黒野伸一作品のページ No.1


1959年神奈川県生。2006年「坂本ミキ、14歳。」(文庫化に際し「ア・ハッピーファミリー」に改題)にて第1回きらら文学賞を受賞し作家デビュー。


1.
万寿子さんの庭

2.女子は、一日にしてならず

3.どうにかしたい!

4.限界集落株式会社

5.極貧!セブンティーン

6.綾香

7.経済特区自由村

8.脱・限界集落株式会社

9.となりの革命農家

10.本日は遺言日和


あさ美さんの家さがし、国会議員基礎テスト、AIのある家族計画、お会式の夜に

黒野伸一作品のページ No.2

  


    

1.

●「万寿子さんの庭」● ★★


万寿子さんの庭画像

2007年04月
小学館刊
(1400円+税)

2009年10月
小学館文庫化



2010/06/10



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主人公の竹本京子20歳は、就職したのを契機にアパートを引っ越す。
ところが引っ越した先の隣に住む杉田万寿子という老女は、京子に様々な嫌がらせをする。
まず最初は、斜視を気にしている京子に向かって「寄り目!」と容赦なく言ったり、いきなりスカートを捲ったり、等々。

若い女性と老女のバトルを中心に進んでいくストーリィかと思ったら、意外にもすんなり京子が取り込まれる形で、2人はすっかり年齢を超えた友だち関係になってしまいます。
ところが高齢の万寿子さんにボケ症状が現れたと思ったら、急速に症状は悪化していく・・・。

京子、彼氏いない歴20年、今も男性との付き合いに不器用。
一方の万寿子さん、偏屈なところがあり、近所でも孤立。
そして2人とも、たった一人しかいない肉親と自ら望んで絶縁状態にある、という点で共通しています。
2人が親しくなるのにはそれなりの理由があったという次第なのですが、認知症が急速に進む万寿子さんの世話を他人である京子がしようと思っても自ずと限界があります。
共にその事実と直面することによって、2人は各々に家族という関係を考え直すことに至ります。
その点、ある意味、本作品は2人の成長ストーリィ。

年齢を超えた友情を結んだ2人の、心底にあるせつなさが忘れ難い。
そして、そんな万寿子さんとの関係から新たな一歩を踏み出した京子のこれからを、心から応援したい。
ストーリィは極めて単純ですが、ユーモラスで、温かくて、切ない、その余韻が長く心に残ります。

   

2.

●「女子は、一日にしてならず」● ★★


女子は、一日にしてならず画像

2008年08月
小学館刊
(1800円+税)

2011年09月
小学館文庫化



2008/09/26



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身体のサイズは4L〜6Lという極めて太めのOL=赤野奈美江29歳の、仕事に食欲に、恋に、ダイエットにという奮闘記。
痛快、ユーモラス、そして爽快なエンターテイメント。

冒頭の奈美江はそろそろ4Lを越えそうという、相当に太っている女性。でも彼女は格好いいのです。
会社において奈美江が、部長も同僚OLたちもを睥睨して堂々としているのは、何といってもその実務能力の高さ故。仕事のミスを指摘して新人の女性社員に泣かれようが些かも動じない。また、肉の塊と悪口を叩かれようが、歯牙にもかけず、その食いっぷりたるや豪快そのもの。真に惚れ惚れするくらいです。
そんな奈美江がここまで愚かになるものかとがっくりしたのは、太っているのはむしろ美しいと唱える女性の会に入会し、その縁で参加した合コンをきっかけに詐欺に遭うことから、仕事であれだけ有能なのに、恋に目がくらむとあぁまで他愛なく騙されてしまうものかなぁ。奈美江にも女性らしい可愛い気持ちがあったのだ、と言えばそれまでなのですが。
でもその後こそが、奈美江の面目躍如たるところ。逆境から反省し、素直になり、健康的な生活を目指して奮闘し始めます。
単に奈美江だけのこと留まりません。奈美江の奮闘は、妹弟や友人・同僚たちにも喜びをもたらす、というところが真に爽快。

“太り過ぎ”“ダイエット”という言葉は本ストーリィにおいて避けられないものですが、太っているから悪い、ダイエットこそ全て、というストーリィでは決してありません。
人の価値は体型とは関係ない、でも太り過ぎは健康に良くない、というのは真理。そして、瘠せることによって性格が良くなるのではなくて、性格を直すことによってダイエットにも繋がる、我が身の行動を省みることが大切、という本書のメッセージは快く共感できるものです。
奈美江の容姿はとても想像およびませんが、その力強さ、まず女性が惚れ込んでしまうのではないでしょうか。
孤高から協調へ、仕事・恋愛・家族という要素も盛り沢山に兼ね合わせた、たっぷり楽しめるエンターテイメント。若い女性には特にお薦めです。

    

3.

●「どうにかしたい! Sumire in Junior high school」● ★★☆


どうにかしたい!画像

2010年04月
理論社刊
(1500円+税)



2010/05/23



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ごくフツーにマジメな女の子、麻丘菫14歳が味わった試練の中2生活を描いた児童向け作品。

和気藹々とした小学校生活を楽しんで中学に進んだスミレは、愕然とする。乱暴な物言いする生徒が大勢いたから。
中一生活はどうにか過ごしたものの、中二になってスミレは、クラスの中で一人ぼっちであることに気付きます。つまり、昼休みに一緒に食べる相手がいない、ということ。
1学期、想像力を発揮して何とかやり過ごす。でも2学期、もう無理と観念する。そして何とかクラスのギャル系グループに溶け込もうとするものの・・・。そしてついに3学期、シカトされさらにイジメも受け、完全に孤立。その結果は・・・。

主人公スミレが置かれた状況は、今やどんな中学生にも、いつ起こっても不思議ないことかもしれません。
スミレは自分なりに何とか凌ごうとしますが、その苦労は両親に通じない、理解してもらえない。その乖離。
行き詰まれば、仲間入りして中学生らしさを失うか、それとも不登校かリストカットか。
しかし、そこでスミレは踏み止まります。それには、孤立したスミレにたった一人声を掛け続けてくれた、隣席の男子生徒の存在も大きいのですが、やはりスミレ自身のパワーと思いたい。

世の中、学校生活の中でさえ、自分の力ではもうどうしようもないことがあります。でも努力し続けることが大事なこと。
自分でどうにもならないことに自暴自棄し、自分を損なってしまうことこそ、一番ダメなこと。
スミレの中2一年間の奮闘は、そうしたことをスミレ自身に、読者に教えてくれます。
スミレの健気で、後で振り返ればバカバカしいと思えるような奮闘ぶりが、だからこそ愛おしい。
中学生や高校生に是非お薦めしたい、勇気の出る佳作です。

        

4.

●「限界集落株式会社」● ★★


限界集落株式会社画像

2011年11月
小学館刊
(1600円+税)



2012/01/02



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銀行員、IT企業と職歴を重ねてつい最近退職届を出したばかりの多岐川優、暫し都会生活を離れてのんびりしようと、亡き祖父の住んでいた止村(とどめむら)にBMWでやって来ます。
しかしその止村は老人が多く、小学校は閉鎖、郵便局もなくなり、路線バスも運行されなくなった限界集落。
ひょんなことから優、止村の再生を図るべく、
集落営農組織を立ち上げ、農業法人設立を目指すことに。
農業は知らないけれど経営はプロとばかり、先頭に立って優は村人たちを引っ張り出します。そこで真っ向対立したのが、根っからの土いじり好き、現場主義の
大内美穂25歳。
しかし、お互いに認めるべきところは認め合い、議論しつつも協力し合い、優と美穂を複数リーダーに指名した営農組織は大部分の村人から同意を得て走り出します。
成るか?限界集落再生! 本書は村おこしストーリィです。

日本の農業が存続の危機にあるのは否定できませんが、個別補償といった補助金政策を続けていれば済むことなのか。
就農人口が減り、高齢化する一方、都会では求職者が溢れ、都会生活に疲れた人もいる。このニーズをマッチングできないものか。
政治、地方公共団体、町役場にやる気がない以上、自分たちの手でやるしかない、というのが本ストーリィのコンセプト。
優、美穂の他、就農研修者のくせにまるで見込みのない3人が、優の適性に応じた役割指名に生き生きと頑張り始めるところもテンポが良く、楽しく読み進めます。
もちろん、若い人の奮闘の一方で、ばあさんたちが生き生きと働き出す様子もまた楽しい。

農業とは経営的にみたらどうなのか。その視点からも興味津々、活気溢れる村おこしストーリィになっています。
こうした農村が増えていけば、日本の景気も未来も明るくなる気がするんだけどなぁ。

     

5.

●「極貧!セブンティーン」● ★★


極貧!セブンティーン画像

2012年05月
理論社刊
(1400円+税)



2012/09/07



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26歳の女医=貴美が、自分の元を訪れた17歳の女子高生=川名美香を相手に自分の17歳時代を語る、という設定の下に描かれる極貧青春ストーリィ。
医者って医者の子じゃないとなれないのだろうという美香に、私の父親は派遣工場労働者だった。しかも、私が高2の時にリストラされて失踪したの、と貴美は語り始めます。

貴美、貧しいが故に不良高校と言われる公立高校生。父親が失踪した後、残された母親と妹を支えて頑張ろうとするものの、母と妹は自分勝手な言い分ばかり。加えて働き始めたバイト先でもトラブルが起きて・・・。幼馴染で同級生の優太郎、高校を中退して上京し工場で働く予定という。その優太郎に誘われた貴美、家を出て優太郎と一緒に東京へ出ることを決意します。
工場で契約社員として働き始めた優太郎、用意されたアパートで2人の共同生活が始まります。貴美の夢は医大に進学して医者になること。優太郎もまた貴美が医者になることを悲願として、貴美を支えるため懸命に働き続けます。しかし、バブル崩壊後の時代とあって2人の前には厳しい現実が立ちふさがります。

底まで落ちたという状況の中にあっても、夢を抱くことを忘れず、2人でそれを叶えようと奮闘し、お互いを思い合う姿。
顛末に出来過ぎ感はあっても、頑張れば夢を実現することができると信じて頑張る2人の姿は清々しい。まさに感動と勇気をもらえる物語です。 青春ストーリィの佳作。

             

6.

●「綾 香 Ayaka」● ★★


綾香画像

2012年06月
光文社刊
(1500円+税)



2012/08/02



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男たちの前に姿を見せ、男たちに何かを残して忽然と姿を消す若く美しい女。彼女が去った後には何故か、男たちの死があった。

その度に姿をくらます謎の若い女というと、宮部みゆきさんの初期作品火車を思い出しますが、もちろん本書ストーリィは全く別のもの。
黒野さん初のミステリーという宣伝文句に惹かれて読むに至りました。
2007年、独居老人の元に通う若いヘルパー=
野際綾香。その橘正太郎は彼女の抜群のプロポーションにいたくご満悦。しかし、綾香はその偏屈な老人だった正太郎に対して職務以上の献身を残して去っていくのですが・・・。

いったい綾香の目的は何だったのか。そしてそもそも綾香とはどういった女性なのか。それは第1章を読んだら誰しも強く抱く疑問でしょう。
その後ストーリィは、時間を相前後して繰り広げられます。
本作品の魅力は、そこにあると言って過言ではありません。時期を前後して語られる各章の綾香像から、綾香の変遷を繋ぎ上げ一貫とした綾香像を組み立て、さらに彼女の秘密を読み解こうとするのは、まるでパズル合わせをするような楽しみがあります。

終盤明らかにされる彼女の秘密は、読み手とするとそう驚くべきものではありませんが、その代わりに残るのは、綾香という一人の女性が抱えた哀しい宿命に対する切なさ、愛しさ。
ストーリィ全体を通して、3箇所程かなり強引な展開がありますが、それでも本作品は読後にかなり余韻を引くストーリィ。
綾香に始まり、綾香に終わるストーリィであり、綾香という女性の残像がいつまでも残る気がします。
ミステリアスな女性キャラクターが好きな方には、是非お薦め。

1.2007年/2.2006年/3.2002年/4.2004年・2008年/5.2002年−2007年/6.2009年/最終章 2010年

                

7.

「経済特区自由村」 ★☆


経済特区自由村画像

2013年07月
徳間書店刊
(1700円+税)

2015年06月
徳間文庫化



2013/08/02



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本書題名から、最近多くなってきた村おこし小説の一つだろうとてっきり思っていたのですが、大間違い。
過疎の
神山田村FEE(フリーエコノミー&エコロジー)という運動を始めた民人。住居費や生活費がかからずに済むとその呼びかけに飛びついて都会から移住してきたのは、素朴な農家生活に憧れる夫婦たちだけでなく、都会で食い詰めていた若い連中等々も。しかし、全て自己責任という民人の方針の下、かえって神山田村には不穏な気配が漂います。

一言でいうと、本来長閑である筈の農村を舞台にした、正体の定かならぬストーリィという印象です。
主要な人物は3人。有力ファースドフード企業の特約農家となったもののその過酷さに営業マンを殺してしまったと逃亡して神山田村に行き着いた
鈴木明男。雇用主からの依頼でその高校生の姪をFEEから連れ戻しにやってきた女性格闘家の岬洋子。そしてもう一人は、何を目論んでいるのか判らぬ民人です。
神山田村を舞台にした本ストーリィの前半と後半が第一部と第二部。そして間の第二部として悲惨な少年時代を送った
小柳翔太の物語が挟まります。

三部構成からなるストーリィにして、どの部もそれなりにハラハラドキドキという展開。一体本ストーリィはどこへ行き着くのか、やはり村おこしなのかあるいは新趣向のサスペンスなのか、皆目予想が付きません。
結末はそれなりに納得できるものなので、どうぞご安心を。

1.脱マネー 自給自足/2.ある男のクロニクル/3.人々の行きつく果て

       

8.

「脱・限界集落株式会社 ★☆


脱・限界集落株式会社画像

2014年12月
小学館刊
(1600円+税)

2016年11月
小学館文庫化



2014/12/31



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限界集落株式会社の続編。
止村の“村おこし”から4年後、今回の舞台は止村の近くにある
幕悦町のシャッター商店街。
幕悦町の郊外に止村と提携した大型のショッピングモールが出来て大賑わい。
多岐川優と盟友であった佐藤がその成功で調子に乗り、再びマネジネントをして幕悦駅前も同様のショッピングモールが作ろうという再開発計画が進みます。
その計画が進んだら幕悦町商店街は消滅必須。
再開発計画反対の中心になるのが、同町でコミュニティカフェ「
コトカフェ」を営む新沼琴江と、その従姉妹で止村株式会社副社長の立場にあるにもかかわらずコトカフェ出向中という多岐川美穂
そのコトカフェ、野菜のデリバリーから老人向けデイサービス、託児所サービスまで手掛けるという、都会では在り得ないようなごった煮のサービスを展開中。
そこには都会での過酷な労働やノルマ優先の仕事に疲れて逃げてきてコトカフェでやっと安らぎを得た
長谷川健太や、遠藤つぐみといった若い男女たちもいて・・・。

“村おこし”の次は
“町おこし”という題材は当然の流れのように感じますが、目を見張るような面白さがあった前作に比較すると、面白さとしてはイマイチ。
面白くなってくるのは、人が見過ごしていた点を鋭く突く人物=
多岐川優が姿を見せるようになってから。

都会もいいけれど、田舎もいい。暮すのにどちらがいいかは、結局その人の向き不向き次第。
そこで肝心なのは、選択肢として田舎を選べる状況を、行政側が整えなくてはいけないということでしょう。でも行政頼みばかりでなく、自分たちも考えかたを切り替えて工夫していくことが必要である、というメッセージを本作品は伝えています。
効率化優先社会への警鐘と同時に、手をこまねいている関係者たちへの警鐘もある、と感じる次第です。

           

9.

「となりの革命農家 ★☆


となりの革命農家

2015年03月
廣済堂出版刊
(1500円+税)



2015/04/02



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このところ農業あるいは農家をテーマにした作品が続く黒野伸一さんですが、本書もまたその系列にある作品。

農村地域であるY県大沼村を舞台に、片や有機農業を目指す木村春奈小原和也という若い2人、片や大手食品会社系列の農業生産法人=アグリコ・ジャパンで農業の近代化を目指す営業・生産部長の上田理保子独身30歳、という2つの流れを並行的に描いた長編小説。
これまでの作品は村おこし、町おこしというのが主テーマでしたが、本ストーリィでは農業振興という共通点はあるものの、どちらかというと個人に軸を置いている印象が強い。
そのうえで、本作品から提起されているのは次のような問題ではないでしょうか。
・有機農業に、目指す意味、価値はあるのか。
・農薬に頼った従来の慣行農業は誤った道なのか。
・どうしたら農業に活気を取り戻すことができるのか。
・農業の近代化を妨げているものは何なのか。

和也と春奈の若い有機農業コンビ、本社返り咲きの為の功績狙いから大沼村のためと気持ちを変えたビジネスウーマンの上田理保子。それぞれを主人公にしたストーリィ部分は共に充分面白いのですが、二兎を追った分、面白さが分散されてしまった向きを否めません。そこがちょっと惜しまれるところ。
その分、有機農業と近代化農業は併存可能では?という問い掛けもありますから、やはり面白いことは面白いのです。

戦後日本は工業化により社会発展を遂げてきましたが、中後進国の追い上げ、生産のグローバル化等々で頭打ち気味。そうした今こそ、手つかずだった農業の近代化、グローバル化を推し進めるべき時代と思います。
本作品は、そんな姿勢を農村という現場から描いた小説。農業の衰退を一番切実な思いをもって見ているのは、その当事者である農家の人たち、ということを改めて感じさせてくれます。


1.それぞれの進む道/2.近代農業vs有機農業/3.未来農家

              

10.
「本日は遺言日和 ★☆


本日は遺言日和

2015年12月
実業之日本社
文庫刊
(563円+税)



2015/12/31



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小さなイベント会社=弥生プランイングに就職した川内美月、グルメや旅行企画を幾つも提出したものの全てボツ。ところがやけっぱちな気分で書いた“遺言ツアー”なる企画を、なんと社長が面白いからやってみろと即決。
慌ててバタバタと、先輩社員のサポートを受けながらツアー実行に漕ぎ付けたものの、温泉旅館での二泊三日ツアーへの参加者は僅か4名。
上品な老婦人、娘の付き添い付きの老人、年中酒を飲んでばかりの老人、そして何故か19歳の青年というのがその顔ぶれ。
その最初から予定外のトラブルが発生し、美月は参加者それぞれの事情に振り回されます。
さて新人の川内美月、参加者全員に遺言書を書かせ、初の“遺言ツアー”を成功裏に終わらせることができるか、というストーリィ。

ちょっとお仕事小説+幾つもの家族ドラマ、という趣向。
もちろん“遺言”がキーワードになっている訳ですが、遺言をする側と遺言をされる側では“遺言”の受け留め方も異なります。
短くコミカルな味わいのストーリィですが、そもそも遺言とは必要なものなのか、何を伝えるべきものなのか等々、突き詰めて考えようとすると意外に深いものがあることに気付かされます。
そんなことをするのは資産家ぐらいなもの、とこれまでは思っていたのですが、“遺言”がこうした連作ストーリィの題材になる時代になったのですねぇ。


プロローグ:ようこそ遺言ツアーへ/1.遺言書講座/2.個人面談/3.子どもの遺言/4.情けない大人/5.ツアー解散/6.第二回ツアー/エピローグ:遺言の行方

          

黒野伸一作品のページ No.2

      


  

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