山田洋次監督作品という点にはさほど興味を惹かれませんでしたが、吉永小百合・大泉洋・永野芽郁という祖母・父・娘という3世代設定には惹かれるところがあり、観に行った次第です。
大企業で人事部長の職にある神崎昭夫、傍から見れば出世頭と見えるかもしれませんが、家庭では妻と別居中で離婚寸前、大学生の娘=舞は母親と喧嘩して家を飛び出し、会社ではリストラの旗振り役と、八方ふさがりの状況。
久しぶりに下町で細々と足袋屋を続けている実家を訪れてみれば、娘がいつの間にか同居していて、母親はボランティア活動に励む一方で牧師さんとの恋に胸を躍らせているという様子で、思わずいい加減にしてくれ、と嘆いてしまう。
しかし、一人暮らしとなって荒れ放題の自宅マンションから度々実家に通うようになった昭夫には、何時しか気持ちの変化が生じる・・・といったストーリィ。
正直なところ、ストーリィについては特にどうこう言うところはありませんが、幾つもの対比関係は感じます。
女性=恋という感じと、男性=仕事という対比。母、自分、娘という三世代の対比、いかにも昭和的な店構えと高層ビルの中にある会社、鍵をかけない下町の古い一軒家と狭いマンションといったように。
でも、下町の方が人情があって人間らしい暮らしと、一方的に片方を肯定する気にはなりません。
所詮は、人としての気持ちの持ち方の問題であろうと思うからです。もっとも、それに気付くきっかけとはなったかもしれませんが。
なお、下町暮らしの吉永小百合さん、というと、どうしても若い頃の青春映画に出演していたころの姿を重ねてしまいます。
もうひとつ下町のおばあさん役に馴染んでいない処が、吉永小百合さんの良さなのかもしれません。
大泉洋さんは、いつもどおり。だらしないところ、きりっとしたところ、それぞれ達者に演じています。
※実は私が個人的に嬉しかったのは、神崎人事部長を支える女性社員役の加藤ローサさん。「夜のピクニック」「天国はまだ遠く」で観て好きになった女優さんで、いかにも有能な女性社員ぶりを惚れ惚れと観ていました。
2023.09.03
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