怪獣小説アンソロジー
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1.怪獣文藝の逆襲

2.多々良島ふたたび
−ウルトラ怪獣アンソロジー−

  


     

1.
「怪獣文藝の逆襲 ★☆


怪獣文藝の逆襲

2015年03月
角川書店刊

(1900円+税)



2015/04/27



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“怪獣小説”アンソロジー9篇。
“ゴジラ”“モスラ”“ウルトラQ”“ウルトラマン”等を観て育った世代としては、映画・TVの中で怪獣はかつて身近な存在でしたが、小説とは相容れないものだと思っていました。そうした思いが変わったのは
山本弘「MM9を読んでからだと思います。
その流れからすると“怪獣小説”アンソロジーというのも最早驚くものではありません。
ただし、私は知りませんでしたが既に
「怪獣文藝」というアンソロジーがあり、本書はその続巻なのだそうです。

前作が大自然の畏怖や突如として日常を侵犯する不条理の脅威といった面から怪獣を描き出したのに対し、本書は同じ生物である怪獣と人間の闘いを描くことが主眼であったとのこと。

一口に“怪獣小説”と言っても各篇の趣向は様々、故にどの篇を気に入るかも読者の好みによって様々でしょう。
私としてはやはり、怪獣が大暴れし、人間が怪獣と大なり小なり対決するというパターンが好きですね。
そういう面では前半の
「怪獣チェイサー」「廃都の怪神」「プリラが来た夜」が私の好みです。中でも梶尾真治「プリラが来た夜」のひねりは、流石にカジシンさんらしいと感じた次第。

樋口真嗣「怪獣二十六号」/大倉崇裕「怪獣チェイサー」/山本弘「廃都の怪神」/梶尾真治「プリラが来た夜」/太田忠司「黒い虹」/有栖川有栖「怪獣の夢」/園子温「孤独な怪獣」/小中千昭「トウキョウ・デスワーム」/井上伸一郎「聖獣戦記 白い影」/東雅夫:生きかわりに死にかわり、彼らは逆襲する

   

2.
「多々良島ふたたび−ウルトラ怪獣アンソロジー− ★☆


多々良島ふたたび

2015年07月
早川書房刊
(1800円+税)

2018年06月
ハヤカワ文庫化



2015/08/16



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副題をみてピンと来るのではないでしょうか。
その通り本書は、
ウルトラQ・ウルトラマン・ウルトラセブン等“ウルトラ”シリーズのオマージュに他なりません。

本アンソロジー用の短篇を依頼された作家の幾人かが、書くに当たり「ウルトラQ」や「ウルトラセブン」のDVDを観直したというのですから、何をか況や。
したがってストーリィも、そのまま“ウルトラ”シリーズではないにしろ、“ウルトラ”世界が満喫できる内容となっています。
私自身、「ウルトラQ」〜「ウルトラセブン」をTVにてリアルタイムで観た世代ですから、懐かしさがまずあって楽しい限り。
中でも面白かったのは「多々良島ふたたび」と「マンテンビーナッツ」、「変身障害」の3篇。

山本弘「多々良島ふたたび」:怪獣被害で一旦逃げ出した多々良島への再調査。なぜこの島には複数の怪獣が出現したのか。
小林泰三「マウンテンビーナッツ」:狂信的な環境保護団体、何と怪獣を退治しようとするウルトラマンを妨害し、逆に攻撃も。
三津田信三「影が来る」:怪獣ものではないものの、「ウルトラQ」の主要登場人物であった=江戸川由利子・万城目淳・戸川一平・一の谷博士がそろって登場。
藤崎慎吾「変身障害」:何故かウルトラセブンに変身できなくなったというモロボシ・ダンが精神科医へ診療に訪れる話。そこから始まる予想外の展開、様々な仕掛けが楽しい。
西島伝法「痕の祀り」:ウルトラマンが倒した怪獣の後始末を行う清掃業者を描くストーリィ。ちょっとシニカルな内容。

要は本書、ウルトラQ、ウルトラマン、ウルトラセブン等“ウルトラ”シリーズが好きだった世代だからこそ楽しめるアンソロジーと思います。

山本弘「多々良島ふたたび−四四年前の中二病−」/北野勇作「宇宙からの贈りものたち−大いなるQ−」/小林泰三「マウンテンビーナッツ−ウルトラマンは神ではない−」/三津田信三「影が来る−依頼から本作を書き上げるまで−」/藤崎慎吾「変身障害−暗闇のセブン−」/田中啓文「怪獣ルクスビグラの足型を取った男−ウルトラマン前夜祭−」/西島伝法「痕の祀り−史上最大の侵略−」

 


  

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