コミカライズ・ヒーロー

今でこそ洗練され、ダイナミックな画風とアクションが両立している石川節だが、
比較的初期の荒削りな血しぶきグロ路線も捨てがたいモノがある!

1ページ目!


変身忍者嵐
(原作・石森章太郎)


〜秋田書店 サンデーコミックス版〜
1巻・1972.8/15初版
2巻・1972.12/25初版


〜大都社 スターコミックス版〜
1巻・1986.6/30初版
2巻・1986.6/30初版


〜大都社 スターコミックス(新装・完全)版〜
「変身忍者嵐・外伝」と改題(石ノ森版2種が先行発行されたため)
1、2巻・1999.12/8初版

豪ちゃんが石森(石ノ森)アシスタント出身だからこそ実現したのだろう。 当時石森自身も「週刊少年マガジン」「希望の友」誌上にそれぞれ『嵐』 を連載していたが、この賢ちゃんver.は秋田書店「冒険王」に連載された。掲載誌は、「冒険王」72.5月号〜73.3月号に加えて、72.夏休み大増刊号・73.お正月大増刊号「別冊冒険王」72.夏・秋・73.冬・春号…とコレクター泣かせな数。

前書きにもあるが、元々石川賢は白土三平の忍者 マンガに最も影響を受けている。ギャグデビュー後、初めて描いた ストーリー作品がコレで、ノッた挙げ句ごっつく 暴走石森組の歴史に残る残虐描写作品 へと仕上がった!インナーに走りがちな石森版に対し、敵の攻め方 も忍法の一つ一つから倒すときの景気イイ血飛沫、川に毒をながすオウムの ごとき作戦まで到底放送できないような描写のオンパレード!

上の秋田ver.と大都旧版は最終回未収録。大都新版で、魔神斎を破り、親玉 ・大魔王サタンとの戦いまで初収録。サンデーコミックス版の方が収録数が 少ないワケだが、その分、嵐が西洋妖怪をアタマのてっぺんのツノでグッッ ッッサリと突き殺して単行本終了、という味気なさ!

「ノミドクロの巻」に、コウモリ型の羽根を作っている男の話が出てくると いう具合に、後の作品に明らかにつながるエピソードがかいまみえる、とい う点でコレが本格的なデビュー作とも言えまいか?

当時の冒険王付録。左は1972年6月号。右は10月号。

こういう豪華別冊付録が 各誌に付いていて燃えた燃えた。 6月号は、本誌から続いて「死人ふくろう」後半32ページ。表紙裏に主題歌 『嵐よ叫べ』掲載。 10月号は48ページ!「オオカミ男とフランケン」の巻。血車忍者名鑑とカラー グラフ付き。おまけにトビラ未収録カラー。たまりませんわ。

最終回は「何と嵐が死んでしまう!」と一部で有名だが、溶岩で融ける月の輪の 容赦ない死にっぷりに比べると偉くハッピーエンドではある。 …完全版単行本が出ているので、ココでは敢えて内容には触れぬぜよ。

ちなみに最終回掲載号は、蛭田充版『デビルマン』の「妖獣オーロラ」の回。 更に本誌にてすがやみつる版『仮面ライダー』最終回、別冊付録で『仮面ライダ ーV3』初回というマストな一品!


ウルトラマンタロウ
(<C>円谷プロ)

記念すべき第一回掲載は、週刊少年サンデー1973.4/15(17)号。

表紙の真理ちゃんはシンシアと一緒に返還間もない沖縄訪問!連載マンガは キカイダー、レッツラゴン、漂流教室、男どアホウ甲子園、ダメおやじ... ザ・ムーンは、いよいよみんなでチョコレートかじってカビの霧の中へ! ...泣かせる...。

そんな中、篠田三郎の写真グラフや今道英治の撮影所レポートマンガと共に 幕を開けた第一回!いきなり野良犬の血塗れの決闘!...続いて中学生が体の 小さい小学生を殴る蹴る!健太郎ソレを救うが変身はナシ。小屋で怪しくうな る犬のダイナミックな姿で「つづく」!(笑)

...ドコが円谷印やねん!


〜単行本・全1巻(5種)〜

若木書房

若木書房

大都社

大都社

1978.9/25第3版

1980.7/25第3版

1978.9/20初版

1986.6/30初版


双葉社
1999.12/11初版

若木版と大都社版は長く平行して書店に並んでいたが、一体なぜなんだろう? 「版権」の観念が違ってたのかな?「少年サンデー」に連載されたストーリーは、 大きく分けて「タロウ誕生」「失われた町」「小さな独裁者」「鬼がくる」の 順で全4話。

若木版には、4話「鬼がくる」が収録されていない。また、大都社版・双葉社版 では第3話「小さな独裁者」が4話になっている。

それにしてもどう見ても『ウルトラマンタロウ』というよりも、 神と悪魔のファンタジーである。

多分連載時期から察して、『魔王ダンテ』『デビルマン』を描く豪ちゃんを 横目で見ていた時期なはずで、ウルトラの母などTVよりよっぽど神々しい。 ある者の意志で作り出され、 本人も気付いてはいないが人間とは異なる種族である という設定。しかも敵の超獣ならぬ「奇形獣」も 実は同じ種族という...。だが戦い続けなければいけない運命!...コレって 『5000光年の虎』じゃん!

そんなキッつい設定を見せつつ、脳が無闇に肥大化した赤ん坊が全国の子供達を 率いて革命を起こそうとしたり(「小さな独裁者」)、異星人が地球人にはどー ってコトない細菌に侵されたり(「鬼がくる」>ゲッターG!)という何とも救い のないハナシが続いた後、結局石川版の連載は放送半ば にて終了。賢ちゃんの絵ではない絵物語に変わってしまったのだった...。 あのまま描いてたらタロウの手で地球滅ぼしてたかも...。


たろおおおおおおっ!(1986版裏表紙より・賢ちゃん筆)


ウルトラマンタロウ・「小学一年生」版
(<C>円谷プロ)

こちらは今まで全く単行本には収録されていない、小学館の『小学一年生』 に1973年5月号〜74年3月まで掲載されたバージョン。神と魔の闘いのような サンデー版とはうって変わって、<THAT'S ヒーロー>といった感覚で描か れている。いるが、やっぱりそこはダイナミック!徐々に血しぶき飛ばす バイオレンス振りが顔を表し、スプラッシュ全開だ!

また、ウルトラマンやセブン、Aらウルトラ兄弟(現在ではウルトラ戦士と呼称) も登場、セブンなど「俺ごと怪獣を撃てえっ!」と叫んで自ら死んで行くなど、 賢アニィの魂は確かに息づいている。(そして数カ月後、そんなことはなかった かのようにセブンが再び現れるところまで...苦笑)

なお4月号のみ、前年『ウルトラマンA』を同誌に連載していた森義一 が描いているが、読みきり形式のため、整合性には問題がない。が、 もちろんカラーは違和感バリバリ(笑)。


突撃!ヒューマン

「小学五年生」1972年11月号(小学館)

今でこそ、ビデオが残っていないために幻の作品となっているが、初登場のこの時期は左上で主張しているぞ!

小学館の学年誌は年次が上がるごとにブツが出にくくなっているため、市場でも中々お目にかかれないので、コレクター泣かせだ。さて、ヒーローモノは割合幼児〜小学校低学年のイメージがあるが、この「小学五年生」でも大きく取り上げていて、ちょっと驚きですな。綴じ込み付録になんとあの「ヒューマンサイン」まで付いていたのだっ!。デザインの成田亨氏直筆の顔をトレスした贅沢な仕様だぜ。アタマの上にある黒点に穴を開け、「マッチ棒で回します」のだそうだぞ。今はご家庭に中々ないぞ、マッチ棒。

トビラは見開き横倒し全身像という巨大さ。周りに解説のコマが描かれる。例えばコレが変身の様子だ。実際の放送だと暗転した後、会場後ろから飛び人形が舞台へと飛び、スポットが当たるとヒューマンが現れる…という展開だったと記憶している。コレは作品制作前なので具体的なことが分からないため、前年賢ちゃんも企画に参加した『デビルマン』のイメージでまとめてるんでしょうな。

続く4ページに見開きで、ヒューマンの超能力と敵軍団フラッシャーの紹介。「逆さになって天井を歩ける」なんていう絵まであるが、本編で見た覚えは無いなあ。設定だけか。フラッシャーの悪辣ぶりがステキで、箱に入った美人を回転ノコギリで切ろうとしたり、少年を箱詰めにして剣で突き刺しまくったり…というビックリマジックショーぶりだ。恐怖に歪む緊張感溢れる絵もいいぞ!ただしマジックは失敗するはずもないので、賢ちゃん流石に血しぶきは描いてないぞ。

中々楽しませてくれるじゃないか。見たいぞ、『突撃!ヒューマン』。


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