登山NO.0089 吾妻山( 西吾妻山:2,035m ) 2007.10.06 登山


 弥兵衛平の広がりと、遠くに藤十郎、中大巓( 2007.10.06 )

【吾妻山登山記録】
  
【吾妻山登山データ】

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NO.89 吾妻山登山記録

10月の3連休初日である6日、吾妻山に登ってきた。
この山域は広く、深田久弥氏もこの山を「茫洋としてつかみどころのない山」 と述べているが、 浄土平から主たる峰々を縦走すれば 吾妻山に登ったと堂々と言えるはずである。
ということで、その主たる峰々を縦走すべく 山中1泊のプランを検討したのだが、福島駅発のバスが登山の起点となる浄土平に到着するのは 10時55分とのこと。 これは、山中の明月荘 (弥平衛平小屋) に1泊するには問題ないものの、山は早い時間に登り始めるべきと思っている小生にとっては大変悠長に思われる。
また、手元の地図 (昭文社 「磐梯・吾妻・安達太良」 では、浄土平から一切経山に登り、 西大巓まで縦走するのにかかる時間は 8時間50分ほどとなっている。
この時間は山中1泊には短すぎ、1日で踏破するにはやや長過ぎるもので、どうも全体にこのコースは中途半端に思われる。

一方で、先日の鳳凰三山     縦走で少々自分の足に自信を取り戻しつつある我が身にとっては、このコース走破は 1日で何とかなりそうに思えてしょうがない。

加えて、2度目の磐梯山に登った際、 頂上から吾妻連峰を眺めて意外に近いことを知り、車による安達太良山日帰り登山の経験もあることから、 吾妻連峰も日帰り圏内かもしれないと思ったことが頭に浮かぶ。
そこで、何とか車での日帰り登山ができないかと、地図を検討することが数日続いたのであった。

そして導き出した結論が、浄土平まで車で行き、一切経山−家形山−烏帽子山−東大巓−西吾妻山−西大巓と縦走してグランデコスキーリゾートに下り、 そこからタクシーで浄土平に戻るというコースである。無論、エスケープルートも考えておく必要がある訳で、途中で縦走を断念する場合には、 東大巓手前から大倉新道を下り、浄土平に戻るということにしたのであった。

そして、10月6日、朝 4時過ぎに横浜の家を出発。もう少し早く家を出たかったのだが、 このところやや疲れ気味の身体にはこれが精一杯であった。
横浜ICから東名高速に乗り、そのまま首都高、東北自動車道へと進む。と、ここまでは順調だったのだが、宇都宮ICを過ぎる頃からかなりの眠気が襲ってきた。 先に述べたように、この 1週間は睡眠時間が少々短い日が続いていたため、身体が疲れ気味なのだ。窓を開けて冷気を入れたりしたものの、 もうどうにも眠くて堪らなくなり、ついに那須高原SAに車を入れて少し休むことにしたのであった。

少しだけと思いつつシートを倒して目を閉じたのだったが、ハッと気づくと 30分以上も眠ってしまっていた。 これは大失敗。もしかしたら縦走をあきらめなくてはならないと思いつつ、慌てて二本松ICへと向かう。
二本松ICで高速を下りてからがこれまた長い。459号線に入り、安達太良山登山でお馴染みとなった岳温泉を通り越し、 次に 115号線に入って野地温泉を目指す。そして、野地温泉の先で今度は吾妻スカイラインへと入る。スカイラインの言葉通り、 素晴らしい山岳道路であったものの、結構長い距離を走ることとなり、少々焦る。そして、ようやく浄土平手前にある兎平駐車場に車を駐めたのは、 8時50分を過ぎであった。

慌てて身支度をして出発。駐車場の向こうには、如何にも火山らしく荒々しい山肌をした一切経山が大きい。 空は快晴という訳にはいかず、やや薄い雲がかかっている。
到着予定時間を大きくオーバーしてしまい、縦走はあきらめかけているので、ややモチベーションが上がらないまま車道を暫く進む。 途中から車道を外れて 左手の湿原に敷かれた木道に入ったのだったが、直接 一切経山に進む木道は崩壊していて通行止めとなっており、 結局 浄土平経由となった。風が結構強く、寒さを感じる。

ビジターセンタの横を通り、湿原の中に敷かれた木道、そして砂礫の道を暫く進んだ後、 右折して一切経山に取り付く。
火山礫の斜面はそれほど急ではないものの、少々息が上がる。高度を上げて振り返ると、浄土平の向こうに フジツボのような形をした吾妻小富士がポッカリと火口を開けている姿が見える。 また、登山道左手には蓬莱山が一切経山と競うように存在している。緑の斜面に黄色い色がかなり入り込んできてはいるものの、 紅葉の見頃はもう少し先といったところである。
やがて、硫黄の臭いがかなりきつくなってくると、右手下にかつて火口であったと思われる深い窪みが見えてきた。 窪みの底に茶色い水が溜まり、周囲に草木 1本生えていない光景は、砂利採取跡にも見えなくもないが、 硫黄の臭いと赤茶色の壁が火口跡であることを証明してくれている。

さらに高度を上げていくと、左手下方 蓬莱山との間に木道、そしてその先に酸ヶ平と鎌沼が見えてきた。 まだまだ緑が多いが、紅葉最盛期には赤や黄に染まってさぞかし美しいことであろう。
やがて傾斜は緩やかになり、ゴロゴロした岩の道に変わる。道に張られたロープに沿って進んでいくと、吾妻小富士が再び見えるようになり、 こちらが高度を上げた分、火口の中が覗けるようになってきた。
先を見やれば、火山礫と岩の緩やかな道の向こうに、なだらかな一切経山の山頂が見える。
ほとんど草木のない道は、風の通り道でもあるようで、かなり強い風が吹いて体温を奪う。浄土平からの観光客、登山者を追い越しながら早足で進み、 10時1分、一切経山の頂上に到着した。
頂上には立派な標識の他、石が積み上げられており、そこに宗教的な標柱が何本か立てられていた。頂上は草木が 1本も生えておらず、 遮るもののない 360度の大展望で、南西に磐梯山がなかなか見事なピラミッド形を見せている。
しかし、如何せん風が強くて体温を奪い、とてもノンビリ休憩できるような状態ではない。寒さで展望を楽しむこともできず、 そそくさと頂上を縦断して北の端まで進む。

すると、斜面の先に五色沼の姿が目に飛び込んできた。これは本当に素晴らしい。 エメラルドグリーンの水面が印象的で、その周囲を緑色の木々が囲っており、その緑色の中に黄色や赤茶色の木々が混ざっている。 五色沼は 「吾妻の瞳」 とか 「魔女の瞳」 とか呼ばれているようであるが、 荒涼として茶色一色の一切経山の向こうに、突然現れ、素晴らしい色彩を放っているその姿は、まさに人を驚かせ、虜にする。

一切経山はこれくらいにして、本日縦走するかどうかはまだ不透明なまま、とにかく家形山へと進む。
右手に五色沼を見ながら、ガレた急斜面を下る。やがて樹林帯に入り、すぐに道は平らとなって五色沼湖畔に到達する。 但し、湖畔と言っても五色沼は火山による陥没でできたものなのであろう、足下から急な斜面が湖面に向かって下っており、 水面に近づくことはできない。
五色沼の周囲を回るように進み、やがて道は再び登りに変わる。緩やかな傾斜の火山礫の道も、五色沼の湖面を過ぎ、 左に折れてからは急な登りに変わり、再び息が上がる。振り返れば、五色沼が先ほどよりも濃い緑色を見せ、周囲の紅葉がササ原の緑と混ざって美しい。 そして、その後方には、一切経山が大きく存在感を示している。
五色沼の周囲を彩る草木も、一切経山に登って行くに連れて少なくなり、一切経山頂上周辺は岩肌をむき出しにしている。そのコントラストがとても面白い。

急な斜面の登りであったが、それほど長くは続かず、ヒョイと頂上らしき高みに飛び出した (10時43分)。 但し、ここが家形山頂上との確信はない。一応ケルンが積まれ、そのそばには三角点らしきものがあったものの、砂礫のこの場所には標識が見あたらない。 と思ったら、奥のシラビソ ? の林の中に 「米沢山の会」 が付けた 家形山 と書かれたオレンジ色の標識が見つかった。 やはりここが頂上なのであろう。
やや曇りがちではあるものの、ここから望む五色沼、一切経山は素晴らしい。一切経山の懐に抱かれるようにして 五色沼が濃い緑色の湖面を見せている。 さすが五色沼と言われるだけあって、見る角度、日の光の当たり具合で 色が変わって見える。
南西には中吾妻山と一切経山の間に磐梯山が見える。また、東南方面も開けてはいたものの、 残念ながら霞んでしまって良く見えない状況であった。

暫し休憩の後、10時55分出発。谷地平に下るつもりで、とにかく東大巓を目指す。
ササ原、そしてシラビソの林の中を進む。ほとんど傾斜のない道なので、快調である。但し、足下はところどころぬかるんでいて滑りやすい。
やがて、左 東大巓・人形石の標識を見て笹の中を左に折れる (まっすぐは五色温泉)。先にも述べた通り、 道がぬかるんでいるところもあるが、総じて歩きやすい。もっと荒れているかと思っていたが、しっかり手入れがなされているようだ。 途中、道が水たまりに埋もれている所が現れたりするが、そういうところには飛び石が置かれており、問題なく通過できる。

快調に進んでいくと、唐突に 家形山 と書かれた立派な標識が現れた。 樹林の中で展望もない上に周囲に比べてこの場所が高い訳でもなく、またここまで斜面を登ってきた訳でもないので少々ビックリである。 先ほど五色沼湖畔から登り着いた高みが家形山頂上と思っていたのに、どうなっているのだろうか。疑問を持ちながら先へと進む。
完全に曇ってしまった状況の中、やや薄暗い林の中を進むのは少々気味が悪い。熊にでも遭遇するのではないかとの思いが頭をよぎる。 ただ、ありがたいことに、ぬかるんだ道の上には、本日つけられたと思しき足跡が付いている。明月荘を目指して先行している人たちがいるようだ。 心強い限りである。

やがて兵子の分岐を過ぎ (11時22分)、 そこから 10分ほどでニセ烏帽子山頂上に着いた (11時32分)。ここには立派な標識が 2本立ってはいるものの、 頂上という感じはせず、また樹林の中であまり展望も利かないことからパスして先に進む。
なかなか展望を得られない登山道が続いていたが、烏帽子山への登りになると徐々に展望が得られるようになってきた。振り返れば文字通り家の形をした家形山、 その右に丸い山頂の一切経山が見える。
そして 11時52分、烏帽子山到着。ここはハイマツと大きな石がゴロゴロしており、西側の展望が大きく開けている。曇り空の中、 なかなか遠くを見渡せなかったものの、それでも西方にはこれから進む東大巓とそこに続く縦走路、そして目の前にある昭元山の左後ろには、 優美な曲線を見せる西吾妻山が見える。
また、南には東吾妻山、その右には中吾妻山が見え、その手前に谷地平の池塘群とそこを通る木道を見ることができたのであった。 この烏帽子山頂上には男性 2名、女性 1名の年配の方がおり、聞けば今日は明月荘に泊まるとのことであった。ああ、この人たちはこの吾妻連峰を縦走できるのだなと思い、 少々嫉妬心が湧く。

とそこへ軽装の一団が到着した。山岳マラソンをしているような格好で、 交わしている言葉もそのようなことを述べている。狭い山頂なので、混み合ってくるのもイヤと思い先に進む。岩場の斜面をドンドン下り、 下ったところから今度は昭元山への登りとなる。短い登りであるが、少々キツイ。
そのうち、先ほどの一団の中の 3人が後を追いかけてきた。そのスピードたるやとても敵うものではなく、慌てて道を譲る。
そして 11時19分、昭元山頂上着。先ほど抜いていった人たちが休んでいたので、今度は言葉を交わす。彼ら曰く、10月20、 21日に奥多摩で行われる日本山岳耐久レースに参加するために練習しているとのことであった。 10時に浄土平を出発したとのことだから、この昭元山まで 2時間弱で到達したことになる。小生は 9時に浄土平を出発しているので、 1時間も早い。これでは敵うわけがない。
訓練のためにこの後は行けるところまで進み、13時半になった時点で来た道を浄土平まで引き返すとのことであった。スゴイの一言。

昭元山もあまり展望が利かないが、それでも東方面に目をやれば、一切経山、家形山、ニセ烏帽子山、 そしておむすびのような烏帽子山と、登り来たりし山々を見通すことができた。5分ほど休んで昭元山を下り、東大巓への登りにかかる。 この辺に来ると、今までとは違ってかなり紅葉している木々が目立つようなってきた。
これだけ山の中だと寒さも厳しいのであろう。既に真っ赤や黄色に染まった木々が、ササやシャクナゲの緑の中に映えている。
また嬉しいことに、今まで空を覆っていた雲が引き始め、青空と太陽が顔を出し始めてくれたのであった。気持ちも浮き立ち、 さらに道も緩やかなのでドンドンペースが進む。

12時48分、谷地平との分岐点着。東大巓に登ったら、ここに戻り、 この分岐から谷地平に下ることになる。
木道混じりの道が続いて、高度を緩やかに上げていく。振り返れば、一切経山を初めとする本日登った山々が見渡せる。 周辺は草紅葉となり、所々に現れる池塘が美しい。一方で、土が抉られている場所が数カ所見られたが、木道によってこれ以上の広がりを防いでいるようだ。
やがて、左 東大巓と書かれた標識が現れたので左折し、ほんの暫く登ると東大巓頂上であった。頂上は周囲を草木に囲まれて全く展望はなく、 三角点と標柱があるだけで、道もここで行き止まりであった (12時58分)

すぐに元の道に引き返す。ここで谷地平への分岐に戻るか、まっすぐ進むかの選択を迫られた。 時間は 13時。地図上では 4時間50分ほどあれば、当初の下山地点である グランデコスキーリゾートに下り着くことになっている。 一方、谷地平に下ったとしても、浄土平まで 4時間ほどの時間を要することになっている。それなら答えは簡単、先に進むべきである。 中途半端で帰るのが一番後悔することになる。
ということで、木道を西吾妻山目指して進む。暫く進んだところで、再び先ほどの山岳耐久レースの訓練をしている一団と遭遇した。 彼らは、1人遅れている人を待ち、この場所から引き返すようであった。これからどうするのか聞かれたので、グランデコを目指す旨を話すと、 足の速い彼らに 小生の足なら大丈夫であろうとのお墨付きを戴いた。これで勇気百倍。彼らと別れて木道を更に先に進む。

そして、その直後に目の前に広がった光景を見て、引き返さないで良かったと心から思ったのであった。
苗場山を思わせる広い弥兵衛平の広がりが目の前に現れ、茶色に染まったその湿原の中を木道が遠くまで延びている。そしてその木道の先には藤十郎、 中大巓、西吾妻山の盛り上がりが待っている。茶色に染まった草地の所々には池塘が点在し、また緑色の草木が赤や黄色の彩りを交えて点在し、 湿原にアクセントをつけている。山上の楽園というのはこういうものを言うのかもしれない。残念なのは、青空が広がっている部分が少ないことで、 これで快晴であれば言うことなしであった。

気持ちよく木道を進む。この先の行程を考えると、そうノンビリはしていられない。
やがて、西吾妻山のなだらかなスロープの左後ろに磐梯山がシルエットとなって現れた。ますます気分が高揚してくる。
藤十郎と書かれた標識を過ぎ (13時28分)、緩やかな登りにかかる。振り返れば、眼下に大きく広がる湿原の向こうに、 東大巓、家形山、一切経山などの山々が見える。よくもまあこんなに長い距離を歩いてきたものだ。
少々登りがきつくなった後、大きな岩がゴロゴロしている場所に登り着いた。その先には人形石と呼ばれる岩場も見える。

この頃になると、これから進む方向にガスが立ち込め出した。これは急がねばと、休まずに先を急ぐ。 人形石のところで道を左にとり、中大巓を巻く道を進む。ここからの道はあまり踏み跡もなく、道が少々荒れていた。 おまけにガスが若干漂っているものだからあまり視界が利かず、若干不安になる。何となく道らしいところ選んで進んでいくと、 やがて、かもしか展望台との分岐に到達、西大巓へと続く整備された道に合流したので一安心であった。
ここからはガスの中を進むこととなった。梵天岩への登りは大した傾斜ではないのだが、さすがにこの頃になると疲れが出てキツイ。 おまけにガスで視界があまり利かず、少々気持ちも萎える。

木道の登りが終わると、岩につけられた赤ペンキを頼りに進むこととなる。左に梵天岩を見た後、 西吾妻山へはまっすぐ進むのだが、右手を見るとガスの中に吾妻神社がうっすらと見える。これは立ち寄らねばなるまいと、 岩がゴロゴロした広場のような所を右に進んで吾妻神社の前まで行く。強く吹く風に、神社の左右に建てられた紅白の旗がバタバタとはためいている (14時46分)。 岩塀に囲まれた立派な神社に参拝した後、先のところまで戻ろうとしたところ、神社の下方に道が見えた。そばにあった標識を見ると、 この道も西吾妻山に行けるようである。それではと 少々下って樹林帯に入り、木道を暫く進む。この道は平らで、どうやら西吾妻山を巻いて進んでいる様である。

ガスが立ち込める中、池塘の中を暫く進むと、やがて右手に西吾妻小屋が現れた。 ここは十字路になっており、縦走コースは直進、右は西吾妻小屋、そして西吾妻山へは道を左に進むことになる。当然左に曲がり、 西吾妻山を目指す。
最初は緩やかな傾斜の木道歩きから始まったものの、徐々に傾斜が厳しくなって少々応える。しかし、それもつかの間、先ほどの十字路から 10分程経った 15時2分、 西吾妻山頂上を踏むことができたのであった。
頂上は狭く、周囲は木々に囲まれていて展望は全く利かない。吾妻連峰最高峰 西吾妻山と書かれた標識がなければ、それとは気づかないような寂しい頂上である。
誰もおらず、そしてガスに囲まれ、ただ風の音がゴーゴーとしている頂上は気味が悪い。そそくさと来た道を引き返す。
西吾妻小屋の十字路まで戻ったところで、道を左に取り、西大巓を目指す。いよいよ最後の山場である。

ガスが立ちこめる中、暫く下って山の端に辿り着くと、目の前に西大巓が現れた。
鈍角をした頂上まで続く道がササ原の中に見える。ガスは相変わらず漂っており、時々視界が良好になるものの、すぐに周囲の景色を隠してしまう。 面白いことに、時折ガスが引くと南方面だけが見えるようになり、低くたれ込めた雲の下に明るく視界の良いスペースができて、 その先に安達太良山を見ることができたのであった。
くたびれた身体に鞭打って登り着いた西大巓頂上には、土の中から掘り起こされたような状態になった三角点が置かれている他、 ほとんど字の消えかかった表示板があるのみであった (15時43分)。 周囲はガスに囲まれ、全く視界は利かない状態である。ここでもたった 1人なので薄気味悪い。5分ほど休んで出発。 後は下るのみである。

急で少々滑りやすい道を暫く黙々と下っていくと、ガスは消え、視界が広がりだした。 私のいる場所には日が当たっていないが、そばの山には雲の切れ間から日が当たっており、なかなか面白い光景が目の前に広がる。 安達太良山も良く見える。
40分ほど下り続けると、今度は目の前に磐梯山が見え始めた。既に時刻は 16時半を過ぎており、完全に夕景である。磐梯山の手前には小野川湖が見え、 何となく心が落ち着く風景であった。

やがて、ゴンドラリフト駅を右に見て、林道のような道を下ることとなった。道は大きく蛇行していて忠実に辿ると効率が悪い。 そこで途中からスキー場の斜面を直接下り、時間を稼ぐことにした。秋の日はつるべ落とし。ドンドン周囲は暗くなる。
最後は初心者コースのゲレンデを駆けるように下り、下りきったところで右に曲がると、目指していたホテルグランデコであった。 ホテルのオレンジ色のライトが気持ちを和ませる。
ホテルに到着したのが 17時18分。フロントにて、親切な支配人にタクシーを呼んでもらい、18時過ぎにホテルを出発。 そこから真っ暗な山道を 1時間近く走っただろうか、19時過ぎに真っ暗な兎平駐車場に着いたのであった。
タクシー料金は 12,870円。大きな出費であったが、山中 1泊の新幹線・バスによる行程と比較しても、高速代・ガソリン代と合わせてほぼチャラであろう。

ところで、真っ暗な兎平駐車場に着いた途端、強烈なハロゲンライトに照らされ、 何か叫 (わめ) かれた。何を言っているか全く聞こえないし、ライトが強烈なのでどんな人が叫いているのか全く分からない。 薄気味悪いので無視をして、駐車場に 1台残っていた自分の車のところに直行したのだったが、後から考えると、この時間にタクシーで乗り付けたので幕営すると思い、 それを諫めるために監視員が注意していたのであろう。
小生の足下を照らすようにして、ちゃんと説明すれば済むものを、顔に眩しいライトを当てられたのではこちらも身構えてしまう。 素人の監視員に違いない。

車に辿り着くと叫いていた人も納得したのか、近づいてこなくなった。
空を見上げるとまさに満天の星。普段 横浜でも見慣れている星座のその内側や周囲にも沢山の星が煌めいて、本当に降るような星空である。
今回、山中 1泊を避けて日帰り縦走を果たしたが、この星空を眺め、山中の 1泊もまた良いものだなと思ったのであった。


吾妻山登山データ

上記登山のデータ登山日:2007.10.06 天候:晴のち曇り単独行日帰り
登山路:兎平駐車場−浄土平−一切経山−五色沼−家形山−ニセ烏帽子山−烏帽子山−昭元山−谷地平分岐−東大巓−藤十郎−人形石− 梵天岩−西吾妻神社−西吾妻山−西大巓−ゴンドラリフト駅−ホテルグランデコ−(タクシー)−兎平駐車場
交通往路:瀬谷−横浜IC−(東名高速道路)−東京IC−(首都高速)−川口IC−(東北自動車道)−二本松IC−岳温泉−土湯峠−(吾妻スカイライン)−兎平駐車場(車にて)
交通復路:兎平駐車場−(吾妻スカイライン)−土湯峠−横向温泉−磐梯熱海IC−(磐越自動車道)−郡山JCT−(東北自動車道)−川口IC−(首都高速)−東京IC−(東名高速自動車道)−横浜IC−瀬谷(車にて)


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