登山NO.0072 荒 島 岳( 荒島岳:1,524m ) 1998.4.30登山


 小荒島岳より見た荒島岳( 1998.4.30 )

【荒島岳登山記録】

【荒島岳登山データ】

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NO.72 荒島岳登山記録

このところ、ゴールデンウィークには未登の百名山に登ることが続いているが、 今年はどこに行こうか結構迷ってしまった。
「山の雑記帳(ゴールデンウィークの登山予定)」にも書いたのだが、 年々私の能力でこの時期に登れる百名山が少なくなってきているからで、 蔵王に登ることや安達太良山への再登山も候補に入れながら散々迷ったあげく、 結局、福井県の荒島岳を目指すことにした。

順当に考えれば荒島岳でスンナリ決まりであったのだが、どうも山の高さとそこまでのアプローチにかかる費用などを考慮すると、 コストパフォーマンスが低い山のように思え、 それなら夏に行きたいと考えている白山や北アルプスとペアにして登るべきとも考えたから、 少々迷ったのである。
最後には、 行ける時に山へは行っておくべきだと考え直して荒島岳を目指すことに決め、 天気予報とも相談しながら 4月29日に横浜を発って、 その日は越前大野へ泊まり、 翌日荒島岳に登って帰宅するというプランを立てた。

29日、新横浜を13時55分発の新幹線に乗ったのだが、ゴールデンウィークとはいえ、前後が平日であるからなのか、 新幹線も、また米原からの特急列車も空いた状態で、 かなり快適な旅となった。
米原から特急加越7号に乗って窓の外を見やると、 伊吹山の堂々とした姿が見えたので大変嬉しくなったのだが、 その伊吹山の左斜面はかなり削り取られている様子に見え、 昔 埼玉県の武甲山を見て受けたのと同じ様なショックを受けてしまった (もっともあまりの天気の良さに、 春霞がかかったようになっていたため、 ハッキリと削られている様子が見えたわけではないのだが・・・)

乗車券は福井までしか買っておらず、また越前大野まで行く列車の時間までには1時間も待つ必要があったため、一旦福井駅で下車し駅前をブラついていたところ、 有り難いことに越前大野行きのバスを見つけることができたので、 早速乗車した。
山間の道を進むバスは快適で、 歴史を感じさせる地名を楽しみながらの1時間ほどの旅は大変楽しかった。

大野駅では翌日の朝食および昼食を調達するつもりであったのだが、繁華街は駅よりかなり手前の大野三番というところにあるらしく、 駅前には店らしい店は何もなくて、薄暗くなりかけた中で少々困ってしまった。
歩き回っているうちに、 そこにあるのが場違いな感じを受ける(失礼)ジャスコを見つけることができ、 何とかパンを調達することができたのだが、 コンビニがあるなどと都会感覚で考えていたことを少し反省させられた次第である。

翌日は、6時30分越前大野駅始発の電車で、登山口である勝原(カドハラ)駅へと向かったが、 早朝とは言え、乗客は私を含めてわずか2人、 そのもう一人も登山服姿で、案の定私とともに勝原駅で下車し、 列車は勝原から乗客無しの状態での運行になった。
これなら運行本数が少ないのも頷ける。

無人の勝原駅を出ると、目の前に地図を掲げた大きな看板があり、その指示に従って一旦右に道路を進んでいくと、 道は大きく180度曲がって方向を変えるようになり、 暫く登りが続くとやがて国道158号線にぶつかった。
158号線を暫く進み、 勝原スキー場の看板が現れた所で、国道をそれて右に入っていくと、 右手にスキー場の斜面とそこに設置されたリフトが見えるようになり、 目の前に銀嶺荘と駐車場が現れた。
駐車場には車が 5台ほど止められており、すでに登り始めている人がいるらしい。

銀嶺荘の水場で水筒に水を詰めた後、7時06分に出発した。
荒島岳へはリフト沿いのゲレンデ斜面を登っていくことになっていたが、 このようにゲレンデを一直線に登る道は返ってキツく感じられ、 おまけに足下にはアスファルトが敷かれていて、 それがボロボロになりかけていたため、 歩きづらかった。
言い忘れたが、 天候は曇りで、後ろに見える山は中腹から上がガスで覆われているなど、 今日はあまり展望を期待できそうにもなかったが、 雨だけは大丈夫のようである。

息をあげながら1本目のリフト終点まで到達すると、道はそこから右に折れており、そこからもゲレンデの一部なのであろう、 狭いながらも山肌を削った急斜面の道が続いていた。
リフトの下を何回かジグザグに登っていくと、 やがてリフトの最終地点となり、時計を見ると時刻は7時40分 たった 30分あまりなのに結構な汗をかかせられた。

このリフト最終地点からは、ようやく人工的なものから離れ、登山道らしい自然の中の道が続くようになったが、ここでも道は直線的で、 しかも赤土で滑りやすく、 周囲は低木と草に囲まれて視界は得られなかった。
やがて、ブナの林に入ったが、 緑まぶしい林の中にガスがたちこめてなかなか神秘的であり、 しかもまだ未熟ではあるがウグイスの声も聞こえてきて、 なかなか楽しかった。

暫く登っていくと、頂上まで3キロという標識が現れ、ご丁寧にマジックで 7,160歩とまで付け加えられていたが、 歩数だけ考えると気が遠くなりそうな数字のような気がする。
登山道脇には、 所々にツツジがピンクの花をつけているのが見られたものの、 まだ 3分から 5分咲きといったところであった。

見事なブナの林も徐々にブナが細りだすと、やがて道が平らになって呼吸を整えながら進むことができるようになり、 またこの頃になると、嬉しいことに前方に青空が広がりだし、 太陽も雲のベールを脱ぎ始めて光をさし始めたので、 足取りも軽くなってきた。
道はやがてまた急登となり、 途中に頂上まで 1.5キロの標識が現れると、 左方に荒島岳らしき山影が見えてきたが、 頂上付近はガスに覆われていて見ることができなかった。

露出したブナの根が階段を思わせる急坂も、やがて樹林の先に青空が見え始め、少し頑張って登り切るとそこは大きな標識のあるシャクナゲ平であった (8時49分)
ここからは前荒島、 中荒島を左手前に従えた荒島岳がよく見え、 先ほどのガスも今は全く消えていて、 青空と輝く太陽の下、 なかなか堂々とした山の姿が印象的であった。

シャクナゲ平はT字路になっていて、右が下山時に使うつもりの中出コース、左が荒島岳への道となっており、 左に道をとるとすぐに下りとなって、 暫く先で佐開(サビラキ)への道を右にみることになった。
鞍部からは急な登りが続き、 最初は階段状に道が整備されていたものの、 やがて滑りやすい急登となり、 岩や木の根を掴みながら登ったが、 この道は登りよりも下りの方が苦労させられた。

登りの途中に、あと 1キロとの標識が現れ、そこで後ろを振り向くと、小さな台地状になったシャクナゲ平とその向こうに形の良い小荒島岳 そしてその右奥方向にはまだ多くの雪を頂上に抱いた白山の姿を見ることができた。
9時27分に前荒島のピークに立つことができたが、 目の前には中荒島とその向こうに建設省無線中継所の建物を頂上に持った荒島岳の姿があり、 クマザサの中に道が続いているのが見えた。

登山道の傍らに咲く薄紫色のカタクリの花を愛でながら中荒島を越え、最後の一踏ん張りをすると荒島岳頂上で、 到着が9時50分、そこには4人の先達が休んでいた。
頂上の建物とバスケットのボードのような電波受信板が無粋であることは否めないものの、 頂上の雰囲気はなかなかで、 一等三角点と祠、そして南無妙法蓮華経(だと思う)と彫られた石碑が置かれており、 360度の大展望が広がっていた。
分かる山が白山しかないのが、 少々残念であったものの、 重畳する山々を眺めながらの昼食は格別美味しく感じられた。

10時25分に頂上を出発し、シャクナゲ平まで戻って、そこからは中出コースを選んだ。
道は緩やかな下りで、 枯れ葉が敷き詰められた道を進むのは気持ちが良い。
やや道が登りに変わって、 樹林が切れかかった所で振り返ると、 荒島岳のドッシリとした姿を見ることができ、 その姿を見てやっと荒島岳 大野富士と呼ばれていることを納得したのであった。

暫く先で、右に分かれる道があり、何も標識がないので若干戸惑ったものの登ってみると、2分程で見晴らしの良いピークに達することができた(11時12分着)
恐らくこれが小荒島岳であろうが、 分岐と頂上には標識設置を望みたいものである。

この小荒島岳から見る荒島岳は、本当に根が大きく張って堂々としており、なかなかの貫禄を感じさせてくれ、 やはり前荒島などの近い所から見た姿ではなく、 こうした山全体が分かる所から見なければ山の魅力は分からないものだと感じさせられた。

小荒島岳からはほとんど緩い下りの道が続いていたが、この道の長さには若干辟易させられ、もう勘弁してくれと思った頃に林道へと飛び出し、 登山道とはお別れとなった。
この林道も結構長く、 延々と下っていくと、やがて左前方の丘の上にテレビ塔が見え、 テレビ塔からの道を合わせた後、 慈水観音を左に見て暫く先で、 中出コースの案内板の前に辿り着いた(12時35分)

そこにあった地図に従ってまっすぐ進み、バス停まで行ってみたが、バスの時刻表が白ペンキで塗られていて発着時刻が分からず、 結局下唯野(シモユイノ)駅まで行ってみることにした。
途中、自動販売機などあったら喉を潤そうと考えていたのだが、 下唯野駅まで自動販売機など一つも見たらず、 夏を感じさせる暑い日差しの中で少々ヘバリを感じてしまった。
おまけに、 13時5分に下唯野駅に着いたものの、 無人駅のため自動販売機はもとより何もなく、 また福井行きの電車は 15時1分で2時間ほど待たねばならないなど、 踏んだり蹴ったりだと感じていたところ、 駅より 150m程先に帰山商店と書かれた看板を見つけ、 自動販売機の赤い姿が見えたので本当に嬉しかった。

さて、2時間ほど電車を待つ間、本日の登山を振り返ってみたが、荒島岳自体はなかなか立派な山であったものの、 山に(ハイライト部分)が少なく、 交通費などに多くの金をかけた割には得られた満足が少なかったため、 少々欲求不満が残った。
ともあれ、 「山の雑記帳(交通費がこれでは堪らん)」に書いたように、 深田氏が選んだ百名山なのだから、そこに氏の思い入れがあっても良い訳で、 勝手に私が百名山を目指しているのだから文句を言えた筋合いではない。
考え方を変えれば、 荒島岳が百名山に選ばれていなければ、 こうして福井の山奥に立つことなどなかったのだし、 ゴールデンウィークの 1日、一人福井の山中にいるなど楽しいではないか。
これはこれで良かったと考えるべきなのかもしれない。


荒 島 岳 登 山 デ ー タ

上記登山のデータ登山日:1998.4.30 天候:曇り後晴れ単独行前日泊
登山路:勝原駅−銀嶺荘−リフト終点−シャクナゲ平−前荒島−中荒島− 荒島岳−中荒島−前荒島−シャクナゲ平−小荒島岳−中出集落−下唯野駅
交通往路:瀬谷−(相模鉄道)−横浜−(市営地下鉄)−新横浜−(東海道新幹線)−米原−(北陸本線)−福井−(バス) −越前大野(泊)−(越美北線)−勝原
交通復路:下唯野−(越美北線)−福井−(北陸本線)−米原−(東海道新幹線)−新横浜− (市営地下鉄)−横浜−(相模鉄道)−瀬谷
その他:4月29日に越前大野まで移動し、越前大野泊。翌日登山後、帰宅。


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