解雇予告手当の請求

弁護士河原崎法律事務所ホーム労働事件 > 解雇予告手当の請求
2015.7.15mf更新
解雇相談
解雇予告手当の請求の絵
私は、郵便局で週 3 日アルバイトをして、もう 1 年になります。給料は月額 5 万円になります。夏休みに旅行するために、「 8 月は休みたい」と上司に申し出たところ、上司から「そんなに休むなら、やめてくれ」と言われました。
上司は「この書類に判を押しなさい」と言って、ワ−プロで打った書類を見せました。私は、内容も読まずに、それにサインし 、判を押しました。
私は、解雇されたのですから、 1 か月分の解雇予告手当をもらう権利があるのではないでしょうか。

回答
週 3 日のアルバイトでも、使用者は解雇するには 1 か月前に予告するか、 1 か月分の解雇予告手当を支払う義務があります(労働基準法 20 条 1 項)。
気になるのは、学生が書類に捺印したことです。考えられるのは退職願に捺印したのではないかとの疑いです。学生は何の書類に捺印したか、書類を読んでいないので、わからないのです。退職願に捺印すれば、解雇ではなく、任意退職ですから、解雇予告手当を請求できません。

処理/解雇予告手当ての請求
しかし、このままではどうせ解雇予告手当はもらえないのです。駄目で元々の気持ちで、解雇予告手当を請求することとしました。相談室では、早速、弁護士名の 内容証明郵便 で郵便局宛に 1 月分の解雇予告手当を請求しました。
約 1 週間後、郵便局の課長から、連絡があり、「学生は退職願に捺印しているが、ご希望に添うようにしたい」との連絡があり、 1 か月分の給料を持参してきました。
郵便局は、最初に「解雇」と言ってから混乱した学生によく説明もせずに捺印させたので、明確に任意退職の意思表示があったことについては自信がなかったのです。さらに、解雇予告手当の額が小さいので、予告手当を支払ってトラブル避ける道を選んだのです。

アルバイターの責任
例え週 3 日のアルバイトでも法律は労働者(学生)を保護していますから、働く学生も、責任をもって働くよう心がけるべきです。旅行するから 1 か月休むなどは、無責任です。
(学生相談室報告より  登録 Mar. 24,1997 )

関連質問/解雇予告手当ての請求
どうしていいのか分からないのです。
緊急で 2 週間入院しました。退院して出社してみると、私のデスクの私物などがダンボール箱に詰められていて、社長からは、「こうゆうことだから...」とだけ言われて給料も経費も払ってくれません。
内容証明で解雇予告手当てを請求しようと考えているのですが。それようのフォーマットや専用用紙などがあるのですか。

回答/内容証明郵便を使う
理由を聞いてください。解雇なら、解雇予告手当ではなく、解雇無効を前提に給料の請求をした方が良いでしょう。その方が金額も多いし、強力です。
当サイト内に、内容証明郵便 の出し方は書いてありますので、ご覧下さい。

関連質問/即時解雇
私の働いている職場には信じられない事務局長がいます。その人は 8 年前事務局長と して採用されましたが、 2 年目ごろから毎年のように有給休暇は消化し、「休日出勤をし た分だ」と言って、代休までとり、挙句の果てには欠勤をしています。もちろん役職手当 ももらっているし、給与も全額もらっています。
今回、あまりに勤務状況が悪いの で、一部の職員が抗議し、やっと 1 月末で退職となりました。これで安心と思ってい たら、「やめろといわれるのは 1 か月前に言わなければならない」と本人が言い出し、退 職が 2 月末に延長されました。
確かに労働基準法には解雇予告というものがあり、3 0 日前に予告しなければならないとありますが、何年間も欠勤を繰り返し(診断書も 出していません)就業規則を守っていないような人にそんな法律は適用されるので しょうか。
雇われている一職員には関係ないことかもしれませんが、一緒に働いてい る若い者にとっては、あんな人にいつまでも高い給料を持っていかれるというのが腹 立たしく、我慢できません。毎日忙しく働いているものにとっては、あんな人は早く やめさせて、その分でアルバイトを雇ってほしいと思います。即刻解雇できる方法は ないのでしょうか。

回答
即時解雇には、労働基準監督署長の認定、あるいは、 30 日分の解雇予告手当の支払が必要です。
労働基準法 20 条 1 項に規定があります。

最近の傾向
最近、似た事例が頻発しています。国の出先機関に採用された任期 1 年の臨時職員が簡単に解雇されました。これが正規の職員ならあり得ないことでした。採用側(解雇した側)も差別を認めていました(参考 国家公務員法 75 条 1 項、地方公務員法 27 条 2 項、労働基準法 20 条)。これは、民間でも同じ傾向です。
それにしても、賃金の低いパート労働者の解雇が容易で、賃金の高い正社員の解雇が難しいとはおかしな現象です。労働組合も、裁判所も、再考しなければならない問題です。
正規の職員と非常勤職員(パート)間に差別があります。これは、憲法 14 条、労働基準法 3 条に反するものです。これは、争ったら解雇された側は、いつかは勝てる可能性があります。

正規の職員、社員は、身分が安定しているため、無意識のうちに、弱い立場のパートに対し、面倒な仕事を押し付けたり,セクハラをする傾向があります。人間の非常に嫌な面です。
裁判官でさえも、記録が膨大な事件を、それゆえに、調停にまわす傾向があります(調停委員は非常勤職員=パートタイマーです)。非常勤の調停委員が、膨大な記録を読めるわけがありません。裁判官の給料と、調停委員の報酬を比較しても、この不合理性は明らかです。 結局、当事者は調停で時間を浪費することになります。

将来
労働基準法には解雇に合理的理由が必要とは書いてありませんでした。しかし、判例が積み重なり、日本では解雇は極めて困難です。 平成21年3月1日施行の労働契約法に、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」との条項が入りました(労働契約法16条、旧労働基準法18条の2)。
これらと年功序列賃金体系が結びつき、労働者は職場からドロップアウトしないように組織(会社)にしがみつき、世界一生産性が低い(小倉昌男 如水会報 1998-10-10 )と言われるホワイトカラーの閉鎖社会を作っています。
従って、新卒者の求人倍率が低い。
将来は、転職も自由、(賃金の低い労働者は別扱いにし)解雇事由も緩やかにし、転職した場合でも不利に扱われることなく、年功ではなく、労働者の仕事の成果に応じた賃金が支払われる社会が必要でしょう。それが平等というものです。

現在のアメリカの活発な経済活動の原動力は、古い東海岸ではなく、シリコンバレーに象徴される西海岸です。ここではOK to change(転職は自由)、OK to fail(失敗も許される)、OK to chat(情報はオープン) との3つのOKがあるそうです(影山葉月 地域の経営文化)。

これは市場経済型システムです。これは市民革命を経験した、自己責任や契約遵守原則を確立した社会を前提とするとの指摘(村方清、如水会報 1998-12-26 )があります。なるほどとうなずけます。
日本社会の改革はやはり世代交代によるので、時間がかかりそうです。

現在の日本の経済停滞の原因は、金融ではありません(吉川洋 朝日新聞 1998 年 10 月 20 日夕刊)。インドネシアでは大統領一族の経済支配、韓国では財閥親族の支配など非効率的な経済運営にありました。
日本にも同様に規制に守られた非効率的、社会にとって不必要な経済運営が沢山あります。政府部門と、それにぶら下がっている公益法人です。それに群がる人たちです。
社会に不要な組織から、社会に必要な組織に人材をスムースに移動できる社会にする必要があります。それが規制緩和です。

デフレは、人口減少が1つの原因です(藻谷浩介「デフレの正体」)。
先進国では、物価が下がり、経済成長率も下がっています。この原因として、需要の飽和(the gluttability of wants)があるといいます。傾聴に値する考え方です(吉川洋「人口と日本経済」)。
2000.4.15
港区虎ノ門3-18-12-301(神谷町駅1分)河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 電話 03-3431-7161