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吉備津神社

Kibitsu Shrine

34 40 14.64,133 51 02.33

 廻廊の先まで行き、少々脇にずれ、振り返るとこういうアングルが撮れます。正に比翼ですよね。

 神社は寺院に比べ国宝が少ないと書いたのは出雲大社の時でした。そもそも神道では建物は仮設的な意味合いが大きく、恒久な建物とするようになったのは仏教の影響だというものです。当初の神社はは古代の高床家屋などから様式を模しており、それをかなり正直に伝えているのが伊勢や出雲ですが、室町や江戸期になると徐々に各地で独自の様式で発展していくことになります。
 
 寺院はいわゆる平入りという棟と直角に正面を向けるのが主流で、妻入りは善光寺などごく一部に限られますが、神社建築は平入りは神明造りとして伊勢神宮を代表に伏見稲荷などかなり多く見ることが出来る一方、妻入りも大社造り、出雲大社、神魂神社、住吉大社などに見られるように、両者が結構拮抗しているといえるでしょう。神社建築は比較的軽快だから、自由に選択出来たのでしょうか。
 
 ここ吉備津は妻入りを選択しましたが、課題は建物の広さを確保しながら、全体を収めるかということだったと思います。それも間口よりも奥行を取るという難しい問題。単純に面積だけを広げるとそれを覆う屋根がかなりに大きくなってしまう。それならば屋根を分割し、二つに並べればいいではないか。実に分かりやすい解決策ですが、それをどうディテールまで納めるかが宮大工の腕の見せ所。でもこの複雑な形をいともあっさりと処理してしまったといえるでしょう。出来た様式は比翼入母屋造、単純に吉備津様式ともいう、と神社のページにはあります。何、「僧重源が大陸よりもたらした大仏様の『挿肘木』といわれる組物」を用いているとか。うーん、そこまでしっかり見ないで帰ってきてしまいました。
 でもその結果、十分な広さを確保することが出来ました。出雲大社の2倍の広さがあるといいます。出雲は高さを求め、吉備津は広さを求めたそれぞれの表現です。
 
 ここに一番近い形式は九州宇佐神宮の本殿ではないでしょうか。二棟の平入りの建物が前後しており、それぞれ前殿、奥殿と呼ばれています。それを吉備津ではもっと大胆にくっつけてしまおうということを考えたのかもしれません。もっとも神社建築はいくつかの神様を並べて祀ることが多く、春日大社の本殿は4棟切り妻で並んでいるし、奈良の山の中にある国宝宇太水分神社では3棟並んでいる。いろんな所で様々な表現が行われています。
 
 そしてここ吉備津。改めて対峙すると不思議な建物です。屋根を外してみて見るとかなり大きな建物で、外陣と呼ばれる回廊の長さも相当あるというのが実感出来ます。でも屋根に目を転じれば実に軽快でいやもっというと軽々しさまで感じてしまいます。分節化がこんなに効くとは、確かにすごい効果です。確かに神社建築は仏教建築より重厚さを求めていませんから、この処理は実に正解でした。

 一瞬団体さんが来て、神社の人が熱心に説明をしていましたが、そのご一行様が去れば後は静かな境内。おみくじを引き、お札を求め、という神社ならではの行事もしながらゆったりとした時を過ごすことが出来ました。

境内から本殿の側面を見ています。ここにこれだけの空間をもってきたということは、実はここからじっくりと見て欲しかったのではないかと思わざるをえません。だってここからが一番美しいのだから。正直そう思ってしまいます。
総社から近づいてくると、最初にこのようにに大きな山の山腹にちょっと出っ張って作られているのが分かります。 廻廊。長谷寺の登廊葉階段ですが、ここはなだらかな斜面になっています。どこを繋ぐのか目的が明確でない不思議な廻廊でした。

 

屋根の処理。そうか「工」の字型にしているのか。千木が堂々と主張しています。