“必死剣 鳥刺し” ★★  
(2010年日本映画)

監督:平山秀幸
脚本:伊藤秀裕、江良至
原作:藤沢周平
出演:豊川悦司、池脇千鶴、吉川晃司、戸田菜穂、関めぐみ、岸部一徳

  

藤沢周平“隠し剣”シリーズの中の一篇、「必死剣鳥刺し」の映画化。

題名からすぐにはストーリィを思い出さなかったのですが、観ているうちに思い出しました。“隠し剣”シリーズには、結末が幸・不幸いろいろあるのですが、本篇は後の方。でもその後に残るストーリィ要素というか余韻が深くて、かなり印象的な作品でした。
映画化にはまさに格好、“隠し剣”シリーズの中でも良い作品を選びだしたものだと感心します。

元々短い篇ですが、前半部分を補って約2時間の映画ストーリィ。
海坂藩の兼見三左ェ門、藩政を乱す藩主の愛妾を城中で刺し殺すという事件を起こす。本来斬首となるべきところ、何故か1年間の閉門で許され、3年後藩主の近習頭取の職につく。しかし、藩主の視線は冷たい。
それなのに何故、三左ェ門は近習頭取に任命されたのか。

兼見三左ェ門は、妻を病で亡くした、まさに武士らしいストイックな人物。
それにもかかわらず、藩の重職は彼を道具として利用することしか考えない。
武士の哀しさをしみじみ感じさせられるストーリィです。
いかにも寂しそうな三左ェ門の暮らしを唯一潤すのは、亡き妻の姪である
里尾。出戻りとなったものの実家に帰りづらく兼見に身を寄せたまま、今も三左ェ門の身の回りの世話を続けている、という女性。

後は原作を読んでもらうか、本映画を観てもらうか、ほかないでしょう。
なお、本物語からは、人の人生とはどう生きたかという以外にもうひとつ、生を繋いでいくことができたか、にもあるように感じます。
古めかしい考え方かもしれませんが。

2010.07.17

    
→ 原作:「
隠し剣 孤影抄
  


  

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