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2.空ばかり見ていた 4.ガリヴァーの帽子 |
●「針がとぶ」● ★★ |
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まるで風景画の中に入り込んでその世界を眺めるような、そんな透明感、爽涼感がある7つのストーリィ。 伯母が遺した古いレコードの向こうには伯母の人生があったし、クローク係は取り残されたコートから持主の人生を想像する。 針がとぶ/金曜日の本−「クロークルームからの報告」より/月と6月と観覧車/パスパルトゥ/少しだけ海の見えるところ/路地裏の小さな猿/最後から二番目の晩餐 |
●「空ばかり見ていた」● ★☆ |
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2009年01月 2006/04/28 |
世界中を旅する、流しの床屋に絡んで描く12の物語。 流しの床屋であるホクトは必ずしも主人公ではなく、脇役だったり、話に出てくる人物だったりと様々。 七つの鋏/彼女の冬の読書/星はみな流れてしまった/モンローが泊まった部屋/海の床屋/アルフレッド/ローストチキン・ダイアリー/ワニが泣く夜/水平線を集める男/永き水曜日の休息/草原の向こうの神様/リトル・ファンファーレ |
●「パロール・ジュレと紙屑の都」● ★★ |
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まず11番目のフィッシュという諜報員が登場します。 文学刑事は物語の中そのものを舞台にしますが、本作品はそこまでには至らず、書物の中に入り込むというのは道具立てに過ぎません。 それでも面白いのは、言葉が凍るということ。「パロール・ジュレ」とはその凍った言葉のこと。 ストーリィより迷宮ゲーム、言葉が凍り付くという事象の面白さを味わうべき作品と思います。これから読む方は、どうぞ心して読み始めてください。(笑) |
4. | |
「ガリヴァーの帽子」 ★★ |
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2020年03月
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日常的な話にいつのまにか非日常的な話が入り混じり、つい頭の中が輻輳してしまう短篇に、思わずニヤリとしたくなる味のあるショートコント等々、興趣溢れる8篇を収録した一冊。 私はどうも吉田さんの前者に類するストーリィが苦手で、えっ何時の間になんでこうなるの?と、いつも戸惑うことの繰り返し。 私が楽しく感じたのは、どちらかというとショートコントの方。 ※なお、「あとがきにかえて」の“ロイス・レーン相談所”は、「ガリヴァーの帽子」に登場していて、そのロイス・レーンとは言うまでもなく“スーパーマン”の恋人である女性記者の名前。本人が登場する訳ではなく、あくまで相談所の名前です。 ガリヴァーの帽子/イヤリング/ものすごく手のふるえるギャルソンの話/かくかく、しかじか/ゴセンシ/ご両人、鰻川下り/名前のないトースターの話のつづき/孔雀パイ/ロイス・レーン相談所の話のつづき−あとがきにかえて |
5. | |
「チョコレート・ガール探偵譚 Detective Story About Chocolate Girl」 ★★ |
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「フィルムは消失、主演女優は失踪、そして原作の行方は・・・。成瀬巳喜男幻の映画を周る探偵行。連続ノンフィクション活劇、今宵開幕!」というのが出版社の紹介文。 「成瀬巳喜男」という名前、「チョコレート・ガール」という名前の面白さに惹かれて読んだ次第。 その「チョコレート・ガール」は、戦前の1932年作サイレント映画。成瀬監督が「小津は二人いらない」と言われた松竹から東宝へ移籍する2年前、27歳の時の監督作品だそうです。 原作は國民新聞の懸賞小説で一等を受賞した作品、その原作者は後にシナリオライターとして活躍した永見隆二だそうです。 そして主演は、当時人気のあった女優=水久保澄江。 戦前の映画であっただけにフィルムも、その原作も残されていない。そんなことから、吉田さんは古本屋をはじめ、あちこちへとそれらを探し求めて足を運びます。 何かを探し歩くこと自体も楽しいところがありますが、その過程で思わぬ事実を知るに至ることもまた楽しいことでしょう。 さしずめ読者は、そんな吉田さんの後をただ付いていき、楽しさのおこぼれを頂戴している、そんな気がします。 さて、その結果として得られたものは・・・それは本書を読んでのお楽しみです。 ※私がDVDで観た成瀬巳喜男監督作品は、今のところ3作とごく僅かですが、「浮雲」「放浪記」「乱れる」(いずれも高峰秀子主演)、どの作品にもすっかり魅了されました。機会があれば他の作品の観てみたいと思っています。 |