連載コラム・藤子な瞬間


月刊FFMM 2001年3月号(2001/03/06発行)より




▼その6「不器用な理髪師」

 現実の出来事や日常生活の中でふと「こんな場面がマンガにあったな」と思う事はありませんか。それが「藤子な瞬間」です。ここでは私が体験した「藤子な瞬間」を紹介していこうと思います。第6回はA先生のブラック短編から「不器用な理髪師」です。今回はネタバレになりますのでご注意下さい。

改めて、ネタバレになりますがよろしいですね。

それでは、

 1月の下旬、春節(旧正月)の前日のことでした。私の所に1羽の鶏が贈られてきました。「春節の前後は商店や市場がほとんど休みになるので外食はできないし、自炊をするにも材料が買えない。だから生きた鶏(腐らない)を飼っておいて、必要なときに肉にするのだ」とのこと。で、冗談じゃなく開いてる店がほとんど無くなった(全く無いわけじゃありませんでしたが)こと、糞などで床がだいぶ汚れてきたことなどもあって、4日後に肉にしました。

 この時に思い出したのが「不器用な理髪師」です。鶏を捕まえて包丁を持ったとき、あの不幸な男がハッキリと鶏に重なって見えました。
 でもね、太い血管というのは大抵は筋肉の奥などに隠れているので、皮膚をちょっと切ったくらいでは血管までは切れないんですよね。血管を切るには、血管が浅くなっている場所をきちんと狙うか、思い切り深くまで切るかしないと。あの理髪師は何度もやっていて経験豊富だからこそ、それができるのかもしれません。7日前に炊いたご飯じゃありませんが、こわいこわい・・・って「こわい」が違いますね。

<『不器用な理髪師』あらすじ>

 ちょっと強面なセールスマン。普段は身だしなみに気を付ける彼だが、この日は徹マン明けでヒゲをそり忘れていた。そこでちょうど目に付いた理髪店に入ったのだが、そこの跡継ぎはとても不器用で・・・。

<収録>

●愛蔵版ブラックユーモア短篇集1巻「不思議町怪奇通り」(中央公論社)
●ヒゲ男(奇想天外コミックス/奇想天外社)
●夢魔子(コミック・スーリ/中央公論社)
 ほか

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