外国に居る外国人の暴力夫を相手に(被告として)日本で離婚の裁判できますか

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2015.7.1mf

相談

私は、夫(国籍、アメリカ)が日本に滞在中に結婚し、アメリカにわたりました。
1年後に子供が生まれました。その頃から、夫が私に対して殴る、蹴るの暴力を加えるようになりました。
2年ほど我慢しましたが、私は、夫の暴力に危険を感じ、子供を連れて日本に逃げて帰りました。 日本に帰国し1年ほど経過してから、私は、アメリカにいる夫に連絡し、「離婚したい」と言いました。しかし、夫は、離婚に同意しません。私は、現在、東京に住んでいます。
私はどうしたら離婚できるでしょうか。
夫は、私が子供を誘拐したと、警察に届けています。

回答

あなたが、彼と離婚するには裁判しかありません。

国際管轄

その場合、どこの国の裁判所で裁判するかです。離婚の国際的な管轄裁判所は、原則として、被告の住所地の裁判所です。しかし、次の場合、あなたは原告の住所地の裁判所(日本の裁判所)で、裁判できます。 この他に、例外ですが、下記のとおり、日本での裁判管轄を認めた判例があります。あなたのケースは、その例外に当たりそうです。日本で訴えを提起してみたらどうでしょう。
原告(あなた)の住所地の裁判所(この場合は、日本の裁判所)が管轄を認める可能性があります。

国内管轄

日本で裁判できる場合、 日本国内での管轄裁判所は 2004年4月1日からは、 人事訴訟法 4条1項により、東京家庭裁判所にとなります。

夫が誘拐罪であなたを告訴した件ですが、このような例はアメリカで多いです。(あなたは身柄を拘束される危険がありますので)トラブルを避けるために、あなたはアメリカおよびアメリカと犯罪人引渡し条約を結んでいる国へ行かない方が賢明でしょう。やむをえず行く場合は、事前に、当該州ないし国の弁護士に相談すべきでしょう。

判決

  1. 最高裁判所昭和39年3月25日判決
    外国人間の離婚請求の事案につき、被告の住所地が日本にある場合に管轄を認めるのが原則 であるが、原告が遺棄された場合、被告が行方不明の場合その他これに準ずる場合には、原告の住所が日本にあれば日本の管轄を肯定すべきである(判例タイムズ165号174頁) 。
  2. 最高裁判所平成8年6月24日判決
    日本に居住する日本国籍の夫がドイツに居住するドイツ国籍の妻に対する離婚請求訴訟を日本の裁判所に提起した場合において、妻が先にドイツの裁判所に提起した離婚請求訴訟につき妻の請求を認容する旨の判決が確定し、同国では右両名の婚姻は既に終了したとされているが、日本では、右判決は民訴法200条2号の要件を欠くため効力がなく、婚姻はいまだ終了しておらず、夫がドイツの裁判所に離婚請求訴訟を提起しても婚姻の終了を理由に訴えが不適法とされる可能性が高いときは、夫の提起した離婚請求訴訟につき日本の国際裁判管轄を肯定すべきである(判例時報1578ー56)
  3. 東京地方裁判所平成16年1月30日判決
    日本国籍の女性が、フランス国籍の夫と結婚したが、夫の暴力がひどく、子供を連れてフランスから日本に逃げ帰り、日本で、離婚を求め訴えを提起した例がありました。
    地方裁判所の判例ですが、夫の暴力により、妻が帰国を余儀なくされたこと、妻が裁判のたためフランスへ渡れば、夫の暴力にさらされる危険があることなどを理由に、日本の裁判所に管轄を認め、「離婚、母親を親権者と定め、慰謝料300万円」を認めました(判例時報1854-51)。

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