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2.はなうた日和 3.凸凹デイズ 4.幸福ロケット 7.渋谷に里帰り 8.カイシャデイズ 10.シングルベル |
床屋さんへちょっと、愛は苦手、失恋延長戦、ヤングアダルトパパ、パパは今日運動会、寿フォーエバー、一匹羊、GO!GO!アリゲーターズ、東京ローカルサイキック、展覧会いまだ準備中 |
幸福トラベラー、ジンリキシャングリラ、芸者でGO!、店長がいっぱい、誰がために鐘を鳴らす、天晴れアヒルバス、ふたりみち、あたしの拳が吼えるんだ、神様には負けられない、マイ・ダディ |
人形姫、花屋さんが言うことには、おでんオデッセイ |
●「笑う招き猫」● ★★ 小説すばる新人賞 |
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2006年01月 |
駆け出しの女漫才コンビ、アカコとヒトミの漫才にかける姿を描く、楽しく清々しい、ビルドゥングス・ロマン。 女漫才というとつい関西をイメージしてしまうのですが、2人とも東京人。その所為か、新鮮な印象があります。 漫才という題材より、2人のキャラクターと息の合った様子、思い切りの良さ、健康的な明るさが、とにかく読み手を楽しませてくれます。最後にはちゃんと2人の危機も描かれ、ストーリィの起伏も充分。 |
●「はなうた日和」● ★★ |
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2008年05月 |
いいなぁ、気持ち良いなぁ、と心の底から自然に言葉が出たのが冒頭の2篇。 収録されている8篇は、いずれも東京は西の世田谷線沿線を舞台にしたストーリィ。 閣下のお出まし/犬が笑う/ハッピー・バースデイ/普通の名字/コーヒーブレイク/五歳と十ヵ月/意外な兄弟/うぐいす |
●「凸凹デイズ」● ★★☆ |
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2009年02月
2006/01/30
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「恋愛じゃなく、友情じゃなく、仕事仲間。彼らがいつも、そばにいた」というのが帯文句。 まず現在の主人公は浦原凪海。零細デザイン事務所凹組の新人デザイナー。といっても、残るメンバーはオータキ(大滝)とクロ(黒川)の2人きりで、仕事はエロ雑誌のレイアウトからスーパーのチラシまでというしょぼい仕事ばかり。 |
●「幸福ロケット」● ★★ |
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2005/12/25 |
帯には、クラスで八番目にカワイイ私(山田香な子、小5)と、深夜ラジオ好きでマユゲの太いコーモリ(小森裕樹、小5)の「可笑しくて切ない初恋未満の物語」とありますが、まさに言いえて妙のストーリィ。 塾帰りの香な子と入院中の母親の世話帰りのコーモリが、夜遅く電車で一緒になることを繰り返すに連れ、2人の仲は親しさが増していく。その一方で香な子は、同級の優等生・町野さんからいきなりコーモリとの橋渡しを頼まれ、その強引さに押されて応じてしまう。 大人も子供も楽しめるフレッシュな初恋未満物語、お薦めです! |
●「男は敵、女はもっと敵」● ★☆ |
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2009年04月
2006/05/20
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美人でしかも才気に溢れるカッコいい女、高坂藍子。
カッコいいから、男性の目を惹き付けるから藍子は悪い女、ということになるのでしょうか。 そう思うのは所詮その女が男に依存する気持ちがあるからであって、依存する気持ちが失せてしまえば、相手の女のことなど気にせず、直接の相手=男だけを見定めることができる筈、と感じます。その具体例が、不倫相手の妻を主人公にした「本気の女」と思う次第。 敵の女/Aクラスの女/本気の女/都合のいい女/昔の女/不敵の女 |
●「美晴さんランナウェイ」● ★☆ |
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2010年03月
2007/05/20
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未婚で未だに実家に同居している27歳の叔母、美晴さんを中心にして描く家族騒動記。 主人公は中学生の姪、世宇子です。 突拍子も無い行動をとる美晴さんですけど、そんな家族の良さをけれんなく素直に体現していると言えるのではないだろうか。 三中だけセーラー服/バランスタワー/おそれ入谷の鬼子母神/空元気の家系/のっぴきならない事情/イタコイラズ/これから控え室のふたり、ときどき三人 |
●「渋谷に里帰り」● ★★ |
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2011年07月
2007/11/13
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「渋谷に里帰り」、なんと不思議な題名かなと思いましたが、その理由は読み始めてすぐ判ります。 否応なく再び足を踏み入れた渋谷の街を、かつての記憶と照らし合わせながら歩いていく部分と、デキの悪い後輩社員が優秀な先輩社員に叱咤されるうちそれなりにサマになっていくというお仕事小説の、2本立て構成。後者は吉村喜彦「ビア・ボーイ」を彷彿させてくれます。 変わってしまった故郷の姿にただ寂しさを感じるだけでなく、その新しい姿に魅力を感じることができたら、さぞ嬉しいことと思います。私の実家は同じ23区内とはいえ住宅地なので繁華街である渋谷とは比べようもありませんが、訪れる度に子供の頃賑やかだった商店街に寂れた雰囲気ばかり感じてしまいます。視点を変えてみればそこに新しい姿があるのかもしれません。 ※「凸凹デイズ」のゴミヤがちょこっとサービス出演。 |
●「カイシャデイズ」● ★★ |
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2008/07/26
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本書に登場するのは、店舗内装を主に手がける会社・ココスペースの社員と、その顧客たち。 まず最初に登場するのは、営業の高柳。早朝から顧客にトラブル対応を頼まれるわ、会議資料用に受注予定はでっちあげなくてはならないわ、まぁ世の常、仕事とは大変なものです、と思わせられます。 ところが読み進んでいくと、いつの間にか気分は変わっていきます。 とにかくこの会社、個性的な社員を野放しにしている、と言ったらよいか、野放図な社員を好き勝手なままにさせていると言うべきか。実に伸び伸びしているのです。 その象徴たる組み合わせが、営業部の高柳、施工監理部の篠崎、設計部の隈元という3人。その中でも突出しているのが隈本。なにしろ、やってみたいという店舗内装のため、78万円ものトチの木を自腹で買い込んでしまうのですから。 仕事が楽しい訳ないだろと言いつつ、この3人、徹夜仕事を苦にしないばかりか、むしろそんなことさえ楽しそうなのです。 ウマの合った同僚がいて、好きなように仕事をやらせてもらえれば、仕事だってこんな楽しい、と言わんばかり。 友情とは違うんだなぁ、あくまで会社の同僚、仕事仲間。 会社が舞台ですから、いろいろな社員が登場してきますが、それが皆々実に面白い。決して上記3人だけが特別ではありません。 利益を上げる、会社を大きくする、昇進する、も大事だけれど、人生の大半を捧げる訳ですから、仕事を好きになれる、楽しく仕事ができることこそ本来の原点ではないか、と思えてきます。 女神の呼び名/魔のトライアングル/夢破れて/いつもおひとり様/バームクーヘン/ガウディでよろしく/スナイパーヒロコ/社長教育ABC |
●「ある日、アヒルバス」● ★★ |
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2008/12/05
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東京の観光スポットをめぐる定期観光バス会社、というのですから、これはもう“はとバス”がモデルであることは間違いないでしょう。 本作品は、そんなバス会社=アヒルバスに勤めるバスガイド、23歳の高松秀子(愛称:デコ)を主人公とした、青春&お仕事小説。 秀子はもう中堅といってよいバスガイド嬢ですが、どこかまだ先輩たちに甘えたところがある。 新人指導員の助っ人として借り出された、秀子の同期=中森亜紀の突出ぶりも傑作!、存分に笑えます。 何はともあれ、本作品は純粋なお仕事小説。 |
●「シングルベル」● ★★ |
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2009/06/26
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これまでの直線的、真っ向勝負のストーリィとは異なり、脇からくすぐりを入れられているような妙味が、本作品の魅力。 じわじわと伝わってくる面白さが、味わい豊か、かつ噛み応えあって、実に楽しい。 なお、本書題名は“ウェディングベル”のもじりか。 いい年して未婚という息子・娘を抱える親たちが集まり、子供の見合い相手探しに熱中するという、親向けセミナーがストーリィの出だし。 当事者4人が一通り出揃ってからの展開が面白い。思いも寄らぬ展開、それと対照的な陽一の伯母たち猛婆三姉妹の突進ぶりが愉快。 |
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