旧中山道沿い碓氷峠への尾根に残る古道跡5 尾根道詳細図 地図はこちら

ここにも掘割状遺構があるということはこの先の峠までの間にどれだけの古道跡を見ることができるのでしょうか。期待がふくらみます。ここまで少なくとも「堀り切り」の少し手前から古い道跡は断続的に続いているようです。旧中山道よりも尾根の高いところを直線的に繋いでいるようで、中世以前の古道形態を良好に残しています。これほどに道跡が残存しているとは思ってもみませんでした。あらためて大きな驚きです。

先ほどの崩れた土壁にお椀底形の地層を見たところの上から、掘割状遺構はこの先にもかなりの長さで残存しています。ところによっては2本の掘割地形が並行して確認できるところもあります。また幅が7〜8メートルちかくあるところも見られます。何度も申し上げるようですが、これだけの道跡がほとんど知られていないということが意外なくらいです。道跡など歴史的遺産として取り上げる価値がないものなのでしょうか。

右の写真は古道跡の残る尾根の南側を通る旧中山道の道です。

ところでこの旧中山道を歩いていると、「安政遠足」と書かれた標注をよく見かけます。「あんせいとおあし」と読むそうです。「遠足」とは現代のマラソンに近いもので、安政2年(1855)5月に始めて安中藩士で催されました。関所の警備のために足腰を鍛錬する目的で、安中城門前から峠の熊野神社までの約28キロ間で健脚を競い合ったものだそうです。現在でも毎年5月に、思い思いに仮装した選手達が競技を行っているようです。

第15代安中藩主の板倉勝明によって始められたという「遠足」は50歳以下の藩士96名が参加していて、このときの着時間や着順、氏名などが「安中御城内御諸士御遠足着帳」という古文書に記されているそうです。審判員は熊野神社の神官がつとめられたといいます。安政遠足は日本のマラソンの原点であるとも言われ、「侍マラソン」などとも呼ばれていて有名です。

左の写真は旧中山道の道で写真の右側の尾根の上に掘割状遺構が続いています。

山登りがいかに大変なことか想像が付きますが、刎石坂の急な登りを走って上がることは大変に体力が必要だと思われます。遠足の選手達は凄いものだと関心します。

右の写真は尾根上に残る2段になった古道跡と思われる地形です。ここから先の尾根は杉林となって古道跡はいったん消えてしまいます。その杉林中の尾根上を整地された跡がみられます。整地されたところは畑跡ともいわれているようです。この先には山中茶屋跡と呼ばれるところがあります。

道は突然、今までの古道の雰囲気とは一転して、薄暗い杉林の中を行く道になりました。杉林の中の道の両脇は段差や平場が多く見られ人手が加えられていることがうかがえます。左の写真右手の尾根上には掘割などの古道跡は見られません。杉林の中は近世古道の雰囲気が伝わってきます。石畳などが敷かれていたら箱根旧街道のような趣があります。

やがて杉林を抜ける少し手前に説明版があり「入道くぼ」と書かれています。説明は「山中茶屋の入り口に線刻の馬頭観音がある。これから、まごめ坂といって赤土のだらだら下りの道となる。鳥が鳴き、林の美しさが感じられる。」とあります。右の写真はその線刻の馬頭観音の石像です。説明にある「まごめ坂」とは杉林の中のことか、或いはここから先の辺りなのか、その具体的な場所は確認できませんでした。

左の写真は説明版付近の道を撮影したものです。この辺り、林がとても美しいです。さすがに高所の山の中なので平地や丘陵ではよく見かけられる道端の不法投棄のゴミなどはほとんど見られません。現代的な人工物やゴミが無い道とはこれほど美しいものかと関心してしまいました。このような道の前では普段は平気でゴミをポイ捨てしている人でもゴミを捨てることをためらうのではないかと思います。もしこのような道でも平気でゴミを捨てられる人はよっぽどの人ではないかと思います。

しかし、現代では人道を外れた病人が多いので、このような道を見ても何とも思わずにゴミを捨てられる人がいることも確かではあります。現代では若者のモラルの低下を嘆く人がいますが、しかしモラルに反するような、やってはいけないことを平気でするのが私と同世代の大人です。そのような大人を見た子供はそういうものかと判断してしまうのは最もであると思うのですが、如何なものでしょうか。

右の写真は杉林を抜けてしばらく進んだ付近でここからは旧街道の道幅も広く車も通った跡が感じられる道になります。写真左手のコンクリート壁の上の尾根には古そうな掘割道跡が残っています。

やってはいけないということに対して、その判断が付かないのが現代病で、判断どころか、良いこと、悪いことの区別さえわからない人間が多過ぎるのは困ったというよりも呆れたものです。もともと良いこと、悪いことなど人間が決めることでは無いのですが、少なくとも、これをしたら迷惑する人がいるということぐらい考えられないものなのでしょうか。現在この現代病に感染している日本人は国民の8割であるとか…? クスクス笑っているそこのあなたは大丈夫ですか、現代病にかかってはいませんか?

左の写真は山中茶屋跡から更に上った「山中坂」と呼ばれる坂です。

次へ 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. HOME