今年の初め、Yaguの母方の親族が一同に集まる機会があった。YaguPapaの方なら隣りには叔父一家、他にも近くに住んでいる関係で何回か会った事もある。
が、Yaguの方。しかも母方。チビらには初めての経験だ。新幹線に乗り大阪へ。地下鉄、南海電車と乗り継いで堺まで行ってきた。
たくさんの見知らぬ大人達。Yaguのいとこ達にしたって、Yagu、妹のMeguを頭に全員成人してしまっていて「大人」である。チビらは人見知りするタイプではないが、それでも迫力に押され気味といった様子。長男が言った。
「こわい...なんかこわい。」
「こわいの?」
「うん...」
次男も緊張している。まぁ無理もない事だろう。聞きなれぬ言葉を喋る初対面の大人で溢れているのだから。それでも小さい子供はほとんどいないという事で、まわりの方もとても気を使って下さった。事あるごとにチビら2人に話し掛けてくれたり、相手をして下さったり...
そんな中でチビら2人は1人の叔母によくなついた。YaguやYaguPapaの近くからやっと離れたのも、その叔母についてお手伝いなどをするためだった。
あれこれとお手伝いをした後、得意げな顔をして戻ってきた2人。叔母の姿はまた慌しくどこかに消えた。
「こわいからパパとママのちかくにいるね。」
と長男がまた言って横に座った。
「まだこわいの?さっき平気だったじゃんか?」
「あのおもしろいひとはこわくない。あとのひとはまだこわい。」
「そっか、まだこわいか...あの叔母ちゃんは面白いから大丈夫なの?」
そう言うと、意外な言葉が返ってきた。
「みんなね、『ぼく!ぼく!』ってよぶからこわいの。でもね、あのおもしろいおばちゃん
はね、ちゃんとなまえでよんでくれるの。だからこわくない。」
そうだったのか...ふと、あるフレーズが頭の中で鳴り響いた。
〜 呼びかけよう名前を!素晴らしい 名前を!! 〜
ゴダイゴというグループの「ビューティフルネーム」という曲。もう20年以上も前の曲だが、とっさに伴奏付きで思い出せるのはさすがはヒット曲だ。確か国際児童年のテーマだか何だかになっていた。そのサビの部分の一節が頭をよぎったのだ。
そうか!名前を呼んであげるのには、そんなすごいパワーが秘められていたのか!そういえば、こんな歌詞もあった。当時はイマイチ何の事やら意味がわからなかったが、それでも聞こえたとおりのカタカナでしっかり耳が覚えている英語の歌詞だ。
エーブリッチャーイルド ハザ ビューリホネィム!ビュリホーネィム!ビュリホーネィム!
いやいや、今なら英語に直せる。それはおそらくこんな歌詞...
Every child has a beautiful name! Beautiful name! Beautiful name!
すべての子供達が素晴らしい名前を持っている...そして前述の部分へと続く。呼びかけよう名前を!素晴らしい、名前を!そうかぁ〜!そうだったのかぁ〜!!この歌はこんなにすごい事を言っていたのかぁ〜!!!あらためて、やはりすごいぞ、さすがはタケカワユキヒデである。
この歌を作った当時、お子さんはもういたのだろうか?私は今の今まで名前のもつ力に気付かずに過ごしていた。名前を呼ぶ、ただそれだけで安心感を子供に与えることができるなんて、考えもしなかった事だった。
そんなことを思いつつ、もう1つ頭をよぎった事があった。「顔見知りの...」という言葉のついた、幼い子供が巻き込まれた事件などの事である。この人は安心、こわくないと思っていた相手の思いもよらない行動。
名前を呼ぶという事が持つパワーを知ってしまった今、昔のように「知らない人には気を付けなさい。」では簡単に済まされない世の中で、親の目の届かないところにいる時の「自分で自分を守る方法」を子供に教えるのはとても難しい事だなぁ、と考えさせられた。安心が反対にこわい、である。
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