石橋毅史(たけふみ)著作のページ


1970年東京都生、日本大学芸術学部卒。出版社勤務を経て98年新文化通信社入社、「新文化」記者を務める。2005年編集長、09年12月退社。現在フリーランス。

 


     

●「本屋は死なない」● ★☆


「本屋」は死なない画像

2011年10月
新潮社刊

(1700円+税)

  

2011/11/30

  

amazon.co.jp

減り続けている新刊書店。その一方で、何かを伝えることのできる本屋の存在を守ろうとする人たち。
本書は、それら苦闘する書店人たちを訪ね歩いたルポ。

まず序章。パルコブックセンター〜リブロと書店に16年勤務した後、出版社勤務を経て僅か5坪という小さな書店を開業した原田真弓さんを訪ねるところから本書は始められます。序章題名にある「彼女」とは原田さんのこと。
「すごい本屋」で知った
井原万見子さんも本書に登場しますが、同書での印象と違い、スーパーの店前、誰もいない中で読み聞かせ会を行う井原さんの姿には、悲痛さも感じられることを触れざる得ません。
何のためにそこまでするのか。それは、本の力、本が人を動かす力を信じているからに他ならないと思うのですが、現実は相当にシビアであることを認めざるを得ません。
しかし、書籍が電子化された後も、その思いは引き継がれるのでしょうか。
印刷物という現物がなくなり電子書籍だけになったなら、何も今のような本屋という形態は必要なくなるのではないか。今の書店人たちは一転して本の紹介者あるいは案内者という立場となり、むしろ伝道師的な役割が強まって現物管理という負担がなくなって状況は改善するのだろうか。
私個人としては、ネットショップがリアル店舗と組み合わさることによって業績を上げることが出来ているらしいのと同様、本もまた現物と電子書籍が併存して本文化が守られていくことを祈るばかりです。

※なお、参考文献として挙げられた中に既読本が何冊かありましたので、以下ご参考までに。
田口久美子「書店風雲録」、萩野正昭「電子書籍奮戦記」、井原万見子「すごい本屋!

序章.彼女を駆り立てたものは何か?
1.抗う女  −原田真弓がはじめた「ひぐらし文庫」
2.論じる男 −ジュンク堂書店・福嶋聡と「電子書籍元年」
3.読む女  −イハラ・ハートショップ、井原万見子を支えるもの
4.外れた男 −元さわや書店・伊藤清彦の隠遁
5.星となる男−元書店員・伊藤清彦の「これから」
6.与える男 −定有堂書店・奈良敏行と「贈与論」
7.さまよう男−“顔の見えない書店”をめぐる
8.問題の男 −ちくさ正文館・古田一晴の高み
終章.彼女が手渡そうとしているものは何か?

   


  

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