■ 二人乗り ■


 今日も幼稚園まで長男を送ってきた。下の子をベビーカーに乗せた日には上の子をベビーカーに取り付けてあるバギーボードの上に立たせ、下の子をおんぶした日には上の子と手をつないで、毎日10分足らずの短い散歩である。 テクテクと歩いて行く我々親子の横を、「おはよ〜!」と近所のママ達が、自転車に子供を乗せてスーッと通り過ぎていく。いつもの光景である。

 彼女達のうちに比べて、うちは若干、本当に少しだけだが幼稚園に近い。運動不足の毎日、朝の散歩が気持ちいい...というのも本当だが、自転車でピュ〜ッと行ってサァ〜ッと帰ってきた方が、時間が有効に使えるような気もしないでもない。 季節にもよるだろうが、親子で風を切って自転車で通園するのは、すがすがしいカンジで、こちらも気持ちが良さそうだ。しかし、Yaguはあえて徒歩での通園をチョイスしている。これには少しワケがある。

 Yaguは二人乗りができない。いや、できなくはないが、どうも悪いイメージが捨て去れないのだ。理由はある。まだYaguが小学生だった頃、2つ年下の妹を後ろに乗せて家の前で自転車に乗って遊んでいた時のこと。ありがちな話だが、私は妹を乗せたまま、自転車で転倒してしまった。 私は大丈夫だったが、妹はびっくりしたのと、どこだかをぶつけたのとで派手に泣いた。別に何針も縫う大怪我をさせたとか、そういうわけではなかったのだが、私はこれ以来どうも人を後ろに乗せる事ができない。最初のふたこぎぐらいでグラグラとした後「やっぱやめとくわ。」とギブアップしてしまう。

 そんなYaguだが、長男がもっと小さい時に、自転車のハンドルの部分に取り付けるタイプのシートで、長男と二人乗りをした事が何回かある。風を切って「ふ〜っ♪」とゴキゲンな声を出す長男と話しながら、実に楽しく気持ちが良かった。 足がガニマタになってしまう事をのぞけば、なかなか素晴らしい二人乗りライフだった。しかし今は次男もいる。幼稚園への送迎となると、前に次男、後ろに長男を乗せての通園。二人乗りどころか三人乗りだ...ダメだ。やはり悪いイメージが...

 昨日の夜、上の子が「どうしてママは自転車で幼稚園にしないの?」と聞いてきた。昨日は帰り道に、落ちていた青梅を拾ったりしたので、それを理由に「こんな事、自転車じゃできないでしょう?のんびりお花見たり畑見たりしながら、散歩みたいで楽しいと思うんだけどなぁ。」と言うと「そうだね!楽しくていいね!!」と笑顔で答えてくれた。
 少し心が痛んだ。彼は私の言葉の奥に隠れた「真実」を知らない...


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