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3.借金取りの王子−君たちに明日はない2− 4.張り込み姫−君たちに明日はない3− 5.月は怒らない 6.人生教習所 7.勝ち逃げの女王−君たちに明日はない4−(文庫改題:永遠のディーバ) 8.狛犬ジョンの軌跡 9.迷子の王様−君たちに明日はない5− |
●「ワイルド・ソウル」● ★★☆ 吉川英治文学新人賞・日本推理作家協会賞他 |
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2006年04月 2009年11月
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戦後の南米移民事業を背景にしたハード・サスペンス。 戦後、政府と外務省移民課が旗振りして行われた大規模なブラジルへの農業移民事業。 戦前の南米移民の過酷さは、北杜夫「輝ける碧き空の下で」で描かれていますが、戦後もそのようなことが繰り返されていたのでしょうか。 本書では、犯人、報道、警察という3つの立場が描かれますが、感情移入してしまうのが犯人側であることは否めません。 |
●「君たちに明日はない」● ★★★ 山本周五郎賞 |
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2007年10月
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主人公・村上真介の仕事は、クビ切り面接官。つまり、彼の勤める会社は、人員削減を計画している会社から委託を受け、予めリストアップされた社員と面接して希望退職に応じさせるということを業務としている会社なのです。 とそんな自分のことはさて置いて読むと、本書はこのうえなく愉快なエンターテイメント小説なのです。 ストーリィの題材はサラリーマンにとって恐ろしいものですが、読者にとってこんなに痛快、爽快で楽しいエンターテイメント系サラリーマン小説は、きっとそうはないでしょう。 怒り狂う女/オモチャの男/旧友/八方ふさがりの女/去り行く者 |
●「借金取りの王子」● ★★★ |
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2009年11月
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「君たちに明日はない」の続編。主人公の村上真介、アシスタントの川田美代子に、真介の8歳年上の恋人・芹沢陽子という主要メンバーは前作と変わりなし。 「二億円の女」「女難の相」とそれなりに面白かったものの、前作に比較すると物足りず。続編となるとパワーダウンも仕方ないかと思っていたところで見事に背負い投げを喰らわせられたのが、表題作「借金取りの王子」。これがもう絶品です! 「山里の娘」は観光ホテルを舞台にした爽やかで軽やかな一篇。 なお、リストラ、必ずしも悪いことばかりとは言えないと、穏やかに語りかけてくるようなところも本作品の魅力。 二億円の女/女難の相/借金取りの王子/山里の娘/人にやさしく |
●「張り込み姫−君たちに明日はない3−」● ★☆ |
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2012年04月
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ちょうどNHKでドラマ放映が始まったところでの、「君たちに明日はない」シリーズ、第3弾。 前2作同様、リストラ請負会社の社員=村上真介が主人公。 ビューティフル・ドリーマー/やどかりの人生/みんなの力/張り込み姫 |
●「月は怒らない」● ★★ |
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年齢も性格も境遇も全く異なる3人の男。それなのに彼らが一様に惹き付けられたのは、市役所勤めの地味な女性だった。 男3人+女一人=4人をめぐる物語。 それなりの現代社会的ストーリィかと思い定めようとしていたところ、終盤、全く思いがけなかった局面へドラマは進んでいきます。 |
●「人生教習所」● ★★ |
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2013年06月
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東京から遥か千キロも離れた太平洋上にある絶海の島、父島・母島を中心とする小笠原諸島。 開催期間は平成19年06月の12日間、参加費用は船費・宿泊費を含む金五十万円也。セミナーの最終合格者には、希望すれば就職活動の支援付。主宰する小笠原塾運営事務の局長は元日本経団連会長というのですから、怪しいセミナーではありません。 第一次セミナーでの講義より、第二次セミナーでの小笠原諸島という土地柄、以前からの島民+新たに住みついた人たちという住民構成、戦後すぐの米国統治下から日本復帰という荒波を味わった人たちの体験とその思いを知ることの方が、主人公たちの再生にとっては重要であったようです。 小笠原を知ることによって主人公たちの考え方に変革も生じ、再生もなる、といった風。 1.海を渡る船/2.一次セミナー・父島/3.二次セミナー・母島/4.カリフォルニア州・サンフランシスコ市・小笠原村大字/5.半年後 |
7. | |
●「勝ち逃げの女王−君たちに明日はない4−」● ★★ |
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2014年10月
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「君たちに明日はない」シリーズ、第4弾。 リストラ請負人である村上真介が、業況低迷から社員のリストラを決断した会社から依頼を受け、対象者と面接して早期退職に応じさせるという本シリーズ、マンネリ化している面があるとはいえ、毎回読むのが楽しみです。 このシリーズ、企業を題材にしているだけに小説の材料は無限にあると言って良く、まだまだ続きそうです。今後とも、乞うご期待! 勝ち逃げの女王/ノー・エクスキューズ/永遠のディーバ/リヴ・フォー・トゥデイ |
8. | |
「狛犬ジョンの軌跡」 ★★ |
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2015年07月
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人間に優るとも劣らない風格をもつ大型犬の物語としては、三浦明博「五郎丸の生涯」という傑作を最近読んだばかりですが、同じ大型犬とはいえ実は狛犬の化身らしい存在なのですから、自ずと物語は全く別の展開を見せます。 主人公の太刀川要が深夜に房総をドライブしていたところ、大怪我をして倒れている大型の黒犬と遭遇します。 本作品は、太刀川を主人公する各章ストーリィの後に、必ずや黒犬の独白が付きます。 何より、主人公に並べて謎の黒犬を配した趣向が格別。そしてまたストーリィ自体、主人公および黒犬のキャラクターがあって実に気持ち良く、面白い。垣根さんの着想に拍手です。(^^) ※人間が犬に化身して愛する人の側に寄り添うという作品があったのを思い出しました。松浦理英子「犬身」。ご参考までに。 プロローグ・J/1.事故/2.命名/3.疑念/4.沈黙/J・エピローグ |
9. | |
「迷子の王様−君たちに明日はない5−」 ★★ |
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2016年11月
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「君たちに明日はない」シリーズ第5弾にして完結編。 第一作を読んだ時には、ここまで長く続くシリーズになるとは思いもしませんでした。 第1章(大手化粧品会社)では戸惑いながらも前進、第2章(大手家電メーカー)ではすきっと気持ちを転換、第3章(大手書店)では自分の気持ちに忠実に、というのが各章主人公たちの選んだ結末。なにやらステップを踏んでストーリィが進められているというような気がします。 最終章ではえッ!と驚かされますが、必然的な結果と言うべきでしょう。 |