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「私が直す!」戸塚宏 (著)(飛鳥新社 1983年11月)

→目次など

■人は「生きたい」自分を感じたとき生きる力が湧くのだ■

1980年代に訓練生の死亡事件をきっかけにマスコミから大いに叩かれていた戸塚ヨットスクール。戸塚校長の逮捕直前に書かれたというこの本が、同校のWebサイトに全文掲載されています。

スパルタ式のやりかたには、一方的な力関係の中で教師と生徒、看守と囚人、医師と患者と同様に、監督する側に増長が生じることはどうにも避けられないという大きな問題があると考える私にとって、同校の方式には賛同できかねる部分があります。それでも、「これは本当だ」と共感できる記述が多くある本でした。

思春期になった子どもが心の問題を抱えたとします。多くの場合、家族にも問題があるのですが、根本解決できることはそう多くはありません。各種機関に相談を重ね、診断を受けても、子どもは部屋に引きこもり、精神状態を悪化させてしまう。さらには、殺人事件に発展してしまうこともあります。

子どもは親に甘え、親を恨み、思考力を低下させ、顔や姿勢にも歪みを生じてきます。

ヨットスクールが効果を上げていたのは、このような状態になってしまった子どもたちに生きる力を蘇らせることに成功したからのようです。生きる力を取り戻した子どもたちは、不完全な親を乗り越え、自分自身の人生を生きるために歩み始めます。子どもたちは「愛」や「思いやり」を知って変わるのではありません。そんな抽象的なものではなく、海に放り込まれ、ヨットを転覆させられて、生きたい自分を実感するから変わるのです。たくましくならなければならない世界に生きていることを、子どもたちは感じ取ります。

私達は子供達に対して、あくまで"他人"として接します。よそのオジサンなわけです。当たり前のことですが、人間が生きていくためには他人と協調し、時には競争していかなければなりません。他人とのコミュニケーションを拒否すれば、家庭という空間から出られなくなってしまいます。"他人"をまず恐れ、やがて慣れ親しみ、その後に克服していかなければならないのですね。

この言葉は『森田療法』のあるがままを思わせます。戸塚ヨットスクールで「生きたい」自分に気付き、他人を乗り越えることを覚えたとき、子どもたちは背筋も伸び、三角形をしていた瞳は丸くなり、男は精悍な表情に、女は優しい表情になるといいます。

報道が事実であるとすれば、5人または6人がここで命を落としているようです。だからといって、完全否定してよいとは私には思えません。きれいごとを並べ立てる側は、根本原因を探ってみようとすることも、実践してみることもせず、正義の仮面をかぶりながら、いじめや引きこもりを産む社会をさらに悪化させているだけなのかもしれないのです。本当のことを言おうとすれば、職を失ってしまうような社会を作りあげたのは、間違いなく正義面をした奴らです。

私自身も甘い自分を反省させられるところがありました。戸塚ヨットスクールに入校せよとは言いませんが、登校拒否、引きこもりなどで苦しんでいる人があれば、ぜひ読んでみて欲しい本でした。

内容の紹介


私は、1977年にヨットスクールを開校しました。学校法人ではありません。「株式会社戸塚ヨットスクール」です。なぜ、学校法人ではないのか?申請しても認められないからではありません。認められるにしても私は学校法人にしようとは思いません。学校法人となることによって、あまりにも問題の多い教育基本法の制約を受けざるをえなくなるし、また、あまりにも問題の多い文部省の管轄に入らざるをえないからです。


私は自分だけは生き延びたいと、思いました。それが正直な思いです。今、波に飲み込まれようとしているクルーのことを考える前に、自分が生き延びなければならない。何がなんでも彼を助けようという気持ちは、私の中にはありませんでした。彼は彼自身の力で生き延びなければならない。本当の極限状態とは、恐らくそういうものだと、私は思います。


ゼロ歳児から3歳、つまり子供が第一反抗期を迎えるまで、母親は限りない愛情を子供に注いで下さい。この間、父親はほとんど不要です。そして、子供が自分の足で走り出し、母親の引力圏から脱し始めてから第二反抗期まで、今度は父なる存在が子供にとっては必要です。子供の背後に父なる存在がいることによって、子供は心おきなく前へ前へと進んでいくのです。


父親は一瞬、けげんな表情を浮かべ、そして息をつまらせました。人違いかと思ったのです。そこに立っているのが間違いなく自分の子供だとわかると、子供を激しく抱き寄せました。


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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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