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Last updated 2022.12.23 mf
弁護士河原崎弘
退職する場合、何日前に会社に通知すべきですか
相談
会社を辞めることになりました。会社を辞める場合、どのくらい前に会社に通知しなくてはいけないのでしょうか。会社の就業規則では、1月前に退職の申出をすることになっております。これを守らなければいけないでしょうか。守らないと退職金が支給されないかと、心配しています。
相談者は、弁護士会の
電話無料相談
で、弁護士に相談しました。
回答
弁護士の説明は次の通りでした。
期間を置く必要
従業員が退職する場合、いつまでに申出(退職願、退職届の提出)するのか、就業規則で、1月〜3か月前と決まっていることが多いです。これを守らないと、退職金の減額や、損害賠償金を課す規則もあります。使用者にとって、後任者の補充、引継ぎのため、退職届後若干の準備期間が必要なのです。
法律の規定
労働基準法には、規定は、ありません。民法には、雇用契約は退職の申出後2週間で契約が終了するとの規定はあります(627条1項、後記)。 これは、「完全月給制」の従業員についても同様です。民法627条2項は、民法改正により、使用者からの解約申し出にのみ適用されます。「完全月給制」の従業員については、従業員からの退職申出については、627条1項が適用されます。
「年俸制」の人は、民法627条3項に、「6か月以上の期間ごとに報酬が定められている場合は、退職の3か月以上前に退職の意思表明を行う義務がある」といった内容の記載があります。 したがって年俸制の人は、退職の3か月前に退職願いを提出する必要があります。
多くの就業規則は、民法の規定に反しています。
法律と就業規則の優劣
退職の予告期間が短いことを理由として、損害賠償義務を認めた判例はありません。退職金の減額を認めた判例もありません。下記判決をみても、民法の規定は就業規則に優先し、退職金は支給されます。
民法627条の規定は、強行規定であり、この規定に反する就業規則の規定は無効でしょう。
結論
常識として1月くらい前に申出て、引継ぎをすることでしょう。
下記判決をみても、民法の規定は就業規則に優先し、退職金は支給されます。
会社に提出する書式は、
退職願
の通りです。
法律
民法第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
1
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
2
期間によって報酬を定めた場合には、
使用者からの解約の申入れは、
次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
3
6箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、3箇月前にしなければならない。
<注>
2項の「使用者からの解約の申入れは、」との文言は、2020年4月1日施行の改正民法で挿入されました。
判例
東京地裁昭51.10.29判決
以上によれば、法は、労働者が労働契約から脱することを欲する場合にこれを制限する手段となりうるものを極力排斥して労働者の解約の自由を保障しようとしてい るものとみられ、このような観点からみるときは、
民法第627条の予告期間は、使用者のためにはこれを延長できないものと解するのが相当である。
従って、変更された就業規則第50条の規定は、予告期間の点につき、民法第627条に抵触しない範囲でのみ(たとえば、前記の例の場合)有効だと解すべく、そ の限りでは、同条項は合理的なものとして、個々の労働者の同意の有無にかかわらず、適用を妨げられないというべきである。
なお、同規定によれば、退職には会社の許可を得なければならないことになっているが(この点は旧規定でも同じ。)、このように解約申入れの効力発生を使用者の 許可ないし承認にかからせることを許容すると、労働者は使用者の許可ないし承認がない限り退職できないことになり、労働者の解約の自由を制約する結果となること、 前記の予告期間の延長の場合よりも顕著であるから、とくに法令上許容されているとみられる場合(たとえば、国家公務員法第61条、第77条、人事院規則8−12・ 第73条参照)を除いては、かかる規定は効力を有しないものというべく、同規定も、退職に会社の許可を要するとする部分は効力を有しないと解すべきである。
以上によれば、原告は役付者であったけれども、変更された就業規則第50条の後段によって退職日の6か月前に解約申入れをしなければならないと解する余地はな いが、さりとて、本件のように月給者でしかも役付の者が月の後半に解約申入れをした場合に、民法第627条第1、第2項によらないで、同条項の前段によるものと するのは、被告の意に反すると解されるから、結局、本件の場合には民法第627条第1、第2項で定める期間を基準にすべきである。そして、前述のように、原告は 被告に対し、同年5月25日に、2か月後である同年7月25日限り退職する旨の退職願を提出し、なお、さらに1か月後である同年8月25日まで勤務についたので あるから、同日をもって、原・被告間の雇用契約は終了したというべきである。
登録 Sept. 7,2006
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