人事訴訟法

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2005.4.1更新


人事訴訟法
(平成15年7月16日・法律第109号)
施行、平成16.4.1

第1章 総則

第1節 通則
第1条(趣旨)
この法律は、人事訴訟に関する手続について、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の特
例等を定めるものとする。
第2条(定義)

この法律において「人事訴訟」とは、次に掲げる訴えその他の身分関係の形成又は存否の
確認を目的とする訴え(以下「人事に関する訴え」という。)に
係る訴訟をいう。
一 婚姻の無効及び取消しの訴え、離婚の訴え、協議上の離婚の無効及び取消しの訴え並
びに婚姻関係の存否の確認の訴え
二 嫡出子の否認の訴え、認知の訴え、認知の無効及び取消しの訴え、民法(明治二十九
年法律第八十九号)第七百七十三条の規定により父を定めることを目的とする訴え並びに
実親子関係の存否の確認の訴え
三 養子縁組の無効及び取消しの訴え、離縁の訴え、協議上の離縁の無効及び取消しの訴
え並びに養親子関係の存否の確認の訴え
第3条(最高裁判所規則)

この法律に定めるもののほか、人事訴訟に関する手続に関し必要な事項は、最高裁判所規
則で定める。

第2節 裁判所

第1款 管轄
第4条(人事に関する訴えの管轄)
人事に関する訴えは、当該訴えに係る身分関係の当事者が普通裁判籍を有する地又はその
死亡の時にこれを有した地を管轄する家庭裁判所の管轄に専属する。
2 前項の規定による管轄裁判所が定まらないときは、人事に関する訴えは、最高裁判所規
則で定める地を管轄する家庭裁判所の管轄に専属する。
第5条(併合請求における管轄)

数人からの又は数人に対する一の人事に関する訴えで数個の身分関係の形成又は存否の確
認を目的とする数個の請求をする場合には、前条の規定にかかわらず、同条の規定により
一の請求について管轄権を有する家庭裁判所にその訴えを提起することができる。ただ
し、民事訴訟法第三十八条前段に定める場合に限る。
第6条(調停事件が係属していた家庭裁判所の自庁処理)

家庭裁判所は、人事訴訟の全部又は一部がその管轄に属しないと認める場合においても、
当該人事訴訟に係る事件について家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)第十八条
第一項の規定により申し立てられた調停に係る事件がその家庭裁判所に係属していたとき
であって、調停の経過、当事者の意見その他の事情を考慮して特に必要があると認めると
きは、民事訴訟法第十六条第一項の規定にかかわらず、申立てにより又は職権で、当該人
事訴訟の全部又は一部について自ら審理及び裁判をすることができる。
第7条(遅滞を避ける等のための移送)

家庭裁判所は、人事訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべ
き証人の住所その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を
図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、当該人事訴訟の全部又は
一部を他の管轄裁判所に移送することができる。
第8条(関連請求に係る訴訟の移送)

家庭裁判所に係属する人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に
関する請求に係る訴訟の係属する第一審裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより、
当該訴訟をその家庭裁判所に移送することができる。この場合においては、その移送を受
けた家庭裁判所は、当該損害の賠償に関する請求に係る訴訟について自ら審理及び裁判を
することができる。
2 前項の規定により移送を受けた家庭裁判所は、同項の人事訴訟に係る事件及びその移送
に係る損害の賠償に関する請求に係る事件について口頭弁論の併合を命じなければならな
い。

第2款 参与員


第9条(参与員)
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、参与員を審理又は和解の試みに立ち会わせて
事件につきその意見を聴くことができる。
2 参与員の員数は、各事件について一人以上とする。
3 参与員は、毎年あらかじめ家庭裁判所の選任した者の中から、事件ごとに家庭裁判所が
指定する。
4 前項の規定により選任される者の資格、員数その他同項の選任に関し必要な事項は、最
高裁判所規則で定める。
5 参与員には、最高裁判所規則で定める額の旅費、日当及び宿泊料を支給する。

第10条(参与員の除斥及び忌避)

民事訴訟法第二十三条から第二十五条までの規定は、参与員について準用する。
2 参与員について除斥又は忌避の申立てがあったときは、参与員は、その申立てについて
の決定が確定するまでその申立てがあった事件に関与することができない。
第11条(秘密漏示に対する制裁)

参与員又は参与員であった者が正当な理由なくその職務上取り扱ったことについて知り得
た人の秘密を漏らしたときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

人事訴訟法  
 
第3節 当事者

第12条(被告適格)
人事に関する訴えであって当該訴えに係る身分関係の当事者の一方が提起するものにおい
ては、特別の定めがある場合を除き、他の一方を被告とする。
2 人事に関する訴えであって当該訴えに係る身分関係の当事者以外の者が提起するものに
おいては、特別の定めがある場合を除き、当該身分関係の当事者の双方を被告とし、その
一方が死亡した後は、他の一方を被告とする。
3 前二項の規定により当該訴えの被告とすべき者が死亡し、被告とすべき者がないとき
は、検察官を被告とする。
第13条(人事訴訟における訴訟能力等)

人事訴訟の訴訟手続における訴訟行為については、民法第四条、第九条、第十二条及び第
十六条並びに民事訴訟法第三十一条並びに第三十二条第一項(同法第四十条第四項におい
て準用する場合を含む。)及び第二項の規定は、適用しない。
2 訴訟行為につき能力の制限を受けた者が前項の訴訟行為をしようとする場合において、
必要があると認めるときは、裁判長は、申立てにより、弁護士を訴訟代理人に選任するこ
とができる。
3 訴訟行為につき能力の制限を受けた者が前項の申立てをしない場合においても、裁判長
は、弁護士を訴訟代理人に選任すべき旨を命じ、又は職権で弁護士を訴訟代理人に選任す
ることができる。
4 前二項の規定により裁判長が訴訟代理人に選任した弁護士に対し当該訴訟行為につき能
力の制限を受けた者が支払うべき報酬の額は、裁判所が相当と認める額とする。
第14条


人事に関する訴えの原告又は被告となるべき者が成年被後見人であるときは、その成年後
見人は、成年被後見人のために訴え、又は訴えられることができる。ただし、その成年後
見人が当該訴えに係る訴訟の相手方となるときは、この限りでない。
2 前項ただし書の場合には、成年後見監督人が、成年被後見人のために訴え、又は訴えら
れることができる。
第15条(利害関係人の訴訟参加)

検察官を被告とする人事訴訟において、訴訟の結果により相続権を害される第三者(以下
「利害関係人」という。)を当該人事訴訟に参加させることが必要であると認めるとき
は、裁判所は、被告を補助させるため、決定で、その利害関係人を当該人事訴訟に参加さ
せることができる。
2 裁判所は、前項の決定をするに当たっては、あらかじめ、当事者及び利害関係人の意見
を聴かなければならない。
3 民事訴訟法第四十三条第一項の申出又は第一項の決定により検察官を被告とする人事訴
訟に参加した利害関係人については、同法第四十五条第二項の規定は、適用しない。
4 前項の利害関係人については、民事訴訟法第四十条第一項から第三項まで(同項につい
ては、訴訟手続の中止に関する部分に限る。)の規定を準用する。
5 裁判所は、第一項の決定を取り消すことができる。

第4節 訴訟費用

第16条
検察官を当事者とする人事訴訟において、民事訴訟法第六十一条から第六十六条までの規
定によれば検察官が負担すべき訴訟費用は、国庫の負担とする。
2 利害関係人が民事訴訟法第四十三条第一項の申出又は前条第一項の決定により検察官を
被告とする人事訴訟に参加した場合における訴訟費用の負担については、同法第六十一条
から第六十六条までの規定を準用する。
  
第5節 訴訟手続

第17条(関連請求の併合等)
人事訴訟に係る請求と当該請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求
とは、民事訴訟法第百三十六条の規定にかかわらず、一の訴えですることができる。この
場合においては、当該人事訴訟に係る請求について管轄権を有する家庭裁判所は、当該損
害の賠償に関する請求に係る訴訟について自ら審理及び裁判をすることができる。
2 人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求を目的と
する訴えは、前項に規定する場合のほか、既に当該人事訴訟の係属する家庭裁判所にも提
起することができる。この場合においては、同項後段の規定を準用する。
3 第八条第二項の規定は、前項の場合における同項の人事訴訟に係る事件及び同項の損害
の賠償に関する請求に係る事件について準用する。
第18条(訴えの変更及び反訴)

人事訴訟に関する手続においては、民事訴訟法第百四十三条第一項及び第四項、第百四十
六条第一項並びに第三百条の規定にかかわらず、第一審又は控訴審の口頭弁論の終結に至
るまで、原告は、請求又は請求の原因を変更することができ、被告は、反訴を提起するこ
とができる。
第19条(民事訴訟法の規定の適用除外)

人事訴訟の訴訟手続においては、民事訴訟法第百五十七条、第百五十七条の二、第百五十
九条第一項、第二百七条第二項、第二百八条、第二百二十四条、第二百二十九条第四項及
び第二百四十四条の規定並びに同法第百七十九条の規定中裁判所において当事者が自白し
た事実に関する部分は、適用しない。
2 人事訴訟における訴訟の目的については、民事訴訟法第二百六十六条及び第二百六十七
条の規定は、適用しない。
第20条(職権探知)

人事訴訟においては、裁判所は、当事者が主張しない事実をしん酌し、かつ、職権で証拠
調べをすることができる。この場合においては、裁判所は、その事実及び証拠調べの結果
について当事者の意見を聴かなければならない。
第21条(当事者本人の出頭命令等)

人事訴訟においては、裁判所は、当事者本人を尋問する場合には、その当事者に対し、期
日に出頭することを命ずることができる。
2 民事訴訟法第百九十二条から第百九十四条までの規定は、前項の規定により出頭を命じ
られた当事者が正当な理由なく出頭しない場合について準用する。
第22条(当事者尋問等の公開停止)

人事訴訟における当事者本人若しくは法定代理人(以下この項及び次項において「当事者
等」という。)又は証人が当該人事訴訟の目的である身分関係の形成又は存否の確認の基
礎となる事項であって自己の私生活上の重大な秘密に係るものについて尋問を受ける場合
においては、裁判所は、裁判官の全員一致により、その当事者等又は証人が公開の法廷で
当該事項について陳述をすることにより社会生活を営むのに著しい支障を生ずることが明
らかであることから当該事項について十分な陳述をすることができず、かつ、当該陳述を
欠くことにより他の証拠のみによっては当該身分関係の形成又は存否の確認のための適正
な裁判をすることができないと認めるときは、決定で、当該事項の尋問を公開しないで行
うことができる。
2 裁判所は、前項の決定をするに当たっては、あらかじめ、当事者等及び証人の意見を聴
かなければならない。
3 裁判所は、第一項の規定により当該事項の尋問を公開しないで行うときは、公衆を退廷
させる前に、その旨を理由とともに言い渡さなければならない。当該事項の尋問が終了し
たときは、再び公衆を入廷させなければならない。
第23条(検察官の関与)

人事訴訟においては、裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、必要があると認める
ときは、検察官を期日に立ち会わせて事件につき意見を述べさせることができる。
2 検察官は、前項の規定により期日に立ち会う場合には、事実を主張し、又は証拠の申出
をすることができる。
第24条(確定判決の効力が及ぶ者の範囲)

人事訴訟の確定判決は、民事訴訟法第百十五条第一項の規定にかかわらず、第三者に対し
てもその効力を有する。
2 民法第七百三十二条の規定に違反したことを理由として婚姻の取消しの請求がされた場
合におけるその請求を棄却した確定判決は、前婚の配偶者に対しては、前項の規定にかか
わらず、その前婚の配偶者がその請求に係る訴訟に参加したときに限り、その効力を有す
る。
第25条(判決確定後の人事に関する訴えの提起の禁止)

人事訴訟の判決(訴えを不適法として却下した判決を除く。次項において同じ。)が確定
した後は、原告は、当該人事訴訟において請求又は請求の原因を変更することにより主張
することができた事実に基づいて同一の身分関係についての人事に関する訴えを提起する
ことができない。
2 人事訴訟の判決が確定した後は、被告は、当該人事訴訟において反訴を提起することに
より主張することができた事実に基づいて同一の身分関係についての人事に関する訴えを
提起することができない。
第26条(訴訟手続の中断及び受継)


第十二条第二項の規定により人事に関する訴えに係る身分関係の当事者の双方を被告とす
る場合において、その一方が死亡したときは、他の一方を被告として訴訟を追行する。こ
の場合においては、民事訴訟法第百二十四条第一項第一号の規定は、適用しない。
2 第十二条第一項又は第二項の場合において、被告がいずれも死亡したときは、検察官を
被告として訴訟を追行する。
第27条(当事者の死亡による人事訴訟の終了)


人事訴訟の係属中に原告が死亡した場合には、特別の定めがある場合を除き、当該人事訴
訟は、当然に終了する。
2 離婚、嫡出子の否認又は離縁を目的とする人事訴訟の係属中に被告が死亡した場合に
は、当該人事訴訟は、前条第二項の規定にかかわらず、当然に終了する。

第6節 補則

第28条(利害関係人に対する訴訟係属の通知)
裁判所は、人事に関する訴えが提起された場合における利害関係人であって、父が死亡し
た後に認知の訴えが提起された場合におけるその子その他の相当と認められるものとして
最高裁判所規則で定めるものに対し、訴訟が係属したことを通知するものとする。ただ
し、訴訟記録上その利害関係人の氏名及び住所又は居所が判明している場合に限る。
第29条(民事訴訟法の適用関係)

人事訴訟に関する手続についての民事訴訟法の規定の適用については、同法第二十五条第
一項中「地方裁判所の一人の裁判官の除斥又は忌避についてはその裁判官の所属する裁判
所が、簡易裁判所の裁判官の除斥又は忌避についてはその裁判所の所在地を管轄する地方
裁判所」とあるのは「家庭裁判所の一人の裁判官の除斥又は忌避については、その裁判官
の所属する裁判所」と、同条第二項並びに同法第百三十二条の五第一項、第百八十五条、
第二百三十五条第二項及び第三項、第二百六十九条第一項、第三百二十九条第三項並びに
第三百三十七条第一項中「地方裁判所」とあるのは「家庭裁判所」と、同法第二百八十一
条第一項中「地方裁判所が第一審としてした終局判決又は簡易裁判所」とあるのは「家庭
裁判所」と、同法第三百十一条第二項中「地方裁判所の判決に対しては最高裁判所に、簡
易裁判所の判決に対しては高等裁判所」とあるのは「家庭裁判所の判決に対しては最高裁
判所」と、同法第三百三十六条第一項中「地方裁判所及び簡易裁判所」とあるのは「家庭
裁判所」とする。
第30条(保全命令事件の管轄の特例)

人事訴訟を本案とする保全命令事件は、民事保全法(平成元年法律第九十一号)第十二条
第一項の規定にかかわらず、本案の管轄裁判所又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争
物の所在地を管轄する家庭裁判所が管轄する。
2 人事訴訟に係る請求と当該請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請
求とを一の訴えですることができる場合には、当該損害の賠償に関する請求に係る保全命
令の申立ては、仮に差し押さえるべき物又は係争物の所在地を管轄する家庭裁判所にもす
ることができる。

第2章 婚姻関係訴訟の特例

第1節 管轄
第31条
家庭裁判所は、婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る婚姻の当事者間に成年に達しない子が
ある場合には、当該訴えに係る訴訟についての第六条及び第七条の規定の適用に当たって
は、その子の住所又は居所を考慮しなければならない。

第2節 附帯処分等

第32条(附帯処分についての裁判等)
裁判所は、申立てにより、夫婦の一方が他の一方に対して提起した婚姻の取消し又は離婚
の訴えに係る請求を認容する判決において、子の監護者の指定その他子の監護に関する処
分又は財産の分与に関する処分(以下「附帯処分」と総称する。)についての裁判をしな
ければならない。
2 前項の場合においては、裁判所は、同項の判決において、当事者に対し、子の引渡し又
は金銭の支払その他の財産上の給付その他の給付を命ずることができる。
3 前項の規定は、裁判所が婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る請求を認容する判決におい
て親権者の指定についての裁判をする場合について準用する。
4 裁判所は、第一項の子の監護者の指定その他子の監護に関する処分についての裁判又は
前項の親権者の指定についての裁判をするに当たっては、子が十五歳以上であるときは、
その子の陳述を聴かなければならない。
第33条(事実の調査)

裁判所は、前条第一項の附帯処分についての裁判又は同条第三項の親権者の指定について
の裁判をするに当たっては、事実の調査をすることができる。
2 裁判所は、相当と認めるときは、合議体の構成員に命じ、又は家庭裁判所若しくは簡易
裁判所に嘱託して前項の事実の調査(以下単に「事実の調査」という。)をさせることが
できる。
3 前項の規定により受命裁判官又は受託裁判官が事実の調査をする場合には、裁判所及び
裁判長の職務は、その裁判官が行う。
4 裁判所が審問期日を開いて当事者の陳述を聴くことにより事実の調査をするときは、他
の当事者は、当該期日に立ち会うことができる。ただし、当該他の当事者が当該期日に立
ち会うことにより事実の調査に支障を生ずるおそれがあると認められるときは、この限り
でない。
5 事実の調査の手続は、公開しない。ただし、裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すこ
とができる。
第34条(家庭裁判所調査官による事実の調査)

裁判所は、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせることができる。
2 急迫の事情があるときは、裁判長が、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせることがで
きる。
3 家庭裁判所調査官は、事実の調査の結果を書面又は口頭で裁判所に報告するものとす
る。
4 家庭裁判所調査官は、前項の規定による報告に意見を付することができる。
第35条(事実調査部分の閲覧等)

訴訟記録中事実の調査に係る部分(以下この条において「事実調査部分」という。)につ
いての民事訴訟法第九十一条第一項、第三項又は第四項の規定による閲覧若しくは謄写、
その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下この条において「閲覧等」とい
う。)の請求は、裁判所が次項又は第三項の規定により許可したときに限り、することが
できる。
2 裁判所は、当事者から事実調査部分の閲覧等の許可の申立てがあった場合においては、
その閲覧等を許可しなければならない。ただし、当該事実調査部分中閲覧等を行うことに
より次に掲げるおそれがあると認められる部分については、相当と認めるときに限り、そ
の閲覧等を許可することができる。
一 当事者間に成年に達しない子がある場合におけるその子の利益を害するおそれ
二 当事者又は第三者の私生活又は業務の平穏を害するおそれ
三 当事者又は第三者の私生活についての重大な秘密が明らかにされることにより、その
者が社会生活を営むのに著しい支障を生じ、又はその者の名誉を著しく害するおそれ
3 裁判所は、利害関係を疎明した第三者から事実調査部分の閲覧等の許可の申立てがあっ
た場合においては、相当と認めるときは、その閲覧等を許可することができる。
4 第二項の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5 前項の規定による即時抗告が人事訴訟に関する手続を不当に遅延させることを目的とし
てされたものであると認められるときは、原裁判所は、その即時抗告を却下しなければな
らない。
6 前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
7 第三項の申立てを却下した裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
第36条(判決によらない婚姻の終了の場合の附帯処分についての裁判)

婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る訴訟において判決によらないで当該訴えに係る婚姻が
終了した場合において、既に附帯処分の申立てがされているときであって、その附帯処分
に係る事項がその婚姻の終了に際し定められていないときは、受訴裁判所は、その附帯処
分についての審理及び裁判をしなければならない。
 
第3節 和解並びに請求の放棄及び認諾

第37条
離婚の訴えに係る訴訟における和解(これにより離婚がされるものに限る。以下この条に
おいて同じ。)並びに請求の放棄及び認諾については、第十九条第二項の規定にかかわら
ず、民事訴訟法第二百六十六条(第二項中請求の認諾に関する部分を除く。)及び第二百
六十七条の規定を適用する。ただし、請求の認諾については、第三十二条第一項の附帯処
分についての裁判又は同条第三項の親権者の指定についての裁判をすることを要しない場
合に限る。
2 離婚の訴えに係る訴訟においては、民事訴訟法第二百六十四条及び第二百六十五条の規
定による和解をすることができない。
3 離婚の訴えに係る訴訟における民事訴訟法第百七十条第三項の期日においては、同条第
四項の当事者は、和解及び請求の認諾をすることができない。

第4節 履行の確保

第38条(履行の勧告)
第三十二条第一項又は第二項(同条第三項において準用する場合を含む。以下同じ。)の
規定による裁判で定められた義務については、当該裁判をした家庭裁判所(上訴裁判所が
当該裁判をした場合にあっては、第一審裁判所である家庭裁判所)は、権利者の申出があ
るときは、その義務の履行状況を調査し、義務者に対し、その義務の履行を勧告すること
ができる。
2 前項の家庭裁判所は、他の家庭裁判所に同項の規定による調査及び勧告を嘱託すること
ができる。
3 第一項の家庭裁判所及び前項の嘱託を受けた家庭裁判所は、家庭裁判所調査官に第一項
の規定による調査及び勧告をさせることができる。
4 前三項の規定は、第三十二条第一項又は第二項の規定による裁判で定めることができる
義務であって、婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る訴訟における和解で定められたものの
履行について準用する。
第39条(履行命令)

第三十二条第二項の規定による裁判で定められた金銭の支払その他の財産上の給付を目的
とする義務の履行を怠った者がある場合において、相当と認めるときは、当該裁判をした
家庭裁判所(上訴裁判所が当該裁判をした場合にあっては、第一審裁判所である家庭裁判
所)は、権利者の申立てにより、義務者に対し、相当の期限を定めてその義務の履行をす
べきことを命ずることができる。この場合において、その命令は、その命令をする時まで
に義務者が履行を怠った義務の全部又は一部についてするものとする。
2 前項の家庭裁判所は、同項の規定により義務の履行を命ずるには、義務者の陳述を聴か
なければならない。
3 前二項の規定は、第三十二条第二項の規定による裁判で定めることができる金銭の支払
その他の財産上の給付を目的とする義務であって、婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る訴
訟における和解で定められたものの履行について準用する。
4 第一項(前項において準用する場合を含む。)の規定により義務の履行を命じられた者
が正当な理由なくその命令に従わないときは、その義務の履行を命じた家庭裁判所は、決
定で、十万円以下の過料に処する。
5 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
6 民事訴訟法第百八十九条の規定は、第四項の決定について準用する。
第40条(金銭の寄託)

第三十二条第二項の規定による裁判で定められた金銭の支払を目的とする義務の履行につ
いては、当該裁判をした家庭裁判所(上訴裁判所が当該裁判をした場合にあっては、第一
審裁判所である家庭裁判所)の裁判官の所属する家庭裁判所は、次に掲げる場合には、義
務者の申出により、権利者のために金銭の寄託を受けることができる。
一 金銭の支払を家庭裁判所に寄託してすることを命ずる裁判が効力を生じたとき。
二 前号に掲げる場合のほか、当該家庭裁判所に所属する裁判官が、当該裁判で定められ
た金銭の支払を目的とする義務の履行について、その金銭の寄託を相当と認めたとき。
2 第三十二条第二項の規定による裁判において寄託をすべき家庭裁判所が特に定められた
ときは、金銭の寄託は、その家庭裁判所が受けることができる。
3 前二項の規定により金銭の寄託を受けた家庭裁判所は、権利者の請求により、その金銭
を権利者に交付しなければならない。ただし、権利者が反対給付をすべき場合には、寄託
者の作成した書面又は裁判書、公正証書その他の反対給付のあった事実を証する書面の提
出があったときに限る。
4 前三項の規定は、第三十二条第二項の規定による裁判で定めることができる金銭の支払
を目的とする義務であって、婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る訴訟における和解で定め
られたものの履行について準用する。
 
第3章 実親子関係訴訟の特例

第41条(嫡出子の否認の訴えの当事者等)
夫が子の出生前に死亡したとき又は民法第七百七十七条に定める期間内に嫡出子の否認の
訴えを提起しないで死亡したときは、その子のために相続権を害される者その他夫の三親
等内の血族は、嫡出子の否認の訴えを提起することができる。この場合においては、夫の
死亡の日から一年以内にその訴えを提起しなければならない。
2 夫が嫡出子の否認の訴えを提起した後に死亡した場合には、前項の規定により嫡出子の
否認の訴えを提起することができる者は、夫の死亡の日から六月以内に訴訟手続を受け継
ぐことができる。この場合においては、民事訴訟法第百二十四条第一項後段の規定は、適
用しない。
第42条(認知の訴えの当事者等)

認知の訴えにおいては、父又は母を被告とし、その者が死亡した後は、検察官を被告とす
る。
2 第二十六条第二項の規定は、前項の規定により父又は母を当該訴えの被告とする場合に
おいてその者が死亡したときについて準用する。
3 子が認知の訴えを提起した後に死亡した場合には、その直系卑属又はその法定代理人
は、民法第七百八十七条ただし書に定める期間が経過した後、子の死亡の日から六月以内
に訴訟手続を受け継ぐことができる。この場合においては、民事訴訟法第百二十四条第一
項後段の規定は、適用しない。
第43条(父を定めることを目的とする訴えの当事者等)

子、母、母の配偶者又はその前配偶者は、民法第七百七十三条の規定により父を定めるこ
とを目的とする訴えを提起することができる。
2 次の各号に掲げる者が提起する前項の訴えにおいては、それぞれ当該各号に定める者を
被告とし、これらの者が死亡した後は、検察官を被告とする。
一 子又は母 母の配偶者及びその前配偶者(その一方が死亡した後は、他の一方)
二 母の配偶者 母の前配偶者
三 母の前配偶者 母の配偶者
3 第二十六条の規定は、前項の規定により同項各号に定める者を当該訴えの被告とする場
合においてこれらの者が死亡したときについて準用する。

第4章 養子縁組関係訴訟の特例

第44条
第三十七条(第一項ただし書を除く。)の規定は、離縁の訴えに係る訴訟における和解(
これにより離縁がされるものに限る。)並びに請求の放棄及び認諾について準用する。

登録 Sept. 18, 1998