NO.013 尾 鈴 山( 尾鈴山:1,405m ) 1992.10.31登山


 稜線越しに見た白滝( 1992.10.31 )
【尾鈴山について】

【尾鈴山登山データ】


尾鈴山について

尾鈴山 (オスズヤマ) は宮崎市の北方、宮崎県の海岸側ほぼ中央に位置していて、 山中に多くの滝を有した自然に恵まれた山であり、また歌人の若山牧水がこの尾鈴山を見ながら育ち、 " ふるさとの尾鈴の山の悲しさよ 秋も霞のたなびきて居り " という有名な歌をのこしていることでも有名である。
ちなみに牧水の生家は、日向市から西へ進んだ東臼杵郡東郷町にあり、そこには生家とともに牧水記念館も設置されている。

登山口は、この牧水の生家とは山を隔てた反対側の九重頭 (クエントウ) からのものがポピュラーで、 そこへのアプローチはバスが近くまで運行されてはいるものの、車で登山口に向かう方が無難である。
宮崎市より国道10号線を北上して川南町に入り、途中尾鈴山への標識を見て左折し、尾鈴・川南線を名貫川沿いに進むと、 やがて九重頭キャンプ場 (尾鈴キャンプ場) に着く。
道路際にキャンプ場の駐車場があるので車を止め、そこから延々 4キロ弱ほどの林道歩きが始まるが、この尾鈴山から矢筈岳を経て白滝に寄り、 またこの駐車場へ戻ってくるコースがお薦めで、林道歩きが面倒だからといって登山口まで車で進むこと (道は悪いが、 通行止めにはなっていなかったと思う) は尾鈴山へのピストン登山にならざるをえず、全く味気ないものになってしまうので避けるべきである。

駐車場からケヤキ谷橋を渡ると、すぐ左に白滝への登山コース (帰りにここから戻ってくる) があるが、 それを見過ごして甘茶谷沿いの道を進む。
途中林道が分かれるが、右は矢研滝方面への道なので、左側を進んでいくのだが、いつまで経っても登山口が現れないので、 ややイライラするかもしれない。
林道はやがて二股に分かれる。そこを右に曲がって橋を渡り、暫く進むと左側に梯子が出てくるので、そこが尾鈴山の登山口である。
梯子を登り山に入っていくと、ジグザグの登りが待っているが、少し登れば尾根に達し、そこからの登りは厳しいという程のものではなく、 自然林の中の楽しい山登りができるようになる。
しかし、後で聞くところによると、この自然林も大分伐採が進んでいるそうで、この登山道の周囲以外はかなり伐採されているとのことである。

途中、距離の目安が付くように合目を示す標識があるが、 同じように標識がある 市房山のようにキツイ思いをするところはほとんどなく、 さらに周囲がスズタケに変わってくると傾斜も緩くなり (五合目辺りからスズタケは始まる) 頂上も間近になる。
九合目付近からは道もほぼ平らとなって、右に万吉山からの道と合わさり、やがて頂上となる。
頂上はスズタケとヒメシャラ、アセビなどに囲まれて展望を得ることはできないが、一等三角点とその説明を書いた看板、 そして立派な標柱が置かれている。
かつては頂上に展望用の鉄塔が立っていたらしく、そこに登ると周囲の山々や日向灘を望むこともできたようであるが、私が登った時には既に解体されており、 その残骸が傍らにあるだけであった。

頂上から少し北にスズタケの原を進むと、大きな木の根っこの間に小さな祠が 2つ安置されているのが目につくが、 これが尾鈴神社上宮であり、苔むした古い方の祠に歴史を感じるであろう。
縦走路はスズタケの中を下っていくことになり、鞍部からは緩やかな登り返しとなるが、振り返ると尾鈴山がその三角形の姿を樹林の間に見せてくれる。
登山道は、ヒメシャラやシャクナゲが混ざりあった樹林の中を進むことになるが、明るく伸びやかな感じで気持ちがよく、 大きな岩があらわれるようになると、さらに気分の良い快適な縦走ができるようになる。
矢筈岳頂上には大きなケルンがあり、その先端部分はアーチ状に石が積んであり、中には おバケのQ太郎 (だと思う) のセメント (あるいは石) 製の像が安置されている (なかなか面白い)。
ケルンの周りには矢筈岳と書かれたいくつかの標識があったが、ある本によると、ケルンがあるのは南矢筈岳であると書かれていて、 やや混乱してしまう。

矢筈岳から南矢筈岳を過ぎると急斜面の下りが待っており、転げるようにして下っていくと、 私の場合、やがて伐採の現場に遭遇した (こういった状況は常に変化しているので、現在は保証の限りではない)
そこから杉の林の中を下っていき、伐採のためやや道の分かりにくくなっている中を進んでいくと、また杉から自然林に樹相が変わり、 やがて左の木々の間から白滝の雄大な姿が見えてくる。
九州の山の紅葉は、寒い東北や高い山のそれと比べると色づきに甘さが残るが、それでも私が登った時には、 常緑樹の緑の中に紅葉した木々の赤や黄色が混ざり、それに岩肌の灰色や茶色が加わって、それらの間を白い一筋の流れが通っている様は大変見事であった。
たびたび白滝を樹林の間から見ながら下っていくと、やがて谷に降り立つこととなるが、対岸に渡ってすぐの所に左に分かれる道が出てくるので、 そちらを進むと白滝の下に出ることになる。
ただ、左に曲がると白滝だという明確な標識がなかったので私は少し迷ってしまったが、今はどうだろうか。

白滝は高さ 75mの 2段になった大きな滝で、その雄大な滝が眺められる岩場で弁当を広げるのはなかなか気分が良いものである (とは言ったものの、 私がそこへ行った時は誰もおらず、たった一人で滝を見ながら弁当を食べたので、何となく落ち着かなかったが・・・)。
また分岐点に戻ってから左に道を進むと、そこからは美しい滝のオンパレードで、水底の美しいナメ滝がまず目を楽しませてくれ、 岩をくり抜いたトンネルを抜けるとさぎりの滝、大滝、モミジ滝などがあり、逆コースを辿ってハイキングにここへ来ると楽しいであろう。
この道は伐採が盛んだった当時の軌道跡らしく、ほぼ軌道跡を伝いながらの下りが続く。
やがて、2つに分かれる道が出てくるが、右に進むと今朝ほどのケヤキ谷橋の所へ降り立つことになり、駐車場はすぐである。
ハードな登山を好む者にとっては少々モノ足りないかもしれないが、それでもこのコース全体はかなり距離があり、 またそこかしこに見られる自然の美しさを十分に堪能できる素晴らしいコースである。
特に、尾鈴山頂上から矢筈岳への登山道は、九州の山の明るさ、伸びやかさを見せてくれ、また最後に待っている滝巡りも楽しいものであるが、 途中自然林の伐採がかなり進んでいて、登山道がゆがめられていたり、自然が徐々に奪われていく姿が見られるのは残念である。
なお、上述のコースの所要時間は、6時間から 6時間半を見ておけば十分と思われる。


尾 鈴 山 登 山 デ ー タ

上記登山のデータ 登山日:1992.10.31 天候:晴れ 単独行 日帰り
登山路:九重頭キャンプ場−林道二俣−尾鈴山登山口 −四合目−尾鈴山−矢筈岳−南矢筈岳−白滝入口−白滝−トンネル−さぎりの滝−白滝登山口− 九重頭キャンプ場
交通往路:宮崎−佐土原−川南−九重頭キャンプ場(車にて)
交通復路:九重頭キャンプ場−川南−佐土原−宮崎(車にて)

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