日本語と英語の間に横たわる問題点を取り上げた本というと、つい堅苦しい内容を想像しますが、全くそんなことはなく、本書はとても楽しい本。
その理由は、ごく一般的な言葉遣いについて語り、桐野夏生「OUT」等の人気小説、「ローマの休日」等の映画を格好の例として取り上げていること。また、間違いを批判するのではなく、何故そうした食い違いが生じたのかを考えることに面白さを見出しているからです。
まァ、一部には「いくらなんでもそれはないだろう」という批判もありますが、それはプロへの苦言であって、我々普通の人に対するものではないので、どうぞご安心を。
日本語と英語の各々の意味を単純に対照できないことは自明の理ですけれど、学校で教える基礎的なところで早くも間違いがあるというのですから、呆れます。
具体例を引用すると、「ヘンな英語」では、まず
challengeという言葉は異議を申し立てるという意味(語源は「誹謗」)を含んでいて、それ故マラソンにチャレンジするという使い方は奇妙なのだとか。また、someとany
は肯定分・否定(疑問)文の違いではなく、いくつかと、いくら(で)も、という違いだというのですから、まさに目からウロコ。
「翻訳」では、サリンジャーから村上春樹、ヘミングウェイから桐野夏生の小説まで取り上げられ、英(訳)文と和(訳)文がを比較されているので興味津々。誤訳の理由は、訳者の知識不足からこれこれの箇所で勘違いをしている所為、とく説明も、読んでいてとても楽しい。ここで知的興味をかき立てられ、英語の再勉強を決心したのなら誇れるところなのですが、そうならないところは怠惰な所為と、自認するほかはありません。
「映画」では、「ローマの休日」が取り上げられ、王女アンと記者ジョーの間の出来事がもっぱら話題となりますが、つい絶句。そこまで考えなくても・・・と思うのは、私だけでしょうか?
割と薄くて内容も面白いので、気楽に読める一冊です。
ヘンな英語に、どっきり/ヘンな日本語に、にんまり/翻訳の難しさに、やれやれ/映画のセリフに、にっこり/異文化のすれ違いに、おやおや/日本での年月に、しみじみ/中学英語教科書を読む
|