サブリースにおける賃料減額請求

弁護士(ホーム) > 不動産の法律相談 >  不動産賃貸借
2015.12.19mf更新
弁護士河原崎弘

相談:サブリース

私は、不動産会社に勧められて、約100坪の土地にマンションを建築し、不動産会社に一括して貸しました。不動産会社は、u当り2500円の賃料を、10年間保証してくれました。
ところが、最近、賃料が下がったのと、入居率が悪いので、賃料をu当り2000円にしてくれないかと言ってきました。
これでは、10年間賃料を保証した意味がありません。弁護士さんに尋ねると、「借地借家法では賃料の減額請求できる」と言う方と、「10年間は、減額請求できない」と言う方がいて、はっきりしないのです。 法律的にはどうでしょうか。

回答

サブリースにおいては、賃借人は、一定期間(下記@の事件では15年、Aの事件では20年、Bの事件では10年)賃料を保証するのですから、賃借人からの、賃料減額を認めてしまうと、保証の意味がありません。さらに、契約上も、賃料減額を排除するようになっているのですから、減額を認めることは当事者の意思にも反します。
しかも、実際のサブリース契約では、借主は、大会社であり、しかも不動産業を専業とする不動産会社です。決められた賃料額も、年額約20億円(下記@の事件)、年額18億円(下記Aの事件)、月額約1064万円(Bの事件) と高額であり、弱者保護規定である借地借家法を適用すべきかは疑問があります。
しかも、借地借家法第3章第2節のの強行法規性を定めた37条では、32条1項が除かれています。
他方、転貸目的ではあるが、賃貸借契約であるから、論理的には、借地借家法32条は、強行法規であり、サブリース契約にも32条1項が適用され、賃料減額請求が認められるとの考えもあります。
この問題については、判例の見解は次のように分かれていました。
  1. サブリース契約は、不動産賃貸借契約ではなく、事業委託契約であるから、借地借家法32条1項による、賃料減額請求を否定する。
  2. サブリース契約は、不動産賃貸借契約だが、賃料減額請求を否定する。
  3. サブリース契約は、不動産賃貸借契約であるので、借地借家法32条1項による、賃料減額請求を認める。
最近、最高裁は、上記 3 の説を採用し、サブリース契約に借地借家法32条1項が適用され、賃料減額請求できると判決しています。
しかし、借地借家法32条の適用があっても、同条1項但し書には、「ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う」と規定されており、実際の賃料減額請求は、相当な期間の経過、近隣の賃料の相当なる低下、賃料が決められた事情などが考慮され、簡単には、認められないでしょう。
下に、判例を書いておきます。

判例

借地借家法32条

第32条(借賃増減請求権)
1 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
2建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
3建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年1割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。

当サイトにおけるサブリースに関する


港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)弁護士河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 03-3431-7161