雨乞岳( 日向山 :2,036.8m ) 2007.3.18 登山


  雨乞岳頂上から見た甲斐駒ヶ岳 ( 2007.3.18 )

【雨乞岳登山記録】

【雨乞岳登山データ】

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再登山


雨乞岳登山記録

3月18日の日曜日、南アルプスの前衛、雨乞岳に登ってきた。 2月12日の日向山以来、1ヶ月ぶりの登山となる。

この雨乞岳については、その名を知ってはいたものの、特に登りたい山のリストに入れていた訳ではなかったのであるが、先の日向山からこの山を眺め、 緩やかな弓形をした形の良い山容に魅力を感じるとともに、2,000mを少し越えた高さがこの残雪期には手頃と思い、登ることにしたもののである。
場所はサントリー白州蒸留所の裏手になるので、カーナビに白州蒸留所の電話番号を入力して探索。すると、カーナビは先の日向山からはさほど離れていない場所にあるにも拘わらず、 今回は小淵沢IC経由のルートを示したのであった (日向山の時は須玉IC経由)

いつも通り 4時30分頃に横浜の自宅を出発。国道16号線を進み、八王子ICから中央高速に乗る。
このルートはもう何回も通っており少々飽き気味であるが、この時期は笹子トンネルを抜け、さらにもう 1つ短いトンネルを抜けた後に目の前に広がる銀嶺の南アルプスの山々が大きな楽しみとなっている。 今回も思わず車を駐めて写真を撮りたい という衝動に駆られる程、素晴らしい景色が目の前に広がっていた。天候は快晴、本日の登山が本当に楽しみである。
ナビの指示通り小淵沢ICで高速を下り、国道20号線へと向かう。20号線にぶつかったところで左折し、白州蒸留所の手前、鳥原の信号のところで右折する。 この後、何回か道が二手に分かれて迷うが、とにかく直感で道を選んで進んだところ、目の前に石尊神社の杉林が現れた。少々心細くなりかけていたので一安心である。 道路右手に駐車場があったので、車を駐める。先客は 2台であった。

身支度をして駐車場を出発したのが、7時6分。
神社の前の道を南に進むと、すぐに右手に雨乞岳の登山口が現れた。道路右手の法面に造られた石塀がそこだけ開けられている。
斜面に入り込むと、ヒノキの植林、そしてすぐに雑木林へと続いていく。左下にはサントリーの蒸留所と思われる建物が見える。道は堀割のようになっており、 足下は落ち葉が敷き詰められた状態で、フワフワして歩きにくい。
再びヒノキの植林の中に入ると、道が少々分かりにくくなった。本来、堀割状の中を進むのであろうが、堀割の中は倒木などもあって歩きにくいため、 植林帯に下草がないのを良いことに皆がいい加減に登った結果のようだ。

斜面を登り切ると、一旦樹林帯を抜け、右手が伐採地の斜面となっている明るい場所へと出た。 上空には青空が広がって気持ちが良い。道は左に曲がって再び樹林の中に入るとともに、堀割状の道が長い間続くこととなる。道は左右に結構大きく曲がりくねっている。 左手樹林越しに、雁ヶ原を伴う日向山、そして日向山と鞍掛山 (と思う) との鞍部後方に真っ白な 甲斐駒ヶ岳 が見えたので、 さらにもっと良く見える場所を期待していると、道が右に大きく曲がって折角の景色を奪ってしまう といった具合である。
傾斜は緩やかにダラダラと登る感じで、登山道やその周囲に雪は全く見られない。折角 身につけたスパッツが、落ち葉のラッセルに役立つというのではあまりにも滑稽である。

堀割状の道が結構長く続く一方で、途中平らな道も多く現れ、日向山と同様に白い砂が撒かれたようになっている。 この雨乞岳にも水晶ナギというザレ場がある訳で、この山も甲斐駒ヶ岳、日向山と同じように 花崗岩から形成されているのであろう。
暫く日だまりハイクが続く。先ほど甲斐駒ヶ岳、日向山が見えた所から 30分ほど登ったであろうか、再び見えた日向山・雁ヶ原の右手には 甲斐駒ヶ岳の姿はもう見えなくなっていた。 それだけ距離を稼いだということになるのだが、あまり高度を上げたという訳ではないようである。

やがて、登山道の周辺に大きな岩が見え始めると、ようやく周囲に雪が現れ始めた。但し、量は少なく、 長続きはしない。
今度は高度も上がってきたのであろう、再び左手樹林越しに甲斐駒ヶ岳の白き峰が見えるようになり、 また斜面の反対側に回り込んだ時には 八ヶ岳 の姿も見えるようになってきたのであった。 こうなると、太陽が甲斐駒ヶ岳の後ろに回り込んで逆光にならないうちに、早く見晴らしの良い所に出たいものである。 少々ペースが上がる。
少なかった雪も、斜面北側の道ではコンスタントに見られるようになり、また周囲の樹林が雑木からカラ松林に変わって 傾斜も緩やかになると、 やがて道の脇に三角点を示す標識が現れた。この辺はホクギノ平と呼ばれる場所で、三角点 (丸山) は少し道を南にはずれた所にある (9時2分)。 このホクギノ平からは、これまでの堀割状の道は全く姿を消し、気持ちの良い道となる。カラ松越しに甲斐駒ヶ岳の白さが目立ち、 正面には雨乞岳らしき高みが見える。しかし、まだまだ遠い。

甲斐駒ヶ岳の右手に鋸岳の姿も見え、 カラ松とササの道を気持ちよく進んでいくと、やがて黒沢ノ頭の斜面を登ることとなった。樹相はコメツガなどに変わり、雪は結構多い。 暫く登って目を上げると、ワイヤが空中に張られており、そこに赤いテープが付けられているのが目に入った。しかも、枯れた木には 右の斜面を通るようにとの青い矢印も書かれている。 指示に従い右の斜面の縁を通ったのだが、そちらは雪が凍っていて滑りやすくなっており、下手をすると斜面を滑り落ちてしまう。
実際、滑りそうになってそばの木を掴んだところ、それが既に朽ちた木であったため、掴んだ途端にポキッと折れてしまったのであった。そのため更にバランスを崩してしまい、 すんでの所で斜面を転げ落ちそうになってしまったのだが、どうにかもう 1本の木にしがみついて事なきを得たのであった。冷や汗ものである。

その難所 ? を過ぎてからは、雪が凍った斜面を左上に登ることになった。
しかし、どうも雪の上に踏み跡がなくルートが怪しい。軽アイゼンをつけるのも面倒だったので、木にしがみつきながら何とか斜面を登り切って 尾根上の道にたどり着いたのだが、 こんなに苦労するはずもなく、先の標識はどうも胡散臭い。事実、帰りにこの場所を通った時は、もっと南側の斜面を下り、難なく通過できたのであった。

苦労して斜面を登り切った後は、雪の量も少なくなり、再び日だまりハイクとなった。
この辺で水晶ナギと呼ばれる崩壊地が左手に見えるのだが、小生、先ほどの小トラブルで慌てていたのだろうか、全く気づかず、帰りに崩壊地が見られることに気づいて驚いた次第である。 やはり周囲に注意を怠ってはならない。
やがて道は右に大きく曲がり、雪の量が再び増えた中を進んでいくと、左手に再び雨乞岳の姿が見えるようになってきた。頂上直下はカヤトの原になっているようで、 日が当たって気持ちよさそうな場所だが、何せそこまではまだまだ距離はあるし、しかも最後は急斜面のようなので、少々気が滅入る。

黙々と進み、やがて最後の斜面の登りとなったが、思った通り長くて急である。 しかも雪が所々にあって登山道は不明瞭である上に、伐採した木が周辺に放置されており、その上ワイヤなども捨てられていて大変歩きにくい。 例のごとく、少し進んでは立ち止まって上を眺める といった苦しい時のパターンの繰り返しとなる。
喘ぎながら少しずつ登っていくと、山頂の方からケーナ (と思う) の響きが聞こえてきたので些か驚いた。最初は誰かがCDでもかけているのかと思ったのだが、 どうやら先に登った方が頂上付近で吹いているようである。ササ原の斜面、気持ちの良い青空、周囲の素晴らしい展望にピッタリの音楽 (フォルクローレと思う) が流れ、 不思議な気持ちになるとともに、結構元気が出てきたから有り難いことである。

そして、少しずつ高度を上げていくと、周囲の景色が大きく広がったことも元気を与えてくれた。 右手に八ヶ岳、そしてその右には金峰山を中心とした奥秩父の山々が広がり、 さらに首を回せば 逆光の中に富士山がうっすらと姿を見せている。 そして富士山の右には鳳凰三山甲斐駒ヶ岳、 鋸岳とお馴染みの山々が続いている。また、富士山の左下には日向山の雁ヶ原が黒い山肌の中に灰色の砂地を見せている。 それに加えて、フォルクローレが山に響き渡っており、こうなれば疲れも吹っ飛ぶというものである。

周囲の景色にカメラを向けながら、ササ原の斜面を登っていき、10時46分、 雨乞岳の頂上を踏んだのであった。
上に書いたように、雨乞岳の東側斜面は大きく開けていて、ササ原が広がり、素晴らしい展望を得ることができる。頂上三角点より西側は コメツガの原生林広がって展望を得ることはできないのだが、 この山はその名の通り地元で古くから雨乞いのために登られていたとのこと、富士山、鳳凰三山、甲斐駒ヶ岳、八ヶ岳といった素晴らしい山を前に雨乞いするだけで、 十分であったことであろう。
また目を下にやれば、遠くにサントリーの蒸留所の建屋が見える。そこからこの頂上まで大きいものだけでも 3つのピークが連なっていて、その距離も長い。 きつかったのは最後の登りだけであったが、長い距離をよくもまあ登ってきたものである。

フォルクローレを聴きつつ、素晴らしい景色をおかずにして握り飯を頬張る。何と贅沢なことであろう。 もう少し暖かくなったら、ポカポカ陽気の中、ここで昼寝をするのも悪くない。
いつまでも頂上に留まっていたいところであるが、そうもいかない。ケーナを吹いていた方は先に下山し、15分後に後を追う (11時29分)
帰り、水晶ナギに寄ってみようかと思ったが、雪がある中、無理は止めるべきと、まっすぐ駐車場を目指した。

余談であるが、駐車場に戻る前に、石尊神社にお参りすべく境内に足を踏み入れたところ、 すぐに後悔してしまった。
鳥居を潜ってから暫く石段が続く。疲れた身体にはちょっと酷だったかなと思っていたら、たどり着いた所には手水舎 (てみずや)と土俵などがあるだけで、 そこから気の遠くなるように長い石段 (120段くらいあるのではないか ?) が続いていたからである。
しかし、お参りに来て途中で止める訳にはいかず、疲れた身体に鞭打ち、喘ぎ喘ぎしながら、何とか急な石段を登り切ったのであった。
たどり着いた神社社殿は歴史を感じさせ、また社殿の周囲に多くの石仏 ? も設置されていて、なかなかの趣である。また、この場所はさすがに高いだけあって、 見晴らしは良く、樹林越しに見える八ヶ岳が見事であった。
暫し呼吸を整えた後、再び急な石段を慎重に下り、13時30分、駐車場に戻ったのであった。

今日は何と言っても頂上からの景色が素晴らしかった。
しかも、そこに音楽も流れるというシチュエーションであり、なかなか得難い経験であった。
小生も頂上でケーナを一人吹いてみたい (現状は全く吹けないが) という気になったのであった。


雨乞岳登山データ

上記登山のデータ登山日:2007.3.18 天候:快晴単独行日帰り
登山路:石尊神社駐車場−雨乞岳登山口−三角点−雨乞岳 (往路を戻る)−石尊神社−石尊神社駐車場
交通往路:瀬谷−国道16号線−八王子IC−(中央高速道路)−小淵沢IC−国道20号線−鳥原−石尊神社駐車場 (車にて)
交通復路:石尊神社駐車場−鳥原−国道20号線−甲府南IC−(中央高速道)−八王子IC−国道16号線−瀬谷 (車にて)


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