今話題の電子書籍。本はやはり現物で読みたい、と私自身は思うものの、一応電子書籍についてきちんと知ってみようと手に取った一冊です。
てっきり、今話題になっている電子書籍の開発をめぐるノンフィクションと思い、それなのに何故「奮戦記」という題名なのか?と思ったのですが、それは全て私の浅はかさの故。
本書で語られている内容は、もっと深いものでした。
言われてみれば確かに電子書籍、今に始まった訳ではない。
初めてパソコンなるものを買ったとき、すでにCD-ROM版の広辞苑がついていました。
それに、パソコン通信時代にも既に、電子書店パピレスの名前は目にしていました。
新たに電子書籍というデータを作る訳ではない。元々電子データがあって、紙に出力するか、電子書籍という形にするかの違いであるという指摘は、目を覚めさせられた観があります。
コンピュータによる新聞作りの奮闘を描いたノンフィクション、杉山隆男「メディアの興亡」を久しぶりに思い出しました。
そう、技術として可能であるなら、可能性があるなら、その道はやはり突き進むべきものと思います。
著者が現在の電子書籍に繋がる道に足を踏み入れたのは、何と1980年代からとのこと。
現物の本には現物の良さがあり、電子書籍には電子書籍の良さがある。単に操作が面白いとかいう問題ではなく、出版社にとって、読者にとってメリットある部分があるのかどうか。そして、読者のために電子書籍はどういう道を目指すべきなのか。
そういった根源的な問題を本書は考えさせてくれます。
電子書籍の意義について考えさせられる、価値ある一冊。
1.てんやわんやの毎日/2.異聞マルチメディア誕生記/3.メディアを我々の手に/4.本ではなく、読むを送る/5.ハードに翻弄される/6.電子出版の未来
※現在、ドコム、au、ソフトバンクの携帯電話で使われている総合電子書籍ビューワ=BS Reader は、(株)ボイジャーが他社と技術提携して開発したソフトなのだそうです。
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