年始年末
1月
2月
3月
4月
6月
05/02
ひたすら仕事。三ヶ日に来るまでは、「青春小説U」はお先真っ暗といった状態だったのだが、ここへ来て、いくらでも書けるという状態になっている。
05/03
義父母を連れて浜名湖花博跡地の公園へ。モネの家は花がたっぷり残されている。車椅子を一つ借りて、義父母を交代で乗せる。どちらかといえば義父の方が弱っている。朝夕に仕事もかなり進む。
05/04
一章の半分はきている。ここからが一章の山場だ。というかこの作品は、一章でほぼ決まってしまう。最大の山場が一章に来る。二章と三章は長いエピローグのようなものだ。ここからが作品全体の最大の山場といっていい。
05/05
一章の山場となるセリフを書いた。まだ山場に到達していないのだが、少し先の場面のセリフだけを書いてみた。すごいセリフが書けたように思う。作品のタイトルもここから出てくる。実は、書き始める前から、タイトルは決めてある。まだ発表の段階ではない。タイトルを見ると内容がわかってしまうようなタイトルなので、最終的には変更するかもしれない。量的にはすでに全体の3分の1に達しているのではないかと思われる。だが、まだ1章の半ばだ。全体は3章なのだが、1章だけがやたらと長い変則的な作品になるかもしれない。
05/06
少し疲れてきたが、いい感じで進んでいる。これからが山場なのだが、そこに行くまでに、少し遊びを入れたい。ここまで、あまりにもテンポよく進んできたために、息つく暇がなくて、読者が疲れるかもしれない。嵐の前の静けさのような、無駄な部分をここで入れる。緩急というものをここで効果的に使いたい。明日は義父母をバス停まで送っていかないといけないが、午後は仕事に集中できるだろう。そこで山場を書く。
05/07
早朝に起きて仕事。主人公の母の死の直前のシーン。ここは山場の前の小さな山場。いい感じで完了。義父母をバス停まで送っていく。1時間くらいかかる。義父母の世話はけっこう大変だ。こちらも老人だから。わたしは書斎にこもって仕事をしていることが多かったから、かなり仕事ができた。妻は疲れ果てている。まあ、自分の親だから仕方がない。妻のストレス発散のためにスーパー2軒回る。終日豪雨。
05/08
お湯が出なくなった。昨日の豪雨で給湯器の点火プラグが湿ったのが原因。業者が来てプラスチックのカバーをつけてくれた。明日、三宿に帰る。山場の途中で移動すると集中力が途切れるので、本日は雑文をこなす。いろいろなものがたまっている。
05/09
三宿へ戻る。まず郵便物のチェック。メールは仕事場でも見ているが、サーバーにメールを残してあるので、改めてこちらでチェックする。ジャンクメール多し。三ヶ日から足柄まで運転したので疲れた。本日から夜型にしたいのだがうまくいくか。
05/10
ひさしぶりに大学。連休で1回ぬけただけだが、ずいぶん大学に行かなかった気がする。レポートを受け取った。ずっしりと重い。これを読む、というよりも、提出した事実を出席簿につける作業が重労働である。10日ぶりで目撃した目黒川緑道のカルガモ、もはやヒナとはいえない大きさに育っていた。
連休中、仕事場には、来年書く歴史小説の資料をもっていった。少し読んでみて、書けそうな手応えを感じたのだが、いま書いている「青春U」の調子が上がってきたので、10冊以上もっていったのに、1冊を半分読んだだけ。そのぶん、青春小説が進んだのでよしとしなければならないが、これからヒマを見つけて資料を読み込んでいかないといけない。ちなみにテーマは「日蓮」。なお「青春U」はいよいよ山場にさしかかっている。
05/11
文藝家協会で教科書関係者と懇談。教科書会社と著作者は、ある部分で対立し、ある部分で連携しなければならない関係だが、連携の方を強調して一致点を探る。みんなで仲良くやっていこうということ。その後、大学。著作権の話から文学の話へ、頭の中を切り替える必要がある。三十分くらい、研究室で休憩する時間があったので、脳を休めることができた。研究室は8階にあって眺めがいい。学生たちから自己紹介のレポートが出ている。一文、二文合わせて、540名の登録がある。ずっしりと重い。せいぜい1枚か2枚のレポートでこれだから、30枚前後の宿題がいっせいに出された場合を想定すると、気が重くなる。山場にさしかかっている「青春U」は今日は休止。連休中に浜名湖の仕事場に届いた『聖書の謎を解く』のゲラもまだ完了していないのに、明日は『永遠の放課後』の再校が届く。
05/12
河出書房新社の編集者来訪。彼女は文春ネスコで『聖書の謎を解く』を始め本を4冊(さらに共著が1冊)を出した、なじみの編集者である。文春ネスコがつぶれた後、河出に入った。河出はわたしがデビューさせてもらった出版社だが、なじみの編集者は皆、退社してしまったので、担当者がいなかった。で、彼女が担当になってくれることになったので、また河出とのつきあいができそうだ。とりあえず、来年出す本の構想と、将来的な展望について話す。
05/13
土曜日。『聖書の謎を解く』の初校、完了。『永遠の放課後』再校、半分。書きかけの「青春U」少し進む。雑文2件。やるべきことのメニューが多すぎて困る。
05/14
日曜日。平岡篤頼先生の一周忌。鎌倉霊園。平岡先生はフランス現代文学の翻訳家で、内向の世代を支援する批評家で、早稲田大学の教授で、文芸専修というユニークな学科の創設者で、『早稲田文学』を私費で支えたパトロンでもあった。わたしは『早稲田文学』の編集委員を長く務め、文芸専修の非常勤講師から専任扱いの客員教授となった。お世話にもなったが、自分なりに平岡先生を支えてきたと思う。学生編集者であった重松清や、教え子であった角田光代という、直木賞作家二名をはじめ、教え子の大学教授や評論家が多数参列した。そこから淘汰が始まって、三次会まで残ったのは九名であった。この九名のメンバーに友情を感じた。少し飲み過ぎた。
05/15
神保町の集英社に『永遠の放課後』(「青春小説T」)の再校ゲラを届ける。集英社の新しいビルに行くのは初めて。若い編集者と打ち合わせをしていると、なじみの古い編集者がぞろぞろと集まってくる。考えてみればこの会社とも長くつきあってきた。わたしのスタートは河出書房だが、少し年上の編集者に育てられたので、皆、リタイアしてしまった。集英社は同世代の編集者が多く、だからまだ会社にいる。しかしいい歳になっていてカンロクがついている。頼もしく、何だか、ものがなしい。その後、九段下まで歩いて、祥伝社の編集者と飲む。『ユダの謎』が3万部突破。この担当者も今年限りでリタイアとのことで、若い編集者を紹介してもらう。寿司を食べながら、次の構想を練る。すぐにはとりかかれないので、そのうち企画を出すと約束。年内に取り組めるか。夏にどれだけ仕事が進むかにかかっている。
05/16
自宅にて取材2件。それだけでけっこう疲れた。学生のレポートの整理。出席簿に印をつけるだけで大変。本日は第一文学部のみ。全部で540名の学生をかかえている。一年生のコマはいいのだが、それ以外は学年ごとに整理してから学生番号順にざっと並べ替えてから帳簿につけていく。この並べ替えの作業だけで疲れてしまう。「青春U」は昨日、飲み会から帰って酔いをさましてから、最大の山場の部分を書き終えた。ここで一気に第一章が終息する。当初は全体を三章と考えていたのだが、もう枚数としては半分近くに来ているので、一章の結びの部分を少しゆったりと書いて、全体を二章にすることにした。ということで、半分は出来たという手応えを得た。
05/17
「団塊老人」(新潮新書)の第7版が出たという通知が届いた。「空海」(作品社)も「ユダの謎」(祥伝社)も6版であるから、増刷の数ではトップである。もっとも「いちご同盟」(集英社)は最新の増刷で40万部なのでこれが随一であることは間違いない。6月には「永遠の放課後」(集英社文庫)、7月には「お父さんの算数」(仮題/新潮新書)が出る。版を重ねることを期待したい。学生のレポート、ようやく終わる。単に帳簿にメモを書くだけの作業なのだが、何しろ540名だから、疲労困憊である。第二文学部の学生の中に、わたしより年上が2名いることが判明した。同年配の人はもっとたくさんいる。定年になってから大学に入る人が、これからも増えるのではないかと思う。「青春U」はあとわずかで第一章が終わる。問題は第二章で、ガラッと雰囲気が変わることだ。ここまでは主人公の視点で、第二章からは、まず女性の視点になり、エンディングに近づくにつれて、視点が交錯することになる。わたしは授業では、視点を動かしてはいけないと教えているので、自ら鉄則を破ることになる。でも、視点を変えないと表現できないストーリーがすでにできあがっているので仕方がない。うまくいけば視点が変わることに効果が出てくると思う。
05/18
ペンクラブの言論表現委員会に出てから、大学へ。先週もそうだったが、夜間の授業の前に仕事を入れると、最後に疲れがドッと出る。大学のある日は他の仕事を入れないようにしないといけない。
05/19
文藝家協会総会。江藤淳さんの遺言みたいなかたちで突然、常務理事になってから、7−8年にはなると思う。その間、さまざまな業界の人と交渉をした。そういう人々が一挙に集まってくるし、新たな人との出会いもある。途切れ目なく誰かと挨拶をして名刺を交換している。小説家として生きていくためには、数人の親しい作家が必要であって、本来の自分としてはそれ以外の人とつきあう義務はないはずだが、協会の仕事をしているので、さまざまな場面でお世話になった人がいっぱいいる。それは楽しいことだし、いろいろと学ぶことも多かったのだが、次から次へと挨拶が続くので、ほんの少し疲れた。わたしが立ち上げたNPOの広報部長と、スタッフと、打ち上げの飲み会をしたあと、理事選挙管理委員長代理で総会に出席していただいた岳真也さんと、新宿で飲む。何か、疲れた。著作権関連の仕事は、自分では運命だと思っている。いま日蓮の資料を読んでいるので、すぐに「法難」という言葉が思いつく。べつに難儀なことがあったわけではないが、文学一筋に生きたいという一介の作家にとっては、さまざまな雑用に忙殺されることは法難というしかない。それでも日蓮を命をかけて戦ったのだし、空海も桓武天皇も持統天皇も、ヤマトタケルも、わたしがこれまで書いてきた人物たちは、与えられた局面で、全力を尽くして努力したのだ。だからわたしが尽力するのは当然のことだ。それにしても、ここ数年の困難な局面に、この場面にわたしがここにいなければどうなっていたかと考えると、ぞっとするくらいに、わたしがそこに存在したことの意義は大きいと思う。でも、その時間のロスのために、わたしの小説の完成が少し遅れたかもしれない。それはたぶん些細なことだ。大学もそうなのだが、著作権関連の仕事のない日は、わたしは午後の時間をのんびり散歩してすごす。一方、どんなに忙しい日でも、夜中は自分の仕事をしている。だから、大きな影響はないと自分では考えている。でも、今日はちょっと疲れたかな。久しぶりに新宿で飲んだので、本日は仕事はできない。それでも充実した一日だったと思う。
05/20
土曜日。ひたすら仕事。
05/21
日曜日。ひたすら仕事。雑文多し。
05/22
文藝家協会で映像ソフト協会と協議。いままではわたしが責任者だったが、映像原作委員会というのを新設して浅田次郎理事に委員長にご就任いただいたので、本日はわたしはオブザーバーであった。やあ、だいぶ楽になった。
05/23
めずらしく公用なし。ひたすら仕事。「青春U」ようやく第1章完了。全体は2章なので、半分できたことになる。引き続き第2章に取り組む。
05/24
大学。何ごともなし。
05/25
第2章に入っている。いつも学生に視点を変えてはいけないと教えているのだが、この作品では、第2章になると視点が変わる。第1章には登場しなかった人物(第2ヒロイン)が主体となって、主人公を外部から眺めることになる。そこで読者は戸惑うことになるが、何事もなかったように自然に語りきる必要がある。とくに出だしのテンポが必要で、話を展開して視点が移動するという致命的な不自然を忘れさせなければならない。
05/26
『空海』の7刷届く。『空海』と『団塊老人』が7刷。『ユダの謎』が6刷。競争している。こういう競争は楽しい。お台場で映画を見る。「ダ・ヴィンチ・コード」。原作を読んでいないので内容を知らない。しかしわたしの「ユダの謎」(ノンブックス)が増刷を続けているのは、「ダ・ヴィンチ・コード」の横に置くと売れるかたらだと営業の人から聞いているので、どんなものかなと思って、いちおう見ておくことにした。まず感じたのは、よくある「聖杯もの」だということ。それから「最後の晩餐」のイエスの右隣にいるのが女性だということ。それからマグダラのマリアが一番弟子で、同時にイエスの妻で、子供がいたということ。わたしの本を読むと、イエスが命がけで愛した弟子がいたことがわかる。わたしの解釈では、その弟子とは、「ヨハネによる福音」に登場する「主の愛した弟子」で、一般的にはそれはヨハネだとされているのだが、わたしは死人から復活したラザロ(またの名がヨハネ)だと考えている。だから女性である必要はない。マグダラのマリアが「トマスによる福音」(外伝)などで一番弟子だとされていることは、聖書学者なら誰でも知っていること。本編の聖書でも、イエスの復活を最初に目撃するのはマグダラのマリアだと書かれている。高価な油でイエスの足を清め、会計責任者のユダと対立するのもマグダラのマリアだ。マリア妊娠説は「ユダの謎」には書いていないが、小説「血に火を放つ者」では書いてある。父親が誰かは特定されていないが、小説を読んだ限りではヨハネの子だと読めるように書いてある。そうしておいた方が穏やかだと思ったからで、イエスに子供があってもかまわないが、イエスが神の子であっても、何代も経れば神の子孫の神通力はうすまるはずなので、どうでもいいことだ。以上が感想である。フェボナッチ数列で金庫を開ける話が出てきたので、映画のあとで食事をした時に、ナプキンに数字を書いて妻に説明した。こういう説明をしても妻がわたしを尊敬するわけではない。ただ変な人だと思うだけだ。
05/27
めじろ台男声合唱団の練習。テノールはわたし一人。先生がセカンド・テナーを歌って、何とかハーモニーになった。3声の曲は、わたし一人が声をはりあげることになったので疲れた。
05/28
「父親が教える算数」(新潮新書)のゲラ。書いたのは去年の秋なので、算数のことはきれいさっぱり忘れてしまっている。編集者、校正者を頼りに、指摘された問題点を修正するにとどめる。重大なミスを一つ発見。わたしが算数の問題文を書き間違えていたので、その後の説明が意味不明のものになって、校正者を混乱させてしまった。すみません。気がついてよかった。
05/29
音訳ボランティア全国大会。音訳というのは視覚障害者等のための朗読のこと。視覚障害者のオカリナ演奏のあと、わたしの講演。著作権と音訳の関係と今後の展望について。必要なことは話せた。ボランティの善意と熱意は尊重しなければならないが、その前に著作権が壁のように立ちはだかっていることも事実だ。しかし地方の図書館の民営化などで、福祉がおろそかになる可能性がある。ボランティアに頼らざるをえないことになるだろう。従って、ボランティア活動を尊重する方向に努力していきたい。講演のあと、市ヶ谷のアルカディアから高田馬場の点字図書館に移動。理事会。これまでは評議員だったのだが、阿刀田理事が退任されるので、繰り上がりでわたしが理事を務めることになった。ここの理事は人数が少ないので大任である。その理事会を途中で抜けてまた市ヶ谷に。音訳ボランティア全国大会がまだ続いている。懇親会で乾杯の音頭をとる。講演会には850人くらいの参加者があった。懇親会にも400人くらいいたのではないか。ボランティアの皆さんの熱意に頭が下がる。
05/30
高校の同窓会。社長になったのが一名いるので祝宴。社長を辞めたのも一名いて、格下げではないという言い訳もあった。偉い人がたくさんいる。少し飲み過ぎた。
05/31
大学。暑い。夏が来た。やや宿酔で疲れた。5月も今日で終わり。「青春U」は2章もいいペースで進んでいる。まだ出だしだけだが、これから少しトーンが高くなって、話全体の仕掛けが見えるようになる。冒頭部分、視点が女性に移っているのだが、山場に向かって1章の主人公に視点を戻す。ずっとその視点で行きたいのだが、ラストの山場は主人公がいない場面になるので、女性の視点を一度出しておかないと唐突な感じになるのではということで、こういう構成にしている。うまくいくかどうかは全体を書き上げてみないとわからない。「青春T(永遠の放課後)」はいま校正の最終段階。念校というやつだ。疑問点3箇所ほどファックスで送ってきた。編集者の指摘に任せる。この段階になると、編集者の方がしっかり読み込んでいるので、著作者は余計なことを言わない方がいい。

