■ おっきいくん ■
最近、長男が口にするようになった言葉がある。たま〜に、本当に時々。でもとても心配そうに小さな声で、私に向かってたずねてくる。
「ねぇママ。ぼくはおっきいくん?もうおっきいくんになっちゃった?」
始めは何の事かわからなかった。
「おっきいくん?」
と聞き返すと、
「やっぱりなんでもない。」
...と言う。
だがある日、やっとその言葉の意味がわかった。どこかで誰かになにげなく言われた「あれ?おかしいなぁ?もうお兄ちゃんなのに!おっきくなったんだから、ちゃんとできるよなぁ!」という言葉に反応しているようなのだ。 それからはいつもこう答えるようにした。
「大丈夫だよ。背もずいぶん大きくなったけど、まだまだちびっこくんだよ。
おっきくなったちびっこくんだよ。」
するといつもの長男の顔に戻り、
「そうだよ。もうこんなにおっきいんだよ。いろんなことできるよ。」
と少し誇らしげに言って、安心した様子でまた遊びに戻っていく。その姿を見ていると、何ともたまらない気分になる。
特に一番言われているのはコレ。
『お兄ちゃんなのに泣いたりしちゃおかしいなぁ!おっきい子は泣いたりしないんだよ!』
「おっきいくんだって泣きたい時は泣くさ!だから泣いたっていいんだからね。」
というと、いつから我慢していたのだろう?と思うくらいの大粒の涙が、ポロポロポロポロとあふれ出てくる。上の子ならば、一度は言われた経験があるだろうこの言葉。しかし私もYaguPapaも長男には一度も言ったことはない。 私は同じように育てても、上の子は上の子に育つものだと思っている。そしてそれ以上に「自分はもう大きくなってきた。弟もいるお兄ちゃんなんだ。」と長男自身が自覚しているように見える。
◇◆◇
兄弟の上下は関係なく、成長していくにつれ泣くに泣けなくなってくると思う。男の子であれば周りの目もありなおさらだ。誰に言われたわけでもないのに、そうなっていくものだと思うから、今のうちに泣くだけ泣いたっていいじゃないか! そのうちにいろいろな事がわかってきて、泣く回数も減ってくる。現にうちの長男も何でもかんでも泣かなくなってきた。ただ、成長してきたぶん、どう言っていいのかわからない複雑な気持ちや悔しいという気持ちも抱えるようになってきて、泣き方もずいぶん変わってきたように思う。 もちろん、今までのように転んだだけだとか「え?」というような状況で泣いたりもする。そんな時には、少しの間抱っこしたり、洗ってバンソウコウを貼ってあげたりしただけで、泣いていたのがウソのように元気になる。こっちの反応を確かめているのかもしれない。
◇◆◇
上の子は甘えられる場所が少ない。勝手にしっかりしてきてしまうので、いつのまにか甘え下手になっていく。だから何だか自分は泣いたらいけないようなそんな気分になってしまう。下の子は上の子に比べてまだまだできない事が多いから、手をかける時間も多い。でもできる限りは上の子も下の子も同じように接してあげたいなぁと思っている。なかなか難しいけれど、上の子だから、という理由でガマンをさせたくはない。下の子がまだガマンが下手だから、少しの間おもちゃを貸してあげよう、とか、そういう言い方をするようにしている。結果上の子にガマンさせているから同じことなのかもしれない。でもガマンの理由は「上の子だから」では決してないのだということを何とかして伝えたくて、親の自己満足かもしれないがそうしている。私がそうしてもらっていたように、自分の子にもそうしてあげたいと思うのだ。
安心して涙を流せる場所。気を張っていなくてもいられる場所。それが親の所だと私は思っている。だから、子供達がどんなにおっきいくんになっても、大丈夫だよ、と言ってあげられるだけの余裕を持って、どーんとかまえていられたらなぁと頑張っている。
< 前 | 次 >