横関 大
(だい)作品のページ


1975年静岡県生、武蔵大学人文学部卒。8年連続で江戸川乱歩賞に応募し、2010年「再会」にて第56回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。


1.再会

2.ミス・パーフェクトが行く!

  


 

1.

●「再 会」● ★☆          江戸川乱歩賞


再会

2010年08月
講談社

(1600円+税)

2012年08月
講談社文庫



2010/09/12



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スーパーの店長が銃殺されて発見される。
殺害に使われた拳銃は、何と23年前に小学生だった幼馴染4人がタイムカプセルに入れて校庭の脇に埋めた筈の拳銃だった。
捜査陣の一人は、今は刑事となった4人の内の一人。
事件に関わったのは幼馴染の内2人、そして被疑者として逮捕されたのはその内の1人。
4人以外に誰も銃のことは知らない筈。誰が、何のために嘘をついているのか。
かつて4人が学び遊んだ神奈川県三ツ葉市を舞台に、県警捜査一課の若く有能な刑事=南良が、当面の事件捜査に合わせて23年前の事件の真相をこじ開けていく。
そしてそれは、4人が各々自分一人の胸に収めた秘密を暴いていくことでもあった、というストーリィ。

「予選委員会から本選考会まで常にトップを走り続けた」応募作とのことで、注目が高いようです。
しかし、全体的に粗いという印象。それでも文章が平明で、面白く読めるのは事実。
ただ、主人公が誰かというのがはっきりしておらず、時に応じて幼馴染4人各々の視点から代わる代わる語られ、それがずっと。そのため、分散的な印象を拭えません。また、結末に近付くほどストーリィ上のご都合主義が目立つ、という印象。
その上、幼馴染4人と相対的な地位に立つ南良刑事の人物像が抽象的。
ミステリというのは、最後一気に真相が明らかになり、かつ意外性がある程面白いものですが、その点一つずつ真相が明らかになっていくという構成であるため、事件解決の爽快感が物足らず。
結末にしても、幼馴染4人の内一人だけが割を食った、という感じです。

次々と頁を繰り面白く読めたものの、読了後に思い返すと物足りなさもあり、というのが読後感。

      

2.

「ミス・パーフェクトが行く! ★★   


ミス・パーフェクトが行く!

2021年12月
幻冬舎

(1600円+税)



2022/01/20



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真波莉子、29歳。厚生労働省雇用環境・均等局総務課に所属するキャリア官僚。
仕事のスピードと正確性では誰にも引けを取らず、「総務課に真波あり」と省内外にその名前を鳴り響かせるだけでなく、どんな仕事でも簡単にこなしてしまう故に付いた仇名が「何でも屋」。
さらに現職の
栗林総理の遠縁という噂もあり。

そんな訳で困った問題が生じるととかく上から解決を任され、その度に
「この問題、私が解決いたします」が決め台詞。

冒頭章は、頑固なベテラン議員による問題発言で、ネットで大炎上。何とか解決に持ち込んだのですが、莉子の秘密が暴かれることに繋がり・・・・。
その後は、莉子の実力と経歴を掴んだ経営者たちから、それぞれが抱えた問題の解決を委ねられ、その都度莉子が奮闘する、という連作ストーリィ。

面白いです。誰もが理解できるファミレス、航空会社、病院の立て直しに、莉子がどんな策を講じるのか、という興味溢れるストーリィですから。

莉子の正体は?という点も注目せざるを得ませんが、血筋よりはやはり能力、と言うべきでしょう。
莉子専属の送り迎え運転手兼護衛となった元SPでシングルファーザーの
城島真司とその小三の娘=愛梨とのやりとりも楽しい。莉子が決して仕事だけの人間ではない、と描き出しているところですから。

※なお、こうした問題解決型ストーリィ、以前何か読んだ気がするなぁと思いつつ思い出したのは、農業ものでは
黒野伸一さん、リストラものでは垣根涼介さんの“俺たちに明日はない”シリーズ。スケールはかなり違うかもしれませんが。

第一問:某政治家の不適切発言による炎上を収束させなさい。/第二問:某ファミレスの売り上げワーストの店舗を何とかしなさい。/第三問:某航空会社の客室乗務員のセカンドキャリアについて考えなさい。/第四問:赤字経営が続く某市立病院の経営を立て直しなさい。

   


  

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