國(両国小)

注 ( )「 」内は、向島生まれの不世出の抒情詩人、辻征夫の詩句です。




週刊墨教組 No.1375 2002.7.4

日本語学級を通じて、真の国際理解教育を

 本年度より、堤小学校に「日本語学級」が開設された。日本語のできない・わからない渡日の子どもたちへの学習・生活保障として、たいへん喜ばしいことだ。当日の学級公開案内は、校長名で各学校に配布されていた。区内にこのような教室が開かれて、どのようにして、子どもたちが学びあっているのかを、知ることも大切なことなので、参加してみた。担任二人と、通訳介助の3人で教えていらした。私が教室に着いた頃には、三人の先生が二人ないし一人の児童と向かい合って、個別指導をされていた。すでにほかの学校の七人くらいの見学の人も見えていた。担任は、タイの三年生の男の子に、カードの言葉を丁寧に教えていらした。そのそばでタイ人の母親も、熱心に日本語の単語を短文に組み合わせて、となりで学んでおられた。

日本語学級への通級制で
     より多くの受け入れを

 参観のあとに、話し合いが持たれた。会の最初に、校長から、「日本語を習う児童が、この学校にたくさん入ってこられたら、国際化教育ということで、特色ある学校の一つになる。」という趣旨の話から始まった。出された問題点は、次のように集約される。
☆学習言語と生活言語の違い
 どこの学校でも、外国から来て、日本語がほとんどわからないまま転入してくる児童がいるに違いない。そのような場合は、通訳介助として、要請があれば区から三ヶ月の間、派遣してくれる(延長可能)。ただし、一回二時間で週二日という条件である。通訳介助であるから、あくまでも通訳を目的としているが、現場では日本語を教えると勘違いされている方もいる。日本語を学習するのは、日本語学級に来て、きちんと系統的に教えていかないと、身につかないのが現状である。一年も暮らしていれば、日常会話も自然に覚えるので、日本語学級に通わせないままにしてしまう事例が多い。

本年度より堤小に日本語学級開設
 今年度、堤小には十五人の渡日・帰国児童が在籍しており、日本語学級には、十二人の児童が、通級している。堤小以外からも、三名が通級として通ってきている。バスや電車に乗り継いで、通ってきている児童もいるが、交通費は自己負担であるという。このような通級制度のあることすら知らない家庭並びに教師もいるに違いない。様々なところで、「日本語学級のご案内」をすることが必要である。

教育委員会は、転入時に
     「日本語学級」の紹介を

 理想的には、その児童を堤小に転入させて、そこに開設されている教室に通わせるのが、もっとも望ましいあり方である。しかしながら、一度転入(入学)した児童を、堤小に転校させるのは、様々な問題点が生じる。堤小の学区内に引っ越さなくてはならない場合も出てくる。一度受け入れながら、堤小を勧めるのは、親の誤解も生じやすい。区内のほとんどの学校で、児童数が減少しているので、その児童を確保しておきたいという気持ちも出てくる。いずれにしても、教育委員会の方で、転入手続きをするときに、日本語学級の紹介を説明して、その親に選択制を持たせる配慮が必要である。区内には、外国籍を持つ児童が百十七人位いる。日本国籍になっていても、日本語がうまく話せない児童を入れたらその数は、もっと増えるだろう。その児童をすべて、堤小に受けいれたら、堤小の方でも厳しいものがあるだろう。

民研定例部会での話し合い
 四時半を超え、堤小主催の「学級公開」は、閉じられた。そのあと、民研定例会に切り替えられた。そこでの話し合いは、次のように整理された。
☆会話ができることと、日本語をきちんと覚えることとは、基本的に違う。
☆日本語をしっかり身につけてから、日本の学校へ戻してあげることが大事。
☆他校から、通級で来る児童には、交通費を負担するように区に働きかける。
☆外国人の親から日本語を習うことは、皆無である。母国語を忘れさせないことも大切である。日本語は、日本語を使う学校や日本語学級で習うことが大切。
☆日本に住んで、外国人としての誇りを持たせながら、日本語を学んでいくことが大事。
☆何も日本語を知らない児童が日本の学校に転入してきたら、日本の学習に無理なく定着するには、三年から五年かかると言われている。
☆親にも日本語を教えていく必要がある。
☆外国人という差別意識は、日本の中では強く残っている。親同士のつながりと、その児童が通う学校や学級で、真の国際理解教育をしていく必要がある。

臨時のにわか講師(おまけの話)
 担任に紹介されて、その母親に急きょ日本語を教えてみたらと誘われて、臨時の指導をさせていただいた。日本に来て、まだ二年経っていないというのに、結構じょうずに日本語を話される。「日本語で難しいのは、何ですか。」と尋ねてみたら、「て・に・を・は」などの助詞の使い方だという答えが返ってきた。単語を組み合わせた短文を添削してほしいと頼まれたので、すぐにみてみたら、やはり助詞の使い方に苦労されていた。助詞の「が」については、鼻濁音で発音することも付け加えた。ついでに、日本の子どもたちもよく間違える「長音」の書き方と発音の仕方を説明してみた。つまり、「え」段と「お」段の単語は、のばす字と発音が違うということが、わかりずらいこともわかった。「え」段の長音には、例外の字もあるので、日本の子どもたちも良くつまずくところである。「とおくのおおきなこおりのうえをおおくのおおかみとおずつとおった。こおろぎ、ほおずき。」(「お」段の例外)「ねえ、おねえさん、ええ」(「え」段の例外)。母親は、熱心にノートに、それをメモしておられた。「あいうえお」から始まる清音は、「段」と「行」に分けられていることも、説明したら、それも一生懸命メモされていた。そのあと、麦書房の「文字の本」の文章を読んでもらったら、結構きちんと読めていたので、びっくりした。あとからお聞きしたら、「この方は、たいへん熱心なお母さんです。」という説明を受けた。
帰り際に、「おはよう・こんにちは・こんばんは」(サワデイカッ)「ありがとう」(コックンカッ)「さようなら」(ラコン)というタイ語を教えていただいた。このお母さんには、一日も早く日本語が上手になられることを願うばかりである。

 学級公開の話し合いの時、おいしいコーヒーなどお世話いただいた教頭先生が、帰りぎわに、わざわざ職員室から校庭の方まであいさつに出てこられた。気持ちよく学校をあとにした。
(記録・教文部)


週刊墨教組 No.1374 2002.6.28

教え子を再び戦場に送るな!
  違憲・有事法制を許すな!(五

反戦・平和教育の前進のために
墨田教組フィルムライブラリー・ビデオリスト

原爆関係

にんげんをかえせ
     VHS 一六ミリ 二〇分
 「 フィート」運動で米国から入手した広島・長崎のフィルムと、被爆者の証言により構成。原爆の恐ろしさ、悲惨さをわかりやすく訴えた作品。原爆投下後に、米国戦略爆撃調査団が撮影した市街地の詳細な写真、病院で手当てを受ける人々。一ヵ所に集められて焼かれる人々…。悲惨な状況を生々しく伝える貴重なフィルムで構成。

広島から子どもたちへ(全三巻)
        VHS 各二十二分
      広島平和教育研究所作成
 「ヒロシマ」―原爆の三つの破壊力・威力(熱線・爆風・放射能)とそのもたらした被爆の実相を明らかにする。また核兵器の現状についてふれて、人類存立の命運をかけて核兵器廃絶を実現しなくてはならないことを訴える。
 「ヒバクシャ」―被爆者が心と体に受けた傷跡を明らかにし、被爆者の証言を軸に現状について問題提起する。
 「炎の中に『げんばく』をみた」―「頭と心と身体で学ぶ原爆・平和学習」を提唱し、その具体的事例を記録したビデオ。

黒い雨―広島・長崎原爆の謎
 ドキュメンタリー VHS 四五分
 四〇年ぶりに発見された壁にくっきりと残る染みとさまざまな証言から、黒い雨の成分を化学分析。
 広島と長崎に原爆が投下された直後、爆心地周辺に万年筆大の黒い雨が降った。一体この黒い雨の正体は何なのか…? その謎に迫る。

もうひとつのヒロシマ
   強制連行―そして被爆
          VHS 五八分
 日本による朝鮮侵略の結果、国を失い、土地を失い、生きるために日本に来ざるを得なかった、あるいは強制連行された朝鮮の人々。そのなかには広島・長崎で原爆の被害者にされるという二重の被害を受けた人々もいる。全被爆者の一割はこれらの人々。
 彼らは今なお日本政府から何らの謝罪も補償も受けず、差別された状況下に呻吟している。
 こうした韓国・朝鮮人被爆者の証言を中心につくられたドキュメンタリー。

ひろしまのピカ
  カラー・アニメ VHS 二五分
 同名の絵本「ひろしまのピカ」(絵と文・丸木俊)を土本典昭監督が映像化したもの。音楽を小室等、語りを中山千夏・竹下景子が担当。

夏服の少女たち
 カラー・アニメ VHS 一六ミリ
 広島県立第一高女一年生二百人は、強制疎開のための建物取り壊し作業中原爆にあい、全員被爆死。彼女達は、母親たちのお古をほどいて夏制服を完成させたばっかりであった。
 アニメとドキュメンタリーを合成した演出方法で構成。

はだしのゲン 1
   カラーアニメ VHS 八四分
 物語は戦争中の広島から始まる。ゲンの父親は戦争反対を叫び軍部につかまる。ゲンの一家は「非国民」呼ばわりされるが、国民学校二年生のゲンは弟の信次と力強く生きる腕白少年。一九四五年八月六日広島に原爆が投下され、一瞬の内に父・姉と弟を奪われた。奇跡的に助かったゲンは、廃墟の広島で母を助け生き抜く。

はだしのゲン 2
   カラー・アニメ VHS 八八分
 ゲンの母の原爆症発病から死亡までを軸に描く。母親はゲンに背負われて病院に行く途中で命の灯を消す。「わしゃ麦になるんじゃ! 厳しい冬に芽を出し、何度踏まれてもまっすぐに伸びて実をつける麦になるんじゃ」ラストシーンのゲンの叫びが子どもたちの共感を呼び胸をうつ。大人たちの忘れていた心をよみがえらせてくれる。

つるにのって とも子の冒険
   カラー・アニメ VHS 三〇分
 フランスで原爆被害の実相を紹介する活動をしているミホ・シボさんのよびかけでつくられた「世界の子どもに平和のアニメを贈るピース・アニメの会」によって製作が実現した作品。

「クロがいた夏」
  カラー・アニメ VHS 八〇分
 被爆四十五周年記念企画の長編アニメ。戦争という時代のなかで、一人の少女とその家族の生活、そして、その生活と子ネコ「クロ」の命を一瞬のうちに奪った原爆の悲劇を通して、平和と命の大切さを描く。「はだしのゲン」の作者、中沢啓治の作品。

沖縄ー最後の死闘
カラー・ドキュメント
VHS 四〇分
 一九四五年三月二十三日、米連合艦隊は沖縄本島に向けて猛烈な艦砲射撃を開始、太平洋戦争最後の幕が開いた。「ひめゆり部隊」が、「鉄血勤皇隊」の多くの学徒が、島民十万人と共に犠牲となった。約三ヶ月の攻防戦の末、日本軍は玉砕した。

ドキュメント沖縄戦
記録映画カラー
VHS 五七分
 戦後五十年沖縄戦記録映像総集編。十二年にわたる一フィート運動で入手した沖縄戦の記録映像(沖縄戦記録フィルム一フィート運動の会)。

かんからさんしん
カラー・アニメ
VHS 七八分
 沖縄に米軍が上陸し、兵隊も島人も洞窟壕に追いつめられた。誰もが死を覚悟したとき聞こえてきた島唄。空き缶で復元した三線が命の歌を思い出させる。

対馬丸ーさようなら沖縄
カラー・アニメ
VHS 七五分
 学童疎開船「対馬丸」遭難は、一六六一人中生存者一五六人という惨事だったが、戦後まで知らされなかった。疎開をするものも地獄、残るのも地獄の沖縄戦の実相を伝える映像。

沖縄ー未来への証言
記録映画カラー VHS 五五分
沖縄ー未来への証言
戦後四五年記念普及版カラー
VHS 三二分
 なぜこんなに沢山の遺骨が収集されるのか、なぜこの島々であんなにも激烈な地上戦が行われ、悲惨な住民犠牲が生じたのか、さらにどうして現在の基地におおわれた沖縄になったのか、次々に新たなる問いかけを生んでいく作品。

戦場ぬ童(いくさばぬわらび)
カラー・ドキュメント
VHS 一六ミリ 二六分
 橘裕典監督の作品。沖縄戦四〇周年記念映画として製作。子どもの頃、地獄の戦場をさまよった人々の生々しい証言をもとに、沖縄戦の実態を子どもたちに的をしぼって描き、しかし基地の島沖縄では「戦世(いくさゆ)」はまだ終わっていないと訴える。


週刊墨教組 No.1373 2002.6.27

 墨田区教委生方指導室長は、六月二五日、組合に対し「研修承認願・研修報告書」の記載について、墨田区教委としての態度を明らかにしました。
命令研修は旅行命令簿への記載で実務的に処理しますが、教特法第二十条第2項に基づく研修については、「研修承認願・研修報告書」により、職務専念の義務が免除されるとともに給与の減免が免除されるものです。
今回、様式が変更になったのであり、「研修承認願・研修報告書」の性格が変更されたわけではありません。

様式変更についての区教委の態度

 今回の様式の変更は、研修願・研修報告の書式整備を通じて、教員の自主的、自発的に行うべき「研修」を教育行政として奨励しようとすることが趣旨である。個々の教員の自主的、自発的な「研修」を規制するものではなく、そうした意図もない。

 記載について
T.承認願、報告書は課題ごとに記載する。
U.研修願い
1 期日
  研修課題ごとに、その研修に要する日時を記載する。土曜・日曜・祝日を間に含んでもかまわない。(但し、研修日数は土曜・日曜・祝日を減じた日数になる。)
  研修時間の記載は各学校の時間休暇の例による。
2.研修会名・研修課題
 研修会名、または研修課題が記載してあればよい。
3.主催者・主催団体
 主催者、主催団体があるものはこれを記載する。
4.場所
 研修する場所を記載する。複数の場合もありうる。
5.目的-------------内容が明らかにされていればよい
6.内容-------------内容が明らかにされていればよい。
7.期待される
   研修の効果-----内容が明らかにされていればよい
V.研修報告書
 1〜6までは「研修願」と同様 
 (研修成果については、成果が不十分の場合も起こり得る)
7.所感
  感想等を記載する。
※今後、「承認研修」についてはこの様式1、2を使用する。
※パソコンで記載してよい。
※図書館を利用する場合、利用した書籍名を記載する必要はない。報告書で研修の成果が明らかにされていればよい。

「自主研修」を保障させるとりくみを!
 長期休業中等における「自主研修」について、今回の区教委交渉で一応終結しました。 今回の変更点は、
@教員の自宅を研修場所とすることは、原則として認めない、
A研修承認願・研修報告書の様式を変更する、
の二点だけです。教員にとって研修は本務であります。しかも、教員には、教特法第二十条2項「教員は、授業に支障のない限り、本属長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修を行うことができる」との規定により、いわゆる「自主研修」が保障されています。従来と比べて、「研修場所」についての扱いが厳しくなりましたが、変更になった今年度こそ「自主研修」を実体的に保障させていくとりくみが極めて大切です。 


朝鮮・日本 虹の掛け橋コンサート
 7月9日(火)6時半開演
 曳舟文化センター 大人2000円
   
(前売り券あり 希望者は書記局にご連絡ください)

週刊墨教組 No.1372 2002.6.20

研修は教員の本務
   研修権を保障させるとりくみを
 
現行との変更点は2点
@ 教員の自宅を研修場所とすることは、原則として認めない
A 研修承認願、研修報告書の様式を変更する

 墨田区教委は、六月十四日、近藤教育長名で「教育公務員特例法第20条第2項に基づく研修の取扱いについて」と題する通知文(資料参照)を出し、先記2点について変更することを明らかにしました。この変更は、教員の服務の見直しとして、都教委による圧力により墨田区教委が行ったものと考えられます。今回の変更が、教員の本務である研修はどうあるべきかの論議から発せられたものでないため、様々な矛盾を孕んだまま実施に入ります(二〇〇二年度夏季休業日から実施)。矛盾が有るが故に、今後職場では「研修」をめぐって混乱が生じることが予想されます。私たちはあくまでも自主的、自発的、主体的に行うべき「研修」の機会を保障させていくとりくみを、粘り強くすすめていく必要があります。

 教育公務員特例法十九条・二〇条は
       何ら変更されていない
 研修

十九条 教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。
 2 教育公務員の任命権者は、教育公務員の研修について、それに要する施設、研修を奨励するための方途その他研修に関する計画を樹立し、その実施に努めなければならない。
研修の機会
二〇条 教育公務員には、研修を受ける機会が与えられなければならない。
 2 教員は授業に支障がない限り、本属長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修を行うことができる。
 3 教育公務員は、任命権者の定めるところにより、現職のままで、長期にわたる研修を受けることができる。

 教員の研修のあり方は、一般の公務員の研修(国公法七三条、地公法三九条)の扱いと異なって、教育公務員特例法(以下教特法)で特別に規定されています。創造的な教育活動を営むには、日常不断の研修(研究と修養)活動が必要不可欠であることを教特法十九条で保障しているのです。
 一般の公務員の研修は、その規定から明らかなように勤務能率増進上のいわばその手段として他律的に課せられたものです。しかし、教員の研修は、その職務遂行上不可欠なものとしてあり、他律的に課せられるものではなく、自主的、自発的、主体的におこなわれるべきものです。また、二〇条2項で、いわゆる承認研修の機会を保障しています。
 今回の変更にあたって、先ずこの点を押さえておく必要があります。

変更点は二点
 生方指導室長は、墨田教組・都教組墨田支部に対し、二〇〇二(平成十二)年四月一日付け文書(資料参照)との変更点を先記@A点であることを言明しています。変更点は二点だけです。「承認研修のとり扱い」や「長期休業中の勤務」について、この二点以外にも変更があったかのように話す校長がいるとしたら、それはまったくの誤解か、意図的な曲解です。
 間違いがあるなら正さねければなりません。

「原則」の意味
 今回の通知文には、6―(1)―ウ、「研修場所については、研修内容からみて妥当な場所であり、合理的かつ必然的な理由を有すること。なお、教員の自宅を研修場所とすることは、原則として認めないこと。」があります。前段の「研修場所…理由を有すること」は今回新たに区教委が扱いを変更した点ではありません。ですから、従前と同じように当然扱われるべきものです。問題は後段部分「教員の自宅を研修場所とすることは、原則として認めないこと」にあります。行政用語として「原則として」は、「例外」があることを意味しています。「原則として認めない」とは、「認める場合がある」ことです。研修をするにあたって、研修の成果がよりあがることが期待できるとすれば、それで十分な理由になると考えられます。

「自主研修」を保障させるとりくみを!
 教育基本法十条2項では、教育を発展させるに必要な外的諸条件を整備することを教育行政の任務としています。教員の自主的な研修活動を援助・奨励するために条件整備をおこなうのが教員行政の任務です。研修は、個々の教員の正規の勤務そのものです。自主的、自発的、主体的におこなう研修こそ、その成果が期待できるのです。今回の変更にあたってもこの点は何ら変わるものではありません。区教委は教特法を遵守する立場にあり、区教委には研修の機会を保障する責務があります。区教委が研修内容・方法に介入することはありません。私たちはあくまでも自主的、自発的、主体的に行うべき「研修」の機会を保障させていくとりくみを、粘り強くすすめていく必要があります。


資料 区教委文書

14墨教指第334号
平成14年6月14日


各学校(園)長 様

墨田区教育委員会  
教育長 近藤舜二(公印省略)


教育公務員特例法第20条第2項に基づく研修の取扱いについて

近年、教育行政における透明性、整合性が強く求められ、公務員の服務に関する社会の目も厳しさを増しています。また、今年度からは学校週五日制の完全実施により、長期休業期間中におけるいわゆる週休日のまとめ取りがなくなり、教育公務員の服務の取り扱いについても社会情況(ママ)の変化に適切に対応することが必要となっています。
つきましては、標記の件について下記のとおり取り扱いますので、貴職におかれましては、所属職員に対して充分周知徹底するとともに、今後の事務取扱いについて適切に処理願います。

1 教育公務員特例法第20条第2項に基づく教員の研修は、校(園)長の承認を受けて行われるべきものであり、同条同項による研修が自己の自由な時間であるかのような誤った観念があるならば是正するよう努めなければならないものであること。
2 長期休業日、開校記念日、都民の日は勤務を要する日であり、勤務場所は原則として所属校であること。
3 教員に対し授業に支障のない範囲において研修を承認する場合、校(園)長は、事前に研修承認願(別添様式1)を提出させ、真に研修として値するものについて承認し、研修させるよう取扱うこと。
4 校(園)長が研修を承認したものについては、研修終了の後、研修報告書(別添様式2)を提出させること。
5 教員が、研修を行うことを校(園)長から承認された場合には、職務専念の義務が免除されるとともに、学校職員の給与に関する条例施行規則第6条の2第3項(昭和37年東京都教育委員会規則第28号)または幼稚園教育職員の給与に関する条例施行規則第9条第3項(平成12年墨田区教育委員会規則第8号)の規定により給与の減額が免除されるものであること。
6 教育公務員特例法第20条第2項に基づく教員の研修についての取扱いは次のとおりとする。
(1) 承認研修の承認範囲
 ア 承認研修の対象となる研修内容は、教員の職務、特に、幼児・児童・生徒に対する教育活動との関連を明らかにできるものであること。
 イ 病気療養、家族旅行、自己のレジャー活動等私事並びに勤務場所で処理すべき業務を勤務場所外で処理することについては、当然、承認研修の対象とならないこと。
 ウ 研修場所については、研修内容からみて妥当な場所であり、勤務場所を離れる場合には合理的かつ必然的な理由を有すること。なお、教員の自宅を研修場所とすることは、原則として認めないこと。
(2) 承認申請の方法
 ア 承認申請は、連続する同一内容の研修毎に申請する。ただし、春季休業期間については、年度別に申請すること。
 イ 研修日を変更する場合は、事前に、変更の承認申請を行うこと。
(3) 承認申請の様式
 ア 承認研修の承認申請は、研修承認願(別添様式1)によること。
 イ (2)イによる変更については、研修承認願(別添様式1)により変更の承認申請を行うこと。ただし、報告については一括して差し支えない。
(4) 研修報告
   承認研修の報告は、研修報告書(別添様式2)によること。
7 実施時期  平成14年度の夏季休業日から実施する。

さらに資料 

11墨教学指第776号
平成12年4月1日
各学校(園)長 様
墨田区教育委員会
教育長 近藤舜二
(公印省略)
教育公務員特例法第20条第2項に基づく研修の取扱いについて

このことについて、下記のとおり実施するので、各学校(園)長においては、所属職員に対して充分周知徹底するとともに、今後の事務取扱いについて適切に処理願います。

1 教育公務員特例法第20条第2項に基づく教員の研修は、校(園)長の承認を受けて行われるべきものであり、同条同項による研修が自己の自由な時間であるかのような誤った観念があるならば是正するよう努めなければならないものであること。
2 教員に対し授業に支障のない範囲において、研修を承認する場合、校(園)長は、事前に研修承認願い(別添様式1)を提出させ、真に研修として値するものについて承認し、研修させるよう取扱うこと。
3 校(園)長が研修を承認したものについては、研修終了の後、研修報告書(別添様式2)を提出させること。
4 教員が、研修を行うことを校(園)長から承認された場合には、職務専念の義務が免除されるとともに、学校職員の給与に関する条例施行規則第6条の2第3項(昭和37年東京都教育委員会規則第28号)又は幼稚園教育職員の給与に関する条例施行規則第9条第3項(平成12年墨田区教育委員会規則第8号)の規定により給与の減額が免除されるものであること。
5 長期休業期間中における教育公務員特例法第20条第2項に基づく教員の研修についての取扱いは次のとおりとする。
(1) 承認研修の承認範囲
   承認研修の対象となる研修内容は、教員の職務、特に、幼児・児童・生徒に対する教育活動との関連を明らかにできるものであること。
   病気療養、家族旅行、自己のレジャー活動等私事については、当然、承認研修の対象とならないこと。
(2) 承認申請の方法
 ア 長期休業期間中における承認研修の承認申請は、各長期休業期間毎に行うこと。ただし、春季休業期間については、年度別に承認申請を行うこと。
 イ 研修日を変更する場合は、事前に、変更の承認申請を行うこと。
(3) 承認申請の様式
 ア 長期休業期間中における承認研修の承認申請は、研修承認願(別添様式1)によること。ただし、「期間」欄の余白に個々の研修日を記載するか、又は、個々の研修日を明らかにしたものを添付すること。
 イ (2)イによる変更については、研修承認願(別添様式1)により変更の承認申請を行うこと。
   ただし、報告については一括して差し支えない。
(4) 研修報告
   長期休業期間中の承認研修の報告は、研修報告書(別添様式2)によること。ただし、「期間」欄の余白に個々の研修実施日を記載するか、又は、個々の研修日を明らかにしたものを、添付すること。
   また、夏季休業期間において、相当日数、承認研修を行った場合には、研修報告書に、研修結果を具体的に記載したものを添付すること。
   


週刊墨教組 No.1371号  2002.6.13

教え子を再び戦場に送るな!
  違憲・有事法制を許すな!(四)

映画のご紹介

「プロミス」
 ジャスティーン・シャピロ、B.Z.ゴールドバーグ共同監督
 プロミス映画プロジェクト製作
 2001年ロッテルダム国際映画祭観客賞その他多数受賞
 去年9月11日の同時多発テロ事件は、私たちの前にアフガニスタンという国をにわかにクローズアップさせました。それ以前にバーミアンの石仏がタリバンによって破壊されたときにも、仏像破壊という文化遺跡の破壊に対する憤りはかきたてられても、仏像の存在するアフガニスタンの人々の生活について案じる報道は無かったのです。
 事件以前の映画「カンダハール」を製作・監督したイランのモフセン・マフマルバフは、その著『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない、恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』(2001年11月、武井みゆき・渡部良子訳、現代企画室)の中で、「ついに私は、仏像は誰が破壊したのでもないという結論に達した。仏像は恥辱のために崩れ落ちたのだ。アフガニスタンの虐げられた人々に対し世界がここまで無関心であることを恥じ、自らの偉大さなど何の足しにもならないと知って砕けたのだ。」と書いています。しかし、今でもアフガニスタンに対する米・英の空爆・地上破壊は進行中であるのに、もうアフガニスタンの人々の生活に関する情報は極めて少なくなってしまいました。
 このような中、以前から紛争の継続しているパレスチナ問題が緊急を要する事態になっています。シャロン首相の強引な武力を伴ってのパレスチナ人の追放・イスラエル人の入植地建設に対して自爆テロという非常手段に訴える抵抗が激化してきたのです。
 今回ご紹介する「プロミス」という映画は、声高にパレスチナ・イスラエル問題を訴える映画ではありませんが、パレスチナとイスラエルに住む、7人の子どもたちの眼を通して和平の可能性を考える映画です。極めて近いところに住みながら、検問所という理不尽な垣根によって、地球の反対側にいるような存在にさせられている両地域の子どもたちを3年間にわたって、カメラは追い続けます。そして、イスラエル出身のB・Z監督によって両地域の子どもたちが出会う場面が設定され・・・。
 あまり多くを紹介しないほうがよいでしょう。素直に映画を見て、パレスチナのことを考えて見ませんか。
 この夏、BOX東中野で上映されます。当日券1800円のところ、1400円の特別鑑賞券が少しありますので、ご希望の方は、組合事務所までお問い合わせください。


週刊墨教組 No.1370号  2002.6.6

勤評抜擢特昇反対!   業績評価なにするものぞ!

  五月三一日 都教委、実施案を提示

 五月三一日、都教委は今年度の成績特昇実施案を提示しました。その特徴的な内容は、次の四点です。
 @実施区分は、 12 短 6短 3短の三区分とする(昨年度と同じ)
  措置者定数  12短 5% 6短  10% 3短  10%
  推薦者数   12短 7% 6短  13% 3短  13%
 A業績評価の評定を基礎とした推薦書等により決定
 B採用二年目(平成三年度採用)の者は、成績特昇の推薦から除外
  (ただし、他の道府県教員経験のある場合は、3短、6短の推薦対象とすることができる)
 C五八歳以上の欠格基準をはずし、年齢による昇給停止者も特昇の対象者にする(最高号俸に達している者は除外)

士気を高揚するには 「昇給停止」を撤廃すること
 今年度、年齢による昇給停止者も特昇該当の対象者にするとしています。
 五五歳以上昇給停止が強行され、現在経過措置期間ですが、今後確実に年齢による昇給停止者は増加していきます。昇給しなくなれば、士気が揚がらなくなるのは当然です。それを、「特昇」によって、競争原理によって解消しようとの考えは、あさはかであり、私たちを愚弄するもので、許すことができません。

連続抜擢特昇は有り得るのか!
 都教委は、「成績主義の一層の推進」と称して、昨年度から連抜禁止規定を廃止しました。その際組合に対し、「特定の人に毎年連続して特昇を措置することを奨励するものでない。成績特昇の実施にあたっては、その効果が次年度以降に及ぶことを十分に認識し、措置者の推薦と決定が公正に行われるように努めていく。」と答えています。連続抜擢者が出ることは、校長が他の職員の能力を引き出せなかったことを意味するものです。「奨励するものでない」というのは、「すべての職員の能力を引き出すことこそが校長の職務である」という意味であり、また、「公正に行われる」とは、恣意的な抜擢があってはならないことを意味しています。

業績評定により決定ー成績主義の徹底
 Aに最大の問題点があります。つまり、人事考課制度による「業績評価の評定」によって特昇者を決定するということです。
 形としては、従来通り校長に推薦させ、その中から都教委が決定するとしています。しかし、校長が推薦するに当たっては、「業績評価の評定を基礎とすること」と枠をはめているのは、業績評定による実施を前提としていることを示しています。
 重ねて「推薦書等により決定」とし、「推薦書」だけで判断するのではないということを明らかにしています。「等」の中に、区教委による五段階相対評価による「業績評定」を含ませていることは間違いありません。

成績主義管理の徹底に反抗し続ける
 私たちは、成績主義に基づく勤評抜擢特昇にあくまでも反対します。
 成績主義管理の徹底は、〈なかま〉〈ゆとり〉〈決定権〉を確実に奪います。これらの喪失は、人間的感情、関係、いとなみ、感覚の頽廃、つまり人間の内面の頽廃を導き出さざるを得ません。私たちは、これに徹底的に反抗する立場から、成績主義に反対してきました。
 今年度の特昇は、成績主義管理徹底の一環です。あくまでも反対し、具体的なとりくみを進めます。


教え子を再び戦場に送るな!
  違憲・有事法制を許すな!(三)



週刊墨教組 No.1369号  2002.5.30

長い間ご苦労さまでした
「小山さんを囲む会」開催について

 一九六四年以来、墨田の地で一小学校教員として子どもたちと共に学び合ってきた小山さんが、この三月に定年退職されました。
 小山さんは、七十年からは組合役員として途中五年間の専従期間をふくめ、墨田区教職員組合の運動を担い、特に八九年からは委員長としての重責を果たしてこられました。
 労働組合として自立性・原則性に基づいて闘う墨田、「ひとりの子も切りすてない教育」のスローガンに象徴される教育運動を担う墨田の作風を、内田元支部長と共に創り出し、その発展のために力を尽くされた小山さんは、地域に根差した教育の実践者でもありました。
 近年の厳しい情勢の中でも、常に闘いへの志は高く、粘り強く牽引してこられたことは、皆さんご承知のところであります。
 長年のご苦労に感謝し、あらためて闘いを引き継ぐ私たちの決意を固めていくために、「囲む会」を、左記の通り開催いたします。
 基本的に組織内の人々による会とします。参加を希望される方は、六月七日までにFAX(三六二二-五七七一)にて、お申し出ください。

とき  七月五日(金)
     午後六時三十分〜八時三十分
ところ レストラン・アラスカ吾妻橋店
  (アサヒビール本社ビル F)
会費  一万円(記念品代をふくむ)

「一人の子も切りすてない教育」の
         原点に立ち返って
民研活動を継承・発展させよう

 今年度も「一人の子も切りすてない教育」というスローガンのもと、反戦平和・反差別の教育を基本課題として、墨田民主教育研究所(墨田民研)の活動を出発させます。 従来、墨田教組は民研活動を全組合員の参加による、組織的な研究と位置づけて活動してきました。その成果の蓄積は、墨田の各学校における教育実践の指針として大きな役割を果たしてきました。
 しかし、ここ数年来、強制異動による組合員の減少化は、各職場での実践と民研活動にとってきわめて困難な状況をもたらしています。だからこそ私たちは、この厳しい状況の中で、墨田教組の教育闘争の理念と実践の蓄積を守り、継承・発展させていくために、「一人の子も切りすてない教育」の原点に立ち返って、民研活動を強化していかなければなりません。
そこで、今年度は、民研定例会を発足して、組合員はもとより、関心のある方に数多く参加していただき、参加者相互の親睦も深め内容の充実を図っていきます。
今のところ取り上げてみたい課題は次のようなものを考えています。「日本語学級の現状と今後の課題」「ジェンダーフリーの視点からの性教育」「総合学習・命・人権」「管理強化と職場闘争」。「被差別の側に立つ同和教育」等を考えています。テーマの内容は、参加者の意見によって広がっていくものと予想しております。積極的に民研活動に参加してください。
なお、十月教研は従来どおり全体会と、分科会は行っていきます。今のところ、定例会は六月、九月、十一月、二月の四回を予定しております。


週刊墨教組 No.1368 2002.5.23


教え子を再び戦場に送るな!
  違憲・有事法制を許すな!(二)


武力攻撃事態政府見解(要旨)
1武力攻撃事態

2「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」

3「武力攻撃のおそれがある場合」

教え子を再び戦場に送るな


第十九回墨田教組平和教育研究集会


・とき  六月五日(水)二時から
・ところ すみだ女性センター ホール
・講師  渡 寛基さん
    (中央学院大学講師)
・テーマ 憲法の平和主義を教育に生かすために
・内容  有事法制関連三法案が国会で審議されています。国家が国民を侵略戦争に総動員した歴史的事実に対する深い反省から、憲法の平和主義は生まれました。その意義をあらためて問いなおします。

中国引き揚げの子どもたちを
サマーキャンプへ!


 私たちは、毎年夏休みを利用して中国引揚げ・渡日の子どもたちとサマーキャンプを行っています。
 墨田区内の小中学校には、中国を初め日本以外の国に生まれ育ち、その国の文化・言語を身につけてから日本に来た、日本で生きることになった多くの子どもたちがいます。そして、これらの日本へきた子どもたちは、本人が望んで日本に来たわけではないという共通の前提をもちます。そして、この子どもたちの受け入れ態勢はどうかと考えると、多くの課題があると言わざるを得ません。
 今年度、日本語学級が発足し、どの国や地域の出身の子どもであろうと、系統立った日本語指導が受けれらるようになり、学力保障が期待できるようになりました。
 と同時に、すべての学校で、出身の国・地域に誇りが持て、学校内に自分の居場所がある、自分の思いが受け止められる、そのようなとりくみが望まれています。
 これら日本語を母語としない子どもたちが、自分の文化に誇りをもち、日本文化も受け入れていくこと。心を開き、日本社会への信頼感も持ちながら、自分らしく生き生きと、意欲をもって生きていけるように、アイデンティティの確立をはかる必要があります。そして、あるがままの自分が肯定され、受け入れられていると思える中で、言葉の壁や日本社会の偏見・差別意識に抗して、自信をもち誇りをもって生きていくことができるようになれるのではないでしょうか。
 仲間と出会い交流するの中で互いがはげまし合えるようにするとりくみは、一つの学校だけではできません。これらのとりくみを地域で追求してきました。それが、中国引き揚げ・渡日の子のサマーキャンプです。
 サマーキャンプでは、「学習」の場をもっています。私たちは、このキャンプを実施するに当たって、この学習を最も重視しています。仲間と出会い、「二つの祖国」を持つ立場を豊かさと受け止め、「中国人」等である親や自分を誇れる生き方をしてほしいと願って、このキャンプを実施しているからです。そのために、キャンプの最後に学習の場を設けているのです。
 学習では、このキャンプの中で育ってきたOBやOGの人に、日本へ来てからの、日本の学校でのさまざまな体験、特に被差別体験や、それをはね返して生きてきた道筋、自分の中の「中国」を大切にしたいと考えるようになった今、というような話をしてもらう場合もあります。また、子どもたちの父母や祖父母の世代の、「残留」孤児であった方の体験談を聞くこともあります。実は、家庭では、なぜ日本に来たのか、どういう立場なのかということを聞かされていない場合が最近は多いのです。特に、孫の世代は、ほとんどの場合、祖父母の中国での「小日本鬼子」と呼ばれての苦労はもちろん、「祖国日本へ」という気持ちも、自分が誰かを知りたかったという思いも聞けていません。しかし、自分たちの社会的な立場を自覚するためには、知らなければならないでしょう。
 昨年のキャンプの感想から紹介します。

 先生の話はとても意義があると思った。私たちは、人を尊敬し差別しない。礼儀正しく、他人から差別されないためにも、一生懸命勉強する。(ここまで原文中国語) キャンプはとてもたのしかった。きもだめしはこわくなかった でもおもしろかった。ぎょうざは はじめてつくる。自分つくたのぎょうざたべました。来年キャンプもある オレは絶対参加。(小6年)

 一番感心したのは、子供達がこんなにものびのびしていたことです。中国語を大声でしゃべったり、中国のお友達と遊んだりふざけたり、子供らしく楽しんでいる姿を見て、心から微笑しくなりました。日本語を上手く使えないもどかしさや、いやな目を会ったつらさも、この三日間ではすっかり忘れていたことでしょう。これこそ心のケアです。これからも、子供達にこのような機会を与えて下さい〓大きくなっても、この経験をきっと忘れないことでしょう〓(保護者)

 日中国交回復三十年になる今も、中国残留日本人孤児・残留婦人の問題は、終わっていません。未だに帰国できず待っていたり、帰国を果たしたとき残され、最近になって呼び寄せられる家族もいます。この問題は日本政府の「棄民」政策の結果であり、戦後処理問題の一つですから、制度面でのとりくみは行政の責務です。が、その制度面での不十分さの問題だけではなく、「残留孤児」につれだってくる家族・子どもたちをとりまく課題に対するとりくみは続けたいと考えます。
 動物漫画家・山内ジョージさんの協力によって作製したTシャツの純益が、このキャンプの費用になります。山内ジョージさんは、ご自身も中国引揚者で、残留孤児にならなかったのは、運が良かっただけだと、毎年協力してくださっています。
 Tシャツ販売に、毎年ご協力いただいておりますが、今年のTシャツ「ラッコ」も、ご協力をよろしくお願いします。

引揚げ・渡日の子どもたち
サマーキャンプ実行委員会

中国引き揚げの子どもたちをサマーキャンプへ!

※白地のTシャツに描かれた「ラッコ」
(青い海に浮かぶラッコ)
※サイズ LL,L,M,S,子供用(130p,120p)
※価格  大人用 1,500円   子供用 1,200円
◎ 申し込み用紙は、分会に送ってあります。
 ・Tシャツは、6月上旬から分会へお届けします。


週刊墨教組 No.1367  2002.5.16

教え子を再び戦場に送るな!
  違憲・有事法制を許すな!(一)


中国子ども会の遠足

 今年四月、堤小学校に念願であった日本語教室が開設されました。これまでの日本語学級と違い、堤小学校在籍児童だけでなく区内の小学校から通級という形で、中国の児童だけでなく様々な外国人児童に対し、援助を行う手だてができるようになりました。 
 この堤小の日本語教室と中国子ども会の主催で毎年恒例になっている「春の遠足」が、連休の前半、四月二八日の日曜日に実施されました。
 今年の参加者は、荒川区の日本語学級の児童も加わり、小・中学生二二名、先生たちを含めたボランティアの人たち十名が参加し、総勢三二名でにぎやかに行われました。区内のあちこちから、また荒川区から東部曳舟駅に集合するまでが一苦労。なんとか九時に集合し、電車で清水公園のアスレチックへ行きました。連休とあって、公園はとても混んでいて、アスレチックも並ぶのが大変でした。高学年や中学生は、おそるおそる水上公園に挑戦しましたが、見事水中へ転落してしまった子も多かったです。小学生の多くは、ファミリーコースで仲良く遊んでいました。楽しい一日を過ごすことができました。他の地区の子どもたちとも交流でき中国語が飛び交って、また、夏に再会することを約束して別れました。みんな夏のキャンプを今から楽しみにしていて、「今年は、どこに行くの?」と早くも期待して待っている子どもたちも多く、久しぶりに仲間と思い切り楽しんだ一日になりました。
 六月から、また夏のキャンプのためのTシャツ販売が始まります。多くの人に協力をお願いします。


はじける芽( 107 )
中学年作文年間計画 ー今年度の参考資料ー

 何をどのように綴らせていくか
 作文単元のお粗末な光村教科書を乗り越えるために

指導題目(子どもに綴らせたいテーマ。誰もがそのことにかかわれば書けるもの)
☆ ○年生になって、担任発表した日の出来事を家に帰って家族の者とよくおしゃべりしたことをじっくり思い出し、出来事のあった順に「・・でした。」「・・ました。」と過ぎ去った言い方で生き生きと書いてみよう。
 担任が変わっていれば、元担任の先生とのことで、心に強く残ったことを思い出してじっくり思い出して書いてみよう。(離任式の作文なども使える。)

☆ ○年生になって、学校生活をしている中で、ある日ある時の一回限りのことで、友だちや先生との関わりの中で心に強く残ったことを、ていねいに思い出して書いてみよう。

☆ 人間、自然、社会の出来事などのことで、感動の場面を切り取って、リズムのある詩を読み合い、それを「詩のノート」に、ていねいに写して暗唱しよう。

☆ 祖父母、父母、先生から伝えられた遊びをすることから、夢中になってした題材を選ばせ、綴らせる。
 昔からの遊び(剣玉・べいごま・おてだま・百人一首・おはじきなど)

☆家に帰ってから、友だちや家族や見知らぬ人とのことで、心に強く残った相手の人の会話やしぐさなどもじっくり思い出しながら、「・・。」会話の形を使いながら書いてみよう。

☆夏休み四十日間の暮らしの中で、ふだんは経験できないようなことで、心の中で強く残ったことをよく思い出して、生き生きと思い出して書いてみよう。
 夏休み中、日記などを課題にするクラスは、休み前にその事を話しておき、休み中でないと出来ないようなことに積極的に関われるようにしむける。

☆季節の移り変わりによって、生活のしぶりも変わっていく事実を敏感にとらえたことを題材に選んで、読み手にわかるように、説明も入れて書いてみよう。
 自然の変化、衣食住の変化などを具体的にとらえて、考えさせる。

☆人間、自然、社会の出来事などのことで、感動の場面を切り取って、リズムのある詩を読み合い、自分でも詩を書いてみる。

☆一つのことをしつこく追い続けたことを題材に選ばせ、綴らせる。
 友達とのこと、家族とのこと、何かずっと関わったことを選ばせてみる。

☆年長者から聞いた話で、意味があると考えたことを題材にして綴らせる。
 自分の誕生から三、四才位までの記憶以前の話を聞き書きさせる。
 三月十日の東京大空襲に向けて、取材の出来る子は、三ヶ月前から取材させる。

☆印の指導題目は、この通りの順でなくても良い。学級の実体に合わせて、題材を考えても良い。

指導題目について(意図的作文)
 学期二〜三回位は、上のようなものを作り、取材から構想・記述・推敲・鑑賞まで十時間から十五時間かけて行う。時間割の中に、週二時間程度の作文の時間を設けておく。

日記指導について(自主的作文)
 日記指導は、子どもたちが自主的に、選んで書いてくる。日々の暮らしの中から、心の中に強く残ったことを切り取って、ていねいに思い出しながら書く。

赤ペン指導について
 子どもたちが一番楽しみにしていることは、教師の赤ペンと評価である。
子どもたちの心や体を生き生きと働かせている所(生活のしぶり)を取り上げて、認めてほめるようにする。
 文章そのものの細かい(書きぶり)の良いところを◎をつけて、その部分に線を引いて励ますようにする。

文章を生き生きと書くための、六つの大事なこと
 (模造紙に書き教室に張っておく。)
@いつ、どこで、誰がなにをしたかが、はっきりわかる文にする。
Aその時はなした自分や相手の言葉は、会話として「・・。」を使って文にする。
Bその時、思ったり、考えたりしたことは、(・・。)を使って文にする。
Cその時の動きや、周りの様子にも気がついたら書くようにする。
D自分はわかっていても、読み手がわかるように、説明も入れる。
E必要なところは、ものの形や色や大きさ、手触り、においなど、五感(官)を働かせたことを、よく思い出して書く。

 今年度から「使わされる」ようになった光村の国語教科書は、現場の意向と違う形で採択された。各学校からの調査・研究では、日本書籍の方が良いという意見が圧倒的に多かった。にもかかわらず、調査委員会の報告や選定審議委員会の答申は、平和教材や作文の単元が多く、偏りがあり、バランスを欠くと指摘されたのだった。その結果、今まで長いこと使ってきた日本書籍は不採択になってしまった。
 光村教科書の作文単元は、極端に少ない。あっても、何のためにこんな単元があるのかと首を傾げざるをえないページが多い。子どもの作品もほとんどない。詩の単元など、二学年で一単元の扱いであり、子どもの詩は皆無に等しい。平和教材の単元も、反戦の視点のないファンタジックな作品になっている。墨田区が積み重ねてきた人権や平和を大切にする考えは、この教科書をやっていては、しっかりと押さえることは出来ないであろう。


週刊墨教組 No.1366  2002.5.9

二〇〇二年度運動方針、予算を決定
墨田教組 第五七回定期総会

 第五七回定期総会は、四月二四日、すみだ女性センターで開催されました。
 総会は二時三八分に岩井副委員長の開会宣言、「緑の山河」斉唱後、議長を選出してすすめられました。
 役員紹介の後、執行部を代表して加藤委員長が挨拶。

教職員組合としての
機能と責任を果たそう! 
 墨田区教職員組合は結成以来半世紀を越えている。五十数年の組合の歴史の中には、果敢に闘い、時には激しい弾圧を受け、職を奪われた組合員。組合活動が教員人生そのものであったと言ってもよい方。目立って活動していなくても、「何か困ったときには、組合が助けてくれる」との思いで、組合費を納め、組合を支えていてくれる方等、ひとりひとりの組合員の支えと、様々な闘いにより、墨田教組は独自の路線を築き上げ、労働組合としてその立場を確立してきた。
 墨田教組は、いかなる権力からも、いかなる政治党派からも、いかなる組織からも自立し、自らの言葉で語り、考え、討議し、方針を立て、闘い、行動してきた。その際、労働者、労働組合としての原則性を中軸に据え、このことにより、教職員労働組合としての機能と責任を果たし続けてきた。
 今、教育をとりまく状況は大きく変化している。憲法と一身同体である教育基本法が改悪されようとしている。有事立法の動きは、教育基本法改悪と一体になったものである。国家権力にとって、戦争を遂行するには、教育を完全に支配すること、私たち教員を上意下達により管理しきることが絶対条件になる。多くの先達が獲得した既得権を剥奪することをも通してこの攻撃はかけられている。
 墨田の地に目をむければ、春休みの自宅研修確保に象徴されるように、墨田教組は全都の「しんがり戦」を闘っている。今年はさらなる既得権剥奪、管理強化を意図した攻撃が予想できる。墨田教組は、攻撃に対してはひるむことなく、この墨田の地で、教職員労働組合としての機能と責任を果たし続けよう。とよびかけました。
 来賓として、谷口滋(東京教組副委員長)、江木よしあき(部落解放墨田区民共闘会議副議長・区議会議員)の両氏による激励の挨拶、祝電・メッセージ紹介の後、議事に入り、長谷川書記長が二〇〇二年度運動方針案を提案。

自立性・原則性に基づき闘う
 長谷川書記長は「労働組合として自立性・原則性に基づいて闘うこと、『ひとりの子も切りすてない教育』のスローガンに象徴される教育運動、この二つを墨田教組の基本姿勢として堅持する。今年度、@『主幹』制度にあくまで反対する、A『長期休業中の研修』の見直しに反対する、B勤勉手当への成績率導入に反対する、C『勤務時間改悪』を許さない実態を職場内につくり上げる、D教研集会を維持し発展させる、E憲法・教育基本法の改悪に反対する、F自衛隊の参戦、『有事立法』を阻止する等を重点課題として闘う」ことを訴え、方針案を提案しました。
 続いて討論。討論は以下の各氏でした。

(区の文書を基に卒業証書等の西暦記載を実現することができた)
(分会の闘いと異動により職場の流れが変わった。新たな課題に対し、組合員として誇りをもって闘う)
(墨田に戻ってきた。以前の総会に比べ人数が減少しているのは寂しいが、勤務時間など職場の権利が保障されている。新たな気持ちでがんばりたい)
(長年の取り組みの結果、この四月から日本語学級が子ども十三人でスタートした。子ども達に、日本語の力をつけ、同時にアイデンティティーを確立させていきたい。区教委に改善要望を出し、充実させたい)
(墨田に戻ってきた。前任区では、もの言えない厳しい状況の下で、同和教育の実践を要としてとりくみをすすめてきた。民研同和部会の活性化を図りたい)
(今年で廃校になる。子ども達が通う新しい学校で差別事件が起きないか心配である。新設校に子どもと同和教育をどのようにつないでいくかが課題である)
(春休みの勤務について、校長が厳しい提案をした。しかし、組合と区教委との交渉の結果、従来通りとなった。今後も勤務時間の改悪に対し、職場で闘っていきたい)
(勤務時間や学校運営・教育課題について、新たな課題が生じることが予想される。職場の力で民主的な職場をさらに発展させるため組合員を中心に団結して取り組みを強化したい)
(教職員の合意を大切にして教育活動をすすめていきたい。一方的な「命令」や押し付けに対しては、声をあげていきたい)
 いずれも自分や職場の闘い、とりくみを紹介し、方針案を補強する立場から意見を述べ、決意を表明、ともにとりくみ闘うことを呼びかけるものでした。四時十五分、討論打ち切り、運動方針案の採決。議長は圧倒的多数が挙手していることを確認、二〇〇二年度運動方針が決定されました。
 その後、決算・監査報告が行われ、拍手で承認。続いて予算案について審議、挙手採決で可決決定されました。
 つづいて、今年度の東京教組大会の代議員選挙を行い、五人が選出されました。
 次に「特別決議」の採択にうつり、「区教委が『主幹制度』を導入しないことを求める決議」、「有事三法案に反対する決議」を拍手で確認。最後に「総会宣言」を提案、拍手で採択し、議長解任。
 解任に当たっての挨拶の中で、議長は「墨田教組に愛着をもち、私も墨田教組に戻ってきました。各職場から様ざまな課題ととりくみの報告がありました。職場の課題は私たちに闘いの場を提供しているのであり、ひるむことなく闘いつづけよう」と締めくくられました。
 続いて「日教組組合歌」斉唱、「がんばろう」三唱、副委員長による閉会宣言で会を閉じました。   


区教委が「主幹制度」を
 導入しないことを求める決議

 墨田区教育委員会は、都教委の「管理規則改悪」をうけて、明日二五日に「管理規則改悪」強行を予定しています。まさに、「主幹制度」問題は区段階での正念場をむかえています。
 都教委の規定では「主幹」は「主任を兼務する」としています。これでは主任が監督権を持つことになり、主任を「指導助言職」と位置づけている現行法制度の枠を逸脱していて、下位法が上位法を否定することになります。都教委みずからが法的整合性を放棄した杜撰な規定といわざるをえません。
 区教委は都教委の愚行の轍を踏むべきではありません。
 「主幹制度」を導入することは、「主幹」という職を新設することによって、校長の意思をトップダウンする上命下服のシステムを学校につくりあげることにほかなりません。いままで築き上げてきた、協力・共働しながら、なかま・決定権を大切にする学校をまっこうから否定するものです。
 私たちは、「主幹制度」に強く反対するものです。
 さらに、私たちは、墨田区教育委員会が、「主幹制度」について、地方自治の立場をつらぬき、深い英知と洞察力をもって、導入しないことを強く求めるものです。
右決議します。
  二〇〇二年四月二四日
    墨田区教職員組合第五七回定期総会

有事三法案に反対する決議
 政府は、十六日、外部からの武力攻撃事態(有事)に対処するための有事関連三法案(武力攻撃事態法案・自衛隊法改正案・安全保障会議設置法改正案)を閣議決定して、十七日に国会提出しました。
 法案は、「武力攻撃事態」を「武力攻撃が予想されるに至った事態」を含むと、詐術ともいえる曖昧な規定をしています。「周辺事態法案」「テロ対策特別措置法案」と、憲法の絶対平和主義を露骨に否定してきた、政府の愚劣の極みともいえる最悪の法案です。
 ソ連の侵攻が想定された冷戦時代の産物を土台にしたこの法案は、現在の国際情勢を、まったく考慮していません。東アジア諸国との間に緊張と摩擦と不信をいたずらにあおるだけのものでしかありません。
 さらに、法案は、国民の権利制限は適正な手続きで実施するとか、「国民は協力をするよう努める」と規定しています。憲法の理念などまったく顧みられず、ここでも露骨な憲法違反は明らかです。
一九三八年の国家総動員法と相似である有事三法案は、やがては、憲法改定、徴兵へとつながります。絶対に座視することはできません。
 私たちは、今こそ、もう一度、武力行使を明確に否定した憲法の絶対平和主義の立場にたち、力を奮いおこして、おそれずひるまずに、最後の最後まで反対しつづけます。
  二〇〇二年四月二四日
         墨田区教職員組合第五七回定期総会


週刊墨教組 No.1365 2002.4.25


 区教委、「主幹制度」導入!
管理運営規則改悪を強行!
 墨田教組、都教組墨田支部と共同で抗議、撤回を求める


墨田区教育委員会は、四月二五日午後二時から開催した定例教育委員会で、「主幹制度」を導入させる、「墨田区立学校の管理運営に関する規則」(以下「管理規則」)の改悪を強行しました。墨田教組からは四人の分会代表の方が発言し、久保教育次長に対し、強く抗議をするとともに、撤回を求めました。久保教育次長は、撤回することは拒否したものの、条文の解釈や運用について今後話し合うことを表明しました。

自治権の拡大は、
具体的な課題でこそ実現する
 都教委が、三月八日に「都立学校の管理規則」を改悪した後、両教組(墨田教組・都教組墨田支部)は再三区教委に要請行動を行ってきました。自治権の拡大の中で、「主幹制度を導入する・しない」は、区教委が独自に判断できる課題です。要請は、区教委が地方自治の立場をつらぬき、「主幹制度」を導入しないことを強く求めたものでした。
 しかし、区教委は、「『主幹制度』導入により解決できる墨田区独自の教育課題がない」と言明していたにもかかわらず、「主幹制度」導入を強行しました。都教委の圧力にまたしても区教委が追随したと言わざるをえません。
 自治権の拡大は、具体的な課題によって実現させるものです。いつになれば、区教委は、都教委に対して、毅然とした態度で地方自治の立場をつらぬくことができるようになるのでしょうか。

不備のまま管理規則を改悪
 新設された「主幹」について規定した墨田区の管理規則(資料参照)は、都教委が地教委に提示したものとまったく同じです。問題は、第六条の6「主幹の担当する校務の範囲は、教育委員会が別に定める基準に基づき、校長が決定する。」と規定しているにもかかわらず、「校務の範囲」については何ら決められていないことです。「主幹」が担当する「校務」の内容すら決まっていないのに、、「主幹新設」だけを決めるということは、何と愚かなことか。新たな制度を導入する姿勢としては、あまりにもデタラメと言わざるをえません。撤回も含め、このような「主幹制度」導入をめぐる問題点を厳しく追求していきます。

資料 


墨田区立学校の管理運営に関する規則の一部を改正する規則 新旧対照表

改 正 案 現 行

(主幹)
第六条の二 小学校及び中学校(以下「小中学校」という。に主幹を置く。ただし、特別の事情のあるときは、これを置かないことができる。
2 主幹は、教諭又は養護教諭をもって充てる。
3 主幹は、上司の命を受け、担当する校務を統括処理する。
4 主幹は、担当する校務に関する事項について、教頭を補佐し、所属職員(教育職員に限る。)を監督する。
5 主幹は、次条第一項に規定する教務主任、生活指導主任又は同条第三項に規定する進路指導主任を兼務する。ただし、特別の事情により、これらの主任を兼務しない場合の取扱いについては、教育委員会が別に定める。
6 主幹の担当する公務の範囲は、教育委員会が別に定める基準に基づき、校長が決定する。

(主任)
第七条 小中学校に教務主任、生活指導主任、保健主任及び学年主任を置く。ただし、特別の事情のあるときは、これらの主任を置かないことができる。
二・三 [略]

[新設]

[同上]
第七条 小学校及び中学校(以下「小中学校」という。)に教務主任、生活指導主任、保健主任及び学年主任を置く。ただし、特別の事情のあるときは、これらの主任を置かないことができる。
二・三 [略]
 付 則
この規則は、平成十五年四月一日から施行する。


 旧姓使用が具体化


 都労連は、男女平等社会実現に向け、「旧姓使用」について国が10月から実施していることを踏まえ、都が直ちに制度化することを要求してきました。都も都労連の要求に応え、2002年4月1日から実施することを決めました。これを受け墨田区教委は、県費負担教職員について、学校職員服務取扱規定に基づき、「旧姓使用」の具体化を定めました

資料

                            14墨教指第14号
                            平成14年4月1日
各小・中学校長様
                         墨田区教育委員会  
                          教育長 近藤 舜二
                             (公印省略)
学校職員の旧姓使用について 
 学校職員服務取扱規程(平成12年墨田区教育委員会訓令第9号)第4条の2の規定に基づき、市町村立学校職員給与負担法(昭和23年法律第135号)第1条に規定する教職員(以下「県費負担教職員」という。)が婚姻、養子縁組その他の事由(以下「婚姻等」という。)によって戸籍上の氏を改めた後も、引き続き婚姻等の前の戸籍上の氏(以下「旧姓」という。)を文書等に使用することに関して必要な事項を、下記のとおり定めたので通知します。



1  旧姓を使用することができる文書等
 県費負担教職員本人の申出に基づき、次に揚げるものについて旧姓が使用できる。
(1)文書等
  決定文書及び供覧文書等に係る押印、施行文書の担当者名、学校案内、学校要覧、指導要録、出席簿、成績一覧表、調査票、通知表、卒業証書、学校日誌、宿泊を伴う学校行事の実施計画書等
(2)人事
ア 任用
  発令通知書(昇給・昇格を除く。)、発令通知一覧表(新聞発表を含む。)自己申告書、教育管理職業評定書、職務記録書、職務業績票、昇任選考等(受験申込み等)
イ 服務
  出勤簿、兼業許可等申請書、教育に関する兼職等承認申請書、事務引継書、履歴事項異動届、懲戒・分限処分関係文書
ウ 表彰
  職員表彰、東京都教育委員会表彰、永年勤続者感謝、退職者感謝、東京スピリット賞、職員提案
エ 勤務条件
  休暇・職免等処理簿、職員団体関係文書
オ 研修
  研修命令、研修記録等研修関係文書
カ 福利厚生
  東京都教職員文化会の申込書、職員厚生室・職員体育室の使用申込、職員健康診断関係文書
キ その他
  職員名簿、原稿執筆、電子メール、職場での呼称、座席表


2  旧姓を使用することができない文書等
(1)法令等により、戸籍上の氏名を使用する必要があるもの
ア 税金関係文書(源泉徴収票、扶養控除申告書、保険料控除申告書、配偶者特別控除申告書)
イ 給与関係文書(口座振込依頼書、給与簿、超過勤務命令簿、旅行命令簿、扶養親族届、住居届、通勤届、給与減額免除申請書等)
ウ 公立学校共済組合及び東京都職員共済組合事業関係文書(組合員証、被扶養者申告書、各種給付金請求書、各種福祉事業申込書等)
エ (財)東京都福利厚生事業団事業関係文書(保険事業、融資事業、給付事業、ショッピング等のあっせん等)
オ 財形貯蓄関係文書
カ 社会保険関係文書(生命保険、厚生年金、健康保健及び雇用保険等)
(2)対外的に法的効果を伴う行為に用いる文書
ア 契約関係文書
イ 納入通知書、領収書
ウ 不服申立関係、行政事件訴訟関係文書
エ 許認可、確認、賦課徴収等の法令に基づく行政処分に係る文書
(3)職員証及び職員カード(学校職員服務取扱規定に基づくもの)


3  旧姓使用開始の手続き
(1)旧姓使用を希望する県費負担教職員は、「旧姓使用申出書」(別記様式1)に必要事項を記入したうえで、使用する旧姓と戸籍名を証するに足る書類(戸籍又は外国人登録原票の記載事項証明書等)を添えて、校長に提出しなければならない。
(2)校長は、申出書を確認の上、旧姓使用を行うこととしたときは、速やかに「旧姓使用通知書」(別記様式2)により使用開始年月日等を当該県費負担教職員に通知しなければならない。
(3)県費負担教職員から添付書類として提出された戸籍又は外国人登録原票の記載事項証明書等は、確認後、速やかに県費負担教職員に返却しなければならない。
以下、「4 旧姓使用中止の手続」「5 履歴事項の異動に係る書類の提出(墨田区教育委員会への報告)」「6 臨時的任用教職員に関する取扱い」「7 その他」略


8  施行年月日
 この通知は、平成14年4月1日から施行する。

          


                                        

週刊墨教組 No.1364   2002.4.19


二十四年前の轍を踏んではならない
 外部指導員制度を活用しよう
         自然体験活動実施に当たって


 今年度から小学校五年生、中学校一年生を対象とした野外体験活動事業が始められます。これは、野外体験活動を実施しようとする学校に対し、区教委が補助金を出すという性格の事業です。したがって、実施するか否かも、学校の自主的判断に委ねられています。そして、実施する場合、場所・活動内容・指導態勢等の計画を、学校が独自に作成し、それに基づき補助金を申請します。学校は、その補助金を含めた予算で実施するということになります。
 実施の有無を含め、各校が自主的に決定する性格のものですが、実質的に全校実施が強制された形になっていることには問題があります。事実として、今年度、全校で実施する計画が進められています。しかし、本来的にこうした性格の事業であるということを確認しておくことは、きわめて重要です。

自由かつ豊かな発想で計画を
 この事業の基本的性格は、学校が主体的・自主的に計画した時、区が補助金を出し、それを含めて実施するというものです。各校がその学校の児童・生徒の実態やその興味・関心、課題に合わせ自由に計画することが大事です。横並び意識で計画・実施するのではなく、各校が、自由かつ、豊かな発想で計画・実施することが望まれます。

補助金の対象及び経費
 補助金として支出される対象及び経費は、次のものです。
@交通費(バス代)―一クラス十八万円以内
A要保護・準要保護児童・生徒の宿泊費
B外部指導員の日当と宿泊費―日当は八千八百円
C体験指導員等経費―一校二万円
D看護師の日当と宿泊費―日当は一万五千円

交通費、バス以外にも使用可能
 交通費は、(貸し切り)バス代に限定されることなく、その他の交通機関を利用することも可能です。 

宿泊費、学校によって異なる
 宿泊費は、学校が使用する部施設によって、金額が異なって当然です。

外指導員、積極的に活用を
外部指導員は、各校の計画に基づき、その人数は異なりますが、この補助金とそれが設けられている意味を積極的に活用することが、きわめて大切です(後述)。

体験指導員経費、増額を
 体験指導員経費は、現地で授業・説明・体験指導等のために指導員を依頼した場合に、その謝礼などに当てるためのものです。そうした指導員の活用を活発に行いたいものですが、この予算では少なく、今後この増額を要求していかなければなりません。この点は、保護者負担軽減の意味でも重要です。

看護師同行、大きな意味
 看護師を出発から帰校まで同行できることは、児童・生徒の健康・安全確保の面から大きな意味があることは言うまでもありません。その確保面で困難があります。しかし、中学校修学旅行には、今までも同行する制度があり、その経験を生かすことも大切と思われます。
 また、看護師同行は、養護教諭の参加強制を避ける意味でも大きな意味があります。

外部指導員等の活用を
外部指導員や体験指導員の積極的な活用は、より深く、より豊かな体験・経験を児童・生徒に保障するという意味で大切です。
 同時に、参加教職員の過重労働を軽減することにもつながります。
 外部指導員の同行を可能としたことの意味は、きわめて大きなものがあります。こうした宿泊行事を実施する場合、主として児童・生徒の健康・安全確保の面からそれなりの指導引率態勢が必要であり、校長(教頭)と担任だけでできるものではなく、他の教職員の協力、具体的には引率教職員として参加することが必要となります。そうした場合、その担任教科やクラスに「穴があく(担任不在)」ことになるわけです。それを避けるために、学校教職員外の指導員の参加を可能としたものです。

移動教室でも外部指導員可能だった
 ところで、今から二十四年前(一九七八年)、小学校の粟野移動教室が始められました。これは、それまで行われていた夏季施設(林間学校等)が、夏季休業中におこなわれるため正規の学校教育、教育課程ではなく、その結果さまざまな問題点がありました。その反省に立ち、授業日に教育課程に位置付けて行うことにしたものです。
 その際、問題になったのは、引率教員をどうするかということでした。児童の安全面を考慮し引率教員を増やせば、特に小学校の場合、六年担任以外の学級担任も行かざるを得ず、そうなるとその学級担任が三日間にわたって不在になるということになります。その学級の児童にそうした犠牲を強いて良いのか、またその学級の授業等について残留教職員の負担もきわめて大きいということが問題でした。

予算化は十分に行われた
 そこで組合は、学校教職員以外の外部指導員を雇用して、引率者の一員として参加させることを可能とするよう強く要求し、交渉を続けました。その結果、区教委は、引率者の人数は「校長+担任+引率補助者(学級数)+養護担当」とし、「引率補助者等」(「等」があるのは、「養護担当」を含むため)を学校外部に求めるため、その経費を予算化すると回答しました。そして、引率補助者の交通費・食費および日当四千六百円の三日分を、六十人分予算化したのでした。当時の小学校数は三十校です。一校あたり二人分は予算化したということになります(予算要求は百人。査定で削られて六十人になった経過もあります)。

趣旨、生かされなかった
 ところが、折角こうした考え方に基づき、予算化されたにもかかわらず、この予算はあまり使われませんでした。その理由は、「子どもを知っている教員が一緒行かなければ不安」ということが多かったようです。一方、外部指導員を雇用した学校では、逆に子どもたちからも、教職員からも大変好評でした。しかし、使われない予算はだんだんと削られていきました。そして、近年では、小規模化が進む中で、その必要性が高まり、要求・必要性が強くなっているにもかかわらず、「障害児等がいる場合」に限定されてしまっていることは、ご承知の通りです。
 本来の趣旨―児童の教育権保障、学校・教員の負担軽減―は、全く無視された形になっています。

二十四年前の轍を踏んではならない
 外部指導員制度を活用することには、以上のようにさまざまな意味があります。その積極的意味を生かし、大いに活用しようではありませんか。
 二十四年前の轍を踏むことを絶対に繰り返してはなりません。