■ アニキの気持ち ■


 長男は自分の弟、妹を抱っこするのが、どうやら夢らしい。ところが先日、と言ってもずいぶん前になるのだが、Yaguは流産してしまった。その時の事だ。 「抱っこできなくなっちゃったね。」と言うと、「いいよ、本当の夢はね、ハルとお話する事だから。」と答えた。そうか、そんな事を思っていたんだ...

 そして現在。ずいぶん言葉が出てきた次男。1年前の母音と指差し、YesNoの意思表示と表情で会話していた頃とは大きく違う。まだ出ない音も多いが、まぁ当たり前のように話をしている。すべてが同時に発達していくのと違い、ボキャブラリーはとても豊富で内容的には4歳児レベル。 それを喋り始めの2歳前後の音でしゃべるわけだから、聞き取りはなかなか難しい。一緒に過ごし、いろいろな経験を共有している家族でも、時々「え?」と頭を抱える時がある。

 それでもやはり会話する事によって、兄弟の意思の疎通は目に見えてスムーズになり、元々仲の良い兄弟だがもっとそれが深まったように思う。幼稚園から帰ってくると2人で楽しそうに遊んでいる。一緒に絵本やビデオを見る時も、○○がかっこいい!だの、△△は××よりか強いだの、それはそれは真剣な顔で語りあっている。 次男が昼寝した時に「良かったね、お話できるようになって。」と長男に言うと「いや...まだまだだね。」とニヤッと笑った。確かに正直な気持ちだろう。それでもニヤッが嬉しい。さりげなく「まだまだだね」とテ○スの王子様の越前○ョーマの口グセを取り入れているあたりも見逃せない。

 療育センターにも通っていたが、現在は経過観察中。言語聴覚士の先生には「お母さんの聞き取りはすごい!」と絶賛されたが、そんなYaguも長男にはかなわない。それでも言葉が出始めたゆえになかなかいっきに喋るようにならないのがもどかしいのか、時々弟に猛烈特訓をしている光景を見かける。ちょっと笑っちゃうようなやりとりである。

  兄:「トトロ!はい、いってみて!」
  弟:「ここお?」
  兄:「ト!」
  弟:「こ!」
  兄:「ちがう!それは「こ」でしょ!「ト」!」
  弟:「えぇ〜できにゃい〜。まじゃちっちゃいかや〜!」
  兄:「まだちっちゃいじゃない!もう4さいでしょ!」

 そんな時は頃合いを見て「あせっちゃダメだよ。これだけ喋るようになるのだって、すっごいいっぱいかかったでしょ?」と割って入るのだが、気持ちはわからないでもない。次男より半年年下の従兄弟が遊びに来た後などは、この特訓にも熱が入ったりするから、やはり何とかしてあげたい気持ちがあるのだろう。あせっても仕方がないとわかってはいる。兄はなかなか複雑だ。

 Yaguファミリーの中では次男の発音に一番厳しい長男だが、これが面白い事に他の人が次男の言葉を聞き取れなかった時に、一番怒るのもこれまた長男である。その標的(?)になっているのが一緒に住んでいる祖父だ。階段の上と下で次男と祖父が喋っている時、下から

  「何?何て言ってんだぁ?」

などという言葉が聞こえようものなら、すっ飛んでいき

  「ちょっと!○○××△△...ってちゃんとしゃべってんでしょっ!じーちゃん!
   なんでわかんないのよっ!!」

 とそれはそれはすごい勢いで怒っている。これがあるので、兄弟の猛特訓タイムもある程度の事は目をつぶっている。やはり兄弟。一番の理解者はアニキ、なのかもしれない。それは次男にもきちんと伝わっている。

 いつになったら「まだまだだね」から先に行けるのか、のんびりと見守っていこうと思う。


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