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作曲の背景 |
1960年7月14日、映画「5日5夜」に作曲のため Gorlits 滞在中の三日間で完成したとされる。ショスタコーヴィチは弦楽四重奏に決して同じ調を選ぶことがなかったが、DSCHを基本主題とすることで、ほとんど必然的に「運命」の調であるハ短調となった。7月19日に友人(I.Glikman)に宛てた手紙の中でこう書いている。
映画のために何か書こうとしたけどできなかった。そのかわりに、誰の役にもたたないイデオロギー的に欠陥のある四重奏を書いてしまった。
僕が死んだ時、誰かが僕の想い出に四重奏を書いてくれる、なんてとうてい思えない。だから自分で書くことにした。表紙に「この四重奏の作者に捧ぐ」と書いてくれてもいい。基本主題は DSCH 音型、つまり僕のイニシャル。 僕のいろいろな作品と革命歌「重き鎖に繋がれて」を素材にしている。自分の作品からは、第1交響曲,第8交響曲,ピアノ三重奏曲,チェロ協奏曲(第1番),マクベス夫人の主題を使った。ワグナーの神々の黄昏の葬送行進曲とチャイコフスキーの交響曲第6番(「悲愴」)の第1楽章の第2主題も仄めかしてある。ああ忘れてた、第10交響曲の主題も。とても大切なかわいいごた混ぜ!
この悲劇まがいの四重奏がどんなにすごいかというと、書いている間に、ビールを半ダース飲んだ後の小便くらい涙が溢れてきたほど。帰ってから2度弾いてみたけど、また涙がでてきた。こんどは悲劇まがいのせいじゃない。自分でも驚いたくらい、すばらしいまでに統一のとれた形になっていたから。
参考書
全曲の構成 |
第1楽章とフィナーレがともに DSCH による静かなフーガ。これにより曲全体が弓形となる。 その間に、嵐のようなトッカータ、引き攣ったワルツ−スケルツォ、葬送の音楽が挟まれるのは(順序の違いはあるが)交響曲第8番と同じ構成。全楽章続けて演奏。 |
第1楽章 | Largo | 二分音符=63 | ハ短調 | 4/4 | DSCHによるフーガ(序) | 4:03 |
第2楽章 | Allegro molto | 全音符=120 | 嬰ト短調 | 4/4 | (嵐のような)トッカータ | 2:41 |
第3楽章 | Allegretto | 二分音符=120 | ト短調 | 3/4 | (引き攣った)DSCHによるワルツ−スケルツォ | 3:47 |
第4楽章 | Largo | 二分音符=138 | 嬰ハ短調 | 3/4 | 葬送 | 4:41 |
第5楽章 | Largo | 二分音符=63 | ハ短調 | 4/4 | DSCHによるフーガ(結) | 3:15 |
註
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